機装少女戦・フェアリーメイデン!~模型の国のプラスチック・プリンセス~   作:もにもに+マウンテンヘッド

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第三話 ビーター・ゲーム!~河川敷での決斗~

 

 

 

 

 

 

 

 

「要するに、あたし、思うのよね? 例えば自分の、この世界に私が生まれた日からの想いびとがある日理想のお嫁さんを見つけてしまって、出会ってしまって、その女神さまの国に連れ去られてしまったらどうしよう、とか、」

 

 

 

 

緑茶党である悠里はそれだけを発してぐびり、とグラスを傾け、

 

 

 

 

「…ま、まあ安心しなさいっ! 例えそうなった段の後のておくれのおしまいの段取りであったとしても、この志津菜流格闘生存暗殺術八段の有資格者たるこのあたしこそが、例え火の中水の中、灰になってようがドザエモンになってようが、かならずあんたの指の一つは絶対に手に入れて培養再生器にかけて…ー!「ますたぁマスターますたあ!」

 

 

 

「なんだ」

 

 

 

「呼んでみただけでしたぁーっ!(あんこ)」

 

 

 

「………」「………」

 

 

 

ぺちっ

 

 

 

「ひゃうっ!?」

 

 

 

全く、こいつは…

 

デコにピンを軽~くゆる~く威力無くその額に与えてやりつつも、浩介のその顔はデレデレのにやにやだったとさ?

 

 

 

 

急速に言語能力を獲得しつつあるフェリは、ものの数時間でここまで会話できるようになった。

 

 

 

 

生まれたての子鹿でもこうはいかないぞ…とも思いつつ、しかし、感動である。

 

 

 

 

「あっ、そうだ!」

 

 

 

コウスケは瞳に電球を点らせた体で手をハンマープライスさせると、

 

 

 

「今日はお祝いに、昨日ためしてみたレトルトの模造(フェイク)ハンバーグはどうだ? 一流の三つ星有名ホテルのレストランの専属シェフの持ち妖精が監修の、あの! 煮込みハンバーグの! なぁフェリ!」

 

 

「!」

 

 

 

果たして浩介からの提案を受けたフェリ嬢はというと、ぱぁ…! と顔を輝かせて、その表情をころころと喜びの物に美鈴を転がすかのように浮かべさせてから、

 

 

 

「たべたい!」

 

 

「だろぉ? 後で、準備するからさ。いや、今のこれがとっとと終わり次第、直ちに直ぐにでも…ー「ちょっと、」

 

 

 

 

 

「……………」「……………」「………?」

 

 

 

 

 

悠里はジャパニーズ・ゴメンネ・チョップを浩介の顔と卓上のフェリとの間に差し込むと、それからこほん、と咳を切ってから、

 

 

 

 

「だからさぁ、思うのよ、って。もしそうなったらば、首でもくくっているだろうあたしは果たしてこの世から未練なく成仏できるのかって、つくりもののロボットの妖精なんかに初恋からのずっとの相手をとられたあたしは、果たして狂わないでいられるのか、って、」

 

 

 

この時ばかりは、笑っていない。

 

 

 

「だからあの日、その前に、そうなる前に実力行使にでたの。ヤンデレ? そりゃあ上等よね、冷凍イカの目でも空鍋でも包丁女にでも、GOAL! なんてのも、ナイスボートなんてのもその段になったらなってやるわよ。ええ! えぇ…うふ、ふふふふふ…ー

 

そ、そっそりゃあ、悪かった、とは思ってるわよ…ーでもあたしにはなんにも買ってくれなくなったのに、妖精なんかにはあんな大金、…ー

 

そんなんだったからさぁ! 昨日は! 大喜び! しましたとも! ええ! そりゃあ大喜びしますともさ! 好きな相手から三年四ヶ月十六日ぶりにプレゼント、だなんて! しかも! コージーコーナー! いちごのしょーとけーき! あたしの大好きな! さぁ! でもさぁ! あやしいなぁ…、だなんてつい疑っちゃったあたしなんかの、厭な女だっていうような気持ちを! そんでもってガサ入れしてみたら実際その通りだった! ていう! その惨めな気持ちをぉ! あんたはどーやってオトシマエをッ「ますたー!」「ふぇ~り?」

 

 

 

 

 

 

「「あーん!」」

 

 

 

「…」

 

 

 

だん!

 

 

 

「ひゃぁ!?」「なにすんだよ、フェリがおびえただろ!」

 

 

「しゃがらっしゃぁ!」

 

 

 

卓上のフェリは小さじスプーンで今日のメインディッシュの肉じゃがを、対面するコウスケはイチゴみるく味のヂェリカンを差し出して、二人はあーん、の格好で…ー悠里がそれを阻止した。

 

 

 

壁ドン、ならぬテーブルの叩きつけられたその瞬間である。

 

 

 

「ああったく、悠里はなんでこんなに妖精をぉ…、」

 

「パードゥン? アーハン?? んなことはどうでもいいわ。ロボットなんかと人間サマとの恋愛ごっこだなんて、茶番もいいところなのよ!」

 

 

 

コウスケはロマンのわからない奴め…と苦い顔のしきりであったが、

もう片方は、というと…しばらく意味が分からずきょとん、として、けれど、あまり自分にとっていい意味ではないのだろうと想像して、フェリはひどく傷ついた表情になって、顔を伏せた。

 

 

 

「一番重大なのはねぇ??」

 

 

 

悠里はかぶりを振って、

 

 

 

「な・ん・で、フェアリーメイデンをあんたが持ってんのか、って事よッ!」

 

 

 

だぁん! と…再びテーブルに雷鳴が落とされた。

 

 

 

「ふーん、」

 

 

しかし、一方の浩介はどこ吹く風で、

 

 

 

「なんで、って、おれのオトウチャンとオカアチャンからの三年越しのクリスマスプレゼントなんすけぉ(不満)」

 

 

「見たわよ! 行って勝たなくても、あんなんなんかのトラップに決まってるでしょぉ!!!!!!!!!? きっと、何かの新手の詐欺商法かなんかなんだわ! そうなのよ! とっととクーリングオフしなさい! 妖精を! クー!リング!オフ!クー!リング!オフ!(海王拳みたいな節のつけかたで) さっさとへーんーぴん、 Go Do it!」

 

 

「“おぉおおぉおおぉ怖いでちゅねーフェリー? リアルの女はこわいでちゅーーーーー”相変わらずなにいってんだかワカンネーし、生身の女なんざはこれだから、」「こわいですねぇ、」

 

 

「エェーイ、あんたの! そこが! ダメなのよ! ゴラァ!! こんのピーピング・トムのフェアリー・ファッカーが! 罰当たりなのよ! 人間なら人間のことわりに従いなさい! ここに!カワイイカワイイなまみのおんなが!いる! あんたのおもう通りになるのに! なんだってできるのに!やれるのに! チクショウ! 私ごとゴッドのサンダーにバーストされて燃やし尽くされればいっそあの世で幸せなケッコンセイカツを…“「やめてよね、」”…ーえっ、」

 

 

 

この瞬間、瞬時にイケポされてしまうチョロインになる程にいつになく浩介がイケメン・フェイス(SIDE:悠里)で己への応対をしてくれていようとも、

 

 

 

「フェリの教育に悪い」「それじゃねえけぇ!?」「ますたぁー」

 

 

 

やはり、その手元からこの忌々しい妖精が離れることはないのである。

 

 

 

 

「うぅーっ!」

 

 

 

悠里は、それが悲しくて、悔しくて、女々しくて(金爆)

 

 

 

「…ーハッ、まあいいわよ、あーあー、いわんこっちゃないなーぁ? 妖精を手に入れたばっかりにガッゴーも休んで、あの下級生つーか女とイチャイチャうふふ、なんかしちゃったりして、中学校じゃないんだから、今に留年しちゃうんだから!」

 

 

「むしゅめの入り用に手間を惜しまないのが親なのであることはお前が一番よくしっているはずだッ!(スタンド発動) つーか、保育園から一緒なんだから分かるだろ? 不味くなってもおまえが教えてくれてるからこその、俺に足りてないのは出席日数だけだ、って」

 

 

「それが致命的なのよ!? キーー! これだから! こっちの苦労を! わかれ!

えぇい、クソッタレのふぁっきゅーのプッシーキャット・イアイアイア! だわよ! なによ、初体験も済ませてないのにこんなに所帯持ちずかれてたまるか! っての!「…………、」なによ!」

 

 

 

「………」「………」「?? ?」

 

 

 

 

 

「あのな、悠里」「なにかしら」

 

 

 

 

一拍の沈黙の後、浩介ははぁ、とため息を吐いてから、

 

 

 

 

「なんで、そんなに妖精がダメなんだ」

 

 

 

ようやくそれだけを、問うた。

 

 

 

「うっ、」

 

 

 

すると途端に悠里は水をかけられた砂のように固まって硬直し、顔には脂汗を浮かべながらジロジロきょろきょろと目の眼球だけをあっちだったりこっちだったりに忙しなくさせて、

 

 

 

「どうなんだ?」

 

 

「だ、だって、………から、」

 

 

「何か?」

 

 

冷静に追いつめる浩介だった。

ついにその追撃に、悠里は溜まりかねた感情を爆発させて、

 

 

「だ、だってぇ! …人間の女よりもいい、っていうじゃない」

 

 

「 う~~~~ん…それがさ、なんで…お前に関係あんだ? 」

 

 

「…~~~~~ッ、、、!」

 

 

わかっていた。

こういわれるだろうことは、わかっていた。

だけど、この一言の言葉が、何より悠里にとっては“凶器”だった。それも、思わず心が怒りやら哀しみやら不満足の感情で瀕死になるくらい…

 

 

 

「な? 関係ないだろ? 分かってくれるか? ん?」

 

 

「いやだ、」

 

 

悠里は、嫌々をするように俯いた首を左右に振りながら…

 

 

「いやだ、いやだ、ぜったいにわからない。こうちゃんのこと、わかってあげない。絶対に……、………と、ところで、…今日の肉じゃがおいしいでしょ?」

 

 

 

「あっ?? あぁ、毎度済まないな。おかげで飢え死にすることなく今日まで生きていられる。それともあれか? なにか裏があるのか…」

 

 

 

「大丈夫よ。物理身体的な出世払いで決済してもらうつもりだけだから。」

 

 

 

「はぁ?」

 

 

 

瞬間、牝の顔になって浩介の身体を一瞥した悠里であったが、毎度のことながら意味が分からん。

 

 

 

「「はーああ」」「ますたー」

 

 

ため息をつくのも同時だ。但し、浩介はようやくこの軍事法廷が終わることへの安堵の、悠里はやはり浩介がすぐには己の物にはならないのだ、という今日も同じの確認に対しての嘆息の物の、

 

 

 

「ところでさぁ、」

 

 

ここで、浩介は手札を切った。

 

 

 

「なに?」

 

 

「こ↑・れ↓」

 

 

「あ゛っ」

 

 

 

バサリ、と浩介が食卓に投げ置いたのは、果たして今年度春夏モデルのフェアリーメイデンの、各メーカー・カタログのそれである。

 

 

 

「なんで、これが、かつてはこの家の応接間で今はおまえの隠れ家っつーか秘密基地っつーか前線橋頭堡っつー具合になってる我が家の部屋にあったんだろうなぁ…「覗いたんかいっ!?」おたがいさま、だろ、」

 

 

浩介は、コホン、と咳を切ってから、

 

 

 

「んなのはともかく、どうなんだ、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…劇場版パトレイバー一作目の虚影の街のテーマが流れているんではなかろーか、というぐらいの長い沈黙が、落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、」「ひゃ、ひゃい…」

 

 

 

カミソリ後藤が降臨したコウスケは、ゲロらせるための下剤の無慈悲な使用を決定し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、そんな、二人でおそろいの妖精を買ってペアルックならぬペア妖精、だとかとか?」

 

 

「 ! うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

「………、」

 

 

 

んーとね、きみね、

 

 

 

それはね?

 

 

 

 

「キモい、んですケド」

 

 

 

「…ーは、」

 

 

 

 

 

確信した言葉のままに、言っただけである。

 

 

 

 

 

それに対し、悠里は、

 

 

 

 

「 」

 

 

 

 

がぁん、がぁあん、がーん、………という様子で、悠里は愕然と絶望と戦慄とそしてやはり絶望と…で、その顔が紙コップの中の水にスポイトの染料を垂らしたかのような、すなわち色付き水の作成過程かのように、一瞬で染めあがった。

 

 

…酸欠のチアノーゼの色…紫色かのような…

 

 

効果覿面? みたいな??(アンゴル・モア)

 

 

 

 

「………」

 

 

 

「…、え、」

 

 

 

…縁、切り? えんがちょ? びろーん、? あはは、いやまさか、そんな、…………、

 

 

 

…、こ、

 

 

こうちゃんに、こうすけちゃんに、こうすけちゃんから、まさか、こんなぁっ…うぇ、うぇえぇえええええええええ…、

 

 

 

 

 

「おぼえてろーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

 

 

 

 

 

ESCAPE に 成功 しました

 

 

 

 

 

 

「………」「………」

 

 

 

 

…二人残された浩介とフェリは、

 

 

 

 

「…………」「…………」

 

 

 

…………

 

 

 

「食べるか」「はぃっ」

 

 

 

 

肉じゃがを片づけることに着手したのである。

 

 

 

 

 

 

 

     * * *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クレイドルを買おう」「はひ?」

 

 

 

果たして、その翌日。休日の朝、

 

 

 

「ふぁーい…?」

 

 

「おぉお、姫よ、めざめるのぢゃ…俺もねみいけど。ふぁ、」

 

 

「うーぅ…んにゃ、」

 

 

 

そうしてフェリは、精密電化製品の範疇であるフェアリーメイデンの、スリープモードからの高速な復帰を可能にするためのサーモ・スタンディングの機能を持つ妖精用・敷き布団とその疑似(フェイク)羽毛布団のセットの中へと再び身をうずめさせた。見た目が(日本人の想像の)ヨーロッパ的天使の正しくそれなエリス型が純ジャパニーズなフトンのセットを手放さない事に、萌え、と浩介が思ったのは別として…

 

 

 

「まぁなぁフェリ、まずはこれをみてみてくれ、」

 

「ふにゃぁ?」

 

 

 

そう言いながら浩介はベッド脇に放り投げていた自分のスマホを手に取り、素早くパスワードを打ち込むと、そのネットブラウザの機能で先日ブックマークしておいたとあるウェブ・ページを読み込ませる。そして、その画面を布団バーガーになっている寝ぼけ眼のフェリへと見せた。

 

 

 

するとページが表示された瞬間…ー

 

 

 

「どう思う?」

 

 

「 ! わぁ…っ!」

 

 

 

フェリは発見への喜びで目を見開き、布団を被る手は離さないまま、わくわく、という感情の面もちで、浩介が操作するスマホの画面のスクロールを食い入る顔で見入っていた。

 

 

 

そのページの正体とは?

 

 

 

「すごく! おっきぃです!」

 

「だろぉ? この、お姫様ベッド。」

 

 

 

どどーん! 阿部さんでは当然なかったよ。

 

 

画面に表示されていたのは、天蓋付きだったり、フリルだったり、カーテンがついていたり、ゴシックだったりヨーロピアンだったりバンブーだったりハラジュクであったり…そのようなとてもたくさんの多くの“ベッド”が、その持ち主のフェアリーメイデンとともに写されている写真の数々であった。

 

 

このウェブサイトの正体は、“あなたのベッドを体験し隊!”というそのスジでは著名なSNSであり、今時のネットの潮流よろしく、ALEX知性が開設してALEX知性が参加しALEX知性が楽しむ為の、フェアリーメイデンとそのマスター、あるいは妖精愛好家の為のサイト…妖精の花園…なのである。余談だが、ここにはR-18のジャンルコーナーがあり、大変に、その、…gfff…

 

 

とにかく、そう、これこそが、“クレイドル”…ーALEX用の充電器スタンドであり、特に少女や女性の外見をしているフェアリーメイデン用のは、このように華やかな装飾がされている物も多数リリースがされていて、ただの充電器とは一線を画する独自の商業展開がなされているのである。

 

 

 

「すっごーーい!」

 

「ほら、ここを読めばフェリの先輩たちの体験レポートも載ってある。例えばこれなんかは、“デザインは良し。しかしクッションが堅く、G-セルフ(隠喩)やマスターとの秘め事をするのには少し手狭でギシギシ音が…”……次、行こうか、」「?」

 

 

わからないフェリを愛おしくおもいながらも、いつかは自分も手を出してしまう時がくるのであろうか…と浩介はちょっぴりダウナーになった。

 

 

…しかし、何もいまこの現状でフェアリーメイデンの充電器を持っていない訳ではない。

 

 

浩介が現在保有するALEXシステム・オートマトンの充電装置であれば予備も含めて多数現有し、

フェリの温もっている布団の下に端子を潜り込ませてもあるように、今の世の中の標準であるHi-USB規格の端子ならば、端子部分先端に非接触充電の機能が最初から組み込まれているのでアレックスシステムの充電“だけ”ならばできる。

 

 

 

だけれど、やっぱり、せっかく女の子の娘を授かったからには、その親の気持ちを最大限に満喫したいのが人の心のなせる技であった。

 

 

 

 

されど、フェリ嬢は「?」の顔を考え浮かべると、浩介の手をちょいちょい、と触れてから、

 

 

 

 

「ますたー、お金、はだいじょうぶ、なのですか?」

 

 

「心配しなくとも、」

 

 

 

疑問の回答を持つ浩介でもあり、

 

 

 

「ここに俺へ悠里が置いていった四千円がある。あと二日分の、生活費の!」

 

 

「おおー」

 

 

 

 

ぱちぱちぱち、と拍手をするフェリはおいとかなくとも…

 

 

 

 

 

嗚呼、駄目男、

 

 

 

 

スケコマシやヒモ男のそれであった。

 

 

 

 

 

 

 

     * * *

 

 

 

 

 

そうして数時間後、コウスケとフェリは無事に目当てのフェアリーメイデン用寝具一式をチェシャ猫の木で入手し、今は道草に近くの河川敷を歩く最中であった。

 

「ますたあますたぁ、「川」ってとっってもおおきいんですねぇっ」

 

「そうだぞー、フェーリっ」

 

この聖蹟聖ヶ丘の河川敷には運動公園やドッグランなどがある。

それからALEX用の遊戯設備などもあるのだが、今日のところは物見遊山で、本日の目的はその運動公園であった。

それというのも、実際の人間やALEXが運動したりスポーツをする様を観察するのは、フェリやフェアリーメイデンのような人間型ALEXにとっては最高の経験値になるというのはALEX持ちにとっては鉄則の常識だからだ。

クリケット、フットサル、ゲートボール、テニス、ソフトボール、etcetc…

 

『わぁぁ…!』

 

コウスケにとっては興味なしであったが、それでもフェリは顔を輝かせてみていたので大収穫だ。

 

それから、ALEX同士のバトルというのも見応えがあった。

河川敷の野外闘技マウンドにて、

武装神姫のマリーセレスとゾイドALEXのデッドボーダーとの異種間マッチ!

“槍を持ったデッドボーダー”に対し、マリーセレスの側は五分以上に良い戦いを演じ……

こちらは手に汗握る迫真の展開で、使用されているビジュアライザーによる特殊効果もあいまって最高の戦いを観ることができた。

 

おかげで、フェリの経験値修得も首尾は上々。

一方の先程の異種間バトルの白熱にも、ひとりのALEXバトラーたる浩介は感嘆の念を感じ……在野にもすごい奴はいるのだと、ひとつ謙虚さを思い出させられた。

 

 

「ふぅっ」

 

堤防上の道から、この聖(ひじり)川の景色を観る。

バッグの中忍ばせていたブラックサンダーの一個を包装を開けかじりながら、流れゆく初春の雲と青空のコントラストの、その下の川の眺望。

まだ肌寒い空の下、コウスケはそれを充実の思いで観ていた。

 

流れゆく雲の下……

 

 

 

 

咀嚼。

 

 

 

 

咀嚼、

 

 

 

 

 

咀嚼。

 

 

「~♪」

 

 

さて、目的は果たした。

じっくり三分ばかりたっただろうか…ブラックサンダーを食い終わった頃、そうして家への帰路へと足を向かわそうとして、まだ一つ最大の障壁がある。

 

なので己に向かう二十六の眼光の主たちに対して、コウスケは言ってやった。

 

 

「━━さあて、なんなんだろうな、おまえたちは、」「?」

 

 

 

「「「「ヒャッハーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!」」」」

 

 

 

それに対する返答はモヒカンのものであったが…

なんだ、この、ガキんちょどもは?

 

コウスケは殺気でその気配を察していたが、コウスケの振り返りざまで向かい合うことになった“寝袋”の中のフェリも、あまりのことにきょろきょろとしている。

 

 

 

この河原の堤防上の盛り上げ道の上で、前後から挟む形でコウスケを取り囲んでいる、現状況。

 

それとは、ハンドルの脇の警鈴ベルをバイクのマフラーを吹かすかの如くリンリンリンリンリンリンリン! とけたたましく一斉に威嚇を鳴らしながら、ビックリマンだったりバトシーラーだったりガムラツイストだったり、はたまたコロコロコミックや、こないだ復刊したばかりのコミックボンボンなどの綴じ込みでもよくあるキラ・シールだとかが、

近所のホーム・センターや大型家電量販店のコーナーでお父さんお母さんに買ってもらったのだろうそれのシャシーや各部にまんべんなく貼られていて、その上、ダブルフロントのライトやフラッシャー(死語)などによって族車的カスタムチューンがなされた、子供用自転車、その群…ー

 

 

 

 

即ち、おこちゃま珍走団のトライブ(族)に他ならなかった。

 

 

 

「「「「「ブンブンブンブンブンブンブンブンブンブンブンブンブンブンブン!」」」」」

 

 

 

口でブンブン言ってるくらいだ。

 

ツッパリやらスケバンやらカラーギャングやら…ーなどの格好をしているのでは当然だが無く、ごく一般的な、平凡でふつうの子供らしい格好をした、ふつうの子供達である。

 

 

ただ、一つ興味深い点がある。その彼ら彼女は、とにかく、年齢がバラバラなのだ。

中学校初学期くらいのちょっと奥手そうな男の子が学校の学ランで台湾メーカーのロードバイクもどきに乗っかっていれば、対極的に、幼稚園年少くらいのおしゃま気な女の子がキャラクターダイスの三輪車に乗ってアンパンマンの電子チャイムをぴぽぴぽ鳴らしてもいる。そしてその両極までの年齢層の、性別もバラバラな彼ら彼女らこそが、そのトライブを構成する13人の子供たちである。

 

 

「ブラックサンダーいっこ食うのに三分もかかりやがるやつなんて、はじめてみた…、オイ!」

 

 

子供だ。

コウスケを囲む十三人の中から、啖呵を切ったのはそいつだった。

おそらくはおばあちゃんに着せてもらったのだろうちょっとセンスが流行のじゃなくて目立たなめのコーディネートの衣装で、シックでコケティッシュなハンチング帽の帽子を被っている。

小学校に入学する直前くらいの年頃だろうその幼児が、まるで、自分こそがこの“族”のリーダーです、と言わんばかりの気風と威圧…ーといっても子供相応のそれだが、肩で風を切って…一歩、二歩、とこちらへ進み出てきた。

 

 

 

「そこの、セイネン」

 

 

 

ジャギ、ならぬこのグループのリーダーらしき帽子の少年…か? なんか気配というか雰囲気が違うような、まあいいや。とにかく少年(仮)が、前方のこちらへと一歩、踏み出てきた。

 

 

「ふん?」

 

 

帽子の下には、不敵な輝きを宿した大きくくりくりとしたドラ猫のような目。

なんだか活発とかヤンチャというよりは問題児、な雰囲気であるが、なかなか親からは可愛がられている様子だった。

 

なにせ身につけている服装が、ぱっと見は高級品に見えないように“仕立てられている”が、全部とある有名な子供服ブランドのテイラーメイドであったのだから…(ちなみに何故喪男のコウスケがこれを知っているか、と聞かれると、事あるごとに悠里が子供服やらベビー服やら結婚情報誌やらのカタログ類を持ってきては見せてくるからに他ならない)

 

 

 

 

 

 

そんなそいつが、すっ、と息を吸い、そしてなにをいうのかとおもければ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケットー、を、いどむ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

は、………

 

 

 

はい?

 

 

 

けっとー? ゲットー? 雛見沢ゲットー、 けっとけっとコミケット、ケトル魔人、ぷにけっと大好き!…ーはともかく、

 

決闘、だという意味の言葉なのだとはすぐに理解できた。だがしかし、決闘罪でしょっぴかれるぞ…ーと茶化すまでもない。

 

 

 

 

「ほーーーーう? 年上のおにーさんに喧嘩を売るなんて、イイ根性してんじゃねぇか。泣かすぞ」「べーっ」

 

 

「やれるもんならやってみろよぉ、このヒョロもやし!」「「「「「やーいやーい」」」」」

 

 

「んなっ」「 ! むーっ!」

 

 

 

ムカァ! かいじゅうムカムカ! …っとコウスケは怒髪天にトサカがキた。

ちょっとからかってやるつもりだったとは、口が裂けてもいうにいえない。あっかんベ、してたフェリもおこってくれてることだし、

 

 

 

「は、ハッ! …付き合ってられん。帰るぞフェリ。カエルが鳴いたらかーえろっと、」「そうなのです!」

 

 

「あっ!」

 

 

 

なもんで、コウスケは冷静に、冷たい大人の対応という奴であしらった、…ーのだが、

 

 

 

「アカリ、やれ!」「はーいっ」

 

 

「あん?」「ほえ?」

 

 

 

ばっ、と何かがたいあたりしてくる感触、そして…

 

 

 

 

「あっ、俺の、フェリのクレイドル!」「あーっ!」

 

 

「「いぇー」」

 

 

 

 

いつの間にかこちらの背後に移動していた少年(仮)の手下(少女)に、クレイドルの入った手提げをひったくられてしまったのだ!

 

んでもってヤッコサンとくれば、実行者のさらに年下らしい幼稚園児相当の幼女と、その命令者である少年(仮)とがハイタッチを交わす瞬間でもあった。

 

 

 

「おまえー!」「ぼくのべっどー!」

 

 

 

「賭けをしようぜ、」

 

 

 

誠に遺憾なる抗議の表明をする浩介に、青空の下の背後の鉄橋に鉄道が通過する瞬間…-少年(仮)は不敵に笑み、

 

 

 

 

「ビーター・ゲーム。」

 

 

 

 

それだけを発した。

 

だが、それだけで十分であった。

 

なにを意味しているのか、よーく、理解できた。

 

 

 

「…っ」

 

 

 

「ルールは簡単、オレが勝ったら、このクレイドルはオレのもの、それからオレのききたいことにこたえること。おまえが勝ったら…ー」

 

 

 

「ALEXシステム同士のバトルゲームでALEXのパーツを賭けるのは低学年層の子供同士の中でのローカル・ルールじゃねーか。それも、おこづかいが足りないから、弱い奴から巻き上げよう、っていう魂胆の! 元いじめられっこで現ぼっちの俺にぃ! それをぉ! 強制するというのかァ! うぅ…っ」

 

 

 

「そ、その、…ーちゅー、してやる!」

 

 

 

「ヤロウからなんぞのはいらんは!?」

 

 

 

自分がALEXのバトルに強くなった直接の原因でもある思わぬトラウマの発掘とショタ属性の欠如によって思わず声を荒げたコウスケであったが、対する少年(仮)の方はというと、ヤロウ、という言葉の意味がわからないようで、目をぱちくりさせていた。…育ちがよろしいのか?

 

 

 

「バンチョウ! ムズカシーことばを使ってくるオトナのいいだしっぱなしなんて、ほっときましょうよ!」

 

 

「 ! そ、そうだ! ムズカシーことばをつかって、オレをからかうなぁ!」

 

 

 

ぷんぷん! というような体で、少年(仮)がもうれつにじたばたした。ちょっと萌え…と浩介が思ったのは置いといて、

 

 

 

…ーALEXシステム搭載玩具機器同士のユーザーによる対戦遊び。

 

 

人間というのは、斯くも争いを求めるものらしい……世間が平和であったならば、今度は己らが闘いの首座として、争いを繰り広げ出すのである。……アレックスロイドはマスターを選ぶことは、少々難しいと言えるだろう。

とはいえ、それというのは無法の限りという所に依るばかりではなく、やがて、ひとつの闘技として、競技形式でも対戦形式でもなっていったのであったではあろう。

だがALEXロイドの普及とその分野や形態としての進化と分化の発展速度は目覚ましく、

黎明期の頃の最初はALEX知性を内蔵させたルンバもどきに現用戦車の工兵用ブレードオプションめいたクローをつけて戦わせていたり、そうした以前からあるドローン・ファイト……無人機同士の戦闘とさせていたのが、

そのアレックスロイドが人型であったり有肢型のロボトロニクスとして発展していくにつれ、アレックスロイド故の独自性というのを持ち始める。

例えばそれこそ、フェアリーメイデンに人間の食器カトラリーを持たせ、

スプーンやフォークやナイフとかで、戦わせ合うところから、にわかにひとつの“ゲーム”として勃興し始めたのだ。(前述のそれについては、流石にステンレス食器ではなく、綿棒だったり耳かきだったりで始めた例も多いらしい)

 

斯くしてアレックスロイドの活用の形態として、バトル、という物が活発化し始めてから……幾十年。

今となっては競技用モデルやブランドのアレックスロイドまでもが出るご時世となっている。

そして、ビーターゲームと呼称されるのは、無数にあるバトルルールや試合の形態の内の、その一つに当たる。

要するにトランプゲームのようなものだ。

トランプカードというのは使いつつ、それでプレイするゲームは、ルールの違いでたくさんある、そういうことである。

 

そのビーター・ゲームの基本というのが、要するに、古典で言うところのバトリングだったり、プラレスだったり、ロボトルだったり、エンジェリックレイヤーや神姫バトルであったり、或いはガンプラ・バトルの翻案であることには違いはない。

 

 

だがなによりもふさわしい例えをするならば、ポケモン・バトル、…ーのそれであった。

 

 

 

ALEXシステムがあれば、現代人はだれでも手軽にストリート・ファイターになれるのだ。

 

 

 

 

…ー或いは、デュエリストへも。

 

 

 

「さぁ、オレのALEXを見せてやる!」

 

 

そう言って少年(仮)は自分の乗ってきた自転車の荷台に括り付けられたケースからそれを取り出し……

 

 

 

その姿が見えたとき、

 

 

 

 

(あれは…ー)

 

 

「戦隊ロボ、だ!」

 

 

 

 

テレビアサヒ日曜朝7時半からの、“特機戦隊ファイヴレンジャー”の基本主役ロボ、ファイヴグレーター・ロボ、そのDXトイに違いがなかった。

 

 

 

「バカなっ、今時のおもちゃの業界標準に乗っかってアレックスシステム実装とはいえ、安全基準や低年齢児配慮という名の巧妙な販促戦術によって、超合金版ではない通常のDXだと、メーカーが同じパンダイ社商品とのガンプラバトルごっこ程度の機能の対戦モードしかなくて本格派のビーターゲームはできないのに、…ー、まさか!」

 

 

「そう、そのまさか、サ。」

 

 

 

 

不正規改造、という言葉がある。

 

 

 

 

「キサマ、だれにやってもらった」

 

 

「アネキ、だ!」

 

 

 

 

だろうともなぁ、とコウスケは頭を抱えた。こんな幼児が、通称マジコンと呼ばれる特殊基盤の増設やら内部配線の組み替えなども必要な…この手の玩具の非正規改造なんざ出来る訳がないのだ…ー一瞬期待をしてしまった己もアレだが、ほら、アニメの主人公っぽいじゃん? 

 

 

というか、アネキって、姉貴? ソレッテ、ナニ?

 

 

 

 

そうしてそうして、

 

 

 

 

「ビーターゲーム、ですねぇ?」

 

 

 

ぬっ、と現れたのは、プロレスやK-1のレフィリーの姿をした妙齢の女性である。

 

 

 

「あっ、失礼致しました。私は日本ビーターゲーム審判協会西東京地区聖蹟聖ヶ丘町委員会公認のゲーム・レフィリー…粳 環、Msうるちで御座います。たまきちゃん、たま姉ぇでもいいよ?

 

片方の男性のかた? こうしたストリートファイト形式ではおひさしぶりのビーターゲームのようですねぇ…以下、お見知り置きを、」

 

 なぜそれが分かるんだろう…という感想で、やはりこのビーターゲームからは逃れられない定めであろうか、とも思ってしまった

 

 

「ゲームの試合内容と結果如何での無用な争いをなくすためというのも、私の今、ここにいる理由なのです…特に、そちらのかわいい子ちゃんは、フダツキ、といいますか、なかなかの問題っ子でしてねぇ?」

 

 

「よわい奴がわるいんだ!」

 

 

そんなわけで、コウスケはこのうるちという奴に目で見計らった。

そうすると、今度はうるちは先刻スリを働いていったアカリという少女に目配せした。

アカリ曰く、“わかってますよ”と、やれやれのジェスチャーをしつつの暗語であった。

 

 

 

“つまり?”

 

 

“ご安心を”

 

 

 

 

…はぁ、

いいだろう、駄々っ子の相手をしてやろう。

 

 

「フェリ、無念だ」

 

「だいじょうぶだよん。マスターはぼくがまもるもんっ」

 

 

そうじゃないんだけどねぇ……とコウスケは続けつつ、左胸のポーチから取り出したフェリを、慎重に丁寧につちくれの地面へと降ろした。

 

 

 

「オイ、騎士道精神ってのはあるんだよなぁ!」

 

「ブシドーのココロエなら、ある!」

 

 

相手も慎重にファイヴグレーターを地面に降ろしていた訳だが……

いよいよ不安になってきたわけだが、いざとなったらトンズラを決め込んでやるさ。

 

 

 

 

「それではみなさぁん……?」

 

 

 

 

かぁん、とゴングが鳴り、

 

 

 

「ビーターゲーム、ファイ!」

 

 

 

 

 

 

同時に…

電脳眼鏡の投影画面で、フェリの蓄電残量を確認する。

 

 

現在、75パーセント。発電率比率25%…推測して三分間、全力戦闘をしたら、リアクターからの発電が追いつかずに蓄電が尽きて、

 あとはからだ全身のオリゼリママイクロマシンが保持する乳酸菌/塩分濃度差の微弱発電による

 必要最低限の活動しかできないセーブモードとなってしまう。

 

 

それに、物の扱い方を知らない子供の事だ。とどめだとか、必殺だとか、デストロイだとか、そういう言葉が大好きな年頃の…つまり、こちらのフェリに加減をしてはくれないだろう…ー

 

 

 

「非公式改造で満足するのはPSPくらいにしておけよ…ッ! フェリ!」

 

 

「は、はぃ!」

 

 

「俺もおまえとは初めてだ。だから、おどろくなよ」

 

 

「はひ?」

 

 

言い切るや否や、手に握ったスマートフォンのマスター端末を操作し、装着中の“電脳メガネ”…ー東芝製LM-80スマートグラスにALEXのアプリを呼び出して、浩介はフェリとのダイブ・モードに突入した。

 

 

 

ぎゅん、という感覚と共に、自分の目前にフェリが見ている物の光景が、“出現”する。

 

 

 

「! マスター! ぼくっ!」

 

 

「ああ。今俺の電脳グラスの視界に、お前の視覚センサーの映像が投影されている。それから、ディフォルメされた俺の思考がアプリケーション経由でおまえに伝わっている筈だ。だから、その、…あ、安心しろっ。知恵と勇気、フォワードとバックアップは一心同体、お前はひとりじゃな…ー」

 

 

「ますたぁとっ、ひとつに、なってますっ!」

 

 

「は、」

 

 

そのフェリからの言葉に浩介は困惑して、次に怪訝になった。

 

なんというか、戦いを始める前の状態ではなくなっていた。

自分の身体を抱きしめるように両手で己の両肩を羽交い締めにして、すっかりエリス型フェリは蕩けた顔になっていて、

 

 

 

「やみつき、です!」

 

 

 

絶後の喜びと絶頂の快感に小さく可憐なその身体を打ち振るわせて…ーまぁ、なんだか、よいこのみんなにはとてもじゃないが、みせられないよ! だった。

 

 

 

「あっ、あー! え、えええっちなんだ、えっちぃんだーっ!」

 

 

「みるなやマセガキぃ!?」

 

 

 

ナニを想像したのか顔を赤らめて大声で宣伝しはじめた少年(仮)に、コウスケは怒鳴り返しておく事を忘れていない。

 

 

 

只、それよりもコウスケが考えたことは、この河原の植生の茂みが、十五センチにも満たない全高のフェリの視点からだと、まるでジャングルの中に居る気分になる事だった。

 

 

 

(どうする…ー)

 

 

 

現在、コウスケの“メガネ”は内蔵液晶が作動して片方のレンズ部分が不透明になり、それ側のスクリーン化したレンズにマイクロ・プロジェクターで投影されたアレックスシステムの視界映像がWifi経由で投影されている状態だ。

そして、プロジェクターのモードをビーターゲーム時のものに設定……現在のフェリの仮想HP(ヒットポイント)ゲージが表示される画面となった。

 

 

 

(バーストリンカー、というつもりはないが、)

 

 

 

質や機能を問わなければ五千円台から購入が可能なスマートグラスにおいて、一応ニュー・カタログの最新版とはなっているが同世代の物に比べれば圧倒的に割高な、三万八千円もしたこの東芝製LMー80を選んだかといえば…-

なんというか、意地、のようなものであった。

 

そのLM-80によって、

五感が、加速した様に冴え渡る感覚がする。…ー実際、このモードではこちらの人間側の脳がコンピューター知性であるALEXと直結をした事によって脳内思考の“肩代わり”…ークラウド・シューティングが発生している状態であるため、

電脳メガネをはじめとするこの手のハイパースマートウェアラブルデバイス、というのは、

 現実においても発達障害や精神傷病、成長不調の障害を抱える患者や老齢による呆けや痴呆などへの補助アシストやリハビリ器具としての使用というのが国民健康保険の対象内治療の手段でもあるし、学校教育における教育学習の手段としても本格的な研究が文科省部内では進められていて、一方で、たとえば試験会場でのカンニングや運動・卓上問わずの競技選手のドーピングなんかにも、出始めの頃には用いられたと聞く。

 

 

体感的には、十五秒が九秒に圧縮されているような感覚だ。

その冴え渡る思考で、熟考する…ー

 

 

 

(なにができる)

 

 

 そしてどうやって攻め方を考えるか…ーーーALEX使いとしてのこれまでの経歴で、戦隊ロボ相手の攻略法は熟知している通りだ。

 但しそれでも、コウスケがビーターゲームに巻き込まれた現状の上では心許ないものである。

 何せ、手持ちの“妖精”とコウスケとのマッチングはまだ確実なものではなかったし、如何せん……ん?

 

 

 

 

…ー武器がない!?

 

 

 

 

「やぁーーってやるぜ! グレイターオーン!!」

 

 

それに気づきコウスケの顔が真っ青になる瞬間は、嘶きを揚げた相手のブラキオサウルス型戦隊ロボ・ファイヴグレーターが、フェリに向かい射撃の一斉射をしかけてくるのとは同時であった!

 

 

「フェリ、耐えろ!」

 

「あっ、ひゃっ……ひゃうっ!?」

 

 

━━ファイヴグレーターからの射爆を、フェリは耐えることしかできなかった。

コウスケがそう言った次の瞬間、色とりどりのレーザーやビーム(という設定)の、

猛烈な銃撃とその着弾の砲爆が、フェリの直近で炸裂した!!

 

 

「フェリ、大丈夫か!?」

 

「な、なんだかくらくらするよぉ~…」

 

 

ホログラムによる爆炎の特殊効果が、たっぷり四秒もたゆたった。

そうしてファイヴグレーターの射撃兵装の砲口からのホログラム投影が終わり、それが晴れた次の瞬間、西住みほのあんこう踊りのようにふらふらになったフェリはぺたりと地べたにへたり込んだ。

 

「被害はっ」

 

判定、直撃弾無し。されど至近弾三発…

同じ瞬間はコウスケもスマートグラスのプロジェクターで観ていたので、こちらに向かって吸い込まれる無数の弾火……というのはこれまでのALEXバトルでさんざん慣れた場面とはいえ、フェリの恐怖とたじろぎが伝わってきて若干背筋寒く感じた。

なにせこの娘にとっての初めてのビーターゲームだ。フェリにとって勝手のつかめたものではないし、一方のコウスケは咄嗟に防御の指示を出したことで減り方に加減が掛かったとはいえ、フェリのHPがじわりと削れたのに歯噛みするしかない。

 

 

ビーターゲームのルールと仕組みは、ALEXオートマトンに元々備わっている電波強度チェッカーを利用したものだ。

 

ALEXオートマトンの全身は、wifiやブルートゥースなどのアンテナとして活用可能なように配線系統と半導体デバイス機能の配置が施されている。

このため、それらの電源作動をオンにした状態でALEX同士がパーツを近づけさせたり、あるいは接触させたりさせようとすると、パーツ個々からの個々の電波が無線LANマネージャによって認識される現象が起きる。

 

この干渉の度合いとその電波の電波強度を電波強度チェッカーで観測することによって、相手や自分からの攻撃の威力判定を行う……というのが基本原理だ。

 

そうして射撃武器などの使用に関しては、そういった射撃兵装のパーツや部品内に仕込まれた、ビジュアライザーと通称されるホログラム投影装置によって視覚的特殊効果を展開させ、それと内蔵無線チップによる無線波のビーム照射によって命中判定を行うというものだ。

 

つまり嘗てのビルドファイターズにおけるガンプラバトルとは違い実際に傷を付けたり壊しあったりしたりするものではないのだが、

元々、この技術はあまりにも目に余る、ALEXに対する虐待的待遇……アメリカや欧州各国の射撃場での、日本円と欧米貨幣との通貨為替の詐欺的ダンピング(ハンプ&ダンプ)によって(当時、本来なら一体十五万円ほどするフェアリーメイデンを一体一円以下で売らされたという)大量に日本から仕入れられたフェアリーメイデンの、それを使用した“動く的(フェアリーメイデン)を利用した実弾射撃ゲーム”が問題となったとき、代替案として、さらに札付きにマナーの悪い欧米や朝鮮半島のハッカーやクラッカーによって行われていた賭け試合のネット配信違法興業で用いられていた、

物理的破壊を伴うALEX同士のバトルロワイヤル・ゲームの行われ方が先出していたが、それとは全く異にするべく入念な検討が行われた結果、現在のルールと遊び方に落ち着いたという経緯を持つ。

 

「ふにゃぁぁぁ…」「フェリ、第二波だ!」

 

“いっけぇ、グレーターサンダー!”

 

「にゃ?」「フェリぃっ!」

 

━━SHUVARMM!

 

 

「はにゃぁぁあ!?」

 

「フェリー!!」

 

 

続いての二撃目、雷(いかずち)の如き電光がフェリに直撃し……

直撃弾二!

 

 

「ほぇぇぇぇぇぇぇ……」

 

「あぁあっ、ちっくしょー!?」

 

 

へたり込んだままのフェリには、二射目を避けることも防御することもできなかった。

派手な大爆発の映像効果のあと、くろこげの視覚効果がフェリにエフェクトで投影された……あっ、冷却液(おしっこ)もらしとる。

 

(HPの残量はっ)

 

四分の三。

 

(どうすれば)

 

 

こんな子供からの挑発…そもそもトンズラこけばよかったのだ。

しかしそうとして、

これが普段使い慣れている鶴来家のエース・ゾイド・アロザウラーのあにーちゃんや手持ちのガンスナイパー・スナイプマスター、しもべのゴジュラス達、ゴッドカイザーのヴィゼイルさんだったりすれば、こんな奴(ファイヴグレーター)はあっと言う間にヒットポイント0にしてやれることができるのに!

 

「えぇーっとな、フェリ、立ち上がることはできるか!?! それから……、それから………、それから…………、!」

 

「が、がんばるよぉ~…ふぇっ!?」

 

 

これだ! というコウスケの叫びが木霊した。

 

フェリの股下の小の粗相の跡は後で拭き取るとして…

なにかに思い当たったコウスケは

オタク・ルックな服の小物が詰まった左胸ポケットをまさぐった後、そこからそれを俊速に取り出し、

 

 

「これを使え!」

 

 

━━そういって同時にフェリへコウスケが放っていたのは、

 

 

「ますたぁっ、これは?」

 

 

 

 

ツァ! ……と土塊の地面に運命の聖剣の如く突き立ったのは、

外観は、三色切り替え式のどこにでもあるボールペンだ。

 

 

 

 

「ビーターゲーム基本二十箇条ルールその四、対戦中のサレンダー(降伏)とALEXマスターによるセコンドは自由に行える……!

 

フェリ! そいつは得物になる奴だっ」

 

「わ、わかったよん!!」

 

 

承諾したフェリに、コウスケはさらに説明を加えた。

 

 

「いざとなったら彼岸島によろしくってところだが……まずそいつのペン先を相手に向ける形で抱えた後、ブルートゥースの認証コードは〈bgc-sample〉、そのボールペンのクリップ部の下に引き出し式の収納型トリガーがある。手前のスイッチを押して、それを引き出すと……」

 

「……ほぇ? これって、照準(ガンサイト)だよねん?」

 

“! そ、そそそそそれはっ、ま、まさか……”

 

「あらー」

 

 

コウスケのスマートグラスの右側には、フェリの視点に照準(ガンサイト)のレティクルが出現した様子が、

それから、なにか宝物を見つけたような表情とうろたえかたであわて出す少年(仮)の様子に、

そうさ、そのとおりさ、…と言ったコウスケの笑顔が悪いものとなった。

 

 

 

「フェリ、ぶっぱなせ!」「ラジャー、なんだよん!!」

 

 

 

そのボールペン型暗器の切っ先が一瞬の輝きの後にファイヴグレーターに向けられ、そしてフェリがトリガーを引きはなった次の刹那……

 

 

 

 

BUWROOOOOOOOOOOOMMMM!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

「わっ、わっわ、わっ……」

 

“な、……なんじゃこりゃーーーーーーーーーっ?!”

 

 

━━まるで花火大会を水平直射でやったかのような派手派手しい光と炎の雨霰(の、ホログラム)がファイヴグレーターに吸い込まれたのがこの瞬間だ!

そうして一撃を食らったファイヴグレーターが苦しみながら苦痛の叫びを上げ、大爆発のさなかで悶え苦しみながらよろめくのと、その堅牢で強固という設定譲りの鉄壁なファイヴグレーターのHPががくっと五分の二ほど削れたことにコウスケが安堵とともにぐっとガッツポーズをしたのは同時だったのだ。

 

 

「えーっとですね、このうるちが説明しますと、いまとなってはムゲンボーグ型などの普及で珍しくなくなりましたけど、その外観型ですと…五年前のワンフェスで、とある老舗文具メーカーが試供品として二千個しか配らなかった、武器のようなボールペンではなく、『武器になるボールペン』ですね? そうしてその威力は、当時の数ある新規参入ALEX用具用品メーカー製の中でもとびっきりに“壊れた”ものだ、とも」

 

“! それだっ!!”

 

ああぁー! おれももってたらー! あんときにそれがあればー!!!

…と悶え苦しむ少年(仮)の様子はさておいて、

 

「LANチップ・ビジュアライザー内蔵型ボールペンだとか、当時から酔狂だとは思っていたが……フェリ、もう一回だ!」

 

「わかったよん!」

 

 

そうして再びフェリが正式名称ボールペンガン・キャリバーの銃口を再びファイヴグレーターへと向け……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いざ、尋常に!」

 

 

 

 

 

 

 

 

カチン、

 

 

 

 

 

……ん?

 

 

 

 

カチン、カチン

 

 

 

 

スマートグラスの表示は、“弾薬欠乏”(AMO ENPTY)。

 

 

 

「ば、バッテリー切れ……」「ほえーっ!?」

 

目をぐるぐる丸にして愕然するしかないフェリに、流石に五年も電池交換せずに放置していたら……という当たり前の事実にようやく思い当たったコウスケであったが、

 

 

 

 

 

 

“いっけぇ、グレーター・バイトファング・スイング(GBFS)!”

 

「えっ、」「あっ」

 

 

 

そんな格好の隙を見逃してくれる相手ではなかった。

 

 

 

「フェリー!!!」「ふにゃあああぁぁあああああぁぁあああぁっ!?」

 

 

少年(仮)は今のこの隙の内に、ファイヴグレーターに一気に接近するように、という指示を出していた。

そうして四脚恐竜ブラキオサウルス型戦隊ロボ・ファイヴグレーターは、ともすれば鈍重とも取れる重厚な外観からは考えられない、本家東映特撮譲りの華麗な早さで一気にエリス型FM・フェリへ肉薄した。

 

そしてなにをするかとくれば、そのフェリの胴体をファイブグレーターの頭の口でくわえ込むと、そのまま大きく振り回して……放り投げたのだ!

 

 

「あっ!」

 

 

放り投げられたフェリは為すすべもない。

そうして為すすべもないまま、飛んでいった先は……

堤防の斜面だ。それをフェリは転がり落ちるしかなかった!

 

 

 

「ふぇぇぇぇぇえぇぇぇっ?!」

 

 

 

初春の草葉が優しいクッションとなったおかげで傷が付く、ということにはならなかった。

しかし着地する暇もないままに転がり落ちていって、フェリがようやく行き着いたのは藪のくぼみであった。

 

 

 

「うぇぇ…ますたぁ~…ぁっ」

 

 

『フェリ!!!』

 

 

藪のただ中に、場違いな天使が一体現れていた。

そのエリス型フェリは思い返した。ほんの二十分前ほどには、チェシャ猫の木の店内で楽しくショッピングをマスターであるコウスケとしていたというのに……

 

『ますたぁー…!』

 

『ふぇーりっ(イケメンボイス)』

 

 

目当てのベッドと今日のご飯とおやつに目星をつけてから、それからかれこれ一時間もウィンドウショッピングをしていたのだ。

そんな楽しい一日のはずだったのに!

 

「うぅうっ……うぇぇえぇぇえええ~っ……」

 

起動してから間もないのもあるし、そもそもエリス型は基本人格に幼さの特徴があるのがミソだ。

そうなのでフェリは我慢しきれず、泣き出してしまった。

 

 

 

 

“迫撃だ、ファイヴグレーター!”

 

 

「えぇいこのっ…フェリ、大丈夫か!」

 

「ますたぁぁ~…っぐすっ、どこにいるのねんっ?…どこにいるのねんっっ?? …ぐすっぐすっ、ひっぐ」

 

 

チクショウ、なにもかも勝手が違う。

もうこうなっては、こちらは戦闘継続不能だ。

その上で、少年(仮)はファイヴグレーターにフェリに対する追撃を開始させているし……

 

 

 

 

(サレンダーだ)

 

 

 

コウスケは決意した。

 

 

 

     * * *

 

 

 

「ますたぁ、ますたぁ、…うえぇぇぇえぇぇっっ…ひっぐ」

 

 

一方のフェリは藪の中で必死に暗闘していた。

 

泣き続けるしかなかったのだ。

自分の非力さに涙していた。

 

ついさっき購入したベッドと今日のおやつとで、今頃はブリリアントですてきな午後をマスターであるコウスケと楽しめていたのだ。なのに…

 

 

“ギスキャーオっ”

 

「ふぇっ…」

 

 

さらに追い打ちをかける事態は先刻から始まっている。

ファイヴグレーターが崖下りならぬ堤防下りを開始しているのだ。

 

 

(ふぇぇっ)

 

ボールペンキャリバーなら手放さずに今も手元にある。しかしバッテリー切れだ。

こうなると彼岸島よろしく丸太の代わりにもなろうか、というところだろうが、しかし首長竜型であるファイヴグレーターの長大な首とその先端の頭の口をつかったバイトファング攻撃には、こちらのボールペンではリーチが短すぎた。

 

(でもでもでも)

 

しかし今、フェリは思い出した。

今のこれはビーターゲームなのだ。降伏も自由な、ただのゲーム。

でも、このままではフェリのベッドとおやつとごはんは相手のものになってしまう! ……どフェリは思っていた。

 

 

 

(なにかあるといいのねんっ)

 

 

涙を拭うのも忘れたまま、武器を探そうとフェリは動いた。

藪の中を見渡してみる。

 

…━━どうみようが草と土と石ころしかない、ただの草藪だった。

しかし、

 

 

(あっ、)

 

 

藪のくぼみの茂みの端に、何らかの入ったダンボール箱があった。

水を吸い、湿気て腐りかかっているのも同然の状態だ。

その脇には、“割れ物注意”“ご自由にどうぞ”、の示し書きが、

 

 

 

そうしてフェリはその中身を確認し…━━

 

 

 

 

 

     * * *

 

 

 

 

一分も経っていなかった。

 

 

「レフィリー!」

 

 

 

コウスケの叫びに、はっとなった少年(仮)はコウスケを観、うるちは紅白の手旗を、自身の頭上でクロスさせた。

 

 

 

 「レフィリー、サレンダーを宣言……「ますたぁ、まってほしいのねん!」へっ?」

 

 

決意したコウスケが閉じていた目を開けてそう宣言しかけたのと、フェリがそれを遮ったのは同時であった。

 

 

“どうであろうが、やーっちゃるって! いけ、ファイヴグレーター!”

 

 

同時に、ファイヴグレーターが河原に到達したのもこの時であった。

続けざまにぬ゛っ、とそのファイブグレーターの首がフェリの居る藪へ割って入り、

 

……━━そこでファイヴグレーターは目撃し、困惑した。

 

 

「ふぬぬぬぬぬぬぬぬ……!」

 

 

 よぉぉぉぉぉ……と<フェリ>がぬかるんだ段ボール箱から取り出した“モノ”、それは、

 

 

「「あっ?」」

 

 

 武器指定コードの設定を、<maisan>としたのがコウスケのVRグラスの投影ウィンドウ上に映し出されたのはその時だった。

 

それに気付き、あっはっはっはっ…あちゃーー、とコウスケは頭を垂れ、

 

 

 

「えぇーい、」

 

 

 

ひび割れた陶器の皿を…ー

 

 

 

「はぁ!」

 

 

 

ぱりぃん!

 

 

 

 

 

 

…ー叩きつけた!

 

 

 

 

「あっ…あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」

 

 

 

少年(仮)の絶叫も納得できよう。

━━棄てられていた瀬戸物などが入った段ボール箱を見つけたフェリは、その中の割れかけた白磁の皿を使って、ファイブグレーターの頭に一撃を見舞ったのだ!

 

 

「ありゃー、窮鼠猫をかむ、ってやつですね」

 

「お、オレのファイヴグレーターぁぁぁ!?」

 

 

最初からひびが入っていたので、強力な力で割れたのではなかった。

しかしそれをよくわからないので愕然となった少年(仮)に、ドンマイ、とうるちは追い打ちをかけたのであったが。

 

 

 

「大丈夫か、フェリ!」

 

「やったやったよーっ! ますたぁますたぁ、ぼくがんばったよーっ! たおせたよーっ!やったやったよーっ!」

 

 

衝撃感知機構によって、

一撃を喰らいノックアウト状態のファイヴグレーターを前に、

マスターであるコウスケへ、涙を流しながら飛び跳ねながらフェリは喜んだ。

 

 

 

━━が、コウスケは相手のHPを確認して、

 

 

 

 

「まだだ、相手のヒットポイントはまだ二割残ってる!」

 

「ふぇ?」

 

 

 

 

そうだ、そのとおりだ、と少年(仮)が気づいたのも同時であった。

 

 

 

 

 

「チックショー、まだだ!」

 

 

グレーター、チェインジング! っと少年が叫び、

 

ガシィン! ガシィン!! 

…という効果音が内蔵されているスピーカーから発されながら、ファイヴグレーターは今、

おもちゃの各部品のブロックごとに組み込まれた疑似マグネッサー・システムによって、特撮番組劇中のCGそのものの形態変化を成し遂げようとしている最中となった。

 

 

そうして……━━

 

 

「できた、ファイブグレーター・ロボ!」

 

 

ブッ…ピガァン!

という効果音がなったかはどうかだが、とにかく、ファイヴグレーターの人間型形態がたった今姿を成した!

 

 

「ふぇぇぇ?!」

 

「まて、サレンダーだ。サレンダーするっていってるでしょうが!」

 

 

 

フェリもコウスケも愕然とするしかなく、

 

 

「閃け、大・斬・刀!」

 

ファイヴグレーターの脚部に折り畳まれて収納されていた巨大な剣を、ファイヴグレーターは目前のフェリに対して構え、

 

 

「いっけぇー! グレーター・すらっ……」

 

 

それを最後まで言い切ることはできなかった。

 

 

「ぐえっ」

 

「なっ」「はっ」「あぁー、」

 

 

ガッ、……とその少年(仮)の後ろ襟首が、お淑やかそうな見た目の高齢のご婦人によって力強くつかまれたのはこの瞬間のことだった。

 

 

 

「ばーちゃん!」

 

 

それに対する少年(仮)の断末魔はそのようなものであり、

 

 

 

「おれ! いま! ビーターゲームを!」

 

 

「ビィトだかビーファイターだかソレスタルビーイングだか知らないが! お帰り!」

 

 

 

 

 

 

てきぱきと取り巻きの子供たちによってファイヴグレーターが片づけられ、アカリという少女の手によってコウスケからひったくられたベッドとおやつとごはんのセットも返され、

そうして少年(仮)が祖母によって連れ帰らされていく光景は、少年(仮)の被っていた帽子が脱げ落ちて、その…ー

 

 

 

 

「女の子…だと、」

 

 

 

 

端正で愛らしい顔と、艶やかな焦げ茶色のセミロング・ヘアが、露わになった瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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