RE:召喚勇者の現代帰還〜それでも勇者は勇者としてあり続ける〜 作:MrR
どうぞお楽しみください。
Side 須藤 勇也
=夜・大阪日本橋近辺の空き地=
日本橋の近くにある空き地にて須藤 勇也は出来うる限りの兵隊を掻き集めていた。
だが想定していたよりも集まりが悪い。
と言うのも自分が牛耳っているのはサカキ高校が陥落したのが原因だ。
不良漫画みたいに生徒達を全員拳で黙らせたとかじゃない。
裏社会との繋がりの数々とか売春、麻薬の製造まで暴露されたのだ。
しかも学校の上の方も人身売買に関わっていたと言う情報が出回り始めた。
もうこうなってしまったら不可能だ。
父親の権力がどっかの軍事大国の大統領クラスであっても、もう庇いきれない。
勇也の部下達も既に何人も警察に逮捕され、裏社会の人間に見せしめで殺された奴も出ていた。
(とにかく藤崎 シノブだけは!! アイツだけは許しておけねえ!! どんな手を使ってでも殺してやる!!)
殺し屋を嗾けても、不良五十人嗾けても無理だった。
サカキ高校を陥落させたのも、自分達の金や裏金を奪い去ったのも直感的ではあるが、シノブだと勇也は勘付いていた。
今更藤崎 シノブを殺害した所でどうにかなるとは思えないと思う一方で父親の権力は偉大であり、数々の自分の犯罪を揉み消して来た実績がある。
(念のため殺し屋を追加で雇うか?)
もう手段どうこうを考えている場合ではない。
殺し屋を雇えるだけ雇おう。
シノブの関係者なら女だろうと子供だろうと全員殺す。
そのつもりで追加で雇おうと考える。
アサシンズギルドの連中はもう既に銀行口座や裏金を持ち去られた事を知ってるのか、「ちゃんと報酬を払えるのか」と執拗に尋ねて来て仕事を受ける気はないようだ。
今は他のフリーランスの殺し屋を雇うしかない。
懸賞金を懸ければ動くだろう。
(なんだ? サイレンの音が近づいてきて……)
ふと車の音とサイレンの音が近づいてきていた。
一台や二台ではない。
十台、二十台、近隣の警察官を全て動員したのだろうか。
『警察だ!!』
『その場で止まりなさい!!』
次々と警察官がやって来る。
正義感とかじゃなく、まるで崖っぷちに立たされて人生の破滅の瀬戸際にでもいるかのような―—正気では無くなっている様子だ。
(どうして警察が!? 親父は何やってんだ!?)
警察が次々と現れる。
「おい!? 警察は来ないんじゃなかったのか!?」
「知るか!! 逃げろ!!」
「おい、逃げたら須藤さんに殺されて―—」
「まだ分かんねえのか!? もう須藤は終わりなんだよ!!」
集められた不良、チンピラ達は訳も分からず警察官達に組み伏せられていく。
判断が早かった不良連中はその場から蜘蛛の子を散らすように彼方此方へ逃走を始める。
「いたぞ!! 須藤 勇也だ!!」
「必ず捕まえろ!!」
「ヒィッ!?」
と警察官は須藤 勇也の姿を見るや否や大慌てで確保しに来る。
普段なら親の威光で警察も知らん顔をするのだが今日は違った。
危機感を感じた勇也はその場から逃げ去る。
☆
Side 前嶋刑事
現場に居合わせた前嶋刑事は「何だかなぁ……」最低限の職務を果たしながらその様子を眺めていた。
上の人間は突然崖っぷちに放り込まれて、手柄を少しでも挙げて被害を少なくするか、あるいは高飛びの準備をしているかもしれない。
何やらマスコミまでも嗅ぎ付けて来てより事態は混沌と化している。
(こうまでして追い詰められないと、正義も振り翳せないとは……警察も考え物だな)
今のこの惨状はフューチャーテックの真相が明らかになったからだ。
日本政府もがっつり一枚噛んでいて、警察もメチャクチャ関与していた。
それが何もかもがネット上に暴露された。
大人しく警察や政府に任せてほしかったと言う論法は通用しない。
既に汚職警官だと言われていた警官は逃走したり、高飛びを目論んで空港で確保したり、拳銃自殺したりともはや警察官が幾ら居ても収集つかないレベルの大惨事になっている。
圏外だけでなく、管轄外である警視庁からも査察名目で人員が派遣されるらしい。
霞ヶ関の政治家達も訳も分からず謝罪に終始している。
既に口封じで殺されたか、自殺や高飛びをした人間も出ているらしい。
(そして自分達は尻拭いか……嫌になるなほんと)
刑事ドラマのハードボイルドな刑事とかに憧れて警察の道を歩んだ。
長い警察人生の中で警察の不祥事とか汚職とかも見て来たが、その全てが可愛く想えるレベルの大スキャンダルだ。
国が滅びない限りは一生語り継がれるだろう。
関西警察は警察の恥呼ばわりされるかもしれない。
家族を持っている警官はもっと辛いだろう。
身内から白い目で見られ、子供は友人や学校からは遠い昔のように平和の敵呼ばわりされたりするんだろうか。
ただでさえ警察は人手不足だと言うのに益々人手不足は加速するだろう。
「いや~大変な事になりましたね」
背があり、人当たり良さそうな茶髪の真面目そうな清潔感を感じる好青年風の男。
白シャツに赤いネクタイ、黒いズボンをビシッと着こなしている男が声を掛けて来た。
公安の緒方 ミツルだ。
本人曰く「左遷されて窓際部署に移された」とか言っているが何処まで本当か分からない。
ただとんでもないオタクであり、ピンクカラーのアニメか漫画の美少女キャラ塗れの痛車を平然と乗り回すタイプの男である。
よく見るとパトカーの群れの中に目立つ痛車があった。
緒方 ミツルの車だろう。
「今警察は大忙しだ。世間話する暇は無いぞ」
「僕は暇になってしまいましてね。まあ裏付け調査とかしないといけないんですけど楽に終わりそうだなと」
どうやら緒方 ミツルもフューチャーテック、須藤親子に探りを入れていたらしい。
だがサカキ高校も、フューチャーテックも陥落した。
何としても公安が確保したかった機密データーも公に晒されてしまった。
「公安も人手不足と言うか、二年前に色々あってロクな人材が残っていないみたいなんですよね」
(Eー00ファイルとか言う暗闘の話か?)
緒方 ミツルの言っている事に心当たりはある。
二年前の日本国内で起きた核爆発事件、一つの町が文字通り消され、三日間に渡る異常気象、天変地異。
それから少しの時間が経過して起きた身元不明、出所不明の死体の山の出現。
あまりにも死体が出過ぎて精神的に病んだ警官が続出したらしい。
ネットの噂ではE-00ファイルと言うファイルを巡って日本国内だけでなく、世界中の諜報機関が日本国内で殺し合いを始めたと言う内容だ。
(正直Eー00ファイルに関しては半信半疑だったが、フューチャーテックの実態を軽く見ていると実在を信じたくなるな)
E-00ファイルは現在も有名なネットの都市伝説、陰謀論として語られている。
だがフューチャーテックの悪事が世間に晒されてまたEー00ファイルや核爆発事件について言及される流れになるだろう。
「あと、メイド喫茶の店主から伝言」
メイド喫茶の店主。
この場面、この局面で出される人物など一人しかいない。
メイド喫茶の店主、ヘレン・P・レイヤーのことだ。
どうやらこれが本題らしい。
「悪の根は絶えたワケじゃない。引き続き調査するなら気を付けた方が良いとの事です。いや~何の事ですかね?」
と、ワザとらしい演技をしつつ緒方 ミツルは「じゃあ自分はこの辺で」と言い残して立ち去っていく。
(悪の根が絶えたワケじゃないか……)
その言葉の意味する事は重い。
もしも正義感に任せてこの事件に深入りするようなら命の保証は出来ないと言う事なのだろう。
同時にこの事件の恐ろしい闇はまだこの程度では済まない。
今回のような大騒動が起きると予言しているようにも思えた。
(今はこの事態を収拾するのが先か)
嫌な現実から逃避するように警官として職務を遂行する事にした。
何だかんだ言いながら前嶋刑事は警察官としての職業に誇りを持っている。
一警察官として警察官らしく犯人逮捕を頑張る事にした。
ハーメルンはカクヨムと違い挿入投稿できるので楽ですね。
どうもMrRです。
現在エースコンバットプレイし始めてまたちょっと執筆が疎かになると思います。
今回の話は第一章加筆修正をしていく過程で産まれた産物でして、もしも本作品が(億が一)書籍化して加筆修正したりすればこんなエピソードが追加するんだろうなとか色々と妄想して書きました。
地味な話ですが楽しんで頂ければ幸いです。
ではではこの辺で。失礼しました。