機装少女戦・フェアリーメイデン!~模型の国のプラスチック・プリンセス~ 作:もにもに+マウンテンヘッド
「こほん、」
なぜか有栖が咳を切って、
「ど、どーぉですかぁ? やましいキモチ、えっちなキモチなんて、出来上がったら消えてたでしょぉ??」
ぶほ、っとコウスケは飲みかけていたコーラをスプリンクラーにしてテーブル上に噴射し、かけられたりんと妖精の二体は、びっくりしてひっくり返ってしまった。
「あらら、りんちゃん、帰ったら濡らし布巾できれいきれいしましょーねぇ~…まぁ、こんな反応をした、ってことわー?」
ズバリ、図星、の意味の指を、びし! っと有栖は戦慄するコウスケに突き着けた。
「それだけ、お迎えして初起動の時の、あの指を舐められる、というのは、意味が深いものなのです!
…本来は、最初に持ち主の微細な汗のDNAや体分泌の成分などを記憶して、それをフェアリーメイデンが己の主人、すなわちマスターと認識する為のプロセスなのですがぁー…いやはやわっちも、このりぃんちゃんをブートさせた小学二年生不登校のあの日あの時あの朝は、眠れる姫を目覚めさせた王子様の気分というか、生まれたての子猫や子犬のおかーしゃんになった飼い主の気分というかぁ~…ぐえへへへへぇっ」
言いながら有栖はでんぐり返しの格好でひっくり返ったままのりぃんに自分の人差し指の腹を近づけてやって、差し出されたりぃんの方は、目に光を点らせて、むく、っと起きあがると有栖の指の腹をちろちろ、と舐め始めた。
「あぁぁああぁん! ~~~~フェアリーメイデンのユーザーは、まず最初に、これで、ころ、っといっちゃうんですぅ! 百発百中! それが洗礼ッ! さだめとあらば! 炎のさだめ! あぁぁあああああん! 天国にイくぅ!」
奇声による絶叫を開始した有栖に周りの客達はざわつき始めるが、それを立ち上がったカレンと立ったままのジョーンの威圧によって封殺されてしまった。
呆れるのもいつもの事だ、とも考えたコウスケはドリンクバーにコーラの補給へ行く為に立ち上がりかけたのだが、その指を何かが触れた。
持ち上げる手を止めて振り向くと、テーブルの上のコーラのグラスを持ったコウスケの手指を、ぺたんこ座りしてへたりこんだ“妖精”がつかもうとしていて、髪や身体各部のパーツにコーラの水滴が付着している上目遣いの彼女の顔は、よくよく見てみると、なんだか赤らめたようでいる。
「ん?」
怪訝な表情を浮かべたコウスケ…ー自慢どころか不幸であるが、どうも己の人相は悪いのかもしれないらしい…ーに彼女は一瞬おびえたが、それでも、もうかたっぽの己の手の指をおしゃぶりにしながら、物欲しげに自分を見る“妖精”の顔に気が付いて、コウスケも、そ~っと指を差し伸ばして…ー
ぺろ、
「!」
舐めた。舐めてくれた!
(こ、これはッ)
ぺろぺろ、ぺろ、
妖精は、うれしそうにコウスケの指をぺろぺろと舐め始めた。小さな両手でしっかりと掴んで、離さないように。…ーこれに、コウスケは堅く閉ざしていたはずの、自分の心の岩盤に確実にひびが入っていくのを実感するほどだった。
「おぉほぉーーーーーーーーッ!」
これに有栖は感動の絶叫を上げることしきりで、
「いやはやはやいや!? もう最初からなつき度MAXじゃあアーリマセンカっ?!
くぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーー! 私のりぃんちゃんの時は、最初からこうはいかなかったのにぃ!! ー…うっうっうっ、ねぇりぃんちゃぁん」
喜怒哀楽のその全てともそれ以外だとも判別しがたい感情の爆発を勃発させた後、有栖はテーブルの上のりぃんへと甘えるようにしなだれかかった…ーこれにりぃんちゃんは微妙に嫌そうな顔をしているのは気のせいではないハズ。
それでも直後には呆れと愛おしそうな、その表情となって、りぃんは有栖の小さな額を、よしよし、…とするようになでなでを始めたのである辺り、二人の関係性というのがよく分かる。
そしてその一部始終を見ていた“妖精”は、口をぴちょん君の形というか、いわゆる“みなみけ”にした後、なにかを閃いたような様子で、浩介の顔へと向き直ると、
“……ーーーー………、……、…、ーーーーー”
「ん、なんだ?」
「“わたしにもさせて”、って言ってるんですよぉ! きっと! りぃんちゃぁああああああああああああああ」
台詞の吹き出しからも突き抜けた有栖の絶頂はおいといて、
満面の無邪気とマスターへの期待の笑みで、“妖精”である彼女は、ぱたぱた、とてとて、こっちにきて! と足踏みとステップを踏みながら浩介の顔を手招きした。…この仕草がこれまたカワユくて!!
「ごくり、」
さぁ、男コウスケ、一世一代の晴れ舞台だ。
こっちこっちっ、オーライオーライ! と手招きする“彼女”の誘導のまま、ゆっくりと十五歳の少年・鶴来浩介はファミレスのテーブルへと己の顔を近づけさせる。
すると、テーブルを挟んで向かい合う有栖やりぃんちゃんからはニマニマと、背後からはなにやら己の事を指さして不振がる幼い幼児とめっ! みちゃだめ! をする母親の親子連れ…注釈すると、お客さん方の皆様も、ほぼ漏れることなくアレックスロイドを連れている。そのうちのある家族連れの連れているKBT系メダロット型アレックスロイドは、「おぉー、やっぱりフェアリーメイデンはいいよなー」とかと言いながら…の気配がしていたのであるが、そんなことは今のコウスケにはどうでもいい事実であった。
…ーし、しんぼぅたまらんち!
スポーツ新聞アダルト欄のおぱんつ抽選コーナーの応募ハガキでも今時そんなんのはかいてねーヨ、というような喪男の絶後を発しつつ…ーこれにはカレンもジェーンもなにもしなかった…ー、期待と興奮に思わず目を瞑っていたコウスケの顔が“妖精”に達した…ー、
ちゅ、
「…?」
………
「……………!!!!!!???????ッッッッ?!」 「わぁーお!」
その時、コウスケにとって予想もしていない感覚が、己に訪れていた。
なんと、
…ー妖精が、己の唇に、きす、をしていたのだ。
「あ、あ、あ、ぁ、あ、ぁあ、、あああぁあぁぁぁ…………」 「りぃんちゃんみました観ましたぁ!? わっちたちもやろうやろう! キャーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
有栖が絶叫を発し始めたこんどこそカレンとジェーンはAHW…アンチ・ヒューマン・ウォーサーフェス、対人哨戒を開始したのであるが、もはやファミレスの中の客達は燃え尽きたような格好と様相で食事も止まっていた。
は、ともかく、コウスケは、呆…と惚けているしかない。おそらくは人生で初となろう、家族以外の“異性”からのファースト・キッスに、己の唇の感触を何度もなぞるばかりだ。
一方、彼女にとっての最高のドッキリの成功に、目を><にして飛び跳ねて喜んだ“妖精”である。だけど、
こてっ、
「「あっ」」
次の瞬間、転げてぺたん、と尻餅をついてしまった。
「 、 、 、 、…………!」 「おぉ、もはや台詞や言葉の次元をも超越したパッションが浩介さんを貫いている! これが! 螺旋力!! 俺のドリルは銀河一ィ! フォォオォォオォォォォォォオォ!!!!!!!!!!!!!!」
まだ、起動したばかりなので身体の動かしかたも慣れてはいないのだった。
このこと自体もまさしくそうであったし、しばらく痛そうにしながら涙目になりかけていて、それから、てへへ、とおちゃめな失敗として取り繕おうか…という感じの妖精の仕草に、
「 」
なぁ、みんな、聞かせてくれ、
こんなのやられて、ハートを射抜かれない男って、いるのかなぁ。
(みつお)