YOUKAI SLAYER~ゲンソウキョウ炎上~ 作:さわやか
「ここが貴方の部屋です、ヨウカイスレイヤー=サン。」
案内された部屋は、奥ゆかしい間取りの洒落た一室。
丁寧な整備の行き届いたタタミがその部屋の歴史を物語らせる。
「なんと言う事だ。本当に使っていいのか、ヨウム=サン?」
「勿論です。何せ2人しか住んでいない物ですから、空き部屋が多くて・・・あ、あと・・・」
何だ、と聞き返すが、ヨウムは言葉に詰まっているようだ。
中々言い出しが効かなく、キマズイ・アトモスフィア全開である。
そしてついにこう切り出した。
「あの!ブシドーの稽古を付けて頂きたいです!」
ヨウカイスレイヤーはうろたえた。
つい今まで、師範であるヤマト先生にブシドーの何たるかを教えてもらっていた身。
その自分が、カタナの腕において自分より上だった者に稽古をつけるなど、ブシドーに対するスゴイ・シツレイ行為に値し兼ねない。
しかし、ヨウカイスレイヤーの返事は違った。
「勿論だ、ヨウム=サン。よろしく頼むぞ。」
実際彼は焦っていた。一刻も早く強くならなければならない。
全ては、両親、そして自らの仇、憎きヨウカイに制裁を下すため。
稽古をつけるという事は、同時に相手のワザマエを盗む事でもある、一種の修行。
もはやシツレイなどと喚いている暇は無いのであった!
翌日から、ヨウカイスレイヤーによるブシドー稽古は開始される。
「イヤーッ!イヤーッ!」
「腰が入っていないぞヨウム=サン!そんな動きではヨウセイにも勝てぬわ!」
「ハイ! イヤーッ!イヤーッ!・・・」
彼はヨウムに、自らの基礎となった技術を一から教える事を決心する。
その姿はどこか師範ヤマトを思い起こさせるアトモスフィアだった。
そして同時に、彼はヨウムのカタナ・ジツを盗み、習得を試みていた。
光より早いイアイ。針先より鋭いツキ。そして何より、飛ぶ斬撃。
対ヨウカイに置いて、その技術は実際強力である。
「ヨウム!夕飯の支度が出来たわよ!」
「あ!申し訳ありません、ユユコ様!私ったら今日も家事を・・・」
「いいのよ。貴方がここまで一つの事に熱中するなんて、何年ぶりかしらね?」
「そんな・・・ヨウカイスレイヤー=サンも、どうぞ、お疲れでしょう?」
「世話になるな、ヨウム=サン。ユユコ=サン。」
その時であった!
「BOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!!!!!」
「「「なっ!?」」」
巻き起こる爆発!だだ広い庭の片隅は地面が抉れている!
そしてその真ん中に立つのは・・・
「初めまして、ハクギョクロウの皆さん。ニトリ、と言えば分かるかな?」
「ニトリ・・・!あのニトリ・インダストリの!」
青のツインテール、緑の帽子、そして背中のリュックから飛び出る何本ものメカアーム!
紛れも無い。カッパの・・・・・・・・・メカニック!!!
「ドーモ、ニトリ=サン。ヨウカイスレイヤーです。」
「おおっと、ドーモ、ヨウカイスレイヤー=サン。ニトリです。キミの噂は聞いている・・・確かコーマカンを破滅に追いやったとか?」
「えっ!?」
「ほう、そこまで素性が調べられているとは・・・流石は大企業と言った所か」
「あまりカッパを舐めないで欲しいな。・・・通りで、ボクの妖刀探知機がビンビン反応する訳だ。」
「探知機!そんな物ここには・・・まさか!」
そう。今まではハクギョクロウの入り口にある大岩・・・あれこそが、様々なレーダーの探知を遮断していた。
しかしヨウカイスレイヤーがそれを破壊した今、もはやハクギョクロウは丸裸!
ニトリ社の強力レーダーならあっという間に見取り図までもが確認されてしまう!ナムサン!
「よくも庭を・・・許しては置けない!」
ヨウムがカタナを構えるのを阻止し、ヨウカイスレイヤーが一歩前に出る。
「待て、ヨウム=サン。奴の狙いは妖刀だ。カラテで対峙する・・・ヒライシンを頼んだ」
「おお?早速メインディッシュかい?嬉しいよ、じゃあ・・・始めよう!」
その瞬間、ニトリが消え去ってしまう!当然ヨウカイスレイヤーは困惑!
混乱も束の間、ニトリは何と目の前まで接近!メカアーム・ストレートが炸裂!
吹き飛ぶヨウカイスレイヤー。ニヤリと顔を歪めるニトリ。
「ニトリ社印、光学迷彩の味はどうだい?ヨウカイ殺す者?」
「黙れ、カッパヨウカイ!造作もないわ!」
投げつけられる数枚のスリケン!ニトリは余裕の回避!・・・の筈だった。
スリケンは何とカーブを描きブーメランめいてニトリに再接近!
「ナンデ!?」
背中からスリケンを食らうニトリ!仕込みスリケン・ジツだ!
さらにスリケンに付けられた小型カプセルが爆発!中から飛び出たのは・・・
「アイエッ!?塗料!!!」
スリケンの目的は、ニトリの光学迷彩の看破であった!
たまらず距離を引くニトリ。姿さえ見えるなら、カラテが断然有利なはず。
「どうだ?お得意の迷彩は使えないようだが?」
「チッ、黙れ!ニトリの技術を舐めるなよ!」
ニトリの体が光を発する!ジェットパックを使い奇襲を掛ける!
「無駄な事だ!」
ヨウカイスレイヤーは完璧にそれを受け流す!
しかし一瞬の隙が出来たヨウカイスレイヤー。。
メカアーム達が不規則にヨウカイスレイヤーに襲い掛かる!
「クッ・・・」
グレイズを数発。しかし体は思うように動かない!感電させたのだ!
そしてヨウカイスレイヤーの目の前には小さな、しかし禍々しいアトモスフィアを放つ八角形!
「ミニ八卦炉Mk-2・・・妖刀は我が技術に重要なんでね。サヨナラ!」
放たれる蒼い炎!ヨウカイスレイヤーは跡形も無く爆発四散!
しかしその光が終わりを迎えた後、地面に倒れていたのは・・・ニトリ!
「どういう事だ!?」
「ブンシン・ジツ・・・自らを複製させるジツだ。ハイクを詠め、ニトリ=サン!イヤーッ!」
ヨウカイスレイヤーがニトリの命をもぎ取ろうとするその時!
ニトリは再び笑みを浮かべ、強制脱出システムを起動!
「サラバ、ヨウカイスレイヤー!ニトリ・インダストリでまた会おう!」
バリアが展開され、ニトリは笑いを上げながら本社へと奥ゆかしく飛行してゆく!
「クソッ、逃がしたか・・・」
「ヨウカイスレイヤー・・・貴方は・・・」
「何だ?」
「コーマカンの件、本当に貴方が・・・?」
「知らなかったのか?」
「ルーミアの事は知っていたけど、まさかコーマカンも貴方がやったとは・・・」
「・・・実際には、俺ではない。何か不都合か?」
「?・・・いえ、むしろ良い戦士を手に入れたと思うわ。」
少しだけ笑みを浮かべるユユコ。
対してヨウムは驚いている様子であった。
それも無理は無い。何しろコーマカンはヨウカイ社会でも名を知らしめている暗黒メガコーポ・・・知らないヨウカイは居ないだろう。
そんなコーマカンを壊滅させたとなれば、相当なワザマエの持ち主だということは嫌でも分かる。
「それで、どうするのです?」
「決まっている。・・・一刻も早く、奴の根城を攻めなければならない。」
「待ってください!少しくらい休まないと、体もまだ・・・」
「いや、奴の体が消耗している。今すぐにでも行き、有利な状況を作りたい。」
ヨウムはその言葉を受け、少し考えた後、こう言った。
「では、私も行かせて頂きます。」
「・・・安全は保障できないぞ。奴の根城はメカ工場、相当の罠が潜んでいるだろう」
「足手まといにはなりません。」
「良いだろう。出発は明日の夜明け前だ。遅れれば置いていく。」
「ありがとうございます、ヨウカイスレイヤー=サン!」
ヨウムは笑顔を見せるが、それも引きつった笑顔だった。
ヨウムにとって、初めての大物ヨウカイだ。実力も未だ予測不能。
恐怖に怯えるも、何も不思議ではない。だがヨウムは立ち向かう意思を選んだ!
そして、空は朝を迎えようとする。
「私は留守番しているけど、くれぐれも無理はしないよう。無事で帰って来て下さい。」
「勿論です、ユユコ様。必ずやあのヨウカイを倒し、戻ってきます!」
「さあ、出発だ。付いて来い、ヨウム!」
二人の戦士はレッド光の中、ニトリ・インダストリへと歩を進める!
激しい争いが、幕を開けようとしていた!