ドメスティックな世界で生きる系ニンジャ   作:ゲレンの10円玉

1 / 1
ドメスティックな世界で生きる系ニンジャ

 

 

 

 「え、私のことレイプしないの?」

 「は?するわけないじゃん」

 

 

 縄でミノムシになっている女忍者が戸惑ったような声を出す。刀を構えた俺は思わず返事をしてしまった。

 

 

 「おかしいでしょ…私捕虜だよ?好き放題しても文句言われないんだよ?」

 「それでレイプって短絡的すぎないか?」

 「いやおかしくないでしょ!?私美人だよ?女だよ?そして捕虜だよレイプするでしょ!?」

 「しないよ!!」

 

 

 野蛮すぎる論理を口にする女忍者に反論をする。

 こいつは俺のことを世紀末のチンピラだと思っているに違いない。訂正しなければ。

 

 

 「大体、レイプなんて面倒なことするわけないだろ。手間を考えろよ」

 「手間?」

 「うん。だってレイプをする工程を考えてみろよ。①拘束する②服を脱がす③抵抗できないようにする④犯すだぞ?もはや①と②を両立するだけでも面倒だわ」

 

 

 拘束しながら服を脱がすとかどんな忍術だよ。用途が限定的すぎるわ。

 

 

 「それに対して殺しは簡単だぞ。①刺すだからな」

 「わあ!コスパ最強……ってなわけあるか!?お前は男なのか?だったら、多少の面倒ぐらい乗り越えろよ!!」

 「ごめん。俺、最近の若者だから」

 「草食系男子は容赦のないキリングマシーンだった?」

 

 

 女忍者は愕然とした顔をする。

 

 

 

 「大体さぁ…安易なエロってどうなの?ムードぶち壊しにならない?」

 「は?ムード」

 「いやさ。真剣でシリアスな場にレイプなんかのエロをぶち込んでも雑味にしかならないって話だよ。カレーに納豆は入れないだろ?」

 「いや、カレーに納豆はおいしいでしょ」

 

 

 漫画業界を眺めてもエロ表現のない少年誌よりも青年誌が勝つことは珍しい。

 このことからしてシリアスな表現に対するエロは雑味と言わざるおえないだろう。

 

 

 「大体さ。大人向けの描写=エロっていうのも糞な文化だわ」

 「どゆこと?」

 「ほら、ヒロインの悲しい過去はレイプでしたーとかあるじゃん。ああいうの」

 

 

 あとはTS物で生理に悩まされる奴もだろうか?ああいうの好きじゃねえわ。

 大体TS物はごつい男の体から柔らかい女の体に変化する。柔肌が自分の物になるってことに魅力があるわけじゃん。

 ここに股から血が出るとかいうグロい描写を入れないでくれよ。ケーキの上にドリアンが乗ってるような気分だわ。

 

 

 「とは言ってもさ。大人向け描写ってなによ?」

 「ん?」

 

 

 俺の意見を聞いた女忍者が反論する。

 

 

 「だってさ。殺すだの戦争の悲しみだのは少年誌でめっちゃやってるじゃん。ナ〇トとかハ〇タを中心に」

 「まあ、そだな」

 「少年誌でグロ系の悲しみを取り扱っている以上、青年誌でやれるのはエロと政治だけじゃん。だけど政治ってめっちゃ複雑だし、よくケンカ起きてるから取り扱いたくないし」

 「あー確かにヤ〇コメとか見たら、政治なんて取り扱いたくねえな」

 

 

 進〇とかは本当にうまいバランスで走り切ったと思う。

 

 

 「そうなるとさ。下品な物になっちゃうかもしれないけどエロに走るしかないんじゃないかなぁ?」

 「なるほど、すでにメジャーどころが王道のシェアを持っているからこそ、青年誌はニッチな所を取り扱わざる負えなくなったというわけか……」

 

 

 これアマチュア作家にとっても辛い部分があるかもしれないな。

 作品を作る時にはどうしても人気作品と比べちゃうし、独自の魅力をつけようとしたら、安易なエロに走っちゃうのかもしれない。

 

 

 「やっぱり作品を作るのって大変なんだな」

 「さらに面白い作品を作るのはすごく大変だよ」

 

 

 だからこそ、漫画家や小説家には編集というサポーターがついているのだろう。

 そういった人がいないアマチュアの作家さんは負けずに作品を生み出してほしい。応援してます。

 

 

 「じゃ、殺すぞ」

 「え!?なんでそこは安易なエロも素晴らしいという流れでレイプするでしょ」

 「どんな理屈だ!?」

 

 

 確かに作品を作る難しさは知ったが、それとこれは別。

 俺は王道漫画の方が大好きだ。もちろんエロも好きだけどね。

 

 

 「じゃあな。お前との語らい楽しかったよ」

 「やめてー!死にたくない死にたくなーい」

 

 

 ミノムシである女忍者を殺そうと刀を振り上げる。

 死よりも交尾の方がいい女忍者は大声を上げながら命乞いをした。

 

 

 「悪いな」

 

 

 忍びの世界では殺しは当たり前。

 どれだけ仲良くなっても敵なら殺す。

 

 

 「あ、お疲れー」

 「あ、お疲れ様です部長」

 

 

 はずだったのだが、部長が来たので中断する。

 上司の前で血まみれとか失礼だし。

 

 

 「うん、お疲れ。こいつ捕虜?」

 「はい。さっき捕まえました」

 「あっ部長さん。頼んます殺さないでください」

 

 

 普段の調子で会話する部長と命乞いする女忍者。

 俺は女忍者を無視して部長の方を見る。部長はしっかり者だ。

 仕事には忠実で誰よりも成果を残している。俺の尊敬する忍者だ。

 

 

 「へーじゃあこれからレイプする感じ?」

 「ブルータスお前もか」

 「え、俺なんか変なこと言った?」

 「言いましたよ!なにさらっとレイプを選択肢に入れてるんすか!?」

 

 

 俺が知らないだけで忍者の中ではレイプは常識なのか?

 どんだけ頭ピンクなんだよ。忍んでくれよ。

 

 

 「いや、だってさ…まあ、同期でしてる奴が多かったからかな?多分ストレス発散じゃね」

 「いや、ストレス発散って……」

 「お前ストレスを甘く見てるだろ。世の中を見ろよ。ストレスの結果、精神病になってる奴は少なくないんだぞ。ただでさえ人手不足の忍者業界だとマジで気にしなきゃなんないんだよ」

 「そのためにレイプをするってヤバすぎて笑える」

 

 

 けらけらと笑う女忍者。お前、度胸だけなら一流だな。

 

 

 「確かにレイプは褒められた行動じゃない。じゃあ、殺人はどうだ?盗みは?そういうのを仕事にしている俺たちはどんな存在だ?こういうのを考えると面倒だからな。業務に影響ないならプライベートまで口を出さないよ」

 「ええ……マジですか…」

 「うん……最近はコンプラを整備する動きがあるけど、うちは無理だな。実装したら、社員がテロリストに転職するわ」

 「あー…うちって凄腕の忍者多いですもんね」

 

 

 ゲリラ戦法を使えば一国は転覆できるぐらいの戦力はある。

 やっぱり気に食わないことには暴力を使うのが手っ取り早いってことなんだろうな。

 

 

 「正直、プライベートまでコンプラが侵食してるからな。マジでやりづらくて仕方ないわ」

 「それねー割とマジで生きづらくなったよね。最近」

 「そうなんだよ!平和ボケって極まるとこんなに攻撃的になるのかと思って戸惑ってるもん俺。全人類チワワ計画始まってるのかと疑ってるもん」

 「あっ分かります。血なまぐさい仕事してるからカタギの人と話が合わないんですよね」

 

 

 

 この前も中学の同窓会に参加したけど、周囲とのギャップで苦労したわ。

 そこも含めて楽しかったと言われたら楽しかったので問題ないが、2人の意見はとても共感できる。

 

 

 「もう現代だと正義バーゲンセールだよな。簡単に争いが起こせるわ」

 「だから戦争起きたんじゃないんですか?」

 「マジでクソだよねー戦争のせいでうちの仕事も増えたし」

 

 

 武器商人は戦争で儲かるとどこかで聞いたが、忍者の場合は平和な時代に小競り合いをするぐらいがちょうどよかった。

 戦争がある今は忍者の仕事が増えすぎて人手不足が加速してるし。

 

 

 「うん。だから、こいつはレイプしてもいいよ。仕事が忙しい中でストレス発散もできて敵戦力を消耗させれるとかコスパ最強だし」

 「部長。なんでもコスパで片づけたらダメだと思います」

 「大丈夫だよ。君は最近の若者なんだから」

 「俺は血も涙もないキリングマシーンですか?」

 

 

 捕虜と上司。レイプ賛成派の2人に挟まれ、すごく面倒くさいな。

 

 

 「はあ…もう正義ってなんですかね」

 「石ころの類義語。もう俺は正義の追求じゃなくて平和の追求をしたいよ」

 「ああ…いいっすね」

 

 

 戦乱に溢れた正義と悪にまみれた平和。部長が優先するのは後者であるらしい。

 もう馬鹿どもの相手するのは疲れるし、仙人にでもなりたいな。

 

 

 「で、この子どうする?処分する?」

 「いや、ここはレイプでしょ。私、愛人適正Sだよ!」

 

 

 もう判断がめんどくさくなる。また別の機会にしたいな。

 

 

 「……保留って駄目ですかね?」

 

 

 その考えが口に出たのだろう。自然と後回しの言葉が出た。

 

 

 

 「保留?」

 「はい。仕事上は殺すのが正しいんですけど、個人的には殺したくないですし」

 「じゃあ、レイプするの?」

 「さすがに良心が咎めますよ。正義とかどうでもいいですけど死んだ時に誇れる自分ではいたいので」

 

 

 レイプは悪。これは否定するつもりはない。だが、自分が正義の味方になりたいのかと言えば違う。

 俺はただ、自分が死んだ時、笑って死ねる人生を過ごしたい。そのためにはレイプは邪魔だからしない。これだけだ。

 

 

 

 「保留かー……まあ、殺されないだけマシだね」

 

 

 満足げにうなづく女忍者。恐らく、これからの算段を立てているのだろう。

 

 

 「部長。ダメですかね」

 「んー中途半端だなとは思うけどいいんじゃないか?まあ、夏休み宿題みたいになるなよ」

 

 

 後回しにも限界があることを伝えてから部長は去っていった。

 

 

 「さて…これからは俺がお前を管理するからな。覚悟しておけ」

 「はーい!ご主人様!!」

 

 

 猫なで声で媚びる女忍者。こいつに絆されないことも意識するべきことなのだろうな。

 中途半端を維持するのも大変だ。

 

 

 「じゃあ、独房に案内するぞ」

 「え、ここ独房じゃなかったの?」

 「ここは処刑室。これから専用の独房に連れて行くからな」

 「ガチでうちのこと殺す気だったんだ……」

 

 

 ミノムシの女忍者を引っ張って移動する。

 何事も起きないように頑張らないとな……

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。