※また、今回のみ、書籍版第2巻の要素も僅かに含んでおります。未読の方はご注意ください。
「ホフマン少佐」
式典が無事に終わり、人事部のオフィスに戻ってきたホフマンに、コボルト族の大尉が不安を滲ませた声色で声をかけてきた。コボルト族特有の大きな耳が、彼にしては珍しく垂れ下がってしまっている。
「どうした?」
「ずっと気になってたことがあるんですけど……」
そう言って大尉は使わずに済んだ予備の士官任命状を指差す。ふさふさの毛で覆われた指先は、部隊名の欄に書かれた『仮称ダークエルフ旅団』の文字列を指していた。
「ここに”仮称“ってついてるじゃないですか。これって、もし正式名称が決まったら、それまでに交付した任命状は全部書き直しになるってことなんですかね……?」
返答に詰まったホフマンは、軍服のポケットから煙草を取り出すと、何も言わずに火をつけた。
* * *
結論から言えば、コボルト族の大尉の懸念は一部現実となってしまったのだが、それはほぼ最小限で済んだ。三月いっぱいを名簿のチェックとそれに付随する作業で忙殺された彼らは、もはや更なる士官任命状の作成にまで手を回すことはできず、結果的には旅団の正式名称が決まった後で、全員分の士官任命状をまとめて交付することになったからだ。
四月に入り、怒涛のような名簿関連作業が一段落したホフマンたちは、ようやく士官任命状の作業に本格的に取りかかれるようになった。
「ホフマン少佐。騎兵第二連隊の分が終わりました。確認をお願いします」
「ありがとう。いつもながら仕事が早いな」
コボルト族の大尉が手渡してきた書類の束を受け取りながら、ホフマンは礼を言う。
新しい任命状に書かれていた部隊名は、『仮称ダークエルフ旅団』ではなく、『アンファングリア旅団』となっていた。首都演習場で師団対抗演習が行われた直後に旅団の正式名称が決定したのを受けて、旅団の編成作業にかかわる部署向けに、陸軍大将の名前で旅団の名称変更を知らせる通達が送られてきていた。
ホフマンは、今回発行する約二五〇枚の士官任命状に書かれた、氏名、階級、役職名の三点を、人事部内で作成した旅団の名簿と付き合わせて確認していく必要があった。この枚数は例年のこの時期に発行する任命状の数を確実に超えていたのだが、あの名簿作成作業を乗り越えたホフマンにとっては、もはやなんてことはない作業となっていた。
「しかし、今更こういうことを言うのもなんだが、これだけ女性名が並ぶと壮観だな」
ホフマンはそう言いながら、士官の名前が並んだ名簿をめくる。医療系の部隊などではない、れっきとした戦闘部隊であるにも関わらず、女性の名前しか並んでいない名簿というのは、この仕事を始める前には見たことがなかった。
ちなみに、性別が関係するのは氏名に限った話ではない。名簿や士官任命状に書かれた役職名は、以下に挙げた例のように、その全てが女性形で記載されていた。
(注:低地オルク語の名詞には性別の概念があり、男性、中性、女性の三つに分かれている。なので、役職名も男性形と女性形を区別する必要があり、役職者が女性の場合、役職名には女性形を表す接尾辞 “-in“ が付く。例えば「指揮官」であれば、男性形なら
なので、仮に氏名から性別がわからなかったとしても、低地オルク語を解する者なら誰でも、この役職名を見れば全員が女性であることを読み取ることができたのだ。
「本当ですね。『女性だけで作られた旅団』……。改めて見ると、結構インパクトありますね」
オーク族の部下がそんなことを漏らす。彼らの反応は無理もないものだった。なにせ、オルクセン陸軍の士官や兵士は、大昔からずっと男性が務めるものだったからだ。最近になって、少しずつ女性兵士や女性士官の数も増えて来てはいたが、それでも旅団規模の部隊が丸ごと女性のみと言う例は全く前例がなかった。
アンファングリア旅団の編成は、ダークエルフ族に限らず、オルクセン陸軍にとっても新たな挑戦だったのだ。
「やあフェリックス。どうだい調子は」
そんな言葉と共に、また長身の同期がホフマンのもとを尋ねてきた。いつものような世間話に花を咲かせていると、話題は自然と旅団のことになった。
「そうそう。例の仮称ダークエルフ旅団、やっと正式名称が決まったんだな? なんでも、発案者は
ホフマンは同期の顔をまじまじと見た。こいつはいったいどこから情報を聞きつけてくるのやら。
「相変わらず何でも知ってるな。名付け親が我が王だったなんて初めて聞いたぞ」
「おいおい、俺だって人事部の端くれだぞ。旅団のダークエルフの
肝心な情報を思い出せずに頭を掻く同期を尻目に、ホフマンはデスクの引き出しから通達の紙を引っ張り出した。
「これだな。”
そう言って、その通達を同期の少佐に手渡す。のっぽの少佐は、それをまじまじと見つめていた。
「“
同期の言葉を聞いて、ホフマンはカラカラと笑った。そして、これは俺もダークエルフのお嬢さんから教えてもらったんだが、と前置きをして、話し始めた。
「
そこでホフマンは言葉を切り、考え込む様子を見せた。同期が通知書から顔を上げて尋ねる。
「ただ、なんだ?」
「いや、
* * *
四月も半ばに差し掛かったころ。アンファングリア旅団の士官全員を任命するために、再び式典が執り行われることになった。今回の式典は三月初めのものとは違い、旅団の士官約二五〇名を含む三〇〇名以上の士官を一挙に任命する大規模なものだったので、一月前にはガラガラだった陸軍省の講堂はぎゅうぎゅう詰めの様相を呈していた。
士官任命状の交付というのは、新規に士官を任命するときだけではなく、士官の昇進や転属の機会にも行われるものだった。なので、今回の任命式には、この春に昇進が決まったオーク族、ドワーフ族、コボルト族の士官達も出席していた。
例年なら彼らが任命式の主役だったはずなのだが、今年はダークエルフ族の新任の士官達が出席者の大半を占めていたため、彼らは講堂の隅の方に追いやられてしまっていた。若々しい乙女たちの集団を横目に、彼らが肩身の狭そうな表情をしているのを見るのは、なんとも可笑しかった。
講堂の扉が開き、人事部長、陸軍大臣、そして国王が入場すると、講堂が水を打ったように静かになる。そして、陸軍大臣の短い挨拶によって、式典が始まった。
今回は任命される士官の人数が多いこともあり、式典中に国王から直接任命状を渡されるのは、数人の代表者のみに限定されていた。
まず、いくつかの重要なポストにつくことになったオーク族やドワーフ族の士官へ、任命状が手渡された。長年陸軍に奉仕してきて、ようやく要職につくことが叶ったオーク族の老将軍や、平時にも関わらず目を見張るような成果を上げ、異例のスピード出世を果たしたドワーフ族の若き参謀士官などが、国王から直接任命状を受け取る栄誉を賜っていた。
しかし、今回の式典に参加した者の注目の大半は、その次に壇上に上がった人物に注がれていた。銀色の飾紐が輝く漆黒の肋骨服に身を包んだ、栗色の髪のダークエルフ。一二〇〇〇の同胞を隣国エルフィンドから救い出し、この国で新たに旅団を編成した立役者の姿に、この講堂に集った三〇〇を越す出席者の視線が集まる。
ダークエルフの少将が国王の立つ演壇の前で直立不動の姿勢をとると、それを見とどけた国王は、新たな士官任命状を手に取り、一月前に交付したものとはわずかに異なる文面を読み上げ始めた。
「私、オルクセン国王グスタフ・ファルケンハインは、ディネルース・アンダリエル少将を、アンファングリア旅団旅団長の職に任ずる。これは、彼女の現在の地位から生じるすべての特権を保証したうえで、彼女が自らに課せられた職務を良心的に果たすという宣誓に忠実であり、戦時であれ平時であれ、いかなる出来事においても、度胸をもって勇敢に行動するという確信のもとに検討されたものである。その証として、私はこの任命状に自らの手で署名し、我が印章を押捺した」
国王の低い声色で、伝統ある低地オルク語の文言が読み上げられると、国王は任命状をアンダリエル少将の方へ向け、彼女へ手渡した。彼女がその羊皮紙で作られた書状を受け取り、堂に入った所作で二本指の敬礼を行うと、講堂は万雷の拍手に包まれた。
主に彼女の部下たちの大きな拍手に迎えられながら少将が壇上を去ると、今度は一人のダークエルフの大尉が代わりに壇上へ上がった。全くの新任であるこの大尉は、彼女と同じく今日初めてオルクセン陸軍の士官任命状を受け取る士官たちを代表し、国王の前で忠誠を誓う役目を負っていた。
壇上の大尉は、演壇の傍らに建てられていたオルクセン陸軍の軍旗に左手を添えると、軍に入隊する新兵が行うのに似た宣誓を行った。
「私は、オルクセン国王グスタフ・ファルケンハイン陛下に誓います……」
わずかに声が震えてはいたが、オルクセン陸軍に連綿と受け継がれてきた宣誓の長い文言を、彼女は実に見事な低地オルク語の発音で完璧にそらんじて見せた。それを聞いて、何人かの古株のオーク族やコボルト族の士官たちが感心したような表情を浮かべたのを、ホフマンは見逃さなかった。
ホフマンもまた、目を見張っていた。一月前に旅団の幹部連中と話した時も、彼女たちの低地オルク語の能力に驚いたものだったのだが、今回のこれは次元が違う。彼女がこの式典のためだけに、多大なる努力を払ったことが痛いほど伝わってきた。
この宣誓を通じて、彼女たちが「本気」であることは、式典参加者の誰しもが理解し、納得していただろう。宣誓の後に続いた割れんばかりの拍手が、それを何よりも物語っていた。
式典はこれにて終了だ。今日この日をもって、アンファングリア旅団の士官約二五〇名は国王直々に任命され、正式に各々の職に就くことになった。これで旅団の骨組み部分は出来上がったと言ってよいだろう。この先の編成作業はもはや陸軍省の管轄ではなく、旅団の各部隊にお任せすることになる。
壇上から降りていくダークエルフの大尉に向けて拍手を送りながら、ホフマンはほんの少し肩の荷が降りたような気がしていた。
* * *
肩から一つ荷を下ろすと、その代わりに別の荷を乗せられるのが仕事の常というもの。士官任命状の作業が終わった彼らを待ち受けていたのは、全軍の『階級別士官名簿』の作業だった。
階級別士官名簿というのは、オルクセン陸軍の各部隊の指揮官や参謀、副官などを網羅した部隊編成表及び、兵種別、階級別に分けられた士官全員分の名簿をまとめた冊子である。赤色に染めた革を用いて装丁されており、ページ数も一〇〇〇をゆうに超えていたので、もはや冊子よりも「本」と呼ぶ方がふさわしい代物だった。
この冊子は毎年五月上旬に出版することになっていたので、作業自体は数ヶ月前から続けられていた。アンファングリア旅団の編成と並行してホフマンとは別のチームが動いており、ホフマンたちはそこに合流する形になった。
出版まであと二週間程度に迫った今のタイミングでは、編纂作業はとっくに終了しており、ホフマンたちが行ったのはまたしても原稿や校正刷りのチェックといった確認作業だった。
五月上旬に出版する士官名簿に、四月半ばに士官の任命を行なったばかりのアンファングリア旅団の士官の氏名を盛り込むことなどできるはずもなく、そちらは半年ほど後に補遺という形で発行することが決まった。エルフィンドとの戦争を見越して、旅団以外でも人事異動や部隊の再編を検討している動きもあったので、そちらの結果も補遺に含まれることになっていた。
もちろん、それらの作業と並行して、『ダークエルフ氏名一覧』の作成も行われていた。『氏名一覧』はだいたい一月に一回から二回のペースで出版されることになり、旅団に配属された人員は、その半月から一か月後に出版される『氏名一覧』に反映される、という流れが出来上がっていた。
五月の頭に無事に全軍の士官名簿を出版し、『氏名一覧』の作業に集中できるようになったホフマンたちは、さらに『氏名一覧』の編集と出版のスピードを加速させた。
五月の末には旅団への人員割り振りが終了し、それを反映した『氏名一覧』の第六号は六月の中旬に出版された。そして、軍に入隊しなかったダークエルフの氏名を載せた、『氏名一覧』第七号と第八号の編集作業に着手する頃には、春が過ぎ去り、夏が顔を見せ始めていた。
アンファングリア旅団編成完了の知らせがホフマン達の元に届いた時、彼らは『氏名一覧』第七号の校正作業の真っ只中だった。六月が終わってすぐのことであった。
* * *
星歴八七六年七月四日。ヴァルダーベルクの旅団衛戍地にて、アンファングリア旅団の編成完結を内外に知らしめるため、閲兵式が執り行われた。ホフマンは陸軍省内で旅団編成に関わった者として、関係者枠で式典に招待されていた。
観閲官グスタフ国王が立つ演台のはるか後方、旅団の工兵隊が設営してくれた観客席に座り、正装に身を包んだホフマンは旅団の兵士たちが行進してくるのをじっと待っていた。
やがて、衛戍地の営庭に、騎兵たちの姿が現れた。旅団長アンダリエル少将が引き連れる、三個の騎兵連隊。巨狼をかたどった紋章の旅団旗に導かれながら、真っ黒の肋骨服を身に纏った騎兵たちが、整った隊列を保ちながら行進してゆく。その数、およそ三〇〇〇。黒の奔流のような騎兵たちの姿を眺めるホフマンの胸の中には、言葉にできないほどの感慨が生まれていた。
騎兵連隊が観客席の前を通り過ぎると、その後に山岳猟兵連隊、山砲大隊、そして工兵中隊や架橋小隊などが続いていく。閲兵式に参列した来賓や駐在武官、新聞記者たちからは、旅団の兵士たちの壮麗さやその迫力に感嘆する声が聞こえてきたが、ホフマンはそれとは異なる感情に打ち震えていた。
この数ヶ月もの間向き合い続けてきた、多種多様なアンファングリア旅団の名簿。一時は寝る間も惜しんで原稿を作ったり、確認作業に没頭したりした、あのダークエルフたちの名前が並んだ大量の名簿。その名簿が実体となって、彼の目の前に具現化してきたように感じられたのだ。
ホフマンが直に顔を合わせたことがあるのは基本的に大隊長クラス以上の士官だけだったので、中隊長や小隊長クラスの士官の顔はほぼ知らない。しかし、確実に名前だけは全員分知っていると断言できた。
隊列のあの位置にいるということは、多分あの人が誰々大尉だな、そういえばあの人のスペルは何回も直す羽目になったな、というような思考が、次から次へと頭の中に浮かんでは消えていく。
それだけではない。旗手の前を先行する騎兵連隊の連隊長や、サーベルを振るって兵士たちを先導する山岳猟兵連隊の指揮官など、各部隊を率いる指揮官や参謀たちは皆、ホフマンの部下たちが書き、彼が一枚一枚チェックした、士官任命状を受け取った士官たちなのだ。
感動しないはずがなかった。
旅団全体の行進が終わると、集結した諸部隊は営庭の中心部に整列した。そして、旅団歌「アンファングリア」の演奏が流れ、その後にグスタフ国王からの訓示がなされる。国王の訓示を聴きながら、ホフマンはここまでの道のりについて、ずっと思いを馳せていた。
もちろん、この旅団を今日の姿に形作るためになされてきた努力は、その大部分がダークエルフ族たち自身が払ったものだ。あくまでも陸軍省はその周辺の仕事やお手伝いをしただけにすぎない。彼女たちが旅団の編成にかけた労力や、その前のエルフィンド脱出に当たって彼女たちが直面した困難は、報われてしかるべきだとホフマンは考えていた。
また、彼女たちにとっては、これはあくまで始まりに過ぎない。国王の訓示にもあった通り、彼女たちは「ゆえなくして故郷を追われ」た身だった。自らに過酷な運命を強いたかつての祖国に対して、彼女たちは怨嗟の念を隠そうともしておらず、虎視眈々と復讐の機会を待ち望んでいた。旅団歌「アンファングリア」の歌詞を読めば、それは嫌でも理解できる。
そして、その復讐の機会は、そう遠くない未来に実現しそうな気配すらしていた。彼女たちの物語は、まだまだ動き始めたばかりなのだ。
それに、ホフマン自身の仕事も、そのすべてが終わったわけではなかった。『氏名一覧』の編集と出版に向けての作業はまだ残っているし、それが終われば、全軍の階級別士官名簿の補遺―――五月に発行した名簿に記載できなかった分を作成する作業が始まるのだ。
それでも。気持ちよく晴れ渡った夏の青空を見上げながら、ホフマンは思った。今日のこの時くらいは、自分のしてきた仕事を振り返って、悦に入るのを許してほしかった。満足いくまで、この心地の良い感慨に浸っていたかった。
一世一代の大仕事を、彼らは成し遂げたのだから。
* * *
八月も半ばを過ぎた頃、ホフマンは部下たちとは時期をずらして長めの休暇を取った。すべての『氏名一覧』の出版が無事に終わり、士官名簿の補遺の作業にもおおよその見通しがついたからだ。
首都近郊の自宅で、朝食を終えたホフマンが久しぶりに「何もしない」時間を満喫していると、キッチンの方からほのかなビネガーの香りと共に、肉を焼くいい匂いが漂ってきた。聞けば、長いこと忙しくしていた夫を労うために、妻が気を利かせて彼の大好物を作ってくれていたのだ。
香味野菜、リンゴ、それに何種類かのスパイスを加えた赤ワインビネガーに牛肩肉を数日間漬け込んだ後、漬け汁から取り出した肉をまず焼いて、表面に焼き目をつけてから、さらに濾した漬け汁を使って蒸し煮にする、という大層手の込んだ料理である。ホフマンの妻は、彼を驚かせるために、なんと彼の休暇が始まる一週間前からこっそりとこの料理の仕込みをしていたのだそうだ。それを知ったホフマンは、思わず妻のことを熱烈に抱きしめていた。
昼過ぎになって蒸し煮が出来上がると、キッチンから漂ういい匂いに釣られて、ホフマンの息子と娘もリビングへやってきた。妻がソースの準備をしている横で、子供たちと一緒に食卓の準備をしたホフマンは、仕舞っておいたとっておきの赤ワインを持ってくると、上機嫌でその封を開けた。
付け合わせの茹でたジャガイモと、煮汁から作った濃厚なソースと共に、白い皿に盛りつけられた蒸し煮が彼の目の前へと運ばれてきた。何日もビネガーに浸かっていた牛肉は、ナイフがすんなり入るほど柔らかくなっている。いそいそとナイフで肉を切り分けてからかぶりつけば、香辛料の香りと程よい酸味、そして確かな牛肉の旨味が口の中いっぱいに広がった。
大仕事を終えて、愛する家族と一緒に食べる
* * *
その年の秋。オルクセン陸軍省は、新編された『アンファングリア旅団』の士官名簿を含む、階級別士官名簿の補遺を出版した。
発行年月日は、星歴八七六年十月六日。『エルフィンド外交書簡事件』の、わずか一週間前のことであった。
(『オルクセン陸軍省の名簿係』 終)