脳筋データキャラとかいうやつ   作:洛叉

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初めて小説を書きます。宜しくお願いします


プロローグ
演算結果:最適解パンチ


 

 

 

 

 空を覆う灰色の雲の下、巨大な廃墟ビルが不気味にそびえ立っていた。

 ここは、かつて大手金融企業が所有していたビル。だが、経済崩壊と戦争の余波で企業は撤退し、今では犯罪組織の拠点となっている。

 

 この都市では、政府と企業が治安を維持しているはずだった。だが、現実は違法サイバー技術、人体改造、アンドロイド犯罪者──秩序を破壊する存在が次々と生まれ、「強い者が支配する」 小さな世界になりつつあった。

 

 

 そんな中、このビルに潜む犯罪組織は、政府の監視をかいくぐり、違法兵器やドラッグを製造・取引していた。

 これ以上の野放しは許されない。

 

 ──だから、今夜。

 特殊部隊が、この拠点を潰しに来た。

 

 

 

 

 

 

 廃墟ビルの近く、薄暗い路地裏に政府特別戦術部隊(通称"特戦")の精鋭たちが集結していた。

 全員が黒い強化スーツをまとい、ヘルメット越しに情報を共有している。

 

 

「敵の配置が不明だ。迂闊に突入すれば、蜂の巣になるぞ」

「裏口を狙うにしても、奴らのセキュリティは並じゃない。電子ロックと監視カメラが張り巡らされている」

 

 隊員たちは、突入方法を決めかねていた。

 彼らは一流の兵士であり、都市の治安を守る最前線に立つ者たちだったが、敵の防衛網が予想以上に強固で、慎重にならざるを得なかった。

 

 隊員たちの間に、重い沈黙が落ちる。

 

 

「どうする? このままじゃ手を出せねぇぞ」

「支援部隊を待つか?」

「いや、そんな時間はない。奴らが動き出せば、証拠もろとも消される」

 

 焦燥と緊張が滲む中、不意に後方からパチンと指を鳴らす音が響いた。

 

 

「計算完了」

 

 その声とともに、一人の男が前に出る。

 ヘルメットはかぶらず、黒いスーツの上から無造作にコートを羽織っている。整った顔に眼鏡をかけたその姿から知性的だと感じさせる。

 どこか余裕を感じさせる態度で、手元の小型端末を軽く操作した。

画面に映し出されたのは、意味が理解できない謎の文字列と、ビル全体の構造データに敵の配置予測。

 その情報を各隊員に送信した後、彼は淡々と説明を始める。

 

 

「今回の任務は、反社会的勢力"ウロボロス"のリーダー格の捕縛」

「敵のアジトはビルの最上階。正面、裏口、非常口の三つの出入り口があるが、正面と非常口には自動砲台(セントリーガン)が設置されている。無策での侵入は不可能に近い」

「加えて、内部には赤外線センサー、監視カメラ、電子ロック……最新の防衛システムが張り巡らされている」

「私のデータでは、現時点で作戦の成功率は14.2%だ」

 

 隊員たちが顔を見合わせる。

 

 

「おいおい……それじゃあどうしようもないじゃねぇか」

 

 だが、彼は不敵に笑い、さらに続ける。

 

 

「──裏口の電子ロックはすでにハッキング済み。これより5分間、ある程度のシステムを停止させられる」

「敵の巡回ルートを計算した結果、我々が侵入可能な時間は最大で126秒」

「その間に敵を無力化し、最上階へ進む」

 

 彼は一拍置き、さらに決定的な情報を告げた。

 

 

「地上二階には武装した敵が5人、最上階奥には組織のリーダーが潜伏している」

「こちら側の戦力を見るに……」

「作戦成功率は100.0%……確実に任務が遂行される」

 

 再び隊員たちは一斉に顔を見合わせ、無言のまま一歩引く。

 

 

「100パーセントだと? …そんなの、計算だけの話だろ」

「作戦成功率がどれだけ高くても、実際にやってみなきゃ分からないってこと、理解し(わかっ)てんのか?戦術アナリストさんよぉ……」

「新入りがチョーシ乗るんじゃねぇよ」

 

 隊員の何人かが、腕を組んで不満そうに言った。

 今回の事件から配属されたこの男。Code Name〈シュタイン〉。

 敵の情報を分析し、味方の最適な動きを計算。その上で作戦のリアルタイムサポートをこなす後方支援職"戦術アナリスト"……なのだが、隊員たちは彼の情報はそれしか把握しておらず、正式な経歴は伏せられ、部隊の誰も過去を知らない。だが、政府の上層部が直々に彼を推薦したという話がある。

 

 そんな彼が気に入らない隊員は一定数いる。現に今回、一番の新入りであるにもかかわらず、まるで以前から部隊にいたような態度で振る舞い、100%の成功率と言い切る傲慢さ。

 こういった要素が、得体の知れないエリートに対して彼らは反抗心を抱いているのだ。

 

 しかし、シュタインはその言葉を聞き流し、冷静に端末の画面を見つめていた。顔には一切の動揺もなく、むしろその余裕が不安をさらに煽るような雰囲気を醸し出す。

 

 

「……おい、貴様ら。新入りではあるがコイツは────」

 

 この特戦の隊長を任せている者が低く響く声で釘を刺そうとする。

 だが、その言葉を遮るように、シュタインが肩を優しく触る。

 

 

「構いません、隊長殿」

 

 淡々とした口調。

 挑発に乗るでもなく、怒るでもなく、ただ静かに言い切る。

 まるで、隊員たちの不信感など 計算の範疇 だと言わんばかりに。

 

 

「君らがイラつく理由はデータにあるから理解はしているつもりだ。気軽に100.0%と呼んだつもりは一切ない」

「データと計算が全てであり、それらが正確であれば、結果もそれに従う。故に今回に関しては失敗の余地はない」

「でも、もし計算とかが狂ったらどうすんだ?」

 

 隊員の一人が低い声で言った。

 その質問に、シュタインは眼鏡のブリッジを軽く押し上げ、少しも動じることなく答える。

 

 

「……その時は、私が補うまでだ」

「は?」

「計算に誤差が生じた場合、最も合理的な手段を講じる。敵の想定外の動き、環境要因、予測外の戦闘──すべてを含めて、最善の選択肢を取るだけのことだ」

 

 淡々と告げられるその言葉に、隊員たちはますます困惑する。

 

 

「……結局、それってどうするって話なんだよ」

 

 シュタインは端末を閉じ、口元に笑みを浮かべた。

 

 

「言葉で説明するより、実際に見てもらったほうが早い」

 

「まあ、そうそうありえないだろうが」と、小さく呟くシュタイン。

答えになってそうでなってない答えに不安を拭えないまま、隊員たちは隊長の指示に従い、突入の準備を始める。

 

 そして彼らはまだ知らなかった──シュタインの「補う」という言葉の意味を。

 

 

 

 

 

 

 

 闇に沈む無人の廊下を、黒い影が音もなく駆け抜ける。

 

 突入からすでに32秒が経過。

 裏口からの侵入は成功し、二階の敵5名も短時間で制圧。

 しかし、最上階への道はまだ遠い。

 

 

「あと12秒で最上階に到達する。敵の増援が来る前に突き進め」

 

 隊長が冷静に指示を出し、部隊は計算通りのルートを進み、階段へと向かう。

 

 だが──

 

 

「クソッ!エレベーターシャフト*1が封鎖されてる!」

 

 最上階へ直通する唯一のルートが、分厚い金属扉で完全に封じられていた。恐らく、上の階にいる存在による妨害だろうと推測出来るがこの状況は非常にまずい状況だった。

 

 

「シュタイン、これは聞いてないぞ!?」

「早速計算外なことが起きてるじゃねぇかっ!!!」

「どうする!? このままじゃ時間切れだ!リーダーを逃がすことになるぞッ!?」

 

 隊員たちの焦燥が広がる中、シュタインは焦ることなく端末を操作し、扉のロックを解析する。

 

 

「セキュリティコードが変更されている。ハッキングには3分必要だ」

「3分もかかるなら、ターゲット逃がして終わりだろ!」

「ならば——」

 

 シュタインは静かに眼鏡を押し上げ、扉に手を当てた。

 

 

「力で補う」

 

「「「……は?」」」

 

 

 

 次の瞬間——

 

 

 

轟ッ!!!

 

 

 

 鉄壁のごとき防御扉が、一瞬で粉々に砕け散った。

 あまりの衝撃に、爆風のような風圧が廊下を駆け抜ける。

 隊員たちは目を見開き、唖然と立ち尽くした。

 

 シュタインの拳が、扉を「殴った」だけで、粉々に吹き飛ばしてしまった。

 あれだけデータ、計算を連呼していたインテリ人間の行動とは思えず、隊員の思考回路が停止する。

 

 

「扉の強度、材質、耐久性は既にデータとしてある。最適解の力を加えれば、問題なく破壊可能だった」

 

 淡々と説明するシュタイン。その細身の腕がまるで丸太のように肥大化しており、スーツが今にもはち切れそうになっていた。

 

 

「……いや、説明になってねぇんだけど!!?」

 

「理論の穴は、筋肉で補う」

 

「そんなんでいいのかよ!!?」

 

 

 もはや計算なのか、ただの脳筋なのか、隊員たちは言葉を失う。

 だが、道は開かれた。隊員は急いでエレベーターシャフト内に機材を投入する。

 

 

「突入するぞ」

 

 いつの間にか腕が細身になっていたシュタインを先頭にエレベーターシャフトを登り、たどり着いた最上階。

 目の前には、重厚な扉。ターゲットはこの奥にいる。

 シュタインは短く息を吐き、端末を確認する。

 

 

「内部に動く気配はない。罠と待ち伏せの可能性が高いと言える。データ通りだ」

 

 隊員たちは降ろしていた武器を一斉に構え、突入の準備を整える。

 

 

「なら慎重にいく。リーダーの捕縛が最優先だ」

 

 隊長が指示を飛ばし、シュタインが扉に手をかける。

 ——次の瞬間、重厚な扉が吹き飛び、特戦が一斉に突入した。

 

 しかし、その瞬間——

 

 

 

ズドォォォン!!

 

 

 突如、部屋の奥から凄まじい爆発が巻き起こる。

 

 

「うおおッ!?」「くそっ、やはり罠か!」

 

 隊員たちは咄嗟に遮蔽物に隠れ、爆風と破片を避ける。

視界が白い煙に覆われる中、耳をつんざくような駆動音が響いた。

 

 

ギギギギ…

 

 煙の向こうから、ゆっくりと姿を現す黒光りする巨大なシルエット——

 異様なほどに肥大化したメカニカルアームを持つ男が、鋭い眼光で彼らを睨んでいた。

 

 

「待っていたぞ、政府の犬ども」

 

 部屋の中央、革張りのソファに腰掛けながら、不敵に笑う男。

 全身に施された強化義肢、金属と有機素材が融合した異形の姿。

 

《ウロボロス》のリーダー。Code Name〈クラウヴァルト〉。

 

 

「……チッ、やっぱり違法強化兵士か」

 

 隊員の一人が苦々しく呟く。

 

 違法強化兵士——合法的なサイバー強化の限界を超え、人体に過剰な改造を施された存在。

 脳神経に直接戦闘AIを組み込み、肉体の限界を超えた力を発揮するが、その代償として多くが精神を破壊され、理性を失う。

 

 だが、このクラウヴァルトは違った。彼の目には確かな知性と狡猾さが宿っている。

 

 

「ククク……何人来ようが、俺の"鉄腕"には勝てねえよ」

「この腕一本で戦車を砕き、ビルをぶち抜いてきたんだ……!」

 

 

 グラウヴァルトの腕が低く唸る。

 次の瞬間。

 

 

ズガァァァァン!!!

 

 

 彼の義手が地面を砕きながら振り下ろされる。

 その余波だけで床が崩れ、壁に亀裂が走り、瓦礫が隊員たちを襲った。そんな強烈な衝撃波が、最前列にいたシュタインを除く隊員たちに襲い、大きく吹き飛ばされる。壁に叩きつけられ、そのまま気絶──戦線離脱だ。

 

 

 

「クソッ! 馬鹿みたいなパワーしやがって!」

「距離を取れ、正面からじゃ勝ち目は──」

 

 隊員たちが応戦しようとするが、放たれた無数の弾丸は甲殻合金製の義肢 に弾かれ、甲高い金属音を響かせる。

 クラウヴァルトは微動だにせず、鋭い笑みを浮かべた。

 

 

「ククク……豆鉄砲が効くと思ったか?」

 

 弾丸が跳ね返る度に、破片が床を削り取っていく。

 隊員たちは反撃の糸口を探すが、圧倒的な防御力と火力の前に手も足も出せない。

 

 

「くそっ……! こんな化け物、正面からじゃ無理だ!」

「隊長、どうする!? 一度退くか!?」

「退けるわけねぇだろ……隊長っ!此方も()()()

 

 隊員たちの間に動揺が広がり始めた、その時だった。

 

 

「——どけ」

 

 低く響く声。

 次の瞬間、シュタインが前に出た。

 

 

「……結論が出た」

 

 彼は眼鏡を押し上げ、コートを翻しながら、グラウヴァルトの方へ進む。

 

 

「隊長殿」

 

 淡々とした口調で、シュタインが振り向く。

 隊長は深く息を吐き、目を閉じた。

 そして、数秒の沈黙の後、眉間を揉みながら言う。

 

 

「……好きにしろ」

 

「了解」

 

 短く返し、シュタインは歩みを進める。

 

 

「お? なんだ、細っちい奴が単身で来るとは……」

 

 グラウヴァルトは嘲笑するように腕を構える。

 だが、シュタインの眼は冷静そのものだった。

 

 

「筋力増強約320%、動作加速は1.7倍、反応速度は……遅いな」

「……は?」

「つまり——お前の動きは、全て見切れる」

 

 グラウヴァルトの顔が歪む。明らかにこちらを軽蔑したかのような目。そして、正確な分析に彼に僅かな焦りと怒りが込み上げる。

 

 

 

「テメェッ……!!死にたいんなら先に言えよなぁァァァ!!!!!」

 

 咆哮とともに、彼の鉄腕がシュタインを襲う。

 轟音とともに振り下ろされた一撃。

 

 ——が、当たらない。

 

 

「なっ……!?」

 

 シュタインの身体が、紙一重でかわす。

 だが、それだけではない。

再 度シュタインの腕の筋肉が隆起し、細身だったはずの腕が遂にスーツを内側から貫通した。

 

 クラウヴァルトの目がかすかに見開かれる。

 

 何かまずい。本能でそう理解したのか、はたまた脳に埋められているAIの危険信号なのか分からないが、咄嗟にシュタインの首目掛けて、手刀を振り下ろす。

 刃の軌跡が空間を裂き、鋭い衝撃波を伴って襲いかかる。

 

 しかし───

 

 

「やはり、遅いな」

 

 シュタインは軽く身を沈め、一歩踏み込む。その動きはまるで計算され尽くしたかのように無駄がなく、義手が通過する直前にすれ違う形で避けていた。

 

 

「カウンターだ」

 

 強靭な筋肉を誇示するかのように、彼の拳が弾丸のような速度で突き出される。狙いは、クラウヴァルトの胴体。

 研ぎ澄まされた計算の末に導き出された、一撃必殺の最適解パンチだった。

 

 

破ッ!!!!!

 

 

 鉄の塊が吹き飛ばされ、壁を突き破る。

 それはまるで、高速列車にでも轢かれたかのような衝撃だった。

 

 隊員たちの視線が、ただただ唖然とシュタインへと向く。

 床にはシュタインが踏み込んだ跡が深々と刻まれ、拳を振るった腕がわずかに煙を上げていた。

 

 

「突入時間から110秒経過。ターゲット、行動不能」

 

 彼は淡々と告げる。隊員たちは、粉塵の舞う瓦礫の向こうに沈黙したままのグラウヴァルトを見つめていた。

 

 

「……マジかよ」

 

 誰かが、思わず呟く。

 

 無類の戦闘力を誇るはずの強化兵士が、たった一撃で吹き飛ばされたのだ。

 シュタインの拳の威力を再度理解した瞬間、場の空気が一変する。

 

 

「……おい、本当に動けねぇのか?」

 

 慎重に近づこうとした隊員の一人が、瓦礫の向こうでわずかに動く影を見た。

 瓦礫の中から、鋭い衝撃波が放たれる。

 

 

「伏せろッ!!」

 

 隊長の怒声と同時に、コンクリートの天井が引き裂かれ、吹き飛んだ破片が周囲に降り注ぐ。

 瓦礫を押しのけながら、グラウヴァルトがゆっくりと起き上がる。

 

 しかし、異変があった。

 

 ——彼の義手(アーム)が、肩の付け根から消失していた。

 

 否、シュタインの拳によって粉砕されていたのだ。

 

 残ったのはちぎれた配線と、無惨に壊れた接続部だけ。

 グラウヴァルトの顔が困惑と焦燥に歪む。

 

 

「ハッ……ふざけんなよ……不意打ちの攻撃に…合わせやがって………」

 

 血が混じった唾を吐き、フラつく身体を支えながら睨みつける。

 

 

「てめぇ……どんだけの筋力してやがる……!?」

 

 シュタインは眼鏡を押し上げ、冷静に分析を続ける。

 

 

「…………私のデータには、貴様の持久力(しぶとさ)が存在しなかった。そこだけが唯一のミスだ」

「しかし」

「その程度で私の計算は狂わない」

「テメェ……っ!!」

 

 グラウヴァルトが吠え、最後の力を振り絞って突進する。

 だが、シュタインは一歩も動かない。

 

 

「終わりだ」

 

 拳が閃く。

 

 一瞬の後——

 

 

ドガァッ!!!!!!!!

 

 巨大な衝撃音が響き渡る。

 

 今度こそ、グラウヴァルトの身体は壁を突き破り、暗闇の向こうへと消えた。

 後には、崩れ落ちたコンクリートと、シュタインの拳が刻んだ亀裂だけが残る。

 

 

「突入開始から121秒。ターゲット、完全に戦闘不能」

 

 シュタインは、拳を軽く振るいながら告げ、隊長はそんなシュタインの顔を見つめた。

 その表情には、どこか呆れと、安堵が入り混じったような複雑な感情が浮かんでいた。

 

 

「……お前、()()()()()頭おかしいな」

「後方支援役が誰より先に前線に立つ……本来なら異常とも言える」

 

 シュタインは微動だにせず、視線を外さずに答える。

 

 

「この職場でもやる事は変わりませんよ。ありとあらゆるデータと計算によって生み出された結論」

「その結論の要素に私の筋肉(パワー)による解決策が含まれていた…それだけです」

 

 隊長は短く息を吐き、肩をすくめる。

 

 

「まぁいい。次は、もう少しだけ慎重に頼むぞ。お前に万が一のことがあったら、この街"デウス"の治安悪化が更に酷くなる」

 

 その言葉にシュタインは、ほんの少しだけ口角を上げて頷いた。

 

 

「こちら政府特別戦術部隊。ターゲット制圧完了。支援部隊の到着を待つ」

 

 その後、部隊は戦闘が終了したことを確認し、素早く後処理に取り掛かる。

 今回の一件は特戦内でのシュタインの評価が大きく変わり、彼に謝罪しようと多くの隊員が彼を探したが、シュタインは現場から少し離れた場所で目を閉じ、次の計算を始めていた。

 次の一手のデータを心の中で組み立てながら。

 

 

 

*1
エレベーターの中を上下に走行する縦状の空間

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