ヒーローとヴィランが馴れ合うタイプの世界で、やさぐれ合法ロリTS魔法少女   作:ゴーローR

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1 やさぐれ合法ロリは頼られている

 世界にヒーローがいて、そんなヒーローがヴィランから世界を守る。

 そんな物語は世界に数多くあり。

 日夜創作の世界で、彼らは激闘を繰り広げているわけだけど。

 中には、そんなヒーローとヴィランが馴れ合う世界も存在する。

 ヴィラン組織が善玉だったりする場合は、そういう事が起こりうるのだ。

 中には逆張りみたいに、ヒーローが悪辣な場合もあるだろうけど。

 

 私が転生したのは、そんなヒーローとヴィランが馴れ合うタイプの世界だった。

 無論、ヴィランは日夜世界征服のために戦っているし、ヒーローはそれを阻止するために全力だ。

 中には本当に悪いヴィランもいるし、なんかブラックなヒーローもいなくはない。

 そんな悪いヴィランやブラックなヒーローを、馴れ合っている善良ヴィランや真っ当なヒーローが成敗する世界。

 

 正直、住心地は悪くない。

 ヒーローとヴィランみたいなとんでも存在がいるおかげで、文明レベルは前世の現代より少し高い。

 基本は現代ベースだけど、一部で上回ってるみたいな。

 創作さながらのフルダイブ型VRゲームをプレイできた時は、それはもう感動したものだ。

 まぁ、感動した直後にデスゲームへ巻き込まれたりもしたけど。

 

 そんな世界で、私はヒーローをしている。

 魔法少女、というやつだ。

 ヒーローの王道といえば、戦隊、ライダー、そしてプリティでキュアっキュアな少女達。

 ちょっと違うけど、プリティな魔法少女は魔法少女と言ってもいいだろう。

 

 だが、そんな私にはある問題があった。

 その問題は、端的に言うと――年だ。

 

 

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「そのままー! そのままー!」

 

 日曜の十五時過ぎ、テレビの前でスマホを片手に私が叫んでいると、電話がかかってきた。

 一瞬の迷い、既にテレビの向こうの映像はクライマックス、ちょっとくらいなら放置していいか……みたいな考えが脳裏をよぎる。

 けれど、電話の相手が明らかに出ないとまずい相手だったので、諦めて私は電話を取った。

 

『大変だヒカル! 街にヴィランが!』

「こっちは休みを満喫してるんだけど?」

『こっちは街が破壊されてるんだけど!?』

「いや解ってるけどさ、休みって言ったのはそっちでしょ。呼び出さないってアレほど確認したよね?」

 

 ヒカル、というのは私の名前だ。

 真知野(まちの)ヒカル。

 魔法少女っぽいと言われれば魔法少女っぽいし。

 TS娘っぽいと言われれば、TS娘っぽい名前。

 後者はこう、男でも女でも使えるって意味ね?

 

 ヴィランが街に出て、撃退しに行かないヒーローは果たしてヒーローなのか。

 こんなこと世間に知られたらSNSが燃えてしまう。

 とは言うものの、私が今日は休みなのは純然たる事実だ。

 なにせ、ヒーローは当番制だから。

 今日は久々に日曜が休みとあって、気合を入れてテレビに食いついていたというのに。

 

『それが……そのぉ』

「その?」

『……全滅しまして。今日当番だったヒーローが』

 

 全滅。

 ……全滅!?

 

「え? 死んだの!?」

『い、いや死んでない死んでない。ヴィランが人をぬいぐるみにしてくるタイプで、戦ったヒーローも全員ぬいぐるみにされちゃったんだ』

「……コットが行ってくればいいんじゃない? もうぬいぐるみなんだから、実質特効でしょ」

『ボクはマスコットだけどぬいぐるみじゃない! 魔法の精霊だよ!』

 

 電話の主はコット、私の相棒であるマスコットだ。

 安直すぎる名前の通り、見た目も猫のぬいぐるみみたいな安直な姿をしている。

 世界観が世界観なら少女を騙して契約させそうな、胡散臭さが特徴。

 実体は、いたいけな少年をTSさせて魔法少女にするような奴だったけど。

 

「はぁ……しょうが無いな。代休はそっちでなんとかしてよ」

『う……解ったよ。上手く調整する』

 

 さて、今日は一日外に出ないつもりだったので、寝間着のままだ。

 このまま変身して着替えてしまうのが一番早いかな。

 変身の際の謎の光が眩しいので、カーテンをしめないと行けないのが面倒だけど。

 まぁ、着替えるよりは楽だ。

 と、そこで気付く。

 

「……あ」

『どうしたんだい?』

「一つだけ、このタイミングでコットが連絡をしてきてくれたことに感謝することがあった」

 

 いいながら、私はテレビの方を見る。

 

 

「……思いっきり馬券を外した瞬間を、見ないで済んだから」

『魔法少女が競馬に明け暮れるのは、どうかと思うよ!』

 

 

 しょうが無いじゃないか、もう二十歳もとっくに越えてるのに。

 こっちは魔法少女をやらされてるんだからさ。

 

 

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 さっきのやり取りを見て分かる通り、私は不良魔法少女だ。

 とてもじゃないけど、ヒーローの器じゃない。

 そもそも、魔法少女なのにもう成人して酒もタバコもできるんだぞ?

 そりゃあ成人してるヒーローも多いけどさ。

 成人した魔法少女は私しかいないのだ。

 おかげでSNSでは散々ネタにされるし。

 何ならテレビに出ると、ほぼ間違いなくそういうイジりをされるし。

 いやいいんだけどさぁ。

 競馬番組に準レギュで出てる私が悪いところもあるけどさぁ!

 

 言いたいことは、そんな私が何故か頼りになるヒーロー扱いってところだよ。

 確かにヒーローとしては異例の大ベテランではある。

 でもこう、私みたいな不良魔法少女が頼りになるわけじゃないでしょ。

 とはいえ、頼りにされてしまったからには、仕事はするんだけど。

 

 

「ぬーいぬいぬいぬい! これでこの街は俺のぬいでいっぱいだぁ!」

 

 

 空を飛んで現場に駆けつけた私の眼下には、巨大なくまのぬいぐるみみたいなヴィランがいた。

 シンプルなデザインだ、野良のヴィランかな。

 ヴィラン組織の特徴はなさそうだ。

 そして、足元には無数のぬいぐるみ。

 さまざまな動物のぬいだけど、恐らく元は人間かな。

 倒せばもとに戻るはず。

 何にしても面倒だし、さっさと片付けてしまおう。

 

「さぁ、次に俺のぬいになりたいやつはだ――」

「はいそこまで」

「れだぐええええええ!」

 

 高らかに宣言するくまぬいヴィランの顔面に、私のケリが叩き込まれた。

 そのままごろごろと転がっていくまぬいヴィラン。

 勢いよく起き上がって、怒り混じりにこちらを睨みつけてくる。

 

「ヒ、ヒーローが不意打ちとは、卑怯だぞ!」

「ヒーローだって不意打ちくらいするっての」

「こ、このくまぬい型ヴィランくまぬいの手で、貴様もくまぬいにしてやるわ!」

 

 こいつほんとにくまぬいって名前なのかよ。

 くまぬい型くまぬいはもうちょっと何とかならんかったのか。

 とか思っていると、ヴィランが何やらめちゃくちゃ範囲のでかいビームを放ってくる。

 これは……回避できないとぬいぐるみになるやつか。

 しかも、範囲がでかいから回避困難、と。

 そりゃ、ヒーローが勝てないわけだ。

 が、しかし。

 

「そら」

 

 私はそれを、拳一つで破壊した。

 裏拳で、よこから殴りつける感じで。

 パリーン、と。

 

「……は?」

「悪いが、こっちは休日出勤なんだ。このまま倒させてもらうぞ」

「ま、待て……! せ、せめて名を名乗れ! ヒーローとして、それくらいは礼儀だろ!」

 

 そんな礼儀はなにもないのだが。

 まぁ、これから倒されるのに名前を知らないのは、ヴィランとしては死んでも死にきれないよな。

 いや実際に死ぬわけじゃないけどさ、こいつら日常的に再生するけどさ。

 なんてことを、頬を掻きながら考えて、ポツリとヒーローとしての名を明かす。

 

「魔法少女マジェスタ☆ヒカル」

 

 ☆が間に入るのが正式名称だ。

 テレビでこの☆が入ってないと、後で訂正が入るくらいには大事である。

 そんな私の名を聞いたヴィランくまぬいは、なんというか――

 

 とんでもない驚き顔を披露していた。

 

 これアレだ、エネル顔――

 

 

「マジェスタ☆ヒカル!? な、なぜトップヒーローの一人が、こんなところに!?」

 

 

 とか思っていると、私の一般に知られる肩書を口にした。

 ――そう。

 私みたいな不良魔法少女が、なぜかやたらと頼りにされる理由は、これだ。

 

「いや、それは単純に私がこの辺りの担当ヒーローだからだけど……」

「なん……だと……」

「そこはリサーチしとけよ……」

 

 トップヒーロー。

 ヒーローの中でも、最強とされるヒーローに与えられる称号。

 私は、どういうわけかそんなトップヒーローの一人に数えられる魔法少女だ。

 

 普段の生活は、タバコと酒に溺れながら競馬に明け暮れるギャン中で。

 本来なら十代の少女しかなれないはずの魔法少女を、二十代になっても続けていて。

 そんなダメ人間が、果たしてトップヒーローの一人に数えられて許されるのか?

 と、自分のことながら思っているのに。

 

「というわけで、私の休日を台無しにした罪を贖え!」

「そ、そんな理由でトップヒーローが出張ってくるんじゃぐえー!」

 

 何故か、人々は私のことをトップヒーロー扱いする。

 絶対、そんな立派な存在じゃないぞ、私は!




不良魔法少女なTS合法ロリが、なんやかんやヒーロー行為するコメディ寄りの作品です。
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