RE:召喚勇者の現代帰還〜それでも勇者は勇者としてあり続ける〜 作:MrR
Side 谷村 亮太郎
=昼・タンカー内部=
『自衛隊を動かして証拠隠滅とか……今の時代に出来ると思ってるの?』
と、舞に連絡を入れる亮太郎。
内部に置かれている情報が記されていそうな物は片っ端からアイテムボックスに放り込んでいる。
『少なくとも自分達が関わったと言う証拠は消したい筈だが』
『だけど自分達、もう人質も犯人も救出しちゃいましたよ? 学園の方も鎮圧されてると思いますし』
亮太郎派まるで他人事のように飄々とした語りを口に出す。
『普通はな、これだけの大規模テロは半日で終わらないんだ。数日掛けて粘り強く交渉して、それから特殊部隊を突入させるかどうかとかそう言う話になるんだ』
『取り合えずミサイル迎撃します?』
北川 舞の愚痴に亮太郎はどうするか指示を仰ぐ。
亮太郎はミサイルを迎撃するつもりだ。
ここまで来たら完全な形で終わりたいと言うのもあるし、タンカーや内部に格納されている潜水艦もどれだけ有益な情報が入っているのかを考えれば、ガーディアンズと言う組織からすれば喉が手から出る程欲しいだろう。
『迎撃できるのか?』
『可能だよ。弓矢で戦闘機を撃墜できる人とか知ってるし、僕だって出来る』
などと脳裏で並行世界の学園島を思い出す。
あの学園島は超人だらけで、戦車を日本刀で斬り裂いたりとか、戦闘機を弓矢で撃墜出来たりするヤベー連中だらけだ。
なら自分にも出来るのでははないかと思い、弓矢を取り出す。
青く、そして銀の弦が取り付けられた大きなファンタジー弓。
その気になれば衛星軌道上の監視衛星の監視の目すら把握できるスキルをフル稼働し、タンカーの煙突近辺に陣取る。
『弓矢で狙撃できるのか?』
『うん』
そう言って次々と弓矢を放つ。
後数秒すれば着弾と言うところで空中爆発を引き起こした。
ミサイルを撃ったイージス艦の人間や戦闘機のパイロットは目を点にしているかもしれない。
『何か真面目に考えるのが馬鹿らしくなってきた……ッ、第二派来るぞ!! さっきよりも数が多い!!』
『おいさ』
次々と迎撃する。
F〇teのヘラクレスとか、ケイローンはこれぐらい難なく出来るんだろうなとか変な事を考えながら亮太郎は弓矢を次々と連射。
弓矢の速度はレールガン(マッハ六~七)を超える速度で撃ち出されていく。
その気になればイージス艦とか戦闘機の撃墜も出来るが、無関係だったり脅されたりしているだけの人達かもしれないのでやめておいた。
『俺も迎撃に参加します』
白い弓矢を手にしたシノブが現れた。
タンカーの船首付近のコンテナに降り立って亮太郎と感覚共有しつつ、ミサイルを撃ち落とし始めた。
その光景に舞は『冗談だろ……実はホークアイが最強だった的な話なのかこれは』と無線機の向こう側で頭を抱えていた。
次々とミサイルが空中で爆散。
イージス艦の主砲の弾とかも迎撃した。
『もう何でもありだなお前ら』
心配するだけ無用。
舞は安堵した。
『戦闘機が接近——速度が速い!!』
その言葉を聞いて亮太郎は敵の次の手が理解できた。
『特攻してタンカーを沈めるつもりかな?』
『そこまでやるか!?』
自衛隊の人も可哀そうにと思いながら亮太郎は矢を二つ発射。空中へ飛び出した。
☆
Side 自衛隊の戦闘機のパイロット
=昼・タンカー周辺の上空=
訳の分からない任務だった。
テロリストのタンカーを沈めろと言う任務だ。
情けは無用。
徹底的に破壊しろと言う。
そんな任務だ。
何か胡散臭いと言うか、意図的に情報を制限されている、不信感を感じたが相手はテロリストであり、国外に逃がすぐらいならミサイルで吹き飛ばすと言うのは理解できた。
だが発射されたミサイルは次々と撃墜。
イージス艦の攻撃すらも防がれている。
テロリスト達のタンカーにそんな高度な迎撃システムがあるのかと驚愕した。
もしかして宇宙人絡みの超テクノロジーを何らかの形で所持しているのかもしれない。
全てのミサイル、イージス艦のあらゆる攻撃の全てが防がれた。
『だからって特攻を命じるか!?』
下された命令は特攻だった。
戦闘機を体当たりさせてでもタンカーを沈めろと言う。
銃殺刑とか、大切な人の命が無いとか脅迫までして来た。
その時点になってようやく自分は嵌められた事に悟った。
何か国家規模の大きな陰謀に巻き込まれてしまったのだと。
『特攻死ねとまでは命令されてないよな……』
自分に出来るのは特攻して命を散らす前に脱出する事だった。
『なっ!?』
戦闘機を体当たりさせようとして―—両翼の翼を破壊。
更に物凄いスピードで青い二本角の何かが正面から来た。
『えっ!?』
自然と脱出レバーを引いて戦闘機から脱出。
その戦闘機もまるで空中でピタッと停止。
何もない空間に姿を消した。
同時に青い何かがパラーシュートを開いた自分の前にやって来た。
『一旦保護しますね』
手に何か、建造物が建てられたジオラマ内が握られていて―—
『何処だここは?』
気が付いたら身形が整った若い男女数十人がいる、ドリンクを配る未知のロボットが徘徊している謎の空間にいた。
木々が生い茂っており、気候も心地よい。
ポツンと大きな屋敷が建築されていて、緊急避難場と言う看板が立てられている。
『ジュースいかがですか?』
『……』
何が何だかもはやワケが分からなかった。
何かの催眠術でも掛かったのだろうか。
通信は繋がっている様子でしきりに現状把握の無線を入れるように言っていた。
『どうだ!? タンカーは沈めたか!?』
『いえ、失敗しました』
『失敗だと!? よくそんなので戦闘機のパイロットになれたな!! 幾ら税金を無駄にしたと思ってるんだ!! この役立たずめ!!』
『クソッたれな上層部へ役立たずより。ケツを拭きたきゃ自分で拭け。以上終わり』
と、ヘルメットを投げ捨て、無線を踏み潰し、とりあえずジュースを口に含む事にした。
☆
Side 藤崎 シノブ
=昼・タンカー周辺の海上=
『今度はイージス艦を体当たりさせて証拠隠滅を図るつもりだ。正気とは思えん』
今度はイージス艦を体当たりさせるつもりらしい。
命令を下している黒幕はもはや切羽詰まり過ぎて自分達は何をしでかしているのか分からない、錯乱、混乱状態に陥っているのだろう。
ミサイルや主砲、魚雷を乱射しながら全速力で突っ込んでくる。
シノブはその全てを迎撃する。
本当は念のため闇乃 影司にも参加して欲しかったが、彼には万が一のために情報を収集する重大な役目がある。
戦闘機のパイロットの救出を完了した亮太郎も迎撃に回り、イージス艦一隻の全力の火力を全部迎撃していく。
『撃沈は最終手段だ。船尾にあるスクリューを破壊して航行不能に追い込んで内部を制圧すればいい。武装やレーダーは僕がほ破壊する』
『了解!!』
シノブはバイクに跨り、海面スレスレを疾走。
イージス艦の全力射撃が空中で撃ち落とされて大気が振動し、海中で魚雷が破壊されて大きな水柱を上げる。
そんな中を突っ切っていく。
マッハ十を超える速度を出してあっと言う間に遠く離れたイージス艦の船尾に到達。バイクでそのまま体当たりして破壊した。
『さて、やりますか』
念のため内部に乗り込んでいく。
☆
Side イージス艦艦長
=昼・イージス艦ブリッジ=
ブリッジにて艦長は結末を見届けた。
テロリストの船をどんな手段を使ってでも撃沈しろ。
最終的には自爆特攻の強要までして来た。
クルーや家族、友人などに危害を加えると言う脅迫。
その結末がこれだった。
一門しかない主砲は吹き飛び、レーダー関連のシステムも完全破壊。
攻撃手段は事実上無くなった。
「これで満足かな?」
イージス艦の全ての力が通じず、自分は敗れ去った。
艦内にはまだ日本政府のエージェントを名乗る集団がいる。
従わねば射殺する。
そう言う類の連中だった。
「ふ、ふざけるな!? 我々は国益を守るために!! これ以上の国家損失を出さなためにどれだけの苦労を―—」
拳銃を握りしめた、イージス艦を占拠したリーダー格の男は体を震わせ、何かに酷く怯えている様子だった。
失敗してから殺される類の、そう言う組織に属しているのかもしれない。
そう考えると何故だか哀れだなと館長は思えてならなかった。
『隊長!! 赤い仮面の奴が!!』
『銃が!! 銃が通じない!!』
無線から悲鳴のような声が鳴り響く。
何かがこのイージス艦に乗り込んだらしい。
悲劇的な報告の数々。
SF映画の化け物でも乗り込んでしまったのだろうか。
不安になる艦長だった。
「ヒィ!?」
ドアから現れたのは赤い仮面の特撮ヒーロー染みた何かだった。
ブリッジに入るや否や次々とこの艦を占拠した人間だけを手早く殴り倒す。
あっと言う間の手際でどう対応すればいいのか迷う。
「敗軍の将に何か用かな?」
『イージス艦を占拠していた政府の暗部部隊は倒しました。武装やレーダーは友人が破壊して、スクリューを自分が破壊しましたが』
簡潔に説明される。
声の感じや背丈からしてまだ若い。
だが歴戦の風格と言うか落ち着いていると言うか、早退しているだけで安心感の様な物を感じる。
するとブリッジに艦内の主だったクルーが完全武装で雪崩れ込んで来た。
一体何がと言う表情だった。
「ふむ。実はと言うと我々も状況の把握が出来ていないのだ。テロリストの船をどんな手段を使ってでも破壊しろとだけ」
『実はですね―—』
仮面の人物は単刀直入に説明してくれた。
それを全て聞き終えた時、自分達は嵌められて悪事の片棒をまんまと担がされたのだと理解した。
「じゃあ何か!? 政財界のご子息が通うテロリストとの繋がりを消すために、その証拠隠滅のためにこの艦を利用したと!?」
「今の政府は腐っているとは言われてるけど、なんて連中だ!!」
事情を説明されて憤慨した。
日本政府は腐っている。
世界征服を目論む悪の侵略者かそれ以上に性質の悪い連中に成り下がっていると聞いていたが、ここまでの事をやらかすとは思いだにしなかった。
「説明は理解できた。私はその話を真実だと思っている。私は最後の仕事としてこの罪を世の中に告発するつもりだ」
「艦長!! それは!?」
決心は固まっていた。
脅されていたとはいえ、許されない事をしたがまだやるべき事は残っている。
自衛官として責任を取り、今回の事態を引き起こした連中やその黒幕達に一矢報いねばならないと。
『いえ、この艦から降りるのはまだ倒すべき敵を全て倒した後にしませんか?』
「倒すべき敵だと?」
『今日本は嘗てない程の脅威に晒されています。それを守るための戦士が一人でも多く必要な時代なのです』
「だが我々は―—」
『カッコつけて腹を切って、艦を去る。それは無責任だと言っておきます』
「なっ」
そう言って赤い仮面の戦士はマスクを取った。
そこから現れた顔は自分達がよく知っている有名人、藤崎 シノブの顔だった。
☆
Side 谷村 亮太郎
=昼・タンカー船上=
『終わった終わった~今度は戦闘ヘリとか戦車とか、特科部隊の砲撃とか来ないよな?』
船首、屋上甲板の上で谷村 亮太郎は弓矢片手にリラックスする。
今の日本政府ならやりかねない事だ。
その辺も含めて警戒態勢を整えている。
『無理だな。やるにしても派手に騒ぎ過ぎた。まあ一部情報は誰かが故意にネット上に流してしまったしな』
『あ~それは仕方ないですね』
誰がやったかは分からないが、もはや口封じや証拠隠滅は不可能になってしまったらしい。
また日本政府は眠れぬ夜を過ごす事は確定したようだ。
『ああ。まあ色々と言われるかもしれないが、我々は人を救うお節介なお仕事だ。私も罰を受けようと思う』
どこか北川 舞は嬉しそうな語り口だ。
☆
Side クロワシ
=昼・異世界リブラリア、執務室=
「私の日本が!! どんな汚い手段を使ってでも守った日本が!! このままでは!!」
またしても洒落にならない事態にクロワシは頭や胃を痛める。
しかも今回は自分が関わった案件だ。
数も少なくなった貴重な手札を切ったのに、証拠隠滅は叶わなかった。
ただ自分達と表の権力の対立構造が深まる。
そして自分達のような存在をより広い範囲で認知される結果となった。
将来的に宇宙犯罪組織ジャマルや異次元帝国ディメル、異世界の帝国ゼツパライアを制する存在になり、世界をも牛耳る超大国にする野望。
それが実現困難に。
「計画を早めねばならないか……」
フロンティア計画を軌道に乗せるしかない。
そうして無限の富を得て殴りつける事さえ出来るようになれば幾らでも挽回できる。
計画の実行を進ませる事にした。