モンハン世界を異世界に紹介する配信ちゃんねる! 作:クラウディ
思いっきり休憩してモチベupできました。
「本日の授業はここまでですね。皆さん、復習を忘れずに。また後日の授業で出題するかもしれませんよ。それでは」
「「「「「せんせー! ありがとうございました!!!」」」」」
授業時間の終了を告げる笛の音が、私達のいる学び舎に鳴り響く。
それを合図に、先程まで私の話を聞いていた生徒の皆さんが雑談交じりに退出していった。
続々と部屋から退出していく生徒達の喧騒が止んだ後、一人残された教室の教卓の前で私は一人ため息を吐く。
「ふぅ……やはり、教師というものはなかなかに難しいものですね……」
そう独り言を呟く本日の私は、龍歴院に併設されている学校にて、この世界の様々な知識を子供達に教える「教師」という役割を与えられています。
何故ハンターである私が教師をしているのかについてなのですが、これに関しても理由があります。
まず、この世界――『モンスターハンターの世界』が凄まじく過酷で、命の危険を感じる時など数えきれないほどある世界と言えど、「
人々が生存圏を確立させた大きな都市に住む人々が最たる例で、世の中にはモンスターという存在をほとんど知らぬままに寿命を迎える方々もいるそうな。
そんな方々がもし万が一モンスターに出会ってしまった場合、その時の対処法を知っていたり、モンスターに関する知識を持っている、または知識を広めることができるのならば……といった感じの意図があって、研究者の方々が臨時教師を担当することもあるのです。
そして以前も話した通りに、私はハンターであり研究者。
上の人曰く、「現場の雰囲気も知っているのならば、更に詳しく説明できるのではないか?」という理由で、現在の私は教師も兼任しているのです。
そんな私の授業の評価は子供達にそれとなく聞いてみたところ、「楽しい」「次も聞きたい」などなど良い評判を多く聞いています。
「しかし、もっと教えられそうなことはありそうですね。特に鳥竜種の生態について……いえ、詰め込み過ぎては駄目。のびのびと自由に学んでもらわないと……」
そう言いながら私は手帳にペンを走らせ、今回の反省点をメモしていく。
研究者としての私と、ハンターとしての私の感覚をすり合わせることで反省点や評価点を洗い出し、一つの資料にしていった。
おおよそ10分程度である程度纏めることができたので、手帳を閉じて懐にしまう。
「さて、この後の授業は……おっと、先程ので最後でしたか」
次の授業に向かおうと日程を確認すれば、先程の授業で最後だったようだ。
と言っても、帰るにはまだ早い。
どうしたものかと考えていると、その時、あることを思い出す。
「そうでした。配信について考えられますね」
そう、ルーツさんから半ば強制的にさせられている配信です。
昨日の昼に行った配信から一度も配信を付けていないので、そろそろつけるべきだと思いました。
しかし、狩りに行くほどのクエストは現在紹介されていません。
あっても採取クエスト、または物資輸送の護衛ぐらい。
前者はやってもいいのですが、そういったクエストは新人の方や、採取クエストでも収入を得ようとするハンターの方々に譲っておいた方が良く、後者に関しては家を数日は空けないといけません。
特に後者のクエストを受けてしまえば、寂しがり屋なルーチェが拗ねてしまいかねないです……それは避けなければ……!
「うーん……どうすればいいのでしょうか……あ、そうでした」
あーでもないこーでもないと頭をひねっていた時、ふと自身の手帳――『ハンターノート』について思い出します。
ハンターとしての活動記録であるこのハンターノートは、今まで狩ってきたモンスターだけでなく、さまざまな植物や魚、虫や鉱石などについても記録しています。
そして私が授業を行う際は、研究室にある資料だけでなく、このハンターノートの情報も用いています。
ならば、これを用いていつものような『授業』を行えばいいのではないか……?
「そうですね……次の配信では『授業』をしましょう」
そう言って、私は次の配信の計画について考えるのでした。
「はい皆さんどうもこんにちは。先日ぶりですね。一般ハンターのクルファです。今回はこの世界についての勉強会でもしようかなと思って配信をさせてもらっています。本日もよろしくお願いします」
・!!?? って、クルファさんじゃん!! また急に始まったね!!
・久しぶりだねクルファ君。それにしても、いきなり始まってしまうのは改善しておいた方が良いかもしれないね
・ようクルファ。また急に始めやがったな。できれば前もって知らせてくれると助かるんだが……
・そうそう。長い休暇取ってたからよかったけど、これ実家に帰ってる時だったら驚きすぎてばあちゃんに変な目で見られちまうからさ
「あ、あはははは……本当に申し訳ない……知り合いにどうにかできないか相談しておきますね……」
配信の計画を考えていたあの日から1日後、私はまた配信するためのお守りを使って異世界に配信をしていました。
自身の目の前にある半透明な配信画面に流れるのは、前回の配信と同じく様々な口調で送られてくるコメントの数々。
そこには印象に残っていた口調の方々もいて、また会えたことに嬉しいという気持ちが湧いてくるようです。
っと、本来の趣旨を忘れそうになっていました。
「今回はですね、前回の狩猟の様子を配信していた時と違い、ちょっとした授業をしていこうと思います」
・授業? 学院とかであるようなやつ?
「そうです。と言ってもそこまで堅苦しい感じにはしないように努力します。そしてなぜ今回の勉強会を行おうと思ったかについてお話します。前回の配信の際、ディノバルドの狩りについて紹介させてもらいましたね。ですがディノバルドの生態などについては解説できず、皆さんの理解を置いて行ってしまったと反省しています。本当に申し訳ないです……」
そう、前回の狩猟の様子を配信した後、私はルーツさんから辛口評価をされていました。
その際の減点理由として、「視聴者の理解を置いて行ってしまった」という一点が大きかったらしく、今回の配信ではそれを取り戻そうとしているわけです。
確かに、ある程度自分の中で情報を補完すれば納得できるとはいえ、それでもつい先程まで知らなかった生物を理解しろというのも無理があるだろう。
そこで今回はこの世界の様々なことを知ってもらおうと、一つの配信を丸々授業に使おうと思っているのだ。
・あー、確かに。そういわれるとめっちゃ気になるな。そっちには魔法がないんだよな? それでもあんだけ巨大な魔物……モンスターに対抗できてるってのがすごかったし
・魔法が無いってことは筋力強化の魔法もないんだよな? アンタらも、モンスター達も
・ふぅむ……本来なら魔法に使われるはずだった魔力が肉体に浸透していった結果、クルファ君達のようになったとも考えられるが……
「そういったところも含めての授業であり勉強会ですね。私としてもちょっとした研究にはなりそうなので」
早速皆さんからの考察コメントが配信画面に表示されていくのを見て、興味を持ってくれたことに手ごたえを感じる。
という訳で、今回の配信はいいスタートを切れるのでした。
「さて、早速授業を始めていこうと思うのですが、今回は生徒役として皆さんご存知であるキナコ、そして私の娘であるルーチェにも参加してもらいます。2人とも、入ってきていいよ」
「うにゃ~! 皆様お久しぶりですにゃ!!」
「は、はじめまして!」
開始の挨拶が終わってすぐ、私は自身の所有する研究部屋にキナコとルーチェを招き入れます。
前回の配信が終了した後、自身以外の視点も欲しいと思った私は二人に提案。
そして今回の配信に参加してもらうことになったのです。
・お、キナコちゃんと……娘!?
・クルファさんあんた娘いたの!?
・いや、それにしては……言っちゃあれだが似てねぇな
・なんと言うか……気配? ってのが全然違う気がする……もしかして養子?
「え、えっとぉ……」
前回の配信では教えていなかったルーチェの登場に沸き立つ異世界の皆さん。
中にはルーチェと私の関係に少しだけ察しているコメントも見え始めていました。
そのことにルーチェ自身も気づいたのでしょう、コメントの勢いにたじろぎながらも私に助けを求めようと視線を向けてきます。
「お父さん、言っても大丈夫……?」
「ええ。皆さんになら大丈夫だと思います。万が一があっても私だけじゃなく、ルーツさんも守ってくれますから」
「……うん!」
安心させるように彼女の頭を撫でながら告げると、彼女は元気よく頷いてコメント欄に向き合いました。
「皆さん改めましてこんにちは! 私の名前はルーチェって言います! 大好きなお父さんの娘で、『龍』です!!」
・ルーチェちゃんね! はじめまして!
・俺にもこんな娘が欲しかった……って、んんん???
・え、ちょ、い、今なんて言った!!??
・い、いやいやいや!! ど、どういうことなんだよクルファさん!!??
・人化の魔法……!? 魔法はその世界には存在しないと……いや、前回の言葉を思い出せ私。クルファ君は確かに「ほとんど」と言っていた。なら、限られた一部には存在するはず……
「まぁ、予想はしてた反応ですね。彼女は少し生まれが特殊でして……まぁ、魔法のようなものを使える龍……一般的なワイバーンではなく、古くから生きるドラゴンと言った方が分かりやすいですかね? その個体の内の一人が、生まれたばかりの頃に人になる魔法のようなものを使い、紆余曲折あってこうして私の娘となった……というわけです」
「ん~!」
・な、なるほど……?
・えーっと、つまり……?
・なるほどねぇ……魔法が御伽噺になって消えてるなら、それを実際に知ってるやつ、それこそドラゴンとかだけが使えるってところか
・そして使えなくなった分を補うために他の種は進化した、と
・そ、そういうもんなのか……?
「そういうものだと思っていた方が良いですよ……生命の神秘というものは時に築かれていた常識を超えていきますから……」
ルーチェの頭を撫でながらコメントに意識を向けると、そこでは軽い説明ながらも納得している方々のコメントが見えた。
実際、この世界のことをそれなりに詳しいと思っている私ですら知らないことが多いのですから……。
「龍である前にルーチェは私の自慢の娘です。だから、ちょっとだけ自慢したいという意図もあって今回参加してもらいました。皆さんは大丈夫でしょうか?」
・私は問題ないよ! ビックリしたけど、こんなに可愛い子と一緒に勉強できるなんて最高だよ!!
・お、俺もだ! ってかむしろ興味が沸いたぜ!
・俺もだな。龍だろうが人だろうが面白けりゃそれでいい
・……私もだね。もしかしたら、今回の経験がこれからの発展につながるかもしれないのなら、拒む理由もない。クルファ君の娘だというのならなおさらだ
「……ありがとうございます」
「皆さん、ありがとうございます!」
異世界の皆さんからの温かい言葉に思わず胸が熱くなる。
私とルーチェは共に、感謝の言葉を告げるのであった。
本格的な2回目の配信シーンは次回からです()