機装少女戦・フェアリーメイデン!~模型の国のプラスチック・プリンセス~   作:もにもに+マウンテンヘッド

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分話版 第二話 2-4

 

 

 

 

 

ファミレスの前に停められていた黒いリムジンが走り出していくのを見送って、浩介はカウンターで精算を済ませる。

 

 

 

一応は清貧な男子高校生の範疇だと自称する浩介も、さすがに如何に相手が正真正銘のお嬢様で金持ちの娘であろうとも、年下に割り勘をさせるつもりはない。

 

 

 

 

そんな彼の日常において数少ない甲斐性の発揮機会はすぐに過ぎ去り、そして店の外へと出た。

 

 

 

 

空を見上げれば…ー午後の空。

快晴一過、やや空には雲が掛かり始めている…数日後は、四月に入っての初めての雨だと気象予報では予告されていた。

この商店街には街路樹に桜を植えているのだが、今週中が、散り際の桜の、今年では最後の見納めになるだろう。

 

 

 

 

「はぁあっと、」

 

 

 

 

ため息のようだが…ーいや、申し訳ない。ため息だ。正真正銘の、嘘偽りもない、本物のMADE IN JAPAN のため息であった。

 

 

 

 

チェック柄のグレータータンに暗色のジーンズを組み合わせた彼の背中には、楽天のとあるショップの広告をまともに受け止めてフェアリーメイデンをお迎えする日を待ち遠しく思いながら数年前に買い、このたび目出度く押し入れの外の住人となったばかりのタウンルック・リュックサックが背負われている。その中身には、前任のメッセンジャーバッグから引き続き、常に有楽製菓のブラックサンダーを三つばかり程投入している。

使用用、観賞用、保存用…ではない。これが、ブッコフやアキバ巡りの無二の友だった。あしからず。

 

 

 

つまり、最大限までに気は使っている素振りだったが、見事なまでに、ステレオなオタク・イメージのそれだった。

 

 

 

そして、その背負いベルトのフロント側左右には、厳重に固定が可能な装着用フックが数点あつらえてある。

そうしてそれの右側に、浩介の念願が叶ったそのものである“妖精”が、リュックの付属品のフェアリーメイデン用ポーチに収納されていて、寝袋状になっているそれから、興味深げに商店街の風景をきょろきょろとしている妖精の、肩から上が覗いている格好であった。要するに、大昔の携帯電話のカジュアルと同様である。

 

 

 

 

ごらんの浩介、フィギュアを装着している時点でダウトだと思われるだろう。

 

 

 

 

しかしや今や、ほかのアレックスロイド以外にも、フェアリーメイデンをウェアラブルと組み合わせてスマホの代わりとして持ち歩く者も、巷を見ればあふれかえっている。

 

 

 

今コウスケがぶらぶらとしているこのゆめがおか商店街だって、みてみなさい。

 

 

 

道を行く、近くの幼稚園から近所の児童遊園へと通う途中だろう園児たち。その子たちの中にもちらほらと防犯ブザータイプのアレックスロイドや“妖精”を持っているものはいたし、なにより引率のせんせいの肩には、先生と同じ保育エプロンの格好をしたフェアリーメイデンが、

 さらに補助として、メダロット型やゾイド型やロボポン型アレックスロイドが、

 これはなんとも贅沢なことに、設定等身大サイズのものだ!

 これが、園児たちとせんせいたちの、その保育の補助援護を、いままさに取っている。

 

 

 

学期始めの短縮授業で早く終業したのだろう小学生や中学生たちも、皆、校帽だったり肩の上だったりランドセルの上だったりのアレックスロイドに“妖精”を傍らに、それも仲間に交えて他愛もない会話だったり楽しい話題の共有だとかなんかをしている最中。

ランドセルの端から、ゾイドステルスバイパーが、なついてリラックスした様子で、持ち主の子を楽しげにしている…

 

 子供たちにとっては、サイズ・スケールの大きいアレックスロイドは、ぜいたく品だ。

 でも、そんな彼ら彼女らにアレックスロイドの獲得の機会がないのか?と言われると、そーいう訳ではない。

 

 かつてのガチャポン玩具、ガチャポン人形、食玩フィギュア、ないしは食玩。

 フックトイ……

 

 相変わらず税制法上での懲罰的課税により原価に比して過大に流通価格は高ばっているが、

 要するに、それらチープアイテムというのでも、アレックスロイドとしての潮流は到来しているのである。

 

 彼らの文房具や物入を見せてもらえれば、中には、

 ガンダムのSDやリアル等身…SDフルカラー、ジーサイト、ガンダムコレクション、コンバージ、アンサンブル、…アサキン、ユニユニ、アーティファクト…Gフレーム、モビリティジョイント。

 ゾイドコレクション、メダロット……その他その他etc、

 その他、宝物がもろもろ!

 流行りのニジゲンコンテンツの商品として毎期数多く流通する、

 マスコミアイテム・アレックスロイド。

 その他様々多様な、数多くのコンテンツ、IPの産物。

 或いは年齢性別問わずツワモノになると、美少女のカプセルサイズスケール・フェアリーメイデン。

 一つ、200円から千円くらい……

 原料であるオリゼリマの廉価化も追い風となって、

 それらマイクロ・アレックスロイドは好評である。 

 ガチャポン文化、食玩文化は、このアレックスロイドの技術的到来によって、

 新潮流となって、ここにすでに勃興している。

 

 さらにすると、なにも立体として嵩のある存在だけが、アレックスロイドやフェアリーメイデンという訳ではない。

 俗にカードロイド、フラットロイド、と呼称されているジャンルがそれである。

 主流のフェアリーメイデンやアレックスロイドはオリゼリママイクロマシンで全身構成されている。だが、同様の事は、なにも必ず立体物である必要は、技術とアプローチ技法の高次化・集積化が進んだ現在、より可能性ある世界を実現するに至った。

 トレーディングカードや下敷きといった、それら薄物である、

 マイクロチップの内蔵されたクレジットカードなどが実用化されて、かれこれ半世紀以上は立つ。

 アレックスロイドやフェアリーメイデンというのを成立させることは実現してからかなり時間がたっていて、されど、それらは嵩張り、費用もかかる。

 ならば、そう、まるで古典作品の絵画の中の住人のように、

 平面の物体物質の中に、アレックスロイドの必要要件を構築し、

 それにより、まるでアニメの遊戯王やデュエマ、ウィクロスのような、それという作品で描写されるような、カードの相棒、…それが現実に実現した。

 カードや絵、冊子、それらの中を媒体に、アレックスロイドを成立させたのである。

 これがフラットロイドである。

 

 ……青年誌や成人誌のセクシャルコンテンツも発展と発達を遂げている……

 オリゼリマ製の電子ペーパー・使い捨てにしてもいいし、或いはコレクションするのもいいし……

 PCゲーム誌やアニメ誌においてもそれらのIP、コンテンツを生かしての展開もされているが、

 前述のセクシャルコンテンツの場合だと、

 それその物が個のある知能思考入りのアレックスではない、限定された作用効能……セルフプレジャー……に特化した、

 一種の、吹き神。スタンド、あるいはポケモンのみがわり、それらめいたものと原理である。

 これを憑依させたものを、媒体として使うことにより、

 セクシャルコンテンツはかつてない進歩を遂げ、性産業の形態は大きく変化したのがこの時代であった。

 

 ちなみに、カードロイドは筐体四隅に展開式のマニュピレータがな移送されており、

 展開すると、おなじみのコネクトンのようになる。…これで自走することが可能だ…

 返本などで廃棄された本のおまけは回収分別センターにて

 抜き取り回収がされ、国や各自治体などの予備管理運用部門にて、

 改めましての人(?)生を開始するので、心配は不要だ。

 

 同人誌といった場合でも、

 なんならば個人作成したりでのアレックスロイドを憑依させ、個人出版でフラッとロイドなりを組むノウハウも、昨今急速に高次化が始まっている。

 

 さらにこれというのは、フラットボディ・ソリッドボディとわず、アレックスロイドの標準機能である超音波フェーズドアレイの効果能力により、

 人間とコミュニケーション以上に、スキンシップも…そう、取ることができるのだ。

 

 それはとにかく…

 年少さんも年長さんはじめ、年上や大人たちにとってもありがたい話である。

 

 

 

街頭で不動産業者のティッシュ配りをしている若いあんちゃんだって、着込んだ蛍光オレンジ色のビニール・ジャケットのユニフォームには、ほら、胸元のポケットに妖精の相棒がいる。

 

 

 

ママチャリを駆る主婦のオバチャンたちのその荷物かごの中にも、SIMオプションの認証をしてwifiを使えるようにしたフェアリーメイデンの妖精が、ネットのチラシ比較サイトからのリアルタイム情報を主であるマスターに報告とおかいもの作戦の提案をしている。

 

 

 

振り向けば…部活の途中だろう若い男子高校生達が、アニメとのタイアップはもちろん、フェアリーメイデンなどのALEXシステムのメーカーと共同で企画されるのも流行っているコンビニのフェア・キャンペーン目当てを終えたばかりに、それぞれのアレックスロイドのや妖精の相棒、バディ…を連れて、サンクスやスリーエフ、ポプラから出てくる所。

 

 

 

そのコンビニの駐車場では、一人だけ見慣れない制服の、車止めに座り込んだ女子高生が、何か神妙な面もちでウェアラブルの空中投影スクリーンをタッチしながら、側の妖精と何事かを会話している。

 

 

 

一月まえにアジアンフーヅの店から鞍替えしたばかりのタピオカ・バーの前では、店員のおねえさんが今日もツレナい道行く人々を相手に、おそらくは業務リースで入れたのだろう…店員の格好をした手持ちの妖精たちと一緒になってチラシ配りをしている。

 

 

 

その二階を見てみると二年前に出来て今もしぶとく生き残っているメイド喫茶があるのだが、そこの店員であるメイドの客引きが、同じメイドの格好をした妖精たちとともにマイクとスピーカーで活発な歌を歌って宣伝をしている。

 

 

 

新婚だろうか、カップルだろうか…ー

仲睦まじげに手を握って歩く若い男女の肩のそれぞれには妖精がいて、そして三体めの、二人の間の子供よりも早く…新たな電子の命が、二人の手が結ばれて握る家電量販店の手提げ袋の中にはある。

 

 

 

道を行く営業のサラリーマンの背広が横を通り過ぎると、その片手のアタッシュ・バッグには必ず妖精の入ったポーチが装着されているのが分かる。

飛び込んだ後での交渉の場で妖精がいるのといないのとでは、商談と交渉、その説得の成功率に大きな差が出てくるのだ…ー

 

 

 

 

 

 

 

プチ・世紀末が、ここにはある。

 

 

 

いや、今や日本中がこの様な状況だといってもいい。

 

 

 

 

 

 

 

腕時計型のマジック・アイテムを使わなくたって、非日常と紙一重の現実が、今、そこにいる僕。

 

 

 

妖怪がどこにでもいる、ではなく、アレックスロイドと妖精がどこにでもいる、なのが、この2060年代の日本の日常であった。

 

 

 

 

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