機装少女戦・フェアリーメイデン!~模型の国のプラスチック・プリンセス~ 作:もにもに+マウンテンヘッド
第四話 分話版 4-1
第四話 黒のレベッカ
次の日、
がさ、がさ、がささ、
「………、、、」
昨日と同じ聖川の堤防で、例の少年(仮)……改め少女が、なにやら捜し物をしている。
引き連れる者たちはおらず、一人きりだ。
草藪などをかき分けたりしながら、懸命な様子で探しているが……見つからない。
その格好を観れば、昨日とは違うお出かけ用の組み合わせ一式なのだろう服装であるが、“帽子が無い”。
がさ、がさり
「………、、、、」
がさ、っと
「よっ、」
「 ! あっ…」
突然の声かけに、わたふた、しどろもどろ、…という体で慌てた少年(仮)…ーならぬ、少女、に、ここに来るだろうと思って今現れた浩介は柔い笑みで迎えたつもりであったが、
「ひっ、」
…己の絶望的なまでの人相の悪さに、やや傷ついた。
「な、なななななななんだよっ?! オレーマイリ、ってやつなのか!!? な、なに、なんなんだ、なにされるんだ?………、…? ーー~ーっ!?、~~おおおおオレにっ なにをするんだっ、オイ! オレはおいしくないぞぉっ!?」
「取って喰いやしねぇよ。…ホレ、」
「あっ」
帽子、をコウスケは少女に手渡した。
「あ、ありが……「そんじゃな、」――!、ま、まった、ーーまって!」
一瞬遅れた感謝の言葉にコウスケは別れの挨拶を続けようとして、それを少女が遮ったのは次の瞬間であった。
* * *
「つまりニーチャン、ゾイダーなのか?」
「一応そうなるね。ガンプラやメダロットもやってるけど、ウチのエースはゾイドが多いよ」
「すげえ! …去年の地区大会二位出場かよ!?」
「んで、そっちは戦隊だろ? 得意なのはさ。どうだよファイヴレンジャー。今日も面白かったけど、観なかったのか?」
「………」
「……ん?」
鉄橋が遠くに見える河原の堤防上を歩く浩介と少女の二人は、なんでもない無難な話題から始まって、いつしかALEXの事で積極的に言葉を交わすようになっていた。
春の麗らかな陽和(ひより)の事だ。
コウスケが配ったブラックサンダーをもしゃもしゃと咀嚼しながら……
ブラックサンダーの味を理解する者同士、マニアの血は争えぬ、である。
「ユウキ。明音祐希、ユウキ、ってよんでくれ!」
最初に、少女……改めユウキはそう名乗った。
よろしく、と返して握手をする浩介であったが、男みてーな名前、だとはいわない。ジェリドじゃないからね。
「それで、なんでオレを狙ったんだ?」
「それは、……その、」
ごくん、と口の中のブラックサンダーを飲み干し、
これをみてくれ、とその言葉を言った少女は、続きざまに己の付けている袈裟懸けバッグからそれを取り出して、
「、……なんだよ、コレ」
「………その…」
治せるかな、とユウキがコウスケに問うたのは、…――
「…フェアリーメイデンがメルトランディならこっちはゼントラーディの、ALEXジョンスミス・ジャンルのコンバット・ジョンの部品じゃねえか。サージェント・グレッグ・タイプの五年前のモデルの。どうしたんだ、こんなに破損していて…」
「こわされた、」
続いてユウキが、バッグの中のーーお出かけ派神姫ユーザーならご用達なタイプのーータッパー・ケースから取り出した物を観て、コウスケは呻いた。
左胸のポーチの中で、フェリはすやすやと寝ていたから安堵できたが……
同封された朱いカーネーションの華が、手向けの一輪であるように……
……四肢は元より、全身が破壊された格好の、一体のGIジョー系・男性型ALEXの素体。
頭なんか特に非道い。
えぐられたように顔面が無くなっていた。
「………」
「学校の帰り道に、よくわかんない女たちにやられた。ALEX使いだったはずなのに、……見せろと言われて見せたら……ぐすっっ、取り上げられて……」
フェアリーメイデンもコンバット・ジョンも、顔面パーツもふくめた全身のパーツは交換可能な作りとなっている。
普及と洗練が進んだ今、ALEXオートマトンは全身のパーツが高度に上位下位問わず互換規格化されていて、購入した原初の状態から各部のパーツを好みの物に変えていったりする盆栽的楽しみ方は特にフェアリーメイデン・ユーザーのテッパンである。
されど、どんな暗器をつかったのか……こんな無理矢理にはぎ取られたとなるともう直すことはできない…、フェイスパーツのツメが折れて突っかけ部に残ったままであるし、フェイスパーツ内の筋肉や骨に当たる部品が、眼球に当たるマイクロピン・カメラは割れて破損し、顔内部のインナーフレームに当たる部品が、すべて修復不能に傷ついていていたのだ。
「アレックスジョンスミスも様々あるが、
これは…UDM(USAドメスティックモデル)の、アメリカ大陸版の、ホーカブ社製のコンバットジョンだな。
UDM仕様のコンバット・ジョンはあくまでも玩具としての作りだからな。日本(こっち)の特にフェアリーメイデンだったりでは、基準以内であるが絶対的な耐久性を目指してとにかく高強度な作りと超高耐久な高級素材を使っているけど、米国(あちらさん)は規制であっち由来のALEXはそうできづらい。
ショットガンの散弾の直撃か手榴弾程度の威力で確実に撃破できるよう、万が一の暴走時の対処に備えた合衆国法でそう規定されているからだ。特にアメリカンのトイ・ユーズの奴は意図的に、脆く作られている……
で、そんでもって日本製アレックスやフェアリーメイデンを敵視しているときたもんだ。
メダロットならメダボッツ! ゴジュラスをみればゾイドジラ! 一条光はリック・ハンター! っとか言うくせに、
ボヤキ屋トミーの発売開始、おるすばんひまりの開発成功からこっち、日本から接収同然に技術を盗んでおいて政治圧力を掛けてくる恥知らずなやつらだ。今度の貿易交渉ですべての女性型ALEXはマテル・ハズブロ連合のバービー型ALEXの規格と仕様に統一しろだのとまだ騒いでるらしいが……で、結論だよな?」
「うん」
「…もう、“この身体は治らない”」
「ッ! ……っうぅっ…」
「まて、俺の結論はそうじゃない。この身体は治せないが、代わりになる身体を見繕う事はできる。つまり、“生まれ変わる”ことならできるんだ。流石にアメリカとはいえ、もうある物の“ネジの再発明”なんてのは嫌がるから、このコンバットジョン・シリーズは、コトブキヤによるALEXマシニーカ各種やALEXフレームアームズ・ガールで確立された、内部コンポーネントが現在の日本式人型ALEXの基本に沿った仕様になっているから、ね」
「そうなの、か? ぐすっ」
「もちろんだとも、胸郭内内部のコア・セットモジュールも、頭部内のプロセッサ・メモリーモジュールにも、ここだけはフェアリーメイデン同様に高強度化されているから傷一つありゃしなかった。コレなら十分、いける!」
「……そっか」
再び、鉄橋を電車が通過した。
桜の花は散りかけていたが、遠くからは今期最後の花見の客たちが騒ぐ声が聞こえてくる。
その声に引っ張られたかのように、ぐすりかけていたユウキの顔は不意にいたずら小僧のそれを被せたようにして、
「イイところに、つれてってやるよっ」
* * *