ヒーローとヴィランが馴れ合うタイプの世界で、やさぐれ合法ロリTS魔法少女 作:ゴーローR
この世界にはレジェンドヒーローと呼ばれる存在がいる。
私みたいなトップヒーローとの違いは、現役を引退しているかどうかだな。
立ち位置的には、それこそ特撮のレジェンド枠と大体同じ。
たまに出てきて主役の活躍を奪わない程度に暴れて、主役を応援して去っていく奴だ。
前にヒーローの全盛期は長くて三年と言ったけど、全盛期を過ぎてもヒーローを辞めるわけではない。
やろうと思えば、一時的にだが全盛期に近い実力を出すことは可能だ。
まぁ、長くは保たないから現役ヒーローのアシストくらいしかできないんだけど。
塩梅としては、むしろそれがいいっていうか……現役の背中を押してくれるレジェンドっていいよね。
未だ現役に居座っている私の言うことじゃないけどさ。
――その日、私はとある大きな病院にやってきていた。
一年に一度の定期検診を受けるためだ。
改造などの手段によってヒーローになったタイプのヒーローは、再改造などで元の身体に戻れても、一年に一度の定期検診を受けることが推奨されている。
私も一応その枠に入っているので、こうして年に一度の検診は受けるようにしているわけだ。
面倒だけど、ほとんどただで健康診断ができるっていうのは、なかなか魅力的なんだよね。
『913番の患者様は、四番診察室までお進みください』
というアナウンスを受けて、診察室に入る。
よくないなぁ……こういう呼出番号は……
「失礼しまーす」
「いらっしゃい、ヒカルくん。元気そうだね」
「そっちこそ元気そうじゃない? ――ケンシくん」
後、他にも知り合いに顔を見せるため、という理由もあるかな。
私の前にいる、肩幅のでかい長身の男が目的の人物だ。
「今どき私の事をそう呼ぶのは、ヒカルくんくらいだよ」
「いいじゃないの、昔の誼ってことでさ。マスクド・ケンシくん?」
マスクド・ケンシ。
仮面の戦士――いわゆるこの世界におけるライダーに相当する「マスクド」の名を冠した戦士の一人で。
中でも特に著名なレジェンドヒーローである。
なにせ、この世界における新世代マスクドの一人目――ようするにクウガみたいなポジションの人だからだ。
年齢は三十代なかば、医大生だった頃にマスクド・ケンシとなり、一年を戦い抜いた後は夢を叶えて医者になった。
私はヒーローとしては、そんなケンシくんの一個先輩になる。
当時、ヒーローとして色々面倒を見たことで、今でも私のほうが十歳年下ながら、呼び方はケンシくんなわけだ。
「先日も大活躍だったじゃないか、レジェンドの名は伊達じゃないね」
「未だに現役の、君のほうがすごいと思うけど」
ケンシくんのすごいところは、未だに身体を鍛えてヒーローとしての強さをある程度保っているところ。
今でも年に一回か二回くらい、ヒーローとして人々や後輩ヒーローを助けている。
ただ、不思議なことに現場で武士ツルギとしての顔を出すことや、喋ることがあんまりない。
中の人のスケジュールを確保できなかったり、そもそも出演してくれなかったりするやつだぁ。
「とにかく、検査の結果をお伝えさせてもらうよ」
「了解。まぁ、聞く前から大体解ってることだけど」
そう言わずに、と軽くパソコンを操作しながらケンシくんは言った。
そうして、出てきた数値は――
「相変わらず、
「アレだけ酒とタバコにおぼれても、変化ないのはすごいよねぇ」
「医者としては、もう少し節制してほしいんだけどな。いくら身体が変化しないとはいえ」
変化なし。
私の場合、これを確かめるために定期検診を受けているところがある。
以前にも話したけど、今の身体はマスコットのコットが勝手に私を女にした結果手に入れたものだ。
そのせいか、女になって以来私の身体はほとんど成長せず、未だにヒーローを続けられてしまっている。
「他の長命種の人たちは、もう少し数値に変化があるんだけど」
「狐姫様とか、私より自堕落な生活を送ってるから、すぐに膨らむよな」
この世界には、千年以上もの間生き続けている長命種が存在する。
主に、ヒーローに力を授ける側の存在として。
名前を上げた狐姫様は、とある神社に祀られている狐の神様だ。
神社に務める巫女さんや、周囲の少女を狐巫女というヒーローに変身させてヴィランと戦わせている。
本人が私以上のダメ神様という点を除けば、普通のヒーロー組織の長といえた。
「いずれ私も、神様側の存在になるのかねぇ」
「まぁ、なっても不思議じゃないけど……」
実際、どうなるのかは不明だ。
この身体が成長しているのか、していないのか。
していないんなら、酒とかタバコとかいいのか、とか。
コットが成長してると言い張ってるし、私も酒とタバコがない生活とか考えられないので、成長していると言い張ろう、とか。
色々と思うところはあるけれど。
なるようにしかならんよな、と私は思っている。
……こいつ全く真剣に考えてねぇな?
「何にせよ、健康だからってそれに胡座をかいて、不摂生な生活は控えること」
「へいへい」
「狐姫さんみたいになりたくないなら、日々の運動は欠かさず、生活習慣も正すことをおすすめするよ」
「……まぁ、運動はしてるし」
ヒーローとして、定期的に戦ってるし。
「初手浄化技の塩試合メーカーに、運動の余地なんてありません」
「なんてことを言うんだ、品行方正な元ヒーロー!」
ええい、昔は純粋すぎるくらい純粋なヒーローオブヒーローみたいな性格だったのに。
そのせいで色々と苦労して、最終的には自分も人間やめかけてたくせに。
「とにかく、数値に変化はなかったけど、日々の生活には気をつけるように。コットくんにも伝えておくから」
「はぁい」
まぁ、何事もないならそれが一番だ。
私の場合、突如として神様になってしまう可能性が常につきまとってるからな。
結果としてそれが大事件を引き起こしても困るから、面倒だけど定期検診は毎年受けないと行けない。
ともかく、ケンシくんに礼を言って診察室を後にした。
それから少しして、会計を待っているとケンシくんが診察室から出てきた。
そんなケンシくんを見た、一人の子どもが――
「あ、剣に刺された人だ!」
と、ケンシくんを指さして言った。
一瞬驚いた様子のケンシくんだったが、すぐに微笑んでから子どもを叱るお母さんに「いいんですよ」と言ってその場を去っていく。
ケンシくんは、レジェンドヒーローだ。
その知名度は高い、がしかし。
幼い子供がケンシくんを知っているかどうかは、また別の話。
子どもは、今活躍しているヒーローの方がレジェンドヒーローより大事だからな。
それでも、ケンシくんは知名度がある方だ。
理由はさっき子どもが言った「剣に刺された人」というワードが関係している。
これが何かというと、実際にケンシくんが剣に刺された動画が、ネット上に転がっているからだ。
しかもメチャクチャ再生されている。
原因は、このときケンシくんを刺したヴィランの言動が面白すぎたから。
なんというかこう、一つのミームになるくらいその動画は有名だ。
下手したらケンシくん本人より、有名かもしれない。
具体的に言うと、アレだアレ。
なぜ適合手術を受けずに変身できるのか、ってやつだな。
……ああいうの、世界が変わっても存在するものなんだなぁ。
ちなみに、私は全身ミーム人間すぎて、必要な時以外は顔を隠していないと即バレする。
でも、黒いマスクをするだけで何故か周囲は私に気付かなくなるのは、なんかこうお約束を感じるな。
目を隠す方じゃなくて普通のマスクだぞ!