11 迫る宇宙海賊
0085年 夜のイズマコロニーにて
イズマコロニーの南端には、大陽光遠心炉がある。
コロニー内のミラーで太陽光を反射させて、鉄を溶かす巨大な溶鉱炉だ。立方体のジャンクが次々と灼熱の炎に吸い込まれていく。
地球や小惑星と違い、コロニー内では自然に鉄が取れない。
だから、コロニーでは鉄は貴重な資源であり、回収と再利用が徹底されている。
ジャンク屋が鉄を漁り、こうして再び炉へと運びこむ日常。
ジャンク屋の船が列を並す中、オレはセキヤと帰路に向かう。
「レーダーに感あり。こいつは軍警ザクか」
「コロニーの近くでドンパチですか? セキヤ」
「ああ。そうだよ」
セキヤに促され、オレは緑色のノーマルスーツに袖を通す。
セキヤは赤いラインの入った白いパイロットスーツを着ていた。
「それは連邦軍の……?」
「ああ、そうだ」
小型の宇宙船はジャンク屋連中の待機列を離れ、速度を上げ始めた。
「宇宙海賊もついにサイド6に来ましたね」
「ジオンもア・バオア・クーを失った。公王はサイド6に応援をよこしてくれんだろう」
新しく即位した女王は元連邦兵らしい。
金髪で大変な美人らしいという噂は聞いている。
「ジオン本国を守る防衛ラインもグラナダを残すのみです。援軍どころじゃ……」
「ア・バオア・クーは艦船ごと消滅したらしいな。新鋭機のゲルググがもったいねぇ」
イオマグヌッソで軍警のマゼランが撃墜された事件は記憶に新しい。
「軍警は戦艦とザクを失って、今のサイド6には戦力が足りないよ」
「いざという時はザクで出る覚悟はある」
オレは前方を見た。
前方の宙域に、閃光が走る。
軍警のマゼラン級二隻が、宇宙海賊と激しく撃ち合っていた。
二連装のメガ粒子砲が、宙域にピンク色の火線を描く。
「工業ブロックの宇宙港に行くぞ。リック」
コロニーの周囲はひどい戦闘状態に陥った。
軍警ザクの背後から軽キャノンがビーム・サーベルで斬りかかる。
キャノンのビーム砲が火を吹き、ザクは爆散した。
ザクはまったく歯が立たない。
セキヤは通信を試みるがうまくいかない。
『こちらジャンク屋組合所属のセキヤ。迅速な入港を願う。入港を願う』
ミノフスキー粒子の戦闘濃度は「レベル3」。
まるで戦争中に逆戻りだ。
通常通信はほぼ不可能になる。
「セキヤ、4番ゲートにガイドビーコン出ました」
「誘導灯に従って進入する。GO」
幸運にも、ゲート周辺には軍警のザクが展開していた。
放射状にマシンガンをばらまき、進入路を死守している。
――そしてオレ達は、かろうじてゲート内へ滑り込んだ。
「何とかたどり着いた」
「間一髪だったぜ」
☆
セキヤは黒いスマホで電話をかけた。
電話の相手は住み込みで働く青年だ。
「ポール、ザク2機をスタンバイさせろ。俺の機体が先だ」
セキヤはエレカーを飛ばし、工場に駆け込んだ。
車を乗り捨てると、迷いもなく工場に向かって走る。
住み込みの青年ポール君が慌てて扉を開けた。
オレが後を追って工場に入ると、セキヤのザクは姿がなかった。
金髪の青年はざっくばらんに答えた。
「セキヤさんは速いっすね」
「社長は速いんだよ。S型ザクだから」
「シャアと同じ?」
ポール君と一緒に地下に降りると、ザクの駆動音が聞こえた。
グレー色のザクだ。
「リックさんも今から出ます?」
「もちろんさ、オレも出る。マシンガン装備で頼む」
オレはザクのコックピットを開け、横にスライドする操縦席に座った。
フットペダルを踏んで、ザクを立ち上がらせる。
地下通路につながる扉に入る。
ポール君に5秒間だけエアロックを解除してもらう。
――飛び出していこう。宇宙に。
「リック・ミューラー、ザクで出る」
今後の展開を考えてます
-
クラバ編を続行
-
更新を休止
-
設定資料集が出るまで待機