「いけ! アリゲラ!」
「行けい! ナイトファング!」
≪バトルナイザー モンスロード!≫
二つのバトルナイザーが光を放ち、荒野の地に怪獣を出現させる。
ダルヤの側に立つのはアリゲラ。対峙する異星人の側には、紅蓮の光からナイトファングが解き放たれる。
| 宇宙有翼怪獣 アリゲラ | |
|---|---|
| 体長:55メートル | 体重:11,000トン |
| 悪夢魔獣 ナイトファング | |
|---|---|
| 体長:62メートル | 体重:62,000トン |
「ニュヒャリュルルィィイン……」
何とも言えない不気味な鳴き声をあげるナイトファングは、紫の体躯を持つ二足歩行型怪獣だった。
全体的にずんぐりむっくりなシルエットをしている。それに反して、頭部には正面に向かって鋭く伸びる、嘴のような形状の角がある。西洋兜のようなその角の下には口があり、口の下には赤い双眸が光っている。要は、顔の向きが上下逆さまになっている。
首元には薄紫色の触手がうじゃうじゃと湧き出ており、生物として違和感を覚える、見るも悍しい外見となっていた。
「行くぞ、タビアット星のレイオニクスよ! 弟の仇、取らせてもらう!」
その背後に立つ男は、右半身を赤に、左半身を黒に染めた独特な風貌をしていた。
彼はチェーン星人。名をデストラという。ダルヤはかつて、シニストラという名のチェーン星人を倒したことがある。デストラはその兄で、弟の仇を討ちにこの惑星ヘイスティまでやってきたのだ。
「ギェヒャルルッ、ギィイッ!!」
ずんずんと前進するナイトファング。アリゲラはその腹を蹴り飛ばそうとする。だが相手の体幹は強靭で、ほとんど後退しない。むしろアリゲラのほうが一歩引くのを余儀なくされる。
ナイトファングが腕を振るう。その腕は触手となっており、鞭のようにしてアリゲラの横面を叩く。
「キュァアッ!」
「ギェヒャリュルルィィイイン……」
よろめくアリゲラに、ナイトファングは体当たりする。単純だが、膂力の差を効果的に使える攻撃だ。アリゲラは突き飛ばされ、仰向きに転がされる。ナイトファングは太い足で、その体を踏みつける。
『真のレイオニクスバトル』によるダメージを感じながら、ダルヤはアリゲラに指示を出す。
「ぐっ……! アリゲラ、脱出しろ!」
「キィィイッ!!」
パルス孔が光弾を放ち、至近距離からナイトファングの体を捉える。敵が後退りする間にアリゲラは転がり、体勢を整える。
体を低く構え、その体勢で背部のジェット器官を駆動させる。低空飛行で突進するアリゲラ。速度を加えれば、膂力の差を埋められるはずだ。――だが。
「ヒュィィイイン――!!」
ナイトファングの角が、突然上方向に開いたのだ。角の奥には赤い瞳の眼球が剥き出しで秘められていた。そこから紫色の念力波動が放たれる。アリゲラの突進の勢いを弱め、遂には吹き飛ばしてしまう。
「なにっ……!?」
「ハハハ! 造作もない!」
「ニュヒャリュルルィィイン……」
角が再び閉じる。双眸の上、普通なら額にあたる位置の口から、ナイトファングは火球を吐いた。
荒野に爆発が巻き起こる。悲鳴をあげるアリゲラは、たまらず空中へ飛び出す。
「空中戦か。受けて立つ! ナイトファング!」
「ギェヒャルルルッ、ギィィイ!!」
ナイトファングが黒翼を大きく広げ、はためかせる。地上に砂塵を巻き上げながら、その巨体を空中に浮かせる。
とはいえ、ナイトファングは地上戦のほうが得意だ。空中戦を十八番とするアリゲラには敵わない。
――ただそれは、アリゲラの体調が万全であった場合だ。
サタンモアこそ難なく退けたものの、グランドキングメガロスとの戦いで負った傷は完全には癒えていない。
さらに、ナイトファングの主であるデストラはかなりの技量を持つレイオニクスだった。特に、怪獣の身体能力についてはよく磨かれている。その影響で、彼のナイトファングは通常の個体よりかなりのスピードを出すことができた。
「ニュヒャリュルルィィイン……!」
「キュィイッ!?」
ナイトファングがアリゲラに追いつき、両腕の触手を翼の付け根に絡める。拘束したまま体重をかけると、アリゲラは高度を保つことができなくなり、地表に向かって真っ逆さまに墜ちていく。
そして墜落ギリギリで、ナイトファングは触手をほどいた。自分は空に羽ばたき、同時にアリゲラの落下を後押しした。
アリゲラが頭から墜落したことで、ダルヤにもそのダメージが向かう。地面に倒れ、頭に滞留する重い痛みによって動けなくなってしまう。
「ぐっ! くっ……!」
「ダルヤ!」
「ダルヤ様っ!」
彼の後方には、巻き添えにならないよう離れて四姉妹が見守っていた。だが、戦況は悪い。よろよろと立ち上がる彼の背中に視線を向けながら、誰もが心配そうな顔をしている。
「おいおい、女の子の顔が曇っちまってるぜ? それでも男か?」
「……っ。うるせえ……っ」
「吠えろ吠えろ。そうやって、惨めな死に様を見守ってもらいな!」
「ギェヒャリュルルィィイイン……」
地上に降り立ったナイトファングが、アリゲラを蹴り飛ばそうと歩みを進める。
ダルヤはバトルナイザーに目を落とし、(だが……確かに)と唇を噛んだ。
(今のままでは勝てない。もうアリゲラの体は限界だ)
(……頼む)
三つ目の画面に映されている、最後の怪獣。頼みの綱は彼だけだった。
ダルヤはバトルナイザーを握りしめ、掲げあげた。
「――いけ! ギガロガイザ!」
≪バトルナイザー モンスロード!≫
マシンから射出された金色の光が、ナイトファングの前に立ち塞がる。
舞い降りた光が輪郭を変えて、群青色の体躯を形作る。
「む……!? もう一体いたのか!」
デストラが目を見張る。警戒し、ナイトファングを下がらせる。
光が晴れたとき、荒野に佇んでいたのは60メートル級の怪獣だった。
丸みを帯びた頭部と、水色に光る双眸。ところどころに纏った尖鋭的な外骨格は怪獣の攻撃性を表しており、威圧感抜群だ。
現に、デストラは気を張り詰めさせている。強力な敵だと判断したのだろう。
「ギガロガイザ――」
ダルヤがその背中に話しかけようとする。しかし、そのとき――
「ルルルルルッ……」
ギガロガイザはうずくまり、その体を縮こめた。敵の目の前であるにもかかわらずだ。その鳴き声も弱々しく、聞く者に臆病さを理解させる。
呆気に取られていたデストラは、おもむろに高笑いをし始めた。
「ハハハハハ! どんな奴が出てくるかと思えば、とんだ意気地なしだな! お前、怪獣にどんな教育をしてるんだ? 教えが悪いんじゃないか? ハハハハハ!」
ダルヤは続けて「ギガロガイザ!」と呼びかけるが、その巨体は頑として動かない。
デストラは「フン」と鼻で笑うと、バトルナイザーを掲げて怪獣に思念を送った。
「ギェヒャルルルッ、ギィィイ!!」
ナイトファングの触手がギガロガイザに叩きつけられる。頭や肩口に響く痛みに、ダルヤは呻く。その痛みは当然ギガロガイザも感じているはずだが、彼は反撃しようとはしない。ますます体を丸めて、やり過ごそうとする始末だ。
「レイオニクスバトルを侮辱するなァッ!!」
デストラの怒声が飛ぶ。ナイトファングの触手が伸長し、ギガロガイザの首に巻きつけられる。
ギリギリと締め上げ、体を起こさせる。流石に命の危機を感じたのか、ギガロガイザが触手を掴んで引き千切ろうとする。だがその力も弱々しい。そもそものところ、彼には生き抜こうとする意気が乏しいのだった。
「俺は弟と違って、
「ヒュィィイイン――!!」
再び、ナイトファングの角が開く。ぎょろりと覗く単眼が、真正面からギガロガイザを捉える。
眼球から波動が放たれる。だが、先程アリゲラに放った念力波動とは異なる。これは、受けた生命体に悪夢を見せる催眠音波だ。この能力は怪獣にも通用するため、ギガロガイザの脳裏にトラウマがフラッシュバックする。
(本ッ当に使えん奴だな……貴様はッ!)
ギガロガイザを生み出したゾゾギガ星人アンサーニ。『真のレイオニクスバトル』によって怪獣と繋がっているダルヤの脳内にも、その罵声は流れ込んでいた。
(貴様にどれだけの費用と時間をつぎ込んだと思っているのだ!)
(この私を裏切りおって……! 殺処分してやる! 失敗作が! 羽虫同然のガラクタが!)
(クソッ、どいつもこいつも役立たずばかり……! 私の期待に応えられる者はいないのか!)
場面が移り変わる。アンサーニが「怪獣コロシアム」と称していた部屋だ。ギガロガイザの視界にはネオザルスが映っており、烈火のように激しくギガロガイザを攻めたてている。頭部を繰り返し殴打したのち、尻尾を叩きつけて横転させる。
ギガロガイザはこのときもサンドバッグのように打ちのめされるだけで、反撃しようとはしなかった。
(ハハハ! やれ! ネオザルス!)
(カミソリデマーガ! いたぶってやれ!)
さらに場面が切り替わると、今度はカミソリデマーガに襲われていた。鋭利な刃がギガロガイザの体表を斬り刻む。カッター光線や電流攻撃の的にもされ、ギガロガイザは終わらない責め苦を負い続ける。
「――ダルヤっ!」
「!」
ミクリアの声でダルヤは我に返る。次の瞬間、ナイトファングの火球がギガロガイザを吹き飛ばした。
「ルルルルル……」
「ニュヒャリュルルィィイン……」
地響きを立てながら、ナイトファングの巨体が迫りくる。ギガロガイザの声は明らかに怯えており、戦える状態ではない。ダルヤはバトルナイザーを握りしめるも、逡巡する。戦いを強いるわけにはいかないが、無抵抗のままではギガロガイザも危ない。
「ルルルルル……ッ」
そうしていると、ギガロガイザが立ち上がった。しかし、ナイトファングに立ち向かうわけではない。体を別方向に向け、走り出す。戦場から逃げ出してしまう。
その背中にナイトファングは火球を放とうとしたが、デストラは「もういい!」と制した。
「あんな腑抜けは殺さなくていい。それより、これから先もずっと悪夢に囚われ、苦しみ続ければいい。それが神聖な戦いを汚した奴への、何よりの罰となる」
ナイトファングは体をダルヤのほうへ向ける。口に火球が溜められたままだ。それが今にも発射されようかという、その瞬間――
「――キュァアッ!!」
横手からアリゲラが突進してきた。加速をつけた体当たりは流石に応え、ナイトファングが倒れる。アリゲラは即座にマウントを取り、翼の棘で攻撃し始めた。
(……すまない。ギガロガイザ)
ダルヤは心の中で謝罪する。
(いきなり戦場に出されても、怯えるに決まってるよな。お前の気持ちを考えられていなかった。オレの勝手な都合で……すまない)
顔を上げ、彼はアリゲラに向けて呼びかけた。
「いくぞ! アリゲラ!」
「キュァアッ!!」
一方、一連の流れを見ていたディオーネは、眉間に怪訝そうな皺を刻んでいた。
「どうしましたの?」
「わたくしは見ていましたわ。ギガロガイザを仲間にしてから、ダルヤ様が何度も彼を呼び出そうとしていたところを。ですが――」
ギガロガイザは一度も召喚に応じることはなかったのだ。ダルヤに訊ねてみると、「まだオレに心を開いてないようだ」と苦笑した。「できれば直接話したいんだけどな……」とも。
その話を聞いたミクリアは、「じゃあ、どうして?」と口を開いた。
「どうしてさっきは召喚に応じたの? 戦いたくなかったら、同じように拒めばいいのに」
「……」
ディオーネは顎に指を当てて思案した。そして、姉たちの顔を見渡して言った。
「わたくしがギガロガイザを説得してきますわ」
「ディオーネが?」
「ええ」
「なら――」とフィオネも口を挟む。「わたくしも行きますわ。一人では危ないでしょうし」
だが、ディオーネはかぶりを振ってそれを制した。
「一人で行かせてくださいまし。――お願いいたします」
彼女の決意は固いようだった。ミクリアとフィオネは不安そうに顔を見合わせたが、その後ろからリリアが言った。
「大丈夫よ、ディオーネなら。――行ってらっしゃい」
「……! はい!」
ギガロガイザは森のほうへ向かっていた。その後を追い、ディオーネは駆け出した。
怪獣は木々を薙ぎ倒しながら進んでいた。そして森が途切れた先、湖のほとりで、ぽつんと座っていた。
「……ギガロガイザ」
「ルルルルッ……」
彼女の声に反応し、ギガロガイザが振り向く。間近で見るその巨大さにディオーネはやや怯んだが、それでも言わなければならないことがあった。その気持ちを奮い立たせ、彼女は怪獣に呼びかけた。
「勝手ながら、お話をひとつさせてくださいませ。
わたくしの話ですわ。……わたくしは姉妹の中で、とびきり要領が悪い子でした」
ギガロガイザは身を起こそうとしていたが、それを中断した。
ディオーネは彼の隣に歩み寄り、腰を据えて話を続けた。
「勉強も運動も、ひとつもいいところがありませんでしたわ。加えて、天から授けられた特異体質は、こともあろうか異性を魅了する能力。王妃様からは、わたくしがお父様を篭絡するのではないかと警戒され、フィオネの立場すら危うくさせてしまいました。
重病に罹り、リリアお姉様の寿命を削ってしまったこともありましたわ。わたくしの存在は皆に害をなすばかりで、わたくしはそんな自分のことが大嫌いでした。
そんな自己嫌悪を紛らわすために能力を濫用して、数々の男性と関係を持って……周囲からは『だから娼婦の娘は』と蔑みの目を向けられていました。……自業自得ですわ」
溜め息を落としてから、「でも――」とディオーネは続ける。
「この旅に出て、ダルヤ様と出会って……わたくしは少し変われたような気がします。
彼は、わたくしの『魅了』が効かない男性でした。そんな彼から求められたとき、わたくしは生まれて初めての幸福を感じましたわ」
彼女はそれまで『魅了』の能力を使って男に抱かれていた。それはどんな相手でも好意を持たせられる反面、『魅了』抜きでの自分の価値が分からなくなるという欠点があった。しかも、『魅了』は自身のフェロモンに由来している。勝手に働いてしまうものであり、彼女自身の意思では止められなかった。
故にディオーネは、ダルヤに抱かれるまで、真の意味で男に愛されたことがなかった。その胸中に渦巻く自己嫌悪は、彼女をより深い自己嫌悪の闇へ引きずり込んでいた。だが、ダルヤに愛情を注がれたことをきっかけに、彼女は少しずつ自分自身を愛せるようになっていった。
「あなたたちのような強大な力は持っておりませんけれど。それでも、確かに少しずつ成長して、お姉様たちのお力になれているような気がしています。……自分のことを、好きになれているように思います。
ギガロガイザ。あなたも彼に期待しているのではなくて? 自分自身を変えてくれる、その光になってくれると考えているのではなくて?」
ギガロガイザは声をあげず、身じろぎの音さえ立てなかった。あまりにも巨大なため、その表情は分からない。そもそもディオーネはレイオニクスではないのだから、怪獣の感情の機微を正確に把握することはできなかった。
ただし、想像し、慮ることはできる。ディオーネは腰を上げ、傍らの怪獣に語りかけた。
「もしそうなら……一歩踏み出す勇気を持ちなさい。自分の殻に籠っているだけでは、何も変わりません。
ダルヤはきっと、あなたに力を与えてくださいますわ」
その声は優しく柔らかく、それでいて、毅然とした意志を宿していた。
「ギェヒャルルルッ、ギィィイ!!」
「キュィィイ……ッ!!」
ナイトファングの雄叫びと、アリゲラの悲鳴が響く。最初の奇襲こそ成功したものの、やはり満身創痍のアリゲラでは力不足だった。すぐさま攻守を逆転させられ、防戦一方となっていた。
ここまで耐え抜いていたものの、もう限界だ。アリゲラに立ち上がる体力は残されていない。うつ伏せに倒れたまま、最後の一撃を待つばかりになっている。
「これで終わりだ! ナイトファング、やれい!」
「ニュヒャリュルルィィイン……」
不気味な声をあげながら、トドメの火球を放つ――
――その、一瞬前。突如飛来した螺旋状の光線が、ナイトファングの横面を殴った。
「ぐッ!? 何だ!?」
「……?」
デストラが、そしてダルヤと姉妹たちがそちらに顔を向ける。
群青色の体躯を、堂々と青空の下に晒すギガロガイザの姿がそこにはあった。
彼はずんずんとダルヤのもとまで歩み寄ると、蒼白い瞳で自身の主を見下ろした。
バトルナイザーを介して、ギガロガイザの感情がダルヤに伝わる。
それは、「期待」と「信頼」。生みの親に巻きつけられた自己嫌悪の鎖から解き放ってくれることを、彼は望んでいる。そのために、共に戦いたいと。
ダルヤはバトルナイザーを握りしめ、力強く頷いた。
「わかった。一緒に戦ってくれ、ギガロガイザ!」
ギガロガイザはナイトファングに向き直ると、雄々しい咆哮を轟かせた。
「キシャアアッルルルルルッ!!!」
| 銀河皇獣 ギガロガイザ | |
|---|---|
| 体長:61メートル | 体重:48,000トン |
「ギェヒャリュルルィィイイン……」
ナイトファングが火球を放つと、ギガロガイザの爪が銀色の光芒を虚空に描いた。火球が叩き落とされ、地上で爆発が起こる。
足元の火を意に介さず、ギガロガイザが突進する。そのタックルがナイトファングの腹を捉えると、敵の巨体は大きく後方へと引きずられた。
「ぐふッ……!? 何だと!?」
ナイトファングがパワー負けしたことにデストラは愕然とする。何かの間違いだと断じ、再び接近戦を仕掛ける。
だが、ナイトファングが振るった触手をギガロガイザはスウェーして躱し、すかさずパンチを二発叩き込む。さらに膝蹴りを打ち込み、最後にはケンカキックで蹴り飛ばした。
「ギェヒャルルルッ、ギィィイ……!!」
呻きを洩らすナイトファング。その打撃の一発一発が、強靭なナイトファングの肉体を蝕んでいた。
それはレイオニクスのデストラにも伝わっている。彼は己の腹を抑えながら、「馬鹿な、信じられん……!」と呆気に取られる。ついさっきまで子供のように怯えていた怪獣と、本当に同一個体なのか。
「かくなる上は……!」
バトルナイザーに込めた思念に応じ、ナイトファングが両腕の触手を伸ばす。それらはギガロガイザの両腕に絡みつく。そうして動きを止めたうえで、角を開く。その奥に隠されていた眼球が、ギガロガイザを見据える。
「もう一度悪夢を見せてやる! 喰らえい!」
「キュァアッ!!」
そこへ響く甲高い声は――地面に伏していたアリゲラのもの。催眠音波が出されるよりも前に、彼が放った光弾がナイトファングの単眼を撃ち抜く。角内部に火花が爆ぜ、ナイトファングはたまらずよろめいた。
「ヒュィィィイン――!!」
「き……貴様ッ!?」
「――ギガロガイザ! お前の力を見せてやれ!」
「ギギャァアアッルルルルルッ!!!」
ギガロガイザが天に向かって叫ぶ。まるで、これまで溜め込んできた己の力を、この世界に見せつけるように。
その全身から膨大な電撃光線が撒き散らされる。触手で捕えたことが仇となり、ナイトファングは至近距離からその攻撃を受ける。電撃はナイトファングの角を弾き飛ばし、翼に風穴を開け、巨体に数々の爆発を与え、触手を焼き切った。
「ギィィイイ、ギィィイイ……!」
惨憺たる有様と化したナイトファング。デストラもふらついており、自分の体を支えるのが精一杯になっている。
ギガロガイザが畳みかける。ナイトファングの首に手をかけ、勢いよく地面に引き倒す。低い体勢で駆けると同時に敵の体を引きずり、そして上空へ投げ飛ばす。その体が落下してくるタイミングに合わせて長い尻尾を振り抜く。撥ね飛ばされたナイトファングは毬のように跳ね、転がっていく。
「トドメだ! いけ!」
「キシャアアッルルルルルッ――!!!」
ギガロガイザの全身にエネルギーが漲る。その迸りが、周囲に紅く漏れ出す。炎のような烈しいオーラを纏いながら、ギガロガイザは口を開いた。
吐き出される、紅と蒼の螺旋光線。壮絶な破壊力を持つそれは、ナイトファングの腹を捉えたと同時に、その巨体を端から端まで木っ端微塵に打ち砕いた。
凄まじい轟音と爆風が荒れ狂う。デストラの断末魔がそれに掻き消される。粒子状となって消滅した彼の残滓も、さらさらと風に流されていった。
「ルルルルルッ……」
「キュァアッ」
勝利を収めたギガロガイザのもとにアリゲラが歩み寄る。ダルヤもまた彼の足元に寄り、笑顔で見上げた。
「ありがとな。一緒に戦ってくれて」
彼の言葉に、ギガロガイザはゆっくりと頷く。
「……よかったですわ」
その様子を離れて見守っていたディオーネは、ほっとした笑みをこぼすのだった。
≪登場怪獣≫
■悪夢魔獣 ナイトファング
体長:62メートル
体重:62,000トン
『ウルトラマンタイガ』第7話「魔の山へ!!」に登場。
触手や翼、目と口が上下逆転した顔を持つ、ずんぐりとした体型の邪神。
前方に鋭く突き出た角は、西洋兜「
その音波を受けた生物は、自身のトラウマを抉る悪夢に苛まれることとなる。
精神に働きかける強力な特殊能力を持つが、膂力も強く、近接戦も得意。
武器は口から吐く火球と、腕の触手攻撃。
■銀河皇獣 ギガロガイザ
体長:61メートル
体重:48,000トン
『ウルトラマンデッカー最終章 旅立ちの彼方へ…』に登場。
ゾゾギガ星人アンサーニの遺伝子操作によって生み出された人造怪獣。
戦闘力が期待していた水準に達していなかったことで失望され、その後はアンサーニの憂さ晴らしのためのサンドバッグとして扱われていた。
度重なる虐待によって心身共に衰弱していたが、ダルヤのもとで再出発することを決意し、その力を揮う。
(※本作独自の設定)
武器は口から吐き出す螺旋光線や、全身から放出する電撃光線。
凄まじい威力の光線技を持ちつつ、格闘戦でも身軽に動けるため隙がない。
≪登場人物≫
■チェーン星人 デストラ
チェーン星のレイオニクス。
尊大な言動をする、ある意味で武人めいた男。
レイオニクスバトルは神聖な果たし合いと考えており、その理念にそぐわない相手を嫌っている。
「シニストラ」という弟がいたが、ダルヤに敗れて他界している。
彼のかたき討ちのためにダルヤを探し回っており、その果てに惑星ヘイスティへと辿り着いた。
また、チェーン星人は兄弟で体色が異なる種族であり、兄であるデストラは右半身が赤、左半身が黒となっている。
対して、シニストラは左半身が青、右半身が黒となっている。
所持怪獣:ナイトファング