機装少女戦・フェアリーメイデン!~模型の国のプラスチック・プリンセス~ 作:もにもに+マウンテンヘッド
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コウスケの自宅…ー鶴来家の家は、私鉄・聖蹟聖ヶ丘の駅の北口から四分の距離にある。
一旦南口に出てしまうと、常に昇降エレベーターの順番待ちをしている買い物帰りのママチャリ主婦の群をどうにかかき分けないことには使えない(階段は疲れるので使いたくない!)、私鉄線の複々線線路を跨ぐ跨線橋以外には、踏切の待ち時間が中々辛抱を要するのだが……まぁ、1980年代に分譲の開始された新興住宅街、という奴の範疇である。
「あー、買った買った…」 「ますたぁ、ますたあ!」
浮かれポンチになったコウスケは、あの後チェシャ猫の木に直行。
迸る物欲センサーのままにめぼしい物を買いまくり、とうとう、後のこり三日は持たせなくてはいけない大切な五千円と予備費の一万円を使い果たすまでに至った。
それと差し引きにして、今、コウスケの両手には中くらいの紙袋が三つ握られていて、それの中には無数かつ大量のフェアリーメイデン関連アイテムの数々が入っているのであった。
激しい戦いであった…ー
戦いを終えたのは、あれから三時間が経って夕方の五時になろうか、というつい今しがたの事である。
「さぁて、」「ますたー?」
今、自宅への路地の最後の曲がり角を通った所だ。
これからする事と言えば、まずフェリに一番にあうコスチュームはどれかを試す二人だけのファッション・ショー。
それから、あれこれサンプル品を買ってみた、フェアリーメイデン用・模造(フェイク)食品のトライアル。通常のバッテリー給電とは別に、経口咀嚼を経てフェアリーメイデン内蔵のホビーリアクターによって効率よくエネルギーに変換が可能かつ、オリゼリマ製であることが大体であるそれは、自己代謝と新陳代謝が可能な現代のオートマトンたるアレックスロイドにとっての、栄養剤、機体修復材でもある……な、要するに専用のエサの事だ。如何に電子生命のALEX知性とはいえ、食べ物の好き嫌いは個体差である。
最後に、フェリのお腹を膨らませてあげた所で、腹ごなしの運動…ーロングセラー商品シリーズとなるハセガワ社やアオシマ社の1/12アクセサリーキットを幾つか買ってみたので、前々からコツコツと作っていた各種ストラクチャーとも組み合わせて、これらで公園もどきや運動会もどきをやってみるつもりだった。
おやすみの為のフェアリーメイデン用寝具も購入したし、それからそれから、それからそれから……gff、gff………!
「ぐふふ、ぐふぅふぅ!」「ますたあー」
一方、コウスケは家にたどり着いていた。
流れるような手つきで門扉を開け、敷地の中に入ったらばそれを閉め、そうして鍵を取り出して家の扉へと向かおうとして…ー
浩介の顔が、凍り付いた。
なにも、家の建物が爆撃によって吹き飛んでいただとか、謎の組織によって消滅させられていた…とかではない。
だが、それに等しい状況が、今、発生しようとしている。
扉の前で一段、段になっている玄関口。そこにはあの小包の包装がころがされている。
目を上げると、カモシカのように細くしなやかな一対の脚を包む黒のニーソックスに、エプロンの前垂れの下端が前に掛かった、聖ヶ丘学校高等部の制服のスカートの裾が見えた。
その脚の間には、ゆらぁりゆらりと揺らめく、長いポニーテールの先端が見え隠れしている。
ぱし、ぱし、となにかをキャッチする音が聞こえてきていて、その音の正体は、部外者としては彼女だけが持っている鶴来家の合い鍵を、手で剣玉遊びにしているからに他ならない。
つまり、その、家の扉の前に、立ちはだかっていたのは…ー
「おそかった、わねぇ?」
顔をひくつかせながら、眉と目を怒った時のハルヒのようにしながら、
制服の上にエプロン姿の…
吉永さん家、ではないが、門番のごとき少女型ガーゴイル(悠里)の姿であった。