RE:召喚勇者の現代帰還〜それでも勇者は勇者としてあり続ける〜 作:MrR
Side 須藤 正嗣
=同時刻・極秘エリア、司令室=
「何をやっている!? あの役立たずども!! 何故たった一人今すぐ殺せない!?」
正嗣は叫ぶ。
戦いは一進一退のように見えるが、たった一人相手に複数人掛かりで手古摺っているかのようにも見えた。
他にも仲間がいるらしく、此方の破壊活動も容赦がない。
研究データーが詰まったサーバールームを物理的に破壊され、敵対する能力者は撃破、生物兵器扱いの異世界のモンスターも無秩序に施設内に解放されていく。
さらにはモルモット扱いの捕えた人間も解放される始末。
眼前の、映画のスクリーンの様な大きなモニターでは次々と改造人間達が倒されていった。
今は入れ替わりで能力者が対応しているがまるで歯が立たず無力化されていく。
通常装備の兵隊は散発的に応戦しているだけ。
このままでは何もかも失って、刑務所に送られるだけならまだマシな方。
楽に死ねないような目に遭わされるかもしれない。
「メタルビーストを起動させろ!! アイツをぶつけてやる!!」
その有様を見て正嗣は禁忌の手段を選ぶ。
メタルビースト。
闇乃 影司のデーターもとに、来るべき闇乃 影司との戦いの為に備えて作られた狂気の生物兵器。
闇乃 影司は二年前、日本の極秘実験施設Eー00で核爆発級の爆発を引き起こして施設を消滅させ、感染病の拡大阻止とか特殊作戦とか色々な理由をつけて自衛隊の部隊を送り込んで当時の影司の関係者諸共処分しようとしたが失敗、その後三日三晩暴れ倒した化け物である。
日本政府は今でも闇乃 影司に危機意識を持っており、放置すれば国家存亡の危機、世界の危機、何時か自分達が報復されると思ってメタルビーストと言う怪物を作り上げた。
「しかしアイツは制御が困難な怪物です!!」
そのメタルビーストには欠点があった。
闇乃 影司の細胞を元にしたせいか、強大な戦闘能力を持ち、命令一つで永久的に戦い続ける残虐な怪物を産み出せたが、常に暴走の危険性を持つに至った。
仮に制御できたとしても今自分達がいる施設はタダでは済まないだろう。
「ヤレと言ったらヤレ!! でなきゃ死ね!!」
「く、狂ってる――」
血走った眼で拳銃を突きつける正嗣に命の危機を感じた職員はメタルビースト投入準備に取り掛かる。
☆
Side 藤崎 シノブ
=同時刻・フューチャーテック、極秘エリア内、試験場=
『とぉ!!』
「がふっ!?」
最後の一体を腹部の蹴り一発で吹き飛ばし、壁に叩き付ける。
実験エリアはまるで怪獣でも暴れた後のようにボロボロになっていた。
そこかしこで改造人間が倒れ伏している。
『まだ追加で来るのか?』
そう言ってファイティングポーズをとるシノブ。
地面が開き、何かがせり上がって来る。そこから現れたのは銀色で紫色の目をした二本の触角を持つマッシブな体系の悪魔だった。
身の桁は2mぐらいはある。
鑑定の結果はメタルビースト、この施設で製造された人造生命体、人間ではないらしい。
『ゴォオオオオオオオオオオ』
『――殺さずではすまない領域に突入したらしい』
人造生命体と異世界の勇者が激突する。
両者ともに高速接近からの殴り合いだった。
押しているのはシノブ。
ノーガード戦法で何発か敵からの攻撃を食らうが徐々に対処していき――
『セイバーパンチ!!』
わりと本気の殴りが炸裂。
施設を揺るがす程の大爆発、轟音と共にメタルビーストは一種の砲弾と化して施設を破壊しながら吹き飛んでいく。
その吹き飛んだ後を追うシノブ。
メタルビーストはまだ生きていたようでシノブに大口を開けて光線を放つ。
光線は敵対者を破壊するどころか施設内すら破壊していく。
彼方此方で火花が起き、爆発が起き始める。
(こいつを放置したまま脱出とかできないよな)
こいつを放置するのは危険だ。
だが、このまま戦い続けて悪戯に犠牲者を出すのも考え物。
施設の外までこいつを吹き飛ばそうと思った。
☆
Side 黒川 さとみ
=夜・メイド喫茶ストレンジ内・事務室=
(ちょ、これ? 洒落になってないわよね? 何が起きてんの?)
フュチャーテックの様子をメイド喫茶特注のドローンで様子を見るさとみ。
傍にはメイド長の毒島 リンカが涼しげな顔でドローンを操作していた
施設の彼方此方からレーザーが飛び出て、建造物の彼方此方で爆発が起きている。
そして施設の外からはまるでハリウッド映画の性質の悪いモンスターにでも遭遇したかのような様子の人々が腰を抜かして倒れたりしていた。
その流れに続くようにファンタジー小説から抜け出て来たかのような生物まで地上に出始めている。
「私もヤバイ研究はしているだろうなと思ってましたが、想定の斜め上を行くヤバさですねこれは」
毒島 リンカはドローンを飛ばしながら空撮を続行。
さとみもこの騒動の結末を見届けようとモニターに注視する。
☆
Side 須藤 正嗣
=極秘エリア、司令室内=
(どうしてこうなった……俺は何を間違えた……)
施設の破壊率が激しい。
研究データーも人員も何もかも全てを失いつつある。
何を、どう自分は間違えてしまった?
このままでは殺される――のはマシな方。
殺してくれと懇願してしまうような目に遭わせられるだろう。
自分が散々してきたようにだ。
それならまだ自殺でもした方がマシだ。
「あ、ああ……ああ……」
死ぬだけならこの施設に残っていた方がいい。
爆発に継ぐ爆発が起き、生き埋めになるか全員吹き飛ぶかと言う状況にまでなっている。
「まだ……まだだ、まだ死にたくない!! 死にたくない!!」
だが正嗣は――後先考えて死ぬより、目前に迫る死の恐怖が勝った。
人を押し退け、蹴落としてでも「どけどけ!!」と言って我先に脱出路を目指す。
☆
Side 谷村 亮太郎
=同時刻・地上、フューチャーテック周辺、避難用通路=
施設内は爆発、轟音が鳴り響き、煙が充満しつつある。
幾ら須藤 正嗣が生きていたとしてももう再起は不可能だろう。
亮太郎は手早く助け出した人々に羨望の眼差しを浴びながら「急いで脱出して」と避難を促す。
何か美味しいとこどりしてしまったなぁと亮太郎は申し訳なく思う。
少し離れた場所では幾つかある脱出路から次々と職員が地上に上がって来る。
この大惨事だ。
何人か巻き添えで死んでるかもしれないが、もうそれは運が悪かったと諦めて貰うしかない。
(まあここまでしておいて、見捨てるのも気分が悪い話だし、手を差し伸べて来ますか)
亮太郎はアイテムボックスをゴソゴソと探って手っ取り早く決着に付けに行く。
☆
Side 地上
=同時刻・フューチャーテック株式会社ビル周辺=
その頃地上では――地下から湧き出たモンスターの群れで地獄絵図が繰り広げられていた。
ゴブリンやオークらしき生物。
他にもゴーレムや大きな二足歩行で歩くオオカミの様な生物。
多種多様なファンタジー生物が闊歩していた。
そこへ更に改造人間、大小様々な異能力者などが混じり、混沌と化している状況だ。
『一体施設で何が起きてるんだ!?』
『あの汚職警官殿がしくじったんだろうぜ!!』
『皆殺しにする事だけを考えろ!! でなきゃ俺達が逆に殺される!!』
そしてこの騒ぎを聞きつけた、地上の警備部隊が軍隊並の武装を手に鎮圧に現れる。
この会社の実験が漏れた万が一が起きた場合、フュチャーテックの警備部隊は口封じのためにありとあらゆる手段が正当化される。
それは職員の口封じも含まれていた。
そのために銃器を使って射殺しようとする。
『なんだ?』
『鐘の音?』
そこで不自然に鐘の音が鳴る。
その音が当たり全体に鳴り響くと警備員、研究員ともに全員眠りこけた。モンスターも含めてだ。
『いや~大惨事になる前に間に合って良かった』
谷村 亮太郎のマジックアイテム、眠りの鐘による効果である。
効果は抜群。全員が全員、グッスリとお休みタイムになった。
(本当に大変だったな……運良くこのマジックアイテムが使えて良かった)
人体実験にされていた人間を全員纏めて救い出した谷村 亮太郎はこうして騒ぎの鎮圧に来たのだ。
もっとも生き延びた人間は全員死んだ方がマシな社会的制裁を受けるだろうが。
後は闇乃 影司に奪い取ったハードディスクの解析を依頼し、情報を絞る必要はあるがネットに流せばいいのだが、肝心のシノブが心配だ。
想像以上に派手にやりまくっている。
戦いの余波でフューチャーテックの施設は壊滅していた。
上の建造物は素直に自爆装置でも作動させて吹き飛ばして再建した方が早いような惨状になっている。
『おや?』
その時、地上から轟音、爆音と共に何かが飛び出して来た。
片方はシノブ。
もう片方は化け物。
平成初期の仮面〇イダーの映画で見た事があるような風貌だ。
『人造人間? メタルビースト? 対闇乃 影司用? んなもんまで作ってたのかここのラボ――』
施設内で情報を漁っていた時も思ったが、遅かれ早かれこのラボは闇乃 影司の餌食となっていたか、あるいは藤崎 シノブと谷村 亮太郎が手を下す流れが決まっていたのだろう。
『放置しておくわけにもいかないし―—』
ともかく、地上に現れたメタルビーストと藤崎 シノブの両者。
二人は空中に浮かんで、向き合う。
もっとも勝つのは藤崎 シノブだろう。
(さて、もう勝ったも同然だしどうしようかな?)
谷村 亮太郎はふと(いい事考えた)と悪魔のような提案を実行する。
それはもう、いっそ楽に殺した方がマシだと思えるような悪魔のような所業だった。
☆
Side 藤崎 シノブ
『メチャクチャやりやがる!!』
全方位に光線を放つメタルビースト。
それを最低限の動作で躱し、特に強引に反らし、近づいて思いっきりシノブはパンチを連打。一発一発が人間は即死、鋼鉄の塊を砕くレベルの破壊力を持つ一撃。
『しぶとい奴だな――』
『ウゴオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
それでも咆哮を挙げて襲い掛かる。
そんなメタルビーストの横っ腹に2号セイバー、谷村 亮太郎による不意打ちの蹴りが炸裂し、メタルビーストは砲弾のように遠く離れた場所、木々が生い茂る方へと吹き飛んでいく。
『そろそろ決めようか? トドメはダブルセイバーキックでOK?』
『ああ!!』
そして二人は意識共有。
必要な動作を確認しつつ空高く上昇。
最後に彗星の如き勢いでメタルビーストに二人は背中合わせ飛び蹴りを放つ。
『『ダブルセイバーキック!!』』
『ウゴオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
メタルビーストは口から極太の光線を放つが――二人は蹴りで勢いよく掻き消していく。
蹴りはあっと言う間に胴体に着弾。
轟音と共に周辺の木々を薙ぎ倒し、クレーターが出来る程の大爆発。
二人は柔らかい天然の地面を数メートル抉りつつ着地。
メタルビーストは爆発と共に消滅した。
☆
Side 黒川 さとみ
=メイド喫茶ストレンジ内・事務室=
シノブと亮太郎、二人の勇姿を見届けたさとみは半ば興奮状態になっていた。
「なにこれなにこれ!? ライドセイバー魂!? 実写映画の撮影!? 私が特撮女だと知ってのファンサービス的なアレ!?」
などと大はしゃぎだった。
どちらかと言うと戦隊派で戦隊ピンク好きであるのだが、ライドセイバーも好物だったりする。
空中浮遊して全方位にビーム乱射したりと、ライドセイバー魂に出て来たガチ目でヤバイ怪人を連想させるような敵だったが、あの二人のライドセイバーは何者なのだろうか?
「状況的に考えて、あの二人のライドセイバーが藤崎様と谷村様ですね」
冷静な面立ちでメイドのリンカに言われてさとみは「う、うん。そうよね。そうに決まってるわ」と興奮して赤面している様子だった。
正直言って超カッコ良かった。
最高だった。
不良相手にした時も、殺し屋を相手にした時も手加減していたのだ。
異世界帰りの勇者を名乗っていたが、実はドコぞの悪の組織から脱走した悲哀の改造人間なのではなどと、さとみの妄想が止まらなくなっている。
「これはもう二人に問い質すしかないわね。だけど皆には内緒だよ的な奴よねこれは」
ドローンの撤収準備をするリンカの傍で顔を赤面させながら一人妄想に耽るさとみであった。
☆
Side 谷村 亮太郎
=夜=
夜の街を忍者のように次から次へと建造物の屋上へと飛び移りながら高速移動するシノブと亮太郎。
向かう先は日本橋である。
徹夜作業を覚悟してフューチャーテックで解析した情報を纏めねばならない。
クライアントになってもらう組織との商談もある。
フューチャーテックは今頃、施設に突入前に渡りを付けた組織が活動している頃だろう。改造人間や能力者、眠らせたモンスターなどの面倒を見て貰える手筈だ。
(今は考察に頭を働かせるよりも、分捕った情報の整理、公開だね)
早くどうにかしないと、漁夫の利やハイエナ目当ての連中が出張って来る可能性がある。
この世界の日本政府は中々に極悪と言うか、単純な凶悪さだけで言うならどこぞの超能力を研究している学園都市とかの連中と五十歩百歩の連中だ。
まだ木〇一族とかインチキオカルト科学とか無いだけこの世界の日本政府は可愛いのかもしれないが。
(見えて来た―—最後の一仕事頑張るぞ)
日本橋に早々と辿り着き、亮太郎は騒動の締めに取り掛かる事にした。
秘密組織から分捕ったPCにはコンピューターウイルスの類が仕込まれている事を考えなければならないので、その手の対策のために闇乃 影司の力を借りなければならない。
今回の事件の重大さを理解してくれたのか、あるいは影司の人の良さなのか、夜遅くなりつつあるのに事務所前で待機してくれていたらしい。
白髪、白肌、赤目の華奢なポニーテールの優しく儚げな感じの美少女みたいな男の娘。
傍には大柄のスキンヘッドの夜中だと言うのにサングラスを付けた大男の殺し屋がボディガードのように突っ立っていた。
『さて、早速だけど仕事に取り掛かるか』
二人の前に着地して亮太郎は笑顔で二人に呼び掛けたが、そこでふと自分がライドセイバー二号の姿のままだった事に気付いた。
対面した二人は驚いている様子。
気を取り直して亮太郎はヘルメットを外して仲へと入った。
☆
Side 藤崎 シノブ
=夜・メイド喫茶の事務室=
メイド喫茶の事務所でシノブはさとみと二人きりになる。
毒島 リンカは「ではごゆっくり。宿を手配してきます」と言って事務室から立ち去った。
何か言おうとしたが、そう言えば自分はライドセイバーの姿のまんまだったと気づいて、ヘルメットを取り外した。
「アナタ勇者じゃなくて改造人間だったの!? それともパワードスーツタイプ!? もしそうなら何処製!? 幾らで手に入るの!?」
などとさとみに第一声でそう言われた。
目をキラキラさせて、まるで幼い子供が本物の特撮ヒーローと対面したかのようなはしゃぎようだった。
(この分だと大丈夫そうだな)
さとみの様子にシノブは苦笑した。
☆
少し落ち着き、シノブはフューチャーテックで起きた事をアレコレと説明する。
シノブとしては信じて貰えないだろうなとか思っていたが、特注の空撮ドローンで一部始終を見ていたらしいさとみは全面的に信じてくれたようだ。
「本当にありがとう。何と言って良いのか、どうお礼すればいいのか分からないけど……やっぱ体とかで支払った方が良い?」
「そう言うのはいいから!!」
慌てて止めるシノブ。
Rー18展開には憧れた時期はあったが、女との恋愛、ハーレム関係は楽ではない事を異世界で身をもって思い知らされていたシノブはストップを掛けた。
「じゃあ連絡先を交換で。呼び方もさとみでいい?」
「う、うん。じゃあ私もシノブって呼び捨てでいい?」
「ああ。これからもよろしくね?」
「はっはい!!」
熱っぽい顔で承諾したさとみだった。
☆
=翌日=
新聞、マスコミ、ネットはこんな見出しの記事が注目を集めた。
日本政府は悪魔の人体実験をしていた!?
悪徳警察官、須郷 正嗣の悪魔の素顔!!
悪魔のサカキ高校!! 売春ビジネスに校内で麻薬の違法製造!?
と言う内容であった。