ヒーローとヴィランが馴れ合うタイプの世界で、やさぐれ合法ロリTS魔法少女 作:ゴーローR
しょうがないので、私はその少女を連れて近くの公園までやってきた。
公園の自販機でジュースを二本買って、片方に口をつける。
本当はアルコールがいいんだけど、公園の自販機にそんなもの売ってるはずもなく。
適当に炭酸で口を慰めるしかない。
「ん……ぅ」
「お、起きた」
制服姿の少女は、少し癖はあるけどきれいな紫髪を肩まで伸ばし、背丈は私よりは高い感じ。
制服は茶色のブレザーとチェックのスカート。
確か、近くの中学の制服だっけ?
後は……胸がとてもでかい。
ちょっと小柄な中学生の胸か……? これが……
「あ……れ、ここ、って……」
「混乱してるなー、まぁしばらくそのままでいいから」
「はい……って、え、柔らか……膝!?」
ガバっと、そのままでいいと言ったのに少女は起き上がった。
まぁ、混乱してるんだから当然だろうけど。
私は炭酸を飲みながら、起き上がった少女の頭を避ける。
「わ、え、あ、す、すいません! 倒れてたところを助けてくれたんですか!?」
「助けた、っていうか……私が鎮圧した?」
「え――――」
その言葉に、少しだけ少女が冷静になったようだ。
そして、私のことにも気がついたらしい。
目が、それはもう驚愕によって見開かれている。
「ま、真知野ヒカルさん!?」
「そうだよ」
流石に、というか。
私のことは知っていたみたいだ。
自分から名乗らなくてもいいことだけが、有名人になった利点だな。
「ど、どうして!?」
「君が暴走していて、偶然現場に私が通りかかった。制圧した。オーケー?」
「え、あ……」
それで、どうやら少女は自分が暴走していたことを思い出したらしい。
みるみる顔を真っ青にしていって、最終的には――
「も、申し訳ありませんでしたぁ!」
「……土下座はやめてね? 絵面最悪だから」
土下座している少女を、炭酸飲みながら見下ろす私とか。
SNSが炎上してしまう。
いや、案外いつものこと、くらいの扱いで終わりそうな気もするな。
私はネタキャラかなにかか。
「まぁ、軽く経緯を説明するよ」
「は、はい」
顔を上げて、ベンチに腰掛けた少女に事情を説明。
まずは彼女の名前を聞いた。
「えっと……雪野シア……って言います」
シアちゃん、ね。
とにかく、シアちゃんと色々と話しをして事情を確認した。
シアちゃんは今から少し前にヒーローになったばかりの少女だという。
彼女が変身するのは、ダスト・ブレイカーというヒーローらしい。
なんだか物騒な名前だな、と思っているとそれは案の定間違いではないらしく。
「……私は、ダストっていうヴィランを倒してるんです。……力を使いすぎちゃうと、ダストと同じ存在になっちゃうって聞きました」
うーんブラック。
シアちゃん以外の
ダストに関する情報は夢の中で話されたとか、なんとか。
うーん胡散臭い。
「シアちゃんってさ、非正規のヒーローだよね」
「……はい」
「まぁ、成り立てなら仕方ないさ。こうして、取り返しがつく段階で私が知れてよかった」
「ええっと……」
何やら言いたげだが、結局黙りこくるシアちゃん。
非正規っていうのは、国に登録してないヒーローね。
シアちゃんみたいに、唐突にヒーローに覚醒した子どもに多い。
「……あの、ダストはダスト・ブレイカーじゃないと倒せないんです。攻撃が、通らないみたいで」
「それで、周りに相談できなかったのかな」
「…………はい、ごめんなさい」
「怒ってはいないよ。何、良くあることさ」
特定のヒーローしか、攻撃が通らないヴィランというのはそこまで珍しくない。
魔法少女のヴィランには、特にそういうのが多いのだ。
この世界の人々は、ヴィランの侵攻が日常的なものだと思っている。
だから、ヒーローになるような責任感の強い子は、他の人に倒せない敵は自分でなんとかしないといけない……と、抱えてしまう事が多い。
「……私、ヒカルさんみたいなヒーローに憧れてたんです。強くて、皆を守れる、すごいヒーローに」
「自分もそうなりたかった?」
「ヒーローになれたからには、なるんだって意気込んで……から回ってました」
ふむ。
こういう相談を受けることは、初めてじゃない。
どういうわけかトップヒーローの一人に数えられる身。
あんまり私に憧れるべきじゃないと思うんだけど、憧れるヒーローは多い。
だからこそ、そんな子達に語るべきことは、いつも決まっていた。
「シアちゃんは、私のモットーは知ってる?」
「えっと……自分を救えないヒーローは……ってやつですか?」
「そう、ヒーローは世界や人々の幸福を守る存在。でも、それ以前に自分の幸せを守れないヒーローは――」
自分を救えないヒーローは、ヒーロー失格だ。
「……ま、だから私はいつも自堕落な生活を送ってるわけだけど」
「あ、あはは……」
「そこは否定してくれてもいいんじゃないかな」
いいながら、私はさっきから操作していたスマホの画面をシアちゃんに見せる。
「それで、ほら。これ」
「これ……って、なんですか?」
「私が参加してる、ヒーロー支援組織のマッドどものサーバー」
いわゆるディスコ的な奴に、ヒーローを支援するために研究を行うマッドサイエンティスト達の集まりがあるのだ。
中にはマッドじゃないやつもいるけど、基本研究バカであることには変わりない連中である。
そこに、ダストの事を発信した。
「す、すごい勢いで発言が流れていってますね」
「あいつら暇なんだよ、面白い玩具……じゃなくて、研究材料が見つかればすぐ食いついてくる」
サーバーでは、早速喧々諤々の議論が繰り広げられていた。
『ヒカルの浄化技が効くなら、他ヒーローでも工夫すれば浄化系の技で対応できそうだな』
『実際どこまでなら、浄化技に耐えられるのかしら。実験のサンプルがほしいわ』
『ひゃっほう! 新しい敵! 新しい予算だぁ!』
みたいな。
敵が現れて喜ぶなよ。
「とまぁ、こんな具合に相談してみれば、案外すんなり問題は解決するもんなんだよ」
「…………そう、ですね」
結局のところ、子どもっていうのは自分が見えている世界が、世界の全てになりがちだ。
特にヒーローになるような責任感の強い子は、色々と抱えがちである。
そういう抱えがちな子に何ができるかっていうのは。
まぁ、結構難しい問題なわけだが。
「この世界には、それこそ無数のヒーローがいる。ヒーローが当番制で働いても、思ったより全然世界が回るくらいにな?」
「……」
「私はさ、別にそんな立派なヒーローじゃないんだよ。酒やタバコやギャンブルが大好きで、仕事だってできることならしたくない」
「あ、あはは……」
その言葉に、なんだかシアちゃんは苦笑気味に視線を逸らした。
「そうそう、ヒーローらしくないだろ? でもそれでいいんだって。ヒーローだって人間だ。世界の幸せのために自分を犠牲する必要なんてない」
だって、そんな私がトップヒーロー扱いされてるくらい、この世界はゆるいんだから。
日曜の競馬に心血を注ぐ私が、たまにSNSで玩具にされてる私が、ヒーローの鑑とか言われるくらいなんだ。
……いやほんと、なんで私がトップヒーローなんだろうな?
ともかく。
「できないことは、周りに相談。できる人に投げちゃえばいい。これ、ヒーローやってくなら必須の処世術だぞ?」
私はそうやって、話をまとめた。
なんかいい感じの事を言って、面倒をぶん投げているだけなのだが。
「あは、あはは……」
シアちゃんは、笑ってくれた。
そして――
「やっぱり、貴方は私の憧れる、さいっこうのヒーローです!」
なんて、吹っ切れた様子で言ってくれるのだ。
なんとも、先輩冥利に尽きるじゃないか。
やっぱこれでいいかなぁ、と思うときもあるものの。
まぁ、これで上手く言っているならいいか、と私はシアちゃんに用意しておいた缶ジュースを渡すのだった。
昼行燈nところはあるけど、ヒーローする時は本物のヒーローな合法ロリTSお姉さんは好きですか?
私は好きです。