脳筋データキャラとかいうやつ   作:洛叉

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演算結果:最適解コンビネーション

 

 

「……なんか、静かすぎるッスね」

 

 スパロウが警戒を強めながら、廊下の先を睨む。

 A班は銀行の奥深く、中央制御室へと続く廊下を慎重に進んでいた。先ほどのアンドロイドを撃破してから、敵の反応は一切なし。だが、それが逆に不気味だった。

 

 

「他の班も大丈夫ッスかね?まあ、隊長とかいるし問題はないと思うッスけど……」

「油断大敵だ。自分の心配だけしていろ」

「アイタァァー!?で、デコピンなのに…撃たれた気分ッス………」

「大袈裟だ…ここは制御室の眼前。敵が待ち伏せしている可能性が高い」

 

 シュタインはタブレットを操作し、室内のデータを分析する。

 

 

「制御室の扉の先に熱源反応はなし。だが——」

 

 彼が言葉を切った瞬間、警報が鳴り響いた。

 

 

「敵性ユニット、接近中」

「迎撃を開始する」

 

 突如、廊下の奥のシャッターが開くと、そこから二体のアンドロイドが現れた。

 

 一体は鍛え抜かれた格闘家のようなフォームで拳を握る。黒い装甲に包まれたその体は、無駄のない流線形のデザイン。膝を柔らかく曲げ、鋭い構えをとる。

 

 もう一体は長槍を携え、ゆっくりと前へ進み出た。槍の刃先がわずかに光を反射し、鋭く輝く。

 スパロウが息を呑んだ。

 

 

「近接型と中距離支援型……厄介な組み合わせッスね」

 

 シュタインは即座に分析し、結論を下す。

 

 

「格闘型は前衛で攻撃を仕掛け、槍型が後方から精密な攻撃を加えるパターンだ。単体なら対処可能だが、連携されると厄介だな」

 

 隊員たちが銃を構えるが——

 

 

「射撃、無効化」

 

 次の瞬間、格闘型アンドロイドの肩部から展開された小型装置が発光。

 

「な、まさか!?」

「EMPシールド……!?」

 

 スパロウが叫ぶ。

 発動した瞬間、隊員たちの銃が一時的に作動不能に陥った。

 

 

「成程、ここの警備員が発砲出来なかったのは貴様のせいか。どおりで制圧が速いわけだ」

「冷静すぎるッスよ!」

「全てデータにあるからな」

 

 眼鏡のブリッジを軽く押し上げながら、平然と答えるシュタイン。拳を握りしめながら、ゆっくりとアンドロイドたちに踏みよる。

 格闘型アンドロイドもまた一歩踏み込んだ瞬間、槍型も静かに槍を構えた。

 

 

「戦闘開始」

 

 シュタインが低く呟いた途端、格闘型が爆発的な速度で前に出た。

 

 

 

ドンッ!!

 

 

 黒い鉄拳が隊員の一人を吹き飛ばしそうになる——が、それを強化シールドがそれを受け止める。

 

 

「くそっ、馬鹿みたいなパワーだな!」

「槍が来るぞ!」

 

 別の隊員が叫んだ次の瞬間、槍型アンドロイドが滑るような動きで間合いを詰め、長槍の突きを繰り出す。

 隊員のシールドが直撃を受け、火花を散らす。

 

 

「強化シールドでも持ちこたえるのがやっとか……!」

 

 シュタインは素早く敵の動きを分析しながら、拳を握る。

 

 

「格闘型の動きが速い上に、槍型がフォローに入る。お互いの隙を完璧に補い合っている……」

 

 脳内で分析をしつつ、シュタインが拳を振るおうとした瞬間、格闘型が先んじて踏み込み、鋭い蹴りを放った。

 腕でガードするが、衝撃は強烈だった。

 

 

「……このままでは埒が明かん」

 

 格闘型を仕留めようとすれば、槍型がそれを阻む。槍型を狙えば、格闘型が猛攻を仕掛けてくる。

 そして此方の現状は、隊員たちの銃も未だ使用不能。武器としてあるのは近接の警棒、強化シールド。アンドロイド相手には心もとない。

 

 

「この連携、突破するには……」

 

 シュタインが考えを巡らせたその時——

 

 

「あたしがやるッス!」

 

 スパロウが腰から一丁の銃を抜いた。

 他の隊員たちの銃はEMPの影響で動かない。だが——

 

 

「それは……」

「実銃ッス!」

 

 スパロウが握るのは、電子制御のない旧式のリボルバー。EMPの影響を受けることなく、確実に弾を発射できる。

 

 

「成程、電磁干渉の影響を受けない唯一の武器か」

 

 シュタインがスパロウを見やる。

 スパロウはリボルバーを構え、槍型アンドロイドに向けて発砲した。

 

 

 

バンッ!

 

 

 

「回避不可能ッスよ!」

 

 槍型が僅かに動きを止めた。スパロウの射撃が片足を正確に射抜いていたのだ。

 

 

「いやー、初任給で買ったモンなんすけど、やっぱいいッスねぇー」

 

 スパロウはリボルバーをくるりと回しながら、不敵に笑った。

 

 

「槍持ちはあたしが引きつけるッス!その間にそっちはそっちでやっちゃってくださいッス!」

 

 そう言い放つと、彼女は軽快なステップで後方へと下がりつつ、再び槍型アンドロイドに狙いを定める。

 

 

 

バンッ!バンッ!

 

 

 

 立て続けに二発の銃声。

 槍型アンドロイドは機械的な反応速度で回避を試みたが、片足を撃たれた影響で動きが鈍っている。胴体に弾が命中し、装甲が弾け飛んだ。

 

 

「オイオイ、どうしたッスか? さっきまでの余裕はどこ行ったんス?」

 

 スパロウは軽口を叩きながら、敵の間合いを絶妙にコントロールする。隊員たちはそんな彼女を見て、強化シールドを握りしめる力を強めた。

 

 

「EMPが切れるまでは、スパロウの援護に回るぞッ!」

「シュタインッ!アンタはその格闘型を…頼むッ!!!」

 

 何名かの隊員たちは迫る無数の突きを止めながら、後ろにいるシュタインへ声を飛ばす。彼の実力を疑う者は特戦にはいない。たった二回の任務の中で見せられた頭脳と圧倒的な力が、何よりの証拠だからだ。

 

 

「助かる」

 

 シュタインは短くそう言い、拳を握り直した。

 槍型アンドロイドを支援できない状態になったことで、格闘型アンドロイドは完全に孤立した形となる。

 

 

「データは揃った」

「計算結果、殴り勝つ」

 

 シュタインは眼鏡を押し上げると、一直線に格闘型アンドロイドへと突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

────バンッ!バンッ!

 

 

 

 スパロウのリボルバーが火を噴く。

 槍型アンドロイドは高速で身を翻し、弾丸をギリギリで回避。だが、完全には避けきれず、装甲の一部が削れ、金属片が床に落ちた。

 

 

「クッ……動きが鈍ったとはいえ、まだまだしぶといッスね……!」

 

 スパロウは舌打ちしながら、弾倉の回転を確認する。残弾はあと3発。慎重に使わなければならない。

 槍型アンドロイドはスパロウを静かに見据え、機械音声で告げる。

 

 

「分析完了。目標、銃火器所持。回避優先。戦闘パターンを変更」

 

 次の瞬間、アンドロイドが地を蹴った。

 スパロウの目が鋭くなる。

 

 

「そんなもん分析しなくても分かるッすよね!?」

 

 アンドロイドの槍が鋭く突き込まれる。スパロウは横に転がり、紙一重で回避。

 だが、それを見越していたかのように、槍が変則的に弧を描いて追撃してくる。

 スパロウは咄嗟に後方へ跳び、隊員の背後へと滑り込む。

 

 

「頼むッス!」

 

 次の瞬間——

 

 

 

ガキィィィンッ!!

 

 

 

 強化シールドが展開され、アンドロイドの槍を弾き返す。

 隊員たちはシールドを構えながら、スパロウの援護に回る。

 

「助かったッス!」

「スパロウ、何とか支えるが……持つかどうか……!」

「この槍、シールド越しでも衝撃がやべぇ……!」

 

 槍型アンドロイドはわずかに動きを止め、冷静にスキャンを行う。

 

 

「耐久計算開始。強化シールド、持続時間……残り僅か」

 

 まるでそれを見越したかのように、アンドロイドが槍を構え直す。

 

 

「突撃モード、移行」

 

 ——瞬間、空気が一変した。

 アンドロイドの背部から補助ブースターが展開され、一気に加速する。

 

 

「ッ!?こっちに来るッス!!!」

 

 

 

ズガァァァァァン!!!

 

 

 槍の一撃が強化シールドを叩きつけ、青白い光が激しく弾けた。

 

 

パリンッ……!

 

 

 一枚目のシールドが砕け散る。そのまま槍が隊員の強化スーツごと貫いた。貫かれた隊員は何か口から血を吐きながら喋った後に動かなくなった。

 

 隊員が後退しながら、次のシールドを展開する。

 

 

「くそっ……! これが続けば、シールドがもたねえぞ!」

「大丈夫ッス……あたしが…あたしが決めるッス!!」

 

 スパロウはリボルバーを構え、狙いを定める。

 だが——

 

 

 

─────ドンッ!!

 

 

 

 

 アンドロイドが高速で接近し、隊員のシールドを破壊。

 

 

「マズい!」

 

 さらに、もう一撃。

 

 

 

───パリンッ

 

 

 

 二枚目のシールドも砕け散る。

 スパロウは焦るが、それでも冷静に後退しながら射撃のチャンスを伺う。

 

 

「落ち着くッス……動きは読めてる……あと少し……」

 

 だが——

 槍型アンドロイドがここにきて急制動をかけ、唐突に踏み込んできた。

 

 

「——ッ!? しまっ……!」

 

 回避が間に合わない。

 

 

 

ズシャァァァ!!

 

 

 

 床を蹴ろうとした瞬間、スパロウの足元が滑る。

 

 

「ッッ!?!?」

 

 体勢を崩し、そのまま転倒。

 視界が揺れる。

 

 ——そして、目の前に迫る鋭い槍。

 槍型アンドロイドが冷徹に狙いを定める。

 

 

「捕捉完了。排除する」

 

 鋭い槍が一直線にスパロウの首元へ突き込まれる——!!

 

 

 

 

 

 

 

 スパロウが槍型アンドロイドと激戦を繰り広げる一方で、

 シュタインは目の前の格闘型アンドロイドと拳を交えていた。

 

 

 

バギィッ!!!

 

 

 

 シュタインの拳とアンドロイドの鉄拳が激しくぶつかり合う。

 両者の衝撃で床が震え、周囲に亀裂が走る。

 

 アンドロイドは無駄のない動きでシュタインの懐に潜り込むと、肘打ちを繰り出した。

 シュタインは紙一重でかわし、逆にアンドロイドの顔面へカウンター気味の右フックを放つ。

 

 

 ——が、アンドロイドもまた反応速度を活かし、腕でガード。

 同時に、鋭い膝蹴りをシュタインの腹部へと突き上げる。

 

 

 

ドゴォォ!!

 

 

 

 衝撃が全身を駆け抜ける。

 だが、シュタインはその場で踏みとどまり、眼鏡を押し上げながら笑った。

 

 

「それだけじゃ俺を倒せん」

 

 その瞬間、アンドロイドが異様な動きを見せた。

 シュタインの動きに完璧に同期するかのように、先読みした攻撃を仕掛けてくる。

 拳が疾風のように繰り出される。

 シュタインはそれを一つ一つ捌きながら、頭の中で計算を巡らせた。

 

 

(——こいつはただの格闘型じゃない)

(リアルタイムで戦闘データを解析し、最適な行動を導き出している)

(もしこのまま戦えば、完全にパターンを読まれ、徐々に押し切られる確率…86.7%)

 

 

 シュタインは目を鋭くし、敵の動きを分析しながら冷静に言葉を呟いた。

 

 

「貴様の拳は確かに速い……が、少しばかり整いすぎているな」

 

 アンドロイドが拳を振るう。

 その軌道を見極めたシュタインは、わざとガードを甘くし——

 

 

「ここだ」

 

 

 

ドンッ!!!!

 

 

 

 左のボディブローをまともに喰らう。

 シュタインの援護に入ろうとしていた隊員たちが息を呑んだ。

 

 

「「「「シュタインッ!!?」」」」

 

——しかし。

 

 その瞬間、シュタインの手が格闘型の肩部をがっちりと掴んでいた。

 アンドロイドの拳が肉を打ち砕く感触を送っている中、シュタインの表情は微動だにしない。

 むしろ、笑みすら浮かべていた。

 

 

「——データは完璧だ」

 

 次の瞬間、シュタインは全身の筋力を爆発的に解放し、渾身の力でアンドロイドの肩部を握り潰した。

 

 

 

メリメリメリィッ!!!バチバチバチッ!!

 

 

 EMPを発生させる小型装置がショートし、火花を散らす。

 アンドロイドが硬直する。

 

 

「……これで、貴様のEMPは機能しない」

 

 続けざまにシュタインはもう片方の肩を掴み、同じように破壊した。

 

 

 

ガシャァァン……

 

 

 

 アンドロイドの両肩が完全に破壊され、腕が根元から吹き飛ぶ。

 もはやまともな打撃攻撃は不可能だ。

 

 だが、アンドロイドはなおもシュタインを排除するため、最後の手段を選んだ。

 背部の補助ブースターを最大稼働させ、一気に加速。

 そして、残った両脚を武器に、シュタインへ渾身の蹴りを叩き込む。

 

 超高速の一撃がシュタインへと迫る。

 だが、彼は微塵も動じなかった。

 否、動じる必要がなかった。

 

 

ババババババババババッ!!!!

 

 

 

 突如、無数の銃弾が格闘型の機体に撃ち込まれた。

 弾丸が金属装甲を砕き、火花が飛び散る。

 機体の表面がボコボコに変形し、装甲内部の機構が露出していく。

 EMPが解除されたことで、隊員たちが一斉に射撃を開始したのだ。

 

 

「シュタインの周り、援護ッ!!!」

「撃て撃て撃てェッ!!!」

 

——狙いは、格闘型の「加速」による致命打を防ぐこと。

 

 バランスを崩した格闘型アンドロイドは、その場で大きく軌道を狂わせ、勢いを失う。

 シュタインを貫くはずだった蹴りは、もはやただの”鈍い踏み込み”に成り下がった。

 

 

 その間には既にシュタインはわずかに姿勢を低くし、拳を引いた。

 拳を握りしめ、全身の筋肉を最大限に駆動させる。

 

 

「ここが最適解だ」

 

 シュタインの拳は、無防備になった格闘型のコア部位へ一直線に打ち込まれた。

 

 

 

ドゴォォォォォォォンッ!!!

 

 

 

 直撃。

 

 

「——システム……エラ……ー……」

 

 格闘型アンドロイドの全身が痙攣し、コア内部で小規模な爆発が起こる。

 そして、完全に動きを停止し、その場に崩れ落ちた。

 シュタインは拳を振り抜いたまま、眼鏡を押し上げる。

 

 

「……撃破完了」

 

 隊員たちが歓声を上げる中、シュタインは冷静に残骸となった格闘型を見つめる。

 

 

(おかしい)

(EMPが解除になった今、隊員たちが援護に入ってくるのは分かっていた筈だ)

(高度な学習能力を持っている貴様がこんな愚策とも言えるやり方……まるで焦っていた?)

(最もリスクの高い特攻を選んだ理由……)

 

 シュタインは隊員たちの声掛けに応じることなく、考えにふけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁっ!!」

 

 幼い少女が派手に転び、砂埃を巻き上げた。

 膝を擦りむき、真っ赤な血が滲む。

 だが、少女は泣かなかった。

 代わりに、悔しそうに口を尖らせる。

 

 

「お前、また転んだのか?」

 

 近くで遊んでいた少年が、呆れたように手を差し出した。

 

 

「いいんだよ、これくらい……っ」

 

 少女はその手を取らず、自分で立ち上がった。

 擦りむいた膝を見つめ、ぎゅっと拳を握る。

 

 

「正義の味方は、こんなの気にしないの!」

 

 少年はため息をついた。

 

 

「正義の味方ぁ?…そもそも転ばなきゃいい話だろ?」

「転んでも立ち上がるのがカッコいいんでしょ!」

「どこで覚えたんだよ、そんなの……」

 

 少女は胸を張った。

 

 

「テレビで見た! だから、あたしも強くなる!」

「意味わかんねぇ……ちゃんとしていたら転ばねーんだよ」

 

 ——幼い頃から、その少女はドジをする子どもだった。

 どれだけ注意しても転ぶし、どれだけ気をつけても失敗する。どれだけ言われても油断する。

 

 

「……将来の夢は?」

「警察官! ……じゃなくて、特戦!」

「なんで?」

「だって、銃が撃てるから!」

 

 その時は、ただの憧れだった。その歳にしてはかなり変わった憧れではあったが……

 けれど、彼女は本当に夢を叶えた。

 

 それなのに——

 

 

(死ぬのって、こんなにあっけないんだなぁ……)

 

 スパロウの目の前で、槍型アンドロイドが無音で立っていた。

 彼女の首筋へ、鋭い槍が振り下ろされようとしている。

 

 

(あー……ここまで、か)

 

 頭が妙に冷えていた。

 死を受け入れるのは、思っていたよりも簡単だった。

 それでも、ほんの少しだけ、悔しいと思った。

 

——その時だった。

 

 

「…!?ERROR…」

「……ERROR…ERROR……ERROR……」

 

 スパロウの目の前で、槍型アンドロイドが無音で立ち尽くしていた。

 鋭い槍が振り下ろされるはずだった。

 だが、その動きが止まっていた。

 槍を握る両手がわずかに震えている。

 その異様な様子に、スパロウは一瞬だけ違和感を覚えた。

 槍型アンドロイドは、何かを呟いている。

 低く、女性のようで機械的な声。

 それが何を意味するのか、スパロウにはわからなかった。

 

 

「……!!」

 

 そして、彼女は別の”異変”に気づいた。

 

(——EMPの効果が消えた!?)

 

 シュタインが格闘型アンドロイドを破壊したことで、戦場全体に影響が出ていた。

 電子戦のジャミングが解除され、装備がフル機能を取り戻す。

 

 

(シュタインさんがやってくれたんだ……ホントにあの人は………)

 

 スパロウは腰のホルスターから、リボルバーとサブマシンガンを同時に抜き放った。

 

 それと同タイミングで槍型アンドロイドのエラー音が止んだ。

 それは、異常動作の修正が完了した証。

 つまり——

 

 

「——動く!」

 

 槍型アンドロイドの赤いセンサーが鋭く光り、振り下ろされるはずだった槍が軌道を変えて突きを放つ。

 だが、スパロウの指はすでに引き金にかかっていた。

 

 

 

バンッ!

 

 

 

 

 まずは右腕。

 リボルバーの大口径弾が肘の関節を吹き飛ばし、槍の動きが鈍る。

次いで左腕。

 続けざまに放った銃弾が装甲の継ぎ目を撃ち抜き、腕全体が制御を失って垂れ下がる。

——これで槍はもう振るえない。

 

 

 

 

 しかし、槍型アンドロイドは戦闘をやめない。

 片足でバランスを取り、スパロウを蹴り飛ばそうとする。

 

 

 

 

 

 

バババババッ!!!!

 

 

 

 彼女のサブマシンガンが、残された片脚を正確に撃ち抜いた。

 関節部が弾け、動力ケーブルがちぎれ、槍型アンドロイドは崩れ落ちる。

 

 

「……あと一発ッス」

 

 スパロウはリボルバーをゆっくりと持ち直した。

 倒れた槍型アンドロイドの中央部、装甲の隙間から内部のコアが露出している。

 

 彼女は狙いを定めた。

 

——最初の一撃で動きを封じる。

——最後の一撃で息の根を止める。

 

 それが、スパロウの”仕事”だ。

 

 

 

 

 

 

パンッ

 

 

 

 

 

 

 コアを正確に撃ち抜いた瞬間、槍型アンドロイドの全システムが停止した。

 

 

「撃破確認……任務完了ッス」

 

 スパロウは煙を上げるリボルバーをクルリと回し、ホルスターに収めた。

 そして、倒れた機体を見下ろしながら、ふっと息を吐く。

 

 

 スパロウは口元を歪めながら、ゆっくりと足元の残骸を見下ろした。

 

 

「……アンタ、なんで止まったんスかね」

 

 脳裏に浮かぶのは、あの異常行動(エラー)

 その偶然がなければ、自分は今ごろ死んでいたのだから。

 

 

(流石に今回は死んだと思った……結局、運だけで何とかしちゃったな)

(もう何でもかんでも力で解決するあの人のこと言えないよ)

(まあ、運も実力のうちって言うし……いいか)

(それにしても)

(…正義の味方、か)

 

 

「スパロウっ!大丈夫か!?」

「おめぇ、よくあそこで撃てたな流石だ!」

「早くシュタインと合流しねぇとな…まあ、あっちはもう終わってそうだけど……」

 

 すると、ボロボロの隊員たちが、何とか身体を引きずりながらもスパロウに駆け寄る。彼らの盾がなかったら、きっとスパロウは3回は死んでいただろう。

 

 

「……そうッスね!行きましょうっ!」

 

 結局、夢を見た少女は夢を叶えたが、根本的な部分は変わらなかった。

 油断はするし、ミスも多い。だが、何度も転んだとしても。

 それでも——

 

 

何度も立ち上がるのがカッコいいんスよね?

 

幼い頃の自分に、そう言い聞かせるように呟いた。

 

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