RE:召喚勇者の現代帰還〜それでも勇者は勇者としてあり続ける〜 作:MrR
これで更新分は全て放出しました。
また暫くストック制作に戻ります。
Side 藤崎 シノブ
=朝・守衛学園・武道場=
十月のまだ暑さが残る気温の中。
畳部屋の武道場で稽古が行われていた。
皆柔道着を身に纏い、次々と黒髪の少年、中背の首や四肢がカタギのソレではない、戦うために適した、膨らみが抑え込まれた筋肉質の少年に挑みかかっている。
琴乃学園では見慣れた光景だが、教官だろうと生徒だろうと神技、早技で次々と投げ飛ばされていく。
現代戦において接近戦だけでなく、学ぶことは沢山ある自衛官の卵達であるが、接近戦の項目は重要視されている。
怪人、戦闘員なんて物が現れたのが今の現代社会、銃の扱い方は当然であるが接近戦に持ち込まれて戦えませんと言うのは戦う組織の人間として恥ずべき事である。
一般的にも格闘戦が弱い軍人とかどうなのよと言う話だ。
「嘘だろ……」
「電動ガン持ち出しても駄目なのかよ」
スポンジ製のチャンバラ棒やさすまた、電動銃を持ち出しグループもいたが無理だった。
武器を奪い取られ、落とされ、無力化されていく。
投げ方も進歩していき、格ゲーのキャラクターみたいな挙動で飛び掛かり、壁や天井を利用してオリジナルの投げ技を披露したりする。
相手が上手く受け身を取れるように加減しているのもポイント高めだ。
動画の方はと言うと……
〇ちょっとドラマの撮影にしてはカメラワーク悪いな。
〇やられる時の演技は良いな。
〇アクションはいいんだけどな。カメラワークが。
〇フェイク動画では?
〇AIで頑張れば作れるだろ。カメラワーク悪いのが難点だな。
〇アクション凄いよね。無双している子、高校生がしていい肉体じゃないけど。
〇売り出し中のアクション俳優かな?
〇空中から飛び掛かって相手を投げ飛ばすの、格ゲーでしか見た事ないんよ。
〇皆現実逃避気味な感じになってるけど大丈夫かこれ?
〇日本が戦争になったらこの子も前線に出て来るんだろうな。
〇途方もない人体実験の数々の末に日本政府が産み出したスーパーソルジャー説で難癖付けている国もあるけどね。
〇身体能力のごり押しだったらとっくの昔に怪我人だらけで死者も沢山出てるんよ。明らかに何かしらの武道の心得あるんよ。
〇技術と言うか何と言うか、実力が向上している気がするんだが。
〇ライドセイバーの映画に出演すると言うけど、大幅に弱体化しそうだな。
〇いや、たぶんここは俺達に任せて先に行けみたいな感じに収まるんじゃないかな?
たぶん?
〇二号「何か起きた時の為に映画はちょい役で済ませる」←この人次は何をやらかすつもりなんだ。
〇テロ事件解決してからまだ数日経ってないのに働き過ぎだろ。体力も異次元でいらっしゃる?
〇2号君は後方師匠面してるけど。
〇2号は暗殺拳の人だから(白眼
〇言うても2号もヤバいぞ。1号と異次元柔道始める様な逸材だぞ。ハンドレッド事件で暴れ倒した人だよ。服着てると分かり辛いけど二人とも筋肉の付き方がも凄い。
〇腕だけじゃなく脚や首回り、道着からちらりと見える大胸筋とかも凄いよね。
〇筋肉フェチになりそう。そう言う趣味の人の気持ちが分かった。
〇それでいて顔が整ってると言うかオーラがあると言うか。
〇3号君の柔道服姿可愛らしいんだけど……と言うか居たんだ3号君。
〇そう言えばこの後はどうするんだ?
〇現役の完全武装した自衛官相手に屋外で耐久実践訓練。
〇ドローンとかも投入するらしい。
〇金の掛かった海外の番組かな?
〇円盤で出してくれないかな。きっと売れるって。
などとコメント欄は盛り上がりを見せていた。
☆
=守衛学園、控え室=
守衛学園側が用意した控室。
そこでシノブは谷村 亮太郎、闇乃 影司と段取りを話す。
三人ともそれなりに動いた筈だが特に疲れた様子はない。
「え? 谷村さん出るんですか?」
おかっぱ頭の少年、谷村 亮太郎が一番槍として出るらしい。
シノブと同じく、中肉中背の青年に見えるが無駄な膨らみがない筋肉で構成されていて、異世界から帰還直後の体育時間の着替えの時はとても驚かれた。
「理由は?」
それに反して闇乃 影司は華奢な童話に出て来るか弱い美少女のような体つきだ。
これでも亮太郎とシノブとタイマンなら互角かそれ以上に渡り合える、日本政府が産み出した突然変異の超戦士。
亮太郎曰く、軽く並行世界の自分自身とかの影響を受けているらしいが。
とにかく中学生が考えた最強キャラが具現化したような存在である。亮太郎もシノブもあまりどうこうは言えないが。
「動画映えだ」
きっぱりと亮太郎は言い切った。
何故かサングラスをつけている。
「正直動画映えする展開をある程度しないとコラボ先に迷惑が掛かるからね」
「つまり、昨日みたいに自衛隊を立てる必要があると?」
亮太郎の台詞を要約するシノブ。
「無双する流れは変わらないが、ここは一つ変わった戦いを披露する感じで」
「そう言うのやって大丈夫なの?」
その点を影司に心配されるが、亮太郎は「まあ程々にやるさ」と返した。
☆
Side 自衛隊側 αチーム
=守衛学園、屋外演習場待機所=
十月の日差しが差し込む屋外演習場。
市街地、都市部を参考に建設された。
自衛隊側もバックアップ体制を万全にして、ドローンを展開して三分隊程、三十人程を送り込んでいた。
ルールはレーザー照射を一発でも浴びたらアウトと言う設定だ。
塔にゅするドローンもレーザー照射を受けたら機能停止ルールである。
やりようによっては勝てると自衛隊側も踏んでいる。
この訓練は今回特別に琴乃学園の一年A組達や、招待された観客が炎天下でも涼しく冷やされた場所で見学している。
また生の動画配信する流れだった。
あまり訓練内容を公開するのはどうかと思う自衛官は多くいたが、このままでは自衛隊は有事が起きる前に人手不足、予算不足で崩壊し、問答無用で組織解体もあり得た程のギリギリの状態なのだ。
他に選択肢はなかった。
既に守衛学園の生徒達も揉まれていた。
相手は谷村 亮太郎、世間的にライドセイバー2号と呼ばれている人間が出張って来たらしい。
『ウチの息子があの三人のファンなんだよな』
『でも実際のところどうなんでしょうね? 絶対インチキしてるでしょ』
『フェイク、AI説も未だに根強いが……例えインチキを使っていたとしても実績がある以上は無碍には出来ない』
『そもそも自分達は内閣の機嫌次第で明日には無職になる可能性も忘れるな』
訓練開始前に口々に語る自衛官達。
完全武装である彼達の、ライドセイバーの評価は様々だ。
だが自分達もあまりどうこう言える贅沢な立場では無い事は理解していた。
震災の対応、海外派遣などにより、戦争せずに信頼を積み上げて来た実績がある。
だが二年前の自衛隊のやらかしが広まっていき、ここ最近の国家転覆級、国際情勢に影響を与えるレベルの大問題をこの一カ月間に引き起こして来た。
先日の豊穣学園の事件の最後の最後はテロリストと政府の繋がりを消すために証拠隠滅しようとしてライドセイバー達の手で失敗に終わったと言う話だ。
ライドセイバー達の鶴の一声、小野寺総理大臣の決断によって自衛隊は奇跡的に延命した。そう言う状態なのだから。
『訓練開始。ドローンを先行させて敵を捜索する』
訓練開始の合図が告げられ、自衛隊は演習場の仮設市街地に突入。
ドローンも飛びたっていく。
☆
=屋外演習場=
戦いは意外な展開を見せていた。
激しい銃撃戦に移行している。
既に何名も脱落者が出ていた。
敵はアメコミヒーロー的な超人的な強さとか能力でごり押しするかと思われたが。
(まさか彼方もドローンを使って来るとは!!)
まさかのドローンである。
見た事も無い、レーザー照射装置を搭載した四基のプロペラで浮かぶ浮遊タイプ、地面は小型の自走式。
レーザー照射を浴びたら機能停止、自動的に退場していくようである。
『此方のスナイパーはやられた!!』
『カウンタースナイプだ!! ネクプラバトルじゃないんだぞ!?』
此方のスナイパーは既に脱落。
状況から察するに、藤崎 シノブが昨日のネクプラバトルでやったカウンタースナイプを受けたらしい。
此方側のスナイパーも素人ではない優秀なスナイパーだ。
射撃の腕だけでなく、潜伏スキルも相当な筈。
それでも餌食になったらしい。
『変装していて誰かは分からないが、端末で操作しながら彼方此方動いてやがる!』
『まさか戦いながらこれだけのドローンに指示を飛ばして……』
『そんな事が可能なのか!?』
部隊に混乱が広がっている。
此方はレンジャー資格や海外のPMCで自己鍛錬を積んだ精鋭チームだ。
少々大人げないかと思ったが、まだまだ戦力不足だったらしい。
だがこのまま大人しくやられ役に甘んじるつもりはない。
『煙幕を張れ!! その隙に態勢を立て直す!!』
指示を飛ばし、一旦後退して冷静さを取り戻す事にした。
☆
Side 谷村 亮太郎
簡素な建物の屋上にて。
そこから超人的な思考、反応速度で特注の端末からドローンを動かす。
ドローンは財団製、ガーディアンズ製の奴でドローン側に内蔵されているAIも優秀である。
異世界帰りの勇者としての能力をフルに活かしながら、谷村 亮太郎はドローンを数十台纏めて制御しながら戦う。オンラインのネクプラバトルでも似たような事をした事がある。
動画映えして自衛隊の評判も上々だ。
(今の自衛隊の評判は悪いけど、自衛隊員の全員が全員悪いわけではないしね)
自衛隊は確かに洒落にならないレベルの事をやらかし、一定の責任は取らなければならないだろうが、全てが全て自衛隊だの警察だののせいにするのは間違いだと亮太郎は思っている。
異世界帰還直後で、藤崎 シノブがいなければ何でもかんでも無責任に傍観者を気取って敵対者は全員ジェノサイドし、死体を好きなだけ積み上げた後は都合よく一般人になって知らんぷりしていたかもしれない。
並行世界で自衛隊や日本政府に裏切られた記憶とかもあるので余計にだ。
同時に自衛隊に憧れていた時期の記憶や、一緒に自衛隊と世界や並行世界の危機を救った記憶、中には平和を訴えて戦いの転換点へと導いた記憶もあった。
(さてと、仕掛けますか)
建物にワイヤーを引っ掛け、レーザー銃を片手に屋上から飛び降りる。
『ちょ、おいアレ!?』
『冗談だろ!?』
ハリウッド映画でしか見られないようなスーパアクションを決めつつ何者かが銃を片手に上から飛び降りて来るのだ。
さしもの自衛官もパニックになった。
無情にも撃破報告が響き渡る。
『やっぱり特殊なクモかヤバイエネルギー線を浴びたんだって!?』
『それだけで説明付くかアレ!?』
ワイヤーを切り離し、何処で覚えたのか芸術的な五点接地を決めながらレーザーを当ててキルカウントを稼ぐ谷村 亮太郎。
大した着地ロスも無く、戦闘態勢に移行した。
『来るぞ!?』
『動きがアクション映画のソレなんですけど!?』
『これは訓練だ!! 死ぬことはない!!』
『実際戦ってみろ!? 見てるだけでめっちゃ怖いぞ!?』
自衛隊達は悲鳴を挙げながらも必死に応戦する。
これでもまだ全然本気じゃない事を知ったらどのように反応するか。
自衛隊達は奮戦虚しく全滅した。
「手加減すると言っておいて、かなりはっちゃけてますね」
遠目から見て訓練の様子にどう判断していいのか迷うシノブ。
だがある程度自衛隊が戦うシーンも映し出されているし、チートでごり押しして瞬殺しなかっただけでも優しいと捉えるべきだろうか。
後で動画配信によるフォローとかも必要かもしれないなと頭を働かせているウチに訓練は終了した。
☆
Side 藤崎 シノブ
=夜・琴乃市空地内=
夜になったが蒸し暑さが残る十月の夜。
次々と琴乃市の町外れにある面積は広い、周囲をブルーシートなどで遮断された敷地内に各種資材が載せられた大型トラックが運び込まれ、それをシノブ、亮太郎が受け取りを行う。
守衛学園への報酬がてらの訓練も終わり、ここから本格的に自分達のための合宿へと移行する。
アイテムボックスに必要だと思う物は限界分放り込んでいく。
ホームセンターから手に入る資材も錬金加工などで建築素材に早変わりするため、ガーディアンズを通して業者買いをしていた。
確定申告の時は大変そうだが、その辺りは財団やガーディアンズなどが何とかしてくれるそうだ。
「アイテムボックスでも大騒ぎもんだが、次は錬金加工と来たか……」
長い黒髪の巨乳で大人びた感じの美女、北川 舞。
八月の気候に合わせて半袖のシャツに赤いネクタイ、ブラウンのコルセットに長スカート、革靴を履いている。腕にはクラシックの銀の時計。
身に付けている物はほぼほぼ何かしらのブランド物。
子供だからと舐められないための彼女なりの知恵だろう。
彼女はガーディアンズの人間でかなり上の地位の人間である。
異世界帰還後から最初の事件、一カ月前の須藤 正嗣や須藤 勇也などが絡んだフューチャーテック事件でシノブや亮太郎の後ろ盾になってくれた。
今は錬金加工の存在を知って渋い顔をしている。
「つまり地球の物で君達の手に掛かれば魔法の金属が産み出せると言う事か?」
錬金加工を舞なりに解釈してシノブに問い質した。
「そうなりますね」
「それでいて君達ぐらいの実力者がいる修羅の土地でもあるか」
「人が旅した世界を紛争地帯よりも物騒な場所みたいに言わないでくださいよ」
「実際そうだろ勇者殿。地球と全面戦争になったら間違いなく滅びるわ。地球側が」
「か、核兵器とか使えばワンチャンあるんじゃないですかね?」
「谷村 亮太郎から聞いた並行世界みたいになりそうだから却下だ。四つ足で三つ首のサメとかが現れる感じの流れだろそれ」
「サメベロスですね」
サメベロス。
異世界ユグドにもいた怪物。
中々の強敵であり、雷、炎、吹雪を吐き、体内から電波妨害を発っすると言う現代兵器に対応した能力を兼ね備えていた。
他にもフライングシャークやメカシャーク、サメオクトパス……様々なサメと定期的に戦った。
谷村さんは「何時かナチ〇とか宇宙人とかと戦うんじゃねえの?」と怯えていた。
それとチェンソー片手にサメを狩り続ける、自称悪役令嬢のサメハンターと付き人のサメであるスティーブ君は元気にしてるだろうか。
「異世界と全面戦争をするのは避けたいが、それを避けるためにも日本政府の暗部のバカどもをぶん殴って泣いたり笑ったり出来なくなるまで追い詰める必要がある。分かってるな?」
「大丈夫? 疲れてます? ちゃんと休んでます?」
「正義の味方が有能過ぎて裏方は大変なんだよ」
恨みを込めながら語る舞に「ああ~修行場で休みます?」と申し訳なそうに提案した。
舞は「そうする……」と返した。
てなわけで合宿本番中の本番へと移行します。
9月の末日までに書き上げられたらいいなぁ(汗