機装少女戦・フェアリーメイデン!~模型の国のプラスチック・プリンセス~   作:もにもに+マウンテンヘッド

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分話版 第四話 4-5

 

###5

 

 

 

 

“ぅっ”

 

 

右脚部と左腕に負荷がかかったその時に、である。

――古傷を庇うが如くにレベッカの動きに一瞬のタイムラグが生じた。

 

されど次の瞬間にはフェリの目の前からは消えて、

――だれにも今の様子を見せることなく、誰も知ることもなく、

再び自らの得意領分である高機動戦闘をジオラマの中でくりひろげん、とした。

 

 

「下がっていったな」「すげーなニイチャン…!」

 

「やったやったよーっ!!」

 

「次いで、だ。フェリ、ライフルをスタンバイ!」

 

「わかったのねん!」

 

 

コウスケとフェリの側は、再びガンダム・ライフルをスタンバイ。

照準が作用して、相手のシルエットからロックオン・マーカーが離れないようになって…――、

 

 

「ふぁ、ふぁ、ふぁ、ふぁいあ!」

 

 

ターゲットに向かって、フェリの手元のライフルから銃火のホログラムが放たれた!

 

 

 

「あたって、なのねん!」

 

 

飛翔していく仮想の曳光弾の軌跡が、この仮想の空の空中を切り裂いていく。黒い外装とも相まって、まるでクノイチの如くビル街の空中を駆け抜ける、黒いレベッカを追いかけて。

フェリはそう念じながら…――

 

 

一発目

…回避された。

 

 

二発目、

――これもよけられた。

 

 

三発目

――――これも!

 

 

「あ、あたらなかったのねんっ!?」

 

「大丈夫だ、相手の奇襲は二回とも退けられたんだ。すげえよフェリ!」

 

「! はわぁあぁぁっ…! なのねんなのねんなのねんっ!♪」

 

 

コウスケに褒められ、喜ぶフェリだ。

 

 

(――さぁて、どうするか、)

 

 

一方のコウスケは作戦会議を脳内で開いていた。

 

 

こちらは、まずまず…――フェリの熟練度はまだ未熟だ。昨日の晩は一通りの練習は積んだのだが、先ほどの照準の未来予測…俗に言う未来予測射撃…は甘かった。

フェリの咄嗟の機転故、焦ったのだろう…外部連携の補助演算が遅れたのだ。

シャルドール改(の頭)さんに計算補助を頼んでアテにすればよかったのだろうが、中途からそれを頼んでいる内に相手は逃げることが叶っただろう。現に今、四発目のライフル弾を放つ前に……黒いレベッカはビル街の谷間へとその機影は消えていった。

さて、こちらはミサイルも中型のものは手を着けていない。

ライフルの残弾は豊富、弾倉はこちらは四マガジンもあるし、こちらは潤沢に用意した兵装をまだ全部使っていない状態である。

 

 

そして相手の持つ兵装で、残るものは…――

 

 

びぃーっ!

 

 

「なのねんなのねんなのねんっ!♪…――?」

 

 

喜ぶフェリに、背中のシャルドール改(の頭)さんが、ブザーのような警告音を発させてからメッセージを表示させた。

 

 

“被照準警報”!

 

 

「! ますたぁ、ぼくろっくおんされちゃったみたいなのねん!?」

 

「相手との距離を見計らうに、そんで無照準で迫撃砲を水平射撃して当ててくるレベッカだ。この間合いで照準が必要なものは…――」

 

 

ミサイル!

 

 

「ど、どうすればいいのねんっ?! こわいよーっ!」

 

「焦らなくていい。相手の持つM292・ファイアトーチ・マイクロTOWかM304・ジャベリンかがのミサイルが発射されて、それを検知したら…――」

 

「あ…――い、いま発射されたみたいなんだよん!」

 

「よぅし、」

 

 

相手から発射されたのは、携行型対装甲ミサイルであるM304ジャベリンとおもしきパターンであることは、自身のホロレンズに投影された鳥瞰図上での、そのミサイル弾の飛翔軌道からコウスケが経験知と照らし合わせて判定したその詳細であった。

 

威力は先ほどの迫撃砲と同級!

 

文字通りレベッカ型の必殺武装だ。試合の時間経過は既に四分、つまりはこれでケリを付ける、という意思表示なのだろう。

…――さりとて今、コウスケは有効な対処法を持ち合わせている。

 

 

「いいかフェリ? フェリの付けてるフロント・アーマー(腰部装甲正面部)の裏にワイヤーにつながった取っ手があるだろ、指示したタイミングで、それを引っ張ればいいんだ」

 

「こ、こうなのねん? …あっ」

 

 

フェリはその取っ手を掴むとき、多少その取っ手を引っ張る形で力を入れた。すると、“装甲が動いた”。

 

遊動する形にフローティング装甲として組み合わさったガンプラとマクロスプラモのパーツが、裏に通されたナイロンひもが引っ張られることで、連動して、ある形状を作り出す、…――というギミックだ。

 

 

それは、ミサイルの飛来は、急転直下…――直後にこのフェリをしとめんとその飛翔を終えんとする、その一瞬だった。

 

 

〈今だ、ワイヤーを引け!〉

 

「おーるらいと、ますたぁ!」

 

 

そうすると、

左半身の遊動装甲が、各部品が集合して一つの“盾”になった瞬間だ。

 

フェリに対しての直撃軌道。

つまりそれへ、真っ正面から飛行してきたミサイルの直撃は…――

 

 

 

……――DOGWOOOOOOOOOOOOOONNMMMM!!!!

 

 

「わっ、きゃっ」

 

 

爆風とその威力は、先ほどの迫撃砲よりもさらに上だ。されどしかし…ー

 

 

「ぁっ…――だいじょうぶなのねんっ? やったやったよーっ!」

 

「ふぅっ、」

 

 

フェリはこの攻撃でも無事であった!

それにコウスケは安堵の息を漏らして…体内で暖められたその熱風で、眼鏡のレンズを曇らせた。

 

 

(そしてなぁ、)

 

 

コウスケは、己のターンを開始した。

 

 

「まず、こっちからもだ。ミサイルを、全弾斉射!」

 

「りょうかい、なんだよん!」

 

 

もう一度、ミサイルの泡のような白煙が、アーマード・フェリの全身を飲み込み包んで……そうして飛翔していった。

 

 

“っ”

 

 

飛翔していくミサイルが〈黒いレベッカ〉に殺到するのはこの数秒以内のことだろう。

それはさておき…――

 

 

(確認しよう)

 

 

“エリス型フェリ・アーマード部HP:0”

 

 

いよいよこれで、コウスケ謹製のアーマー部はそのHPを空にした。役目を果たしてくれたのだ……

されど、こうなるとただのデッドウェイトである。試合が終わればリセットがされでそれ以降も使っていけるとはいえ、ビーターゲームではこの場合、ただの障害物扱いとなり、ダメージ計算では八割のダメージがその下の素体に伝わってしまう状態なのだ。

しかしその上にはさらにミサイルポッドが設置されていて、残弾があった。

そのミサイルポッドも、たった今残弾を空にした。

 

 

(いよーし、)

 

 

そして〈黒いレベッカ〉である。

こちらは手持ち火器による対空ファランクス迎撃を行い、たった今、飛んできたミサイルを殲滅したのが……筐体の外の中継ビジョンで確認できた。

 

“これは、てごわいですね……”

 

M8小銃とハンドガン“チーフイーグル”、そして背部兵装の、1.27ミリ分解組み立て式重機関銃による三方迎撃!

 

 

まるでスノードームの雪を払うかの如き手腕で……――

 

 

「す、すっげーっ! やっぱレベっちだ!」

 

 

ユウキが感動と感嘆のため息を漏らすほどの華麗さで、〈黒いレベッカ〉は己への脅威を排除したのである。

 

つまりは、手持ち火器の小銃類を酷使した後であろうので……、これはコウスケの目算だ。

 

 

…――今度はこちらから仕掛けるのだ。

 

 

 

「さて、動くぞ、フェリ。

相手は重射撃特性のあるレベッカ型だが、この数波で俺の目算どおりなら…――。こちらは攻めてもいけるし押してもいける」

 

「えっ? どういうことなのねん?」

 

 

わからないままのフェリに、しかし不敵にニヤリ、としたコウスケだ。

続いて、

 

 

「そうしてまず最初に、フェリ、アーマー・パージを頼む。」

 

「ふぇっ?! いやなのねん! ますたーのつくってくれたせっかくのぶそうなのねん! ぜったいにぜったいにいやなのねんっ!!」

 

「というのもな…」

 

「う~、いやなのねん!」

 

「そうかぁ~…うーむ……」

 

 

主観の相違、というやつだった。

コウスケとフェリは、膠着するしかなかった……が、

 

 

“それでは、また、こちらからいきますよ?”

 

 

…――!

 

 

「えっ? あっ、わっ、きゃっ!!」

 

「うぬぅ、」

 

 

フェリがためらっている間に、再びの銃火が黒いレベッカから飛来した!

今度は背中の1.27ミリ重機関銃を使った射撃だった。

威力のある射撃だ。

何発か、被弾……二発かすめて、一発が外装装甲に刺さった。

しかしあたり判定はそれを貫通して、その下には……外装装甲の外縁部であったので、フェリの素体になんらかのダメージが及ぶ、ということとはならなかった。

 

今のは不発であった。であるが…――そうしてまた、銃撃が再開される!

 

 

「フェリ、こっちも撃ち返していくぞ!」

 

「うん!」

 

 

果敢にフェリもライフルをスタンバイ、

この一瞬の戦局は、互いにライフルの撃ち合いへと展開した。

 

 

 

そうして、

 

 

 

 

“…――! 弾切れっ”

 

 

 

 

先に息が上がったのは、黒いレベッカの方であった。

 

 

 

「かかったな、」「ふぇ?」

 

“はめられた、ようですね……”

 

 

ミサイルの迎撃に有り弾のほとんどを使い、必殺装備である迫撃砲と大型携行ミサイルを使ってしまった今、レベッカに残されている、秘められた手は残っていない。

 

 

“まだ迫撃砲なら残弾がっ”

 

 

黒いレベッカは、再び迫撃砲を使う判断を執った。

腰に半完成の状態で装着しておいたのを再び取り外し、装弾キャップを装着して弾薬装填…――という判定がされる為の行為――…を行い、装填完了。再び射撃をしたのが今だ!

 

今度は通常通りの使い方だ。

直上方向へ発射された弾丸がビル街の空を突き抜けて弾道を描き、放物線を描いてフェリの現在地へと着弾をする…――のがあと数舜後のことであろう。

 

 

「また撃ってきたのねん!? ど、どうすればいいのねんっ?!」

 

「焦らなくても、昨日勉強したろ?」

 

「…――あっ」

 

 

されどコウスケとフェリの側には、まだ次の手があった。

 

 

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