機装少女戦・フェアリーメイデン!~模型の国のプラスチック・プリンセス~ 作:もにもに+マウンテンヘッド
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「だからな」
コウスケは息を吸い込んで…
「今だ、フェリ…ー」
ことのはじまりは、今の世の中では一般的となった、“押した感覚がある”空中投影型タッチパネルが、その出始めの頃、偶にボタンにふれようとしても、逆に指が押し返されたりはじかれてしまう、壁ができたように押そうとしても鈍い感触があって、押せなくなる……という現象の不具合が多発した事に端を発する。
原因の究明が進められていく内に、空中に超音波とホログラム投影によって発生しているという原理のタッチスイッチ本体の調整不足、というのに原因は集約された。が、今度はこの興味深い現象を、なにか他の用途に使えないか……という段階まで研究が進んでいった。
なぜならばそれがさらに詳しく検証されるにつれ、にわかにホビー関連業界の周縁の人間達は食いついたからだ。
とあるネットメディアの、バグが起きたままの端末で実験して、試しにコピー用紙をちぎったものをふれさせてみると、そのまま浮いたまま静止する…という現象まで観測されたのがその根因である。
この現象は、条件さえ合わせれば、どんなシステムを構築しても(つまりどんどん小型化していっても)同様に(ごく軽い物に限られるが)“物を浮かせられる”という結果が出そろった。
そして、それを逆にすれば?
つまり、物に対して作用させるのではなく、そのシステムを積んだ物体から、地面へ、空中へ、作用させれば……――
つまるところ、ある一定の条件下に於いてこれが発現する物であろう、という段階まで要因の解析が進行した。ならば、この現象の利用と応用は可能ではないのか、と考える者も、当然ながら出現し始める。そして解析と研究が継続されて、一応は理論の骨子たるものが確立できた、とされるものこそが…ー
「“飛べ”!」
「おーるらいと、ますたぁ!」
これこそが、なにもない空間中にあっても超常現象の如き現象を任意の自在に出現・発動させる事を可能とした…ー、フィールド・アクチュエーター技術である。
一例として挙げるのであれば、
今、フェリの背後においては、本来は別機能の動作目的に実装のされていた…ALEXオートマトンの現代的スマート端末としての標準的な機能である、強力かつ高度な制御性を持った空中虚空放電と超音波発生大気振動の組み合わせによる電位差電子・空間投影配置マッピングの能力によって巨大なスイッチ回路が多層重層的にエミュレートされている状態であり、それが超高速で――機関銃の発射速度よりも早いテンポで――オンオフされることにより、いにしえの古典から名前を取ってラザフォード力場と通称される限定空間的な磁気・超音波浮力が発生する状況が出現、
この場合例を挙げるなら、例えばホーリーウイングは材質的には単なるプラスチックの成形物でしかない作り物の翼であるが、その中には超音波・電磁力場発生の為のアンテナとして専用の集積回路と超音波発生用振動子がインナー成形されている……バンダイの超技術だ。それへの通電により浮力を確保し、アンテナが発動したことで浮き上がった翼を、今度は進行させたい方向の前後の翼上の箇所で超音波の種類を変えてその誘引力と反発力を発動、これらを電子のスピードで連続的に行う事によって、あたかも“空中を飛んでいる”かのようにALEXのフェアリーメイデンを自在に浮遊移動させるのである。
原理としてはリニアモーターカーを三次元立体機動が出来るようにしただけであろうが、もたらされた効果は人類がUFOを己の手で実現させた瞬間の事件として全てが語り尽くされている。
ただ、一見すると驚天動地の超技術の顕現の如く思われるだろうこのフィールドアクチュエーターも、実の所、使用と利用ができるのは、たとえばZZガンダム・Gフォートレス形態時の翼の面積での規模では、現段階での商用において250グラム以内の、出来るだけ単一の素材で形成された無機物のみに限られる。
それら以外にも諸処の条件は他にも存在するが、つまり、生物である人間には使えないのだ。その上、対象となる物体も、極めて限られている。
そういうわけだから、未だ研究途上のこの技術は、今すぐ、何か一般大衆の通常の暮らしに役に立つものなのか、と聞かれればNO、であった。
が、しかし、ことホビーであるALEXシステムにとっては、そんな事は関係がない。
IS…インフィニット・ストラトス…、武装神姫のアーンヴァル型やエウクランテ型…、はたまたさらなる古典から名前をとればマジンガーZのジェットスクランダー! 詰まるところそう言ったものを手持ちのALEXにお手軽に実装ができるとあって、あっ! という間にALEXのホビーユーザー層の間では当たり前の技術となってしまった。
そして…――
……――DOGWOOOONN!!……QOOOOMM…
「わっ、わっ、とんでるのねんっ! すごいのねんっ!!」
先ほどまで己がいた地点へと“正確に”、迫撃砲の砲弾は着弾した!
…――が、フェリは一瞬のはばたきで、その直上へ飛翔して…――避けることができていたのだ。
エリス型は本来、空戦が可能な航空型フェアリーメイデンだ。
プリセットされている経験値でもっとも高いのは空中飛行・空中戦のものであるし、本来キットに同梱されているべきデフォルト兵装も、その空中戦を可能にするための、兵装類一式なのである。
それをコウスケは、自前のジャンクパーツからビルド・アップした武装で補ったのだ。
火球の轟く地上のその上空で、浮遊するフェリは、自分の力で舞う…――はじめての空に感動していた。
「そのためのホーリーウィング、か……!」
「こっからは俺たちのターンだ。フェリ、いくぜ?」「まかせてなのねん!」
フィールド・アクチュエーターの発動において、もっとも理想的なのがゾイドのマグネッサー・ウイング形状の部品だ。
大きく肉抜きがされていてフィールドアクチュエーター原理の許容限界重量の範囲内であり、超音波発生振動子を仕込む上で理想的形状でもあり、その上、重量体積に対してパーツ自体の大きさを大型化出来るため、より高い効果のラザフォード力場の発生を期待できる。
なもんでプテラスだったりサラマンダーが再販の度に部品取り目当てに狩り尽くされている現状だし、ALEXの空中機動戦をメインにした大会などでは、大昔のミニ四駆の如く、肉抜きのされまくった背負い物を背中にかるったALEXオートマトンたちの姿でエントリーが埋め尽くされる。
翻って、元はALEX化したダンボール戦記の武器セットとして再び商品化されたホーリーウィングであるが、こちらはとにかく、形状が素晴らしい。
表面のディテールが、他にないほどに、天使の翼として…実感ある形状なのだ。
見栄えがし、女性型系ALEXオートマトンのユーザーからは好評を持って支持されている、定番武装の一つである。
こちらもこちらでメリットがあり…――
“動かせるわけにはっ”
黒いレベッカは再び迫撃砲を使う判断を執った。
もう一度同じように装填し…――砲弾のタイマーをセット。
ねらいは、曳火射撃…――地面へ着弾する前に空中で砲弾を炸裂させ、弾丸の断片や爆発の威力で相手を攻撃する――…というものだろう。
それが今、放たれた!
「よけられる、ん、だよん!♪」
そのレベッカの渾身の一撃を、まるで蝶のように、ひらり…――とフェリは避けてみせた。
「なのねんなのねんなのねんっ!♪」
そしてフェリは直後に急上昇!
砲弾の弾丸自体も、直後に炸裂した弾片も爆風も、そのさらに上空を自在に飛行できるフェリには…――届かなかったのだ。
「フェリ、ホーリーランスの準備を」
「らじゃー、なのねん!♪」
コウスケはシメにかかった。
「チャージだ、つっこむぞ!」
「わかったんだよんっ!」
腰の3.3ミリ径ハードポイントに据えられていたランスを、展開。
エリス型・フェリはランスを構え…――
「はぁあ……――やぁあっ!!!」
“ぐぅっ”
直後にホーリーウィングを羽ばたかせて推進…加速し、空中から地上へと、一瞬のうちにレベッカへと突っ込んだのが今だ!
ホーリーランスの槍の槍身が黒いレベッカへと命中して、苦悶をあげたレベッカは弾き飛ばされて吹き飛ばされ、地上を滑走した。
…――次の一瞬でフェリは再び空中へと戻り、レベッカからの反撃は出来なかった。
この一撃の威力判定はかなり大きい。レベッカのHPは三分の一も削れたのだった。
“やります、ね…”
倒れて擱座した状態から復帰するレベッカに対して、フェリとコウスケは二発目のランサー・チャージの準備へと入っていた。
十分に間合いを取って、再びランスを構えんとしていた。
「やったやったよーっ! ぼくがんばったよーっ!」
「いけるなフェリ、このまま二撃目、いってみるか!」
「うんっ!わかったんだよん!」
フェリは今、絶好調だ。
背中の天使の翼を羽ばたかせる度に、光の粒子のホログラムが振りまかれるように、空中から地上へと降り落ちていく…――
“(なるほど…――)”
地上の黒いレベッカは、対戦相手のこのエリス型に、この幻想的な光景を写し重ねて、見た。
自分の執った試合によって、この幼い天使が生まれいでたというならば、COM機体冥利に尽きる…――
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“だけど…――えぇい、”
一瞬のモノローグであった。
しかし黒いレベッカも黙ってはいない。
レベッカは、右腕の肉薄軽量装甲板にマウントされた、三発のマイクロTOWミサイルを、一発づつ順番に放った。
そうしながら、ナイフを構え…――
「ど、どうくるのねん!?」
「ミサイルはランスの同軸機銃で撃墜、突っ込んでくるレベッカは…――」
“いいきらせるまえに、やります!”
「ふぇぇ!?」「ぬっ」
黒いレベッカは跳躍して、今、フェリへとそのナイフの切っ先を向けた瞬間だった。
一方であるが…――
今、フェリの装備するホーリーランスは、改造がされてランスの槍身横に、同軸の機銃が装備されている状態である。
「や、やってみるのねん!」
マクロス譲りのハイマニューバー弾とは違い、迎撃されることを考えていないただの有線誘導ミサイル…TOW…だ。
ランスの同軸機銃を斉射して、一薙ぎしただけで、全て撃墜する事が出来た。
が、しかし……肉弾となって突っ込んできたレベッカが、まだ残っている!
「フェリ、ランスでいけるか?」
「いけるよん!」
“!”
フェリの持つランスの切っ先は、フェリにとっての正面へと向けられ…――
「たぁ!!」
今この瞬間、レベッカに対するフェリの攻撃が行われた。
羽ばたいて推進したフェリは、レベッカの腹に向かい、ホーリーランスの切っ先を突っ込ませたのだ!
“それはあまいです、っ!”
「「!」」
次の瞬間だった。
黒いレベッカは、構えていたナイフをホーリーランスへと、“切りつけた”!
このナイフの一撃によって、ホーリーランスの切っ先はレベッカへの直撃軌道から外れ、フェリの一撃は避けられてしまった。
同時に、そのナイフによる切りつけを力点として、レベッカの体はフェリの直近での滞空さえもやってのけていたのだ。
そしてレベッカは…――
“はぁあ!”
返す刀で再びナイフの切っ先を裏返し、勢いのまま、未だ突っ込ませるしかないランスの一撃によって隙の生まれた、装甲の下の、フェリの本体へと切りつけようとした!
「ふ、ふぇえっ?!」「これは…」
対するフェリの動揺から、レベッカは己の勝利を確信した…――
「で、でも、…――まだおわってないのねんっ!!」
しかしフェリも、まだ打つ手はあったのだ。
「えぇーいっ!」
“!?”
腰部フロントアーマー裏の取っ手を、“引っ張る”。
するとアーマード外装の隙間からねじ込もうとしていたナイフの刃身が、互い同士で隙間無く集合しようとした装甲パーツによって…――
「!」「うそだろっ!?」
“!”
ナイフの刃は、合体しようとしたアーマー部品によって挟まれて、それよりへと刃を刺すことはできなくなった。
つまり、アーマーパーツによって、レベッカのナイフは、“白刃取り”されてしまったのだ。
“それでもまだっ”
直後にレベッカは、ハンドガン“チーフイーグル”を使う判断をした。
残弾は二発。
自由な左手で、腰のホルスターへと手をかけた。
しかしそれよりも早く…――あるいは同時に…――
「あ、あたってほしいのねんっ!!」
フェリは、ランスに同軸装備された機銃のトリガーを、これ以上にない程の力で、引き絞った。
ゼロ距離射撃…――というやつだ。
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