RE:召喚勇者の現代帰還〜それでも勇者は勇者としてあり続ける〜 作:MrR
Twinkle。
スターズ芸能事務所の人気アイドルたち。
そして少女A事件で世間的認知度が爆発的に高まった。
一歩間違えればスターズ芸能事務所その物を焼き尽くすレベルの大惨事になったが、ここ最近の日本は大事件に継ぐ大事件が続いており、その流れが幸いして沈静化に成功した。
日本人は良くも悪くも、一ヶ月もすれば人が大勢死ぬ大災害が起きても平静になってしまう生き物なのである。
そうした状況下でTwinkleは活動休止を続けてはいるが―—グループのリーダーが普通のアイドルでは出来ないような活動を―—ハンドレッド事件の修羅場に飛び込んだりしたり、あるいはリアルライドセイバー二人の動画にも出演したりして話題性を保っていた。
それでもTwinkleの三人はアイドルとしての努力研鑽を怠らない。
今回はそんな三人のお話。
☆
Side 天川 マリネ
=夜・会社の寮=
中学時代はアレだったが、現在は芸能活動に理解がある高校に進学し、仲間達と三人会社の寮で共同生活している。
一時期ストーカーに付き纏われていたが、谷村 亮太郎や闇乃 影司の活躍で処理された。
具体的には学校側や育ての両親などにストーカーの事実を話して外堀を埋めてから、集めたグッズやデーターや写真などを全部処分、念入りに暗示を掛けた上で記憶の消去まで行って解決したらしい。
谷村 亮太郎は人殺しがダメだと言ってるが、人を殺さなくなっただけでより狡猾になったのではとマリネは思う。
「定期点検終わりました。どうしても市販を通じて盗聴器があったりしますから気を付けてくださいね」
黒いオカッパ頭の少年、谷村 亮太郎が他人行儀で仕事を終えた事を告げる。
「何時もありがとうね~いや、助かるわ~最近色々と人間不信になりそうな事件が起きたからね」
茶髪で大人びた顔立ちの垢抜けた少女、Twinkleのリーダーにしてセンター、天川 マリネはお礼を言う。
自分が所属している芸能事務所のマネージャーが枕営業のために所属しているアイドルを売り飛ばしていたり、会社と契約している警備会社の人間もアイドルの個人情報を売り捌いていたりとか目にしたのだ。
これだけでもスターズ芸能事務所事態が潰れかねない程の大スキャンダルである。
何を血迷ったのか、口封じのために街ごと焼き払おうと軍隊よりもおっかない連中を嗾けて来た政治家とかも現れたが……それも日本橋の人達の手で返り討ちになった。
まだあの事件から一ヶ月も経過していない。
あの事件は色々と社会勉強になったが、亮太郎との仲も深まったので個人的にマリネとしては結果オーライだった。
「て言うかこれ大丈夫? 撮影されていない?」
と言って落ち着かない様子でキョロキョロする。
相手が魔王だろうと政府だろうと宇宙人だろうと戦いを挑むヒーローにはとても思えない。
年頃の少年のような姿であった。
「そのために魔法結界とか色々と頑張ってくれてるんでしょ?」
アイドル寮は魔法要塞化している。
イージス艦に対艦ミサイルとか撃ち込まれてもビクともしない。
仮に外国人の工作員が周囲で不審な行動をしようとしても何も出来ない。
そんな感じになっているらしい。
谷村 亮太郎自身も地球基準で言えば間違いなく上から数えた方が早いレベルの暗殺者、工作員、諜報員である。どこぞの週刊誌の人間に撮影されるようなヘマはしないだろう。
「そうだけど落ち着かなくてね。それに自分思ってたより女の子にだらしないみたいだし。気を付けた方がいいよ。十代の男は同性相手に女とそう言う事をしたかしないかでマウント取り合うところあるし」
「影司も似たような事を言ってたわね」
とマリネは笑う。
闇乃 影司、日本橋の何でも屋の事だ。
アウトローに憧れていたり、ちょい悪的な週刊少年漫画の主人公に憧れていたりする子で、女の子に対しては甘いと言うか弱いと言うか、恥ずかしがりながら今の亮太郎みたいに「男の子は下心満載なところあるんだよ」的な事を言って遠ざけようとするのだ。
それが余計に可愛らしくマリネは感じてしまう。
「そんな事言って~リーダーと本当はデレデレしたい癖に~」
と、背後で控えていた綺羅 セイナが会話に入って来る。
金髪のツインテールでツインテール側をロールさせている。
明るいムードメーカー的な女の子だ。
勉強は出来ないが頭が悪いワケではない。
「でも羨ましいかも。そう言う恋できて」
長い黒髪の大人しそうな正統派美女、星空 アカリ。
胸に手を当て、顔を朱に染めてマリネを羨ましがっていた。
グループの纏め役と言うか手の掛かる妹みたいな二人を纏めるお姉さんと言うか。
そんな感じのポジションの女の子だ。
二人とも何だかんだで亮太郎とマリネの仲を応援していた。
「いっそ私達全員娶ってアイドルハーレムエンドとかしちゃう?」
などとぶっこんだ発言をするマリネ。
「マリネさん、冗談でもそう言うのは言わない方が」
顔を真っ赤にしながらマリネを諫める亮太郎。
「え? 私達亮太郎のお嫁さんになるの?」
そしてセイナが驚愕し、
「その……責任とってくださいね?」
アカリも何故か顔を赤らめて反応する。
まさかの二人の返しに亮太郎も「何で二人ともそんな乗り気なの?」と本気で困惑した。
「でもでも~亮太郎以上の高スペック、ハイスペックで、将来何があっても幸せにしてくれそうな人っていなさそうじゃん。ブーブー」
と、セイナは亮太郎を高く評価している様子だった。
「でも私達はアイドルです。どんなに言い繕っても人気商売です」
「やっと援護射撃が……」
チームの纏め役のアカリの援護射撃にホッとする亮太郎。
「でも、私達が相手にする人達って現実を考えられない人達ばかりなんですよね。アイドルが結婚しただの熱愛しただのと騒いでる人達ってアイドルを何だと思ってるんでしょうか」
「ああ、うん。そうだね」
突然アイドルの恋愛、結婚どうこうを語り出すアカリ。
止めようかどうかと亮太郎は悩む。
「だから少しぐらい我儘になってもいいと思うんですよ。最悪そう言うのが許される国に亡命して、旬が過ぎて過去の栄光に縋りつきながらこんな筈じゃ無かったと嘆く私達を救う展開に」
「ごめん、何を言ってるか分かんないです」
突然何かリアリティがある自分達の未来を語りながらハーレムルートを熱望する流れになった。
いつもこんな感じなのかリーダーのマリネは「この子たまにこうなるのよ、面白いでしょ?」と語り出す。
「でさ亮太郎。ハーレムって何人ぐらいまで予定してるの? 百人ぐらい?」
セイナが冷静な態度でとんでもない事を口走る。
顔を暗くさせながら「その人数はもう病気だろ」と返した。
「でもでも、ラノベだと十人かそれ以上のハーレム建築ってよくあるじゃん」
「ラノベと現実を混同しない。確かにハーレムは憧れた事もあったけどさ、実際なってみるとたまったもんじゃないぞ。産まれて来た子供にこの人達が僕のお母さんだよとか言うシーンを想像してみろ。俺は嫌だぞ」
アイドルに正論を返す亮太郎ではあるが、セイナは「お、そこまで考えてるんだ」と本当にわかってるのかどうか怪しい返事をする。
「とは言うけど退魔師とか魔法社会ってそう言うのまだ残ってるぽいし、二年前の事件とかで数も激減しているワケだからその線で攻めればワンちゃん……」
「それ何処で知った?」
マリネの意外な情報網の広さに亮太郎は反応に戸惑う
「ふふふ、教えてあげないよーだ」
と、得意げにマリネは語る。
亮太郎から一本取れたようで嬉しそうだ。
「言ってもこれから先の人生まだまだ長いんだし、自分なんかより素敵な人に巡り合える可能性は十二分にある訳だしさ、そう言う可能性を踏まえて清く正しいお付き合いしましょうね」
「亮太郎学校の先生みたい」
などとセイナは茶化してくる。
マリネはマリネで「昔からこんな感じなのよ」と同調し、纏め役のアカリも「そうやって男に免疫の無い無垢な女の子を落としているのですね」と何故か恥ずかしそうに顔を赤らめていた。
☆
亮太郎が居なくなり、三人は風呂入ってパジャマ姿へと着替えた。
選択とかそう言うのは当番制。
最近は男が部屋に入るようになってそう言うのにも気を遣うようになっていた。
寝室も相部屋。
机の上にベッドがあるスタイルだ。
毎日が林間学校みたいで楽しいとマリネは思っている。
「亮太郎って何でも出来る感じだよね。何なら核戦争が起きてもどうにかしてくれそうだし」
綺羅 セイナは亮太郎に対して極端な評価を下していた。
だが少なくとも悪い印象は持っていない。
それは三人とも共通している。常識的な範囲での潜在能力解放や各種マジックアイテム、魔法などで過酷なアイドル生活もかなり楽になった。
それでいて人柄も悪くない。女の子達に惹かれる何かを持っている人だと、マリネだけでなく、セイナもアカリも思っている。
「確かに戦闘機とかパワードスーツ身に纏って核兵器迎撃しそうだしね。実際戦闘機の操縦も出来るみたいだし」
少女A事件の時を思い出しながらマリネは笑う。
「理想の更に上を行く頼りになる人……本気で付き合うとなると大変じゃないマリネ?」
アカリも長い黒髪を弄り、微笑みながらマリネに尋ねる。
「中学時代はまだそんな感じじゃなかったんだけどな。でも変わんないところもある」
と言ってマリネは中学時代の亮太郎を思い出す。
「大人よりも大人してて、責任感があって真面目で、悲しいぐらいに現実を見たり知ったりしてて、それでも亮太郎は異世界で戦い抜いた」
「亮太郎はまだラノベの主人公とかに憧れてたんだと思う。自分は脇役だ黒子だ何だの言ってるけど、まだあの主人公とかに憧れてんだと思う」
ツンツン頭で不幸だが口癖の、何時も騒動の中心に彫り込まれて、それでも救いの手を伸ばして足掻き続けるような。
そんな主人公に今でも憧れているんだとマリネは思う。
決してその主人公にはなれないと思うけど、それに近い存在になれると自分自身を勇気づけて、余計なアレコレを抱えなくていいから抱え込んで。
アレコレとキャラ作りをしているっぽいが、彼の本質はそんなもんだ。
そうでなければ異世界で進んで苦労人の立場を引き受けていないだろうし、マリネを助けなどしないし、何でも屋なんか始めてないだろう。
「本当に恋してるんだねマリネ~でも分かるよその気持ち」
ベッドの上ではしゃぐセイナ。
「ええ、本当にですね。何かキッカケさえあれば私も本気で恋に落ちてしまいそうなところありますね」
照れ臭そうにアカリが言う。
「何? まさかのグループ内でライバル宣言? でも亮太郎を陥落させるのは難しいわよ~? 今のところ複数人掛かりで攻め落とす予定だし」
と笑うマリネ。
アイドル以前に女の子としてどうなのと言う意見だが本人はあまり気にしてはいない感じだ。
「アイドルとして頂点目指すつもりだけど、亮太郎も獲りに行くんだからね」
片目を瞑り、指でピストルの形をとってパンと撃つ真似をするマリネ。
彼女はとても満足そうで、幸福そうだった。
不思議と日常回は筆が進むんですよね(汗
明日から新シリーズの掲載予定です。
中々執筆が進まずヤケになったりしましたが、どうにか形になりました。