ニチアサでよく見る敵組織の長に転生したんだが…科学とファンタジー両方かよ!? 作:平和推し
ジルムートは転生者である。
その為まだ20数年しか生きていないし、知らない事はまだまだ多い。
それは転生先のダークネス帝国の事もである。
この話では彼の知らぬ過去の悲劇について語ろう
ジルムートの母、アルマリアは一枚の絵画を前に寂しそうな顔をしていた。
その絵画にはまだ幼い自分と、両親、そして彼らを支えた忠臣達の姿が生き生きと描かれていた。
そしてその中で、彼女の隣に立つ笑顔が眩しいほどに輝く少年を見てアルマリアはぽつりと名前を呟く
「レオ…レオナルド…」
(貴方、あの頃の私より少し背が高くて気高く、そして優しくて強かった…今は真逆ね)
彼女は瞳をゆっくりと閉じかつてあったあの輝かしい日を思い出す。
100年以上前まだ彼女が小さかった頃、当時はまだ中世ファンタジーな文明レベルだったが、ダークネス帝国は大きな争いも外敵の存在も無く、後に魔物と呼ばれる獣のような存在と戦う程度の平穏な国であった。
「お父様!お母様!」
幼きアルマリアは、淑女らしくは無いな思いつつも、大好きな両親の元に駆け寄っていた。
「ハッハッハ、そんなに急がなくても私達は離れたりせんぞ。」
「そうよ、まだ孫の顔も見ないうちに居なくなったりするものですか」
そんな彼女を両親は抱き上げて愛情を注いでくれた。
そしてアルマリアと同じぐらいの少年が軍服を着た立派な男性に連れられて現れた。
「マリア!」
「レオ!久しぶりね!」
その少年はレオナルドといい、このダークネス帝国の軍部のトップの元帥の息子で彼女の幼馴染であり、将来結婚を誓った婚約者として彼女の隣にいた。
彼はいずれ父親と同じように軍部を指揮する立場になる為、日頃から弛まぬ努力を重ねていて、そのことを元帥は自分の事のように誇り、アルマリアの両親が彼女に注ぐ愛と同じぐらいにレオナルドに愛情を注いでいた。
彼女は間違いなく幸せだった、純粋にもこのまま何か起こる事なく大きくなってレオナルドと結婚して、子供を授かり両親に孫の姿を見せて、楽しく平穏に暮らして行くのだと…
その純粋な思いは容易く、残酷にも捻じ曲げられた。
70年前…立派に成人となったレオナルドとアルマリアが、そろそろ盛大な婚姻の儀をとり行うかというその年に、突然異世界からダークセブクリスエネルギーと呼ばれる暗黒のエネルギーを大量に噴き出すゲートが出現。
その数は百数十にも及んで絶望を撒き散らした。
影響は凄まじくゲートの周囲の大地は汚染されて禍々しい変貌を遂げて、ゲートが出現した地より離れていたダークネス帝国帝都でも、この暗黒エネルギーの影響で民が次々と体調を崩してしまった。
だがそれすらも始まりには過ぎなかった。魔物と呼ばれていた生物がこのエネルギーを吸収して急激な自己進化の果てに巨大化して『怪獣』になった。
暴風を招く体高10メートルはある狼、雷撃を纏い恐ろしいほどに速い旅客機並みの怪鳥、熱線を吐き出して溶岩で大地を焼き尽くす暴竜、猛毒を撒き散らして澄んだ空気を瘴気に変える三叉首の大蛇…
既存の軍ですら刃がほとんど立たずに進行を止めるのみであった。
「…残る道はコレしかあるまい…」
「…それではあの娘は…一人に…」
(お父様…お母様…)
アルマリアは理解していた、この国の為指折りの強者である父と母は死ぬ気だと、そして彼らだけでは無く、配下の者達も運命を共にする気だと…
そしてその中にレオナルドもいる事を…
「マリア…私は君を幸せには出来なそうだ…」
「レオ…どうして、どうしてなの!」
彼らが命を投げ打つ覚悟をし存続を賭けた出立前、レオナルドにアルマリアは詰め寄っていた。
「私も一緒に連れて…」
「マリア…私の愛しいマリア、それは出来ない。」
「どうして!」
「君には生きていて欲しい…愛しているんだ、君を失うなんて嫌だ。会えなくなるよりも君が死んでしまう事の方が耐えられない…君に辛い事をしてしまうだろうが、それでも君に生きていて欲しい。…お願いだ。」
そう言い頭を下げたレオナルドの目には一瞬光るものがあった。
「…私はレオが死ぬのは嫌よ…でも、レオの頼みを断るのも嫌。だから…レオ、戻って来てね。」
「当たり前だ。それに死ぬなんて決まった事ではない!私より強い人達も大勢いるんだ!きっと戻って来られるさ」
そしてアルマリアは彼らを見送った…帰ってくると信じて。
そして…彼らは成し遂げた。恐るべき怪獣を全て打ち倒し忌々しい大量のゲートをほとんど消し去ったのだ。
…代償としてこの戦いに参戦した100人の内、生き残りの一般兵二人と隻腕と隻眼と化した元帥を除いた97人は全員が戦死し、彼ら3人がなんとか全員の遺体と共に帰還することになった。*1
国は勝利の喜びに沸き立つ事もなく喪に服した。あまりにも犠牲になってしまった人々の存在は大きく、傷跡は深かった。
この日からアルマリアは女帝になり、力を求め自己研鑽して歴代最強の女帝となった。次は奪われる前に奪う為、敵は先に潰すことが最高の護身であり、敵が鏖殺した大切な人をこれ以上増やさぬために…
「そんな私が結婚してようやく幸せになれた…と思ったんだけどねぇ…」
アルマリアはレオナルドや大切な人達の絵に話しかける。
「ジルムートは知らない方がいいのよね。あの子は自分じゃなくて他人の為に救いを与える神様にも、敵を潰す冷酷な悪魔にもなれる子…私が何か抱えてるのは知っているでしょうけど、悟らせてはいけないわ。そうなってしまったらあの子は…
アルマリアはそう言って目に光る粒を払った。
「ハクショイ!なんだ風邪か?誰か噂してんのか?」
その時ジルムートは突然のくしゃみに困惑していた。
次回も楽しみにしてください!