RE:召喚勇者の現代帰還〜それでも勇者は勇者としてあり続ける〜 作:MrR
Side 中妻
=中妻家の一件家、中妻の自室=
中妻はまるで小動物のように自室のベッドの上で布団に被り震えていた。
須藤 正嗣が逮捕、フューチャーテック事件での大騒動。
そして須藤 勇也も警察が行方を追っていて、仲間の不良達も大量に逮捕され、すでに死体まで出ているらしい。
友人達からは怨嗟の声が何度も届き、やがて音信不通になった。
自分もタダでは済まない。
「ちょっとアナタ何しでかしたの!? 家に警察が来るなんて!!」
部屋の外で母親が怒鳴り声を撒き散らす。
切羽詰まった声だ。
「間違えた、間違えた、間違えた、間違えた……」
ずっと自分は勝ち組だった筈だ。
これからも勝ち組で居続ける筈が、後ろ盾にする人物を致命的に間違えてしまった。
もうどうにもならない。
涙を流し、ただひたすらに「間違えた」と言う単語を繰り返すマシーンになる。
そうでもしなければ正気を保てる自信が無かった。
「どうも琴乃警察署から来ました。お話を伺いたいんですが少しいいですか?」
だが現実は無情。
とうとう警察まで部屋の前に来た。
「いやぁああああああああああああああああああああ!?」
とうとう中妻は発狂して窓の外から脱走。
二階の屋根を移動して地面に降り立つが、そこで外に待機していた警察に確保される。
「私は!! 私は何も!! 私は何も悪くない!! 悪くないんだから!! 離して!! 離してよぉ!!」
死刑を間近にした死刑囚のように取り乱し始める中妻。
警察も複数人掛かりで取り押さえる。
住宅街の周囲の人々も何事かと視線を向けてヒソヒソと囁き合った。
☆
Side 須藤 勇也
=琴乃市某所=
たったの一日。
たった一日で須藤 勇也は玉座から転落した。
父親が逮捕され、仲間も次々と検挙されていった。
壮絶な警察官との追いかけっこで一睡も出来ていない。
現在は路地裏に身を隠しながら藤崎 シノブがいるらしい琴乃学園へと向かっていた。
『須藤!? テメェ一体全体何をやらかしやがった!? テメェのせいで何もかもおしまいだ!!』
『絶対探し出してぶっ殺してやる!! 復讐してやる!! テメェの大切なもんは何があっても全部破壊尽くしてやる!!』
『須藤……今迄随分といい思いしてたよなぁ!? テメェももう終わりだ!! 警察に逃げ込んでも無駄だからな!? 一生懸けて産まれて来た事を後悔させてやる!!』
スマホから鳴り響く声は仲間の恨み言や敵対連中からの罵詈雑言。
メッセージアプリからも雨の様に卑猥中傷が降り注いだ。
SNSも動画サイトも大炎上。
テレビすらも隠し切れなかったのか、須藤 正嗣と須藤 勇也の特集が組まれている。
(おかしい。動かせる奴は全員動かして藤崎 シノブをぶっ殺す筈だったのに。どうしてこんな事に……)
証拠は無いが一連の騒動には何となく藤崎 シノブが絡んでいるのは理解していた。
だから集められる奴は全員集めて殺そうと思った。
だがサカキ高校は謎の爆発騒ぎな上に売春ビジネスがバレただけでなく、裏社会の連中のヤバイ物の保管庫である事がバレて、その上麻薬を栽培していた事もバレた。
この時点でもはや兵隊を収集するどころではなくなっていた。
さらに悲劇は続く。
学校がヤバイ人体実験にも参加していた事がバレ、須藤 正嗣の逮捕。
一部警察は組織ぐるみで人体実験に協力していた事がバレた。
父親の仕事は警察——それもかなり上の地位の汚職警官である事は何となく分かっていたが、父親がやらかしていた事は想像を超えるレベルの邪悪さだった。
そして現在、大阪府内の警察官は全力出動中。
空港やフェリー乗り場、新幹線などの駅は封鎖。
県外からも警察の応援が送り込まれ、管轄外の警視庁も動き出す異常事態に発展していた。
(クソッ!! クソ親父の奴しくじりやがって!! もっとズル賢く立ち回れなかったのかよ!!)
愚痴を漏らすが愚痴を漏らしても現実は変わらない。
警察に捕まるか、裏社会の人間に想像したくもないような目に遭わされて殺されるか。
いっそ警察に撃たれて死んだ方が色々とマシかもしれない。
そう言う状況に追い込まれていた。
(こうなりゃ自棄だ!! せめて、せめてアイツだけでも!!)
彼はナイフを握りしめ、スマホの画面を見ながら琴乃学園へと向かった。
☆
Side 藤崎 シノブ
メイド喫茶の毒島 リンカが宿を手配し、丁寧に衣類まで提供し洗濯の代金まで出してくれて日本橋で一泊した翌日。
事件最中で得たデーターの殆どは闇乃 影司と谷村 亮太郎の手でネット上に暴露されたらしい。
その中には改造人間のデーターやメタルビーストの内容も含まれている。
当然、人体実験の犠牲者の名簿やその末路。更には実験をするために得た違法な資金の収集方法なども公開した。
だが未知の異世界やモンスターのついてのデーターは上がって無かった。
ここまで行くと世間は信じてくれないだろうと言うのもあるのだろうし、谷村 亮太郎と闇乃 影司が日本政府と本気で事を構える事態は避けたいと言う考えもあったのかもしれない。
シノブの知らない合間に二人が政府と何かしらの取引を持ち掛けた可能性もあるが、真相は闇の中だ。
生き延びた研究関係者たちは全ての罪を正直に自白したらしい。
どうやら谷村 亮太郎がそう言う呪いを掛けたそうだ。
だが全ての内容を警察もマスコミも鵜呑みにはせず、だけども確かな証拠は十分すぎる程に上がっているので虚言と切り捨てるわけにも行かなかった。
なので日本政府は悪魔の実験に関与していて、実験の首謀者である須藤 正嗣はとんでもない悪徳警官であり、その親の後ろ盾があった息子の須藤 勇也はとんでもない悪事を重ねているワル中のワルと分かり易くした上で発表し、ネットもマスコミも続いてそう報道した。
朝からそのスクープでマスコミもネットも話題が持ち切りだった。
須藤 正嗣は逮捕された。
息子の須藤 勇也は逃亡中。
大阪府内の警察官は全力出動中。
県外からも増援が来て、管轄外である筈の警視庁も動き、内閣すらも動き出していてしばらく収拾がつかない大騒動に発展していた。
=朝・琴乃学園正門前周辺=
藤崎 シノブをチラチラと遠巻きに見る人間は多い。
やはりSNSでサカキ高校の不良連中を片づけた動画で話題を呼んだのが反響を呼んだのだろう。
そんなシノブの前に一人の少年がナイフを持って姿を現した。
「こんな所にいたんだ――」
現れたのは須藤 勇也だった。
ナイフ片手にスマホとシノブの顔を交互に見て本人かどうか確認している。
「テメェが――テメェがやったのか!? テメェが!! ここまでしたのか!?」
狂気を孕んだ表情でシノブに言う勇也。
周りは怖いのか誰も勇也を止めようとしないし、シノブを助けようとしない。
そしてシノブはと言うと――
「あの~とにかく警察に捕まった方が――」
「うっせえ!? 俺はもうお終いだ!! 何もかも残っちゃいねえ!! テメェは何なんだ!? 何でそこまでしやがる!? 何のためにここまでした!?」
一方的にこの一連の騒動の首謀者を藤崎 シノブだと決めつけているようだ。
正確には首謀者の片割れなのでシノブも否定し辛い。
「いや~仕掛けて来たのはそっちでしょ? 素直に子供のケンカで済むように立ち回ればいいのに色々して来たからこうせざるおえなかったと言うか」
まるで自分は加害者のように言われているが殺し屋まで嗾けられたのだ。
その時点で子供のケンカからルール無用の潰し合いになってしまった。
仮にそうならないように上手く立ち回ったとしても遠からずウチにシノブと亮太郎と全面抗争になっていただろうが。
「お前をここで殺してやる!!」
そう言ってナイフを片手に飛び込んだところをシノブは見事な一本背負いでアスファルトの固い地面に叩き付ける。
「ガハッ!?」
白目を向いて唾液をまき散らして気絶した。
暫くしてから警察がようやく登場。
藤崎 シノブは事情聴取として連行。
須藤 勇也は殺人の現行犯として逮捕された。
☆
=数日後・昼・メイド喫茶ストレンジ=
メイド喫茶ストレンジを貸し切り状態でパーティーを開いた。
そこには何故か藤崎 シノブの命を狙ったスキンヘッドで大柄の殺し屋や、黒川 さとみを助け出した時に見逃して貰った昭和の刑事さんまでいる。
そして華奢な体躯で美少女の様な容姿の闇乃 影司までいた。
パーティーの進行役として毒島 リンカもいる。
黒川 さとみや谷村 亮太郎もいた。
あの事件の後―—須藤 勇也は父の正嗣同様に逮捕された。
日本の法律には詳しくないので、何罪が適用されるかどうか分からないが須藤 勇也も父の須藤 正嗣と同じく呪いや暗示を掛けている。
自分の意思に関係なく、罪を認めるから取り調べや裁判はスムーズに進むはずだ。
続いて中妻――今回の事件の発端であり、須藤 勇也の女だが――学校を去った。
後ろ盾にしていた男、須藤 勇也が公衆の面前で凶行に走って逮捕され、彼女は一連の騒動で事件の重要参考人として警察に事情聴取されようとした所で逃走し、緊急逮捕された。
逮捕後はかなり暴れたらしく、その後も精神が錯乱状態が続いている。
現在は病院にて24時間体制で監視を受けているが、時折錯乱するのを繰り返している状態だと言う。
中妻の取り巻きの女子も一人残らず警察の事情聴取を受けた後に学校を逃げるように去ったそうだ。
サカキ高校の不良グループ、半グレ組織は様々な容疑で警察に摘発。
罪状は様々だ。
放火や殺人をした奴もいたらしく、中には裏社会の人間の手で殺されたり、行方不明になった人間もいる。
此方も全滅したとみていい。
最後に一連の事件の被害者たち。
被害者たちは様々なグループに分かれて団結し、一番大きなものだとNPO法人として活動を開始するつもりのそうだ。
特にフュ―チャーテック株式会社の地下で囚われていた人間達は自分達と同じように悪どい政府や権力の手で苦しめられている人々を助けるための活動をするそうだが、何故かローカルヒーロー事業もするそうだ。
藤崎 シノブや谷村 亮太郎がライドセイバーの姿で大暴れしたのが関係しているのだろう。
「本当に世の中ひっくり返しちゃったね……」
「ああ――で、どうしてメイド服姿なんだ?」
黒川 さとみはメイド服姿だった。
ミニスカでさとみの115cm以上はあるらしい大きな胸の谷間も丸見えのエロい格好だ。
さとみは照れくさそうに「貴方ならいいかなって思って」と照れくさそうに言う。
そこまで言われてシノブは「ありがとな」と照れくさそうに返す。
「あの、異世界で気に入った女の子とかいるの?」
「何だ突然?」
「もしもよくあるハーレム制だったら私も入れてね?」
「え、おい――」
どうやら異世界帰りの勇者設定を信じて、異世界物とかで有りがちなチーレム勇者を連想している様子だった。
何かとんでもなくダメな人だと誤解されたみたいで、シノブは撤回を求めようとするが―—
「もう決めたから」
「決めたってあのなぁ…‥」
「ふふふふ――」
黒川 さとみはとても可愛らしく、甘い笑みをシノブに向けた。
周囲は「そっとしておこうか」と言う空気で二人を見守るつもりだった。
最初の事件・完