ヒーローとヴィランが馴れ合うタイプの世界で、やさぐれ合法ロリTS魔法少女 作:ゴーローR
絶対スタア帝国は、スタアが大首領になる前は絶対征服帝国を名乗り活動していた。
スタアは、そんな絶対征服帝国大首領の娘として生を受け、後継者として育ったのだ。
そんなスタアの目線から見た絶対征服帝国は、はっきり言って詰んでいた。
理由は単純、資金難である。
昨今、ヴィラン組織の怪人制作は高コスト化が著しい。
ヴィラン一体の制作にかかる費用も、ヴィランが高性能になるにつれて、莫大なものになっていた。
結果、いくら再生が可能と言っても、開発したヴィランを一回の戦闘で失う旧来的な運用方法では金がいくらあっても足りないのだ。
ヒカルならば言うだろう。
――何でヴィラン制作がゲーム開発の制作費高騰みたいになってるんだよ、と。
絶対征服帝国は、そんな典型的旧来ヴィラン組織だ。
今の時代は征服した後のヴィジョンがなければ、部下が着いてこないというのに。
世界を征服するという目標にとらわれて、その後の事を一切考えていないような振る舞い。
そこに加えて高コスト化したヴィランを使い捨てるような運用方法。
資金難に陥るのも当然だ。
しかし、そんな状況にあってもスタアの父親は頑迷である。
これまでも、このやり方でやってこれてきたのだから、とやり方を変えようとしない。
結果として部下に見限られ、数年後には倒産という形で組織を崩壊させかねない程に。
ヒカルならば言うだろう。
――何でいきなり昭和ヴィラン組織の世知辛い運営事情を聞かされないと行けないんだよ、と。
当時、幼いスタアは迷っていた。
スタアは天才だ、幼いながらに絶対征服帝国の問題を把握し、解決する方法もある。
何よりもスタアのカリスマ性ときらかわな容姿があれば、再び絶対征服帝国は栄光を手にすることができるだろう。
だが、それでもスタアはためらっていた。
何故か。
絶対征服帝国こそが、スタアの育った原点だからである。
父は頑迷だ、過去のやり方に囚われ、現状を変える才覚はない。
それでも、スタアは父が大好きだった。
このグローバルな時代に、時代遅れな夢を見る父が、嫌いにはなれなかったのだ。
『いいか、征服とは浪漫なのだ。吾輩のこの小さな手のひらの上に、世界という器が載せられる。そんなありえないような大きな夢を見ることこそが、征服の意義だ』
父は語る。
『夢とは、力だ。夢に向かって邁進することにこそ、我々が生きる価値はある。それが荒唐無稽であればあるほど、その夢には価値がある! そしてその価値を、人は浪漫と呼ぶのだ!』
無茶だ、とスタアの中の冷静な部分は言う。
だからこそ目指してみたいと、スタアの中の夢見がちな部分は言う。
しかし結局、スタアの考える絶対征服帝国を立て直す方法は、そんな夢を諦めて現実に目を向けるようなものばかりだった。
立て直し、栄光を手に入れたとしよう。
それはかつての絶対征服帝国の栄光ではない。
スタアの手によって生み出された、全く別の栄光だ。
果たしてそれが、スタアの目指す浪漫と言えるのか。
言えないだろう、と。
そう考えていた。
真知野ヒカルに出会うまでは。
ヒカルがスタアの前に現れたのは、今から数年ほど前のこと。
ここ最近、絶対征服帝国は無茶なヴィランの出撃を繰り返していた。
目的は資金難を補うための、銀行強盗。
それが問題になって、トップヒーローであるマジェスタ☆ヒカルに絶対征服帝国は目をつけられてしまったのだ。
まさしく年貢の納めどき。
単騎で襲撃してきたヒカルは、瞬く間に組織を制圧。
最終的に、大首領だったスタアの父を初手浄化技で浄化してしまった。
スタアはそれを、物陰から見ていることしかできなかったのだ。
そんなスタアに――
「――どうして、見てるだけだったんだ?」
ヒカルは、ためらうことなく声をかけてきた。
ヴィランとヒーローは、時に馴れ合うものだ。
中にはお前本当にヴィランか? みたいな連中も普通にいる。
少なくとも、今この世界で主流のヴィラン組織は大抵がホワイト企業で、社員の待遇もいい。
だけど絶対征服帝国は違う、旧来のブラックな労働体系と、ヒーローと馴れ合わない組織の風土があった。
だから、スタアがヒーローと直接言葉を交わしたのは、これが初めてだった。
初めてにしては劇物すぎる相手が、スタアにとっての初めてのヒーローだった。
スタアは答える。
勝てないと解っているから。
「……それだけじゃないでしょ」
見透かされていた、だからスタアは続ける。
父の夢の果てを、見届けるべきだと思ったから。
父が目指した世界征服の浪漫は、道半ばで途切れる。
トップヒーローの手によって。
それでいいのだと、スタアは思ったから。
「別に、途切れさせる必要はないと思うけどね」
対するヒカルの返答は、ヒーローにあるまじきものだった。
ヴィラン組織が潰えたのなら、世界が平和になったのなら、それがヒーローの本懐であるはずなのに。
「夢ってのは、生きているなら誰だって平等に見ることを許された権利だ」
ヒーローだろうと、ヴィランだろうと。
生きているなら、誰だって夢は見る。
「私だってそうさ。毎日ぐーたらしながら、好きなことだけして暮らしていたい。ヒーローが見る夢じゃないって思うかも知れないけど、これは私の本気の夢だよ」
ええ……とスタアは思った。
元々、マジェスタ☆ヒカルが変なヒーローだというのは、噂になっていたけれど。
ここまで嘘一つない瞳で、怠惰を夢と言い切るほどとは思わなかったのだ。
「大事なのは、君がお父さんと同じ夢をみているってこと。一つ聞きたいんだけど、君のお父さんの夢って世界征服でいいんだよね?」
頷く。
父の世界を征服したいという欲求は本物だった。
近くでそれを見ていたスタアが保証する。
「じゃあ、その方法は? これは私の直感なんだけど。君のお父さんは
言われてみれば、そうだ。
どうして、父は方法については何も言わなかったのだろう。
「解ってたからじゃないかな。君が君のやり方で、組織をもう一度もり立てることができるって。そしてそのやり方が、自分の夢を否定するんじゃないかって悩んでることも」
――これは、後で浄化された父に聞いた話。
父も、悩んでいたらしい。
才覚があり、自分と同じ夢を見ていながらも、自分よりもよっぽど優れた方法で夢を叶えられるだろう娘に。
自分は、一体どんな言葉をかけられるのか、と。
「同じ夢を見てるなら、目指せばいいじゃん。方法なんてどうでもいい、最終的にたどり着く場所は一緒何だから。夢を目指す理由も一緒何だから」
その言葉に、スタアは衝撃を受けた。
方法なんてどうでもいいから、目指せばいい。
そんな事を言ってくれる人は、ヒカルが初めてだったから。
けれども、疑問は残る。
どうしてヒカルは、ヴィランである自分に道を示してくれるのか。
「それは単純。私は眼の前にいる困った人は、とりあえず助けることにしてるんだ。眼の前にいない人は助けられないから、そのかわりにね」
ああ、それは。
眼の前にいる困った人を放っておけないという、その感情は。
ヒーローだ。
まさしく、紛れもなく。
疑いようもなく。
けれども、同時にヒカルは他の人とは違う部分もある。
本当に、眼の前の困った人しか、ヒカルは助けない。
「自分の小さな手のひらの中に収まる分を助ける。それが私のヒーローなのさ」
ああ、それは――
『いいか、征服とは浪漫なのだ。吾輩のこの小さな手のひらの上に、世界という器が載せられる。そんなありえないような大きな夢を見ることこそが、征服の意義だ』
父は語っていた。
征服の意義を。
その在り方を。
であれば、小さな手のひらの中に収まる
まさしく、父の語った征服の意義を、ヒカルは体現している。
父が、そしてスタアが目指した世界征服を、ヒカルはヒカルの方法で成し遂げているのだ。
遠い、その在り方は――あまりにもスタアにとって遠い、星のような光だった。
その日、スタアは星の光に憧れた。
浄化され、穏やかになった父から組織を受け継ぎ。
一から自分の夢に向かって、スタアは出発した。
少しずつ組織は力を取り戻し、やがて絶対スタア帝国という新たな形を手に入れる。
けれども、スタアの夢は変わらない。
かつて父の語った征服の浪漫。
ヒカルというヒーローが体現した、征服の在り方。
それを目指して――今もスタアは邁進している。
急に始まるヴィラン組織の世知辛い話からの、後半の脳焼きパートは落差がでていると嬉しいです。
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