RE:召喚勇者の現代帰還〜それでも勇者は勇者としてあり続ける〜 作:MrR
AI利用してたけどしんどくなるから距離取らんといかんね。
異世界に行く前の谷村 亮太郎
Side 谷村 亮太郎
=異世界に転移する一カ月前、八月・昼・日本橋周辺、学生女子プロレス会場=
異世界に転移する前。
厳しい暑さの八月。
様々な業界にとって稼ぎ時でもある。
それはそうと学生女子プロレス。
今は水着でプロレスするシーズンらしい。
正直言うと嬉しいと思う反面、大丈夫だろうかと思う。
美少女が女子プロレスリングで攻めた衣装で大人のプロレス顔負けなぐらいに真剣で戦ってくれるだけでも凄いし嬉しいと思う。
だがプロレスはプロレスなのだ。様々な客層を取り込んで行かないといかないのもあるし、ある程度市場の需要とかにも応えなければならない。
実際そう言うやらしいの目的で来ている連中も多いからだ。これを性差別的だと言う人間もいるが、そう言う仕事を破壊するだけ
広めの会場は大盛り上がり。
女性客の姿も多いのが学生女子プロレスの凄い所だ。
ライトで照らされて熱気が籠っているであろう四角いリング上では鍛えられた肉体を披露し、汗を飛び散らせながら激しいプロレスの試合を行っている。
それも水着姿で。
(異世界に行く前に何してんだろうな自分……)
だが亮太郎は自分は何をしているのか分からなかった。
後、一ヶ月。
一ヶ月で自分は大勢の人の生き死にを左右する戦いに身を投じなければならない。
もしかしすると時期はズレるかもしれないし、違う異世界だったり、そもそも発生しない可能性もある。
でもそうなる可能性は高い。
(本当は現実逃避してでも自己鍛錬するなり、藤崎君を洗脳してでも鍛えた方がいいかもしれないけど)
だがそうする気に慣れない。
幾ら鍛えても、未来に備えても犠牲が完全にゼロにはならない。
命の選別しなければならなかった。
(もっと最悪なのは未来知識をある程度封印するなり、削除するなりしないといけないんだよな)
予想している通りの異世界を旅するに辺り、記憶を捨てるなど優位なアドバンテージを捨て去る事になる。
本来なら愚行とも言える行為だ。
だが魔王サウラスは特殊な魔王であり、異世界の歴史を影から操って来た存在だ。
それにサウラスの周囲の強大さもある。
一人でチートパワーのごり押しで勝つのは難しい。
(帰るか)
あれこれ考え始めて亮太郎は帰る事にした。
とてもではないが楽しめる気分ではなかった。
☆
=昼・大阪日本橋、オタロード=
日本橋は何時もと変わらない。
工藤 怜治がまたケンカして警察が出動したり、銃刀法違反上等な感じでメイドが銃をぶっ放し、公安の人が何かの法律に引っかかりそうな痛車を見せびらかすように運転していたり、日本橋に左遷された自衛隊の人達がネクプラバトルで盛り上がっていたり、元レディースの気のいい姉ちゃんがたこ焼き屋のバイトを頑張っていたりしていた
でんでんタウンでも多くの人々、外国人、コンカフェの客引きとかで賑わっている。今は夏休みであり、稼ぎ時の時期だからだ。
(……幾ら並行世界の記憶があるとは言えね。辛いもんだねホント)
悩みが晴れない。
気持ちが落ち着かない。
正直言うと死にたい気分だった。
いっそ自殺して楽になれるんならどれ程救われたか。
もう記憶を削除して時が経つまで平凡に暮らすのもいいかもしれない。
(自分の演技力も大したことないし、皆に心配かけてばっかだな)
それが周囲にも伝わっているのか、学校の教師、クラスメイト、I市の人々や日本橋の人々にも心配されている始末だ。
話したところでどうにもならないがそれでも話せる場所で話してしまう。
いっそチート、ハーレムが出来る単純な異世界だったらどれだけ楽だったろうか。
「ハァイ、亮太郎」
日本橋をまるで捨てられた子犬の様に彷徨ってると陽気な背がある長い金髪のアメリカン美女に声を掛けられた。筋肉質でありながら女性らしい体のラインであり、とてもまだ女子高生とは思えない。
帽子に半袖の上着にシャツ、短パンとラフな背格好も似合っている。
「ジェイミー?」
「まるで人生の終わりみたいヨ? どしたノ?」
ジェイミー・ゴードン。
学生女子プロレスのスター選手だ。
日本橋によく顔を出しており、色々と彼女の面倒事を解決していくウチに街中で姿を見せたら声を掛けられる中になった。
亮太郎の事は忍者の末裔か何かだと思っている節がある。
「言っても信じて貰えないと思う。まあ信じて貰えたところで困るんだけど」
「そう言う時こそ勇気を出して話してみるべきヨ」
「でも」
「ダイジョブ。ワタシはこれでも口は堅い方ネ」
陽気な調子で変わらないジェイミー。
「まあいいか。立ち話も何だし。近くのカフェで話すよ」(それに、もう二度と会えないかもしれないしな)
何処か暗い気持ちで亮太郎は語る事にした。
☆
=昼・日本橋のカフェ内=
空調がガンガンに効いた店内。
そこのテーブル席で二人、対面するように座った。
「最近ダイジョブ? 皆心配してるヨ?」
口調はアニメとかに出て来るエセ外国人だが大人びた感じの慈愛を感じる表情だった。
本当に心配しているのだろうか。
「皆って言うけど精々数人でしょ?」
苦笑しながら正確な人数を尋ねる亮太郎。
「同じ女子プロレスの子達とか、格闘技団体の子、サバゲーチームの人とか、怜治とか聖翔学園の子達とか」
「交友関係広いね」
ジェイミーの人当たりの良さとかあるのだろう。
想定よりもかなりの数の人間が亮太郎を心配してくれているらしい。
「ソレはオタガイ様ネ。リョウタロウってば、ツミヅクリな男ネ〜」
「まあ死ねばそれも終わりだけどな」
何処か毒を含んで亮太郎は言った。
「ホントにどうしちゃったノ?」
「どうせ言っても信じて貰えないと思うけど」
亮太郎はヤケクソ気味に悩みを打ち明け始める。
夏休み明けに異世界に飛ばされて大勢の生き死にに関わる事。
どう頑張っても大勢の死人が出る事。
それを詳しく語った。
よくあるオタクの妄想として信じてくれないだろう。
そう高を括っていた。
☆
語るべき事は全て語り終えた。
ついでに並行世界云々の事も話した。
店内は賑やかで活気ある。
谷村 亮太郎派と言うと吐き出せる事は全部吐き出した。
ジェイミーはと言うと―—
(な、泣いている)
両目を見開いて、涙を流していた。
慌てて亮太郎は口を開く。
「ま、まあよくある作り話ですよ作り話。小説の構想と言うか、痛い若気の至りとか、そう言うのですよ。うん、そう言うの」
と、誤魔化そうとしたがジェイミーは信じている様子だった。
「ソーリー。でも亮太郎が語っている時、とても痛々しかっタ」
「気のせいだよ気のせい」
「でも、ちゃんと質問にはほぼ即答で返してるよネ?」
「よ、よくある作り話とか言う可能性は?」
「それにしては話の辻褄が合い過ぎてる。これで演技で話も嘘だったらそれこそプロヨ」
と、信じ込んでしまったらしい。
メイド喫茶の時とかと同じパターンだ。
「そうか、悪いな。気分が悪い聞かせて」
「うんうん。ワタシは嬉しいヨ。でっ、異世界にゾンビはいるノ?」
「何故そこでゾンビ?」
まさかのゾンビの有無を確認してくる。
異世界ユグドで探せばいるだろうが。
「前に見たWEB小説を読んだ時にそう言う返しがあったノ」
「あ~確か言ってたな。WEB小説読んでるって」
元々好きなのもあるが、ジェイミーは日本語の勉強がてら漫画やアニメ、ラノベとかも読み、その流れでWEB小説とかも読んでいる。
「日本はサブカル業界においては野球のメジャーリーグみたいなもんネ」
自慢気に胸を張って答えるジェイミー。
ジェイミーの言ってる事は本当だ。
日本のサブカル業界は色々と言われているが、国全体で見れば週刊誌の黄金期を保っているような状態だ。
今でもセー〇ー〇ーンとか、ドラ〇ンボー〇は人気コンテンツであり、そもそもにして日本の様に世界中で大ヒットを飛ばす新キャラや作品を次々と送り出せる環境が凄まじいのだ。
「僕の話そんな面白いもんじゃなかっただろ? 言っちまえば何度も転生を繰り返して、行った事がある異世界での出来事に怯えているんだからな」
「でもそれが普通ヨ? 亮太郎は強くて優しいんだから自信を持っテ」
「僕が?」
「うん」
優しい笑みで返すジェイミー。
亮太郎は籠ったように、それでいて嬉しく思いながら照れ隠しに「ああそう。ありがとう」と返す。
☆
=放課後・大阪日本橋・異世界に旅立つ前日=
学生女子プロレスラーであるジェイミー・ゴードンは色々と忙しい。
関東、首都圏のリングにも上がったり、他の女子プロレスの会場にゲスト出演もしたりしている。
理想的なある種のアメリカンな女性プロレスラー、強いだけでなく団体とか観客の、相手選手の事を考えるストロングスタイルの陽気で人当たりのいい女子プロレスラーが不人気なワケがなかった。
それでも今日と言う重要な日。
明日には異世界で旅立つと言う日を間近に迎えていた。
藤崎 シノブと一緒に地獄に歩み出す前日。
谷村 亮太郎はジェイミー・ゴードンとデートしていた。
理想の推しとデートしている状況。
場所は何時もの日本橋のオタロード。
オタロードのレトロゲームショップの前で二人は待ち合わせをしていた。
夏休みが開けての平日と言うだけあって、人は少ない。
が夜に近づくに連れて繁華街らしく人は増えるだろう。
「ハーイ、亮太郎」
「凄い気合入ってるな。似合ってるよ。髪の手入れとかスキンケアとか香水もしてくれて嬉しいよ」
つまりそれだけ本気だと言う事だ。
亮太郎は素直に感想を述べた。
「エヘヘ、そう? でも亮太郎も気合入れたでショ?」
「ありがとう」
大人の女性らしい気品溢れる様なコーデ。
恐らく必死に頑張ってコーデしたのだろう。
稼ぎ時な夏休みの試合の連続明けでまだ体もしんどいだろうに。
愛されているんだなと思う反面、亮太郎は申し訳なく思った。
「あ~本当に僕で良いの? 他にいい男いないのか? 母国とかに気になる男とか」
「居ないヨ~」
ポニーテールにし、白い大人物の半袖のシャツにスカート。白い鞄を身に付けてブーツも大きめな赤いヒールを履いているジェイミー。
亮太郎も多少は気合を入れてコーデをしたが、最低限ダサいと思われない背格好だとは思っている。
「ミーは基本、プロレスに全力投球している女ネ。だからあまりプライベートな時間は……学業もちょっと力入れないと不味いのネ」
「それはそれで大丈夫か?」
「亮太郎はどうなのヨ?」
「並行世界の自分自身のリンクはあんまりやってないけど、何度も転生繰り返してるからね。だけど日本史、世界史とかは時代に応じて変化する部分もあるから注意が必要かな?」
「あ~いいくに(1192)作ろう鎌倉幕府とカ? 今はいいはこ(1185)だけど」
恐らく漫画やアニメで使われたネタを口に出した感じだろうと亮太郎は予測する。
他にも円周率とかも一時期は3だったが今は3・14に戻ったり、ややこしい事この上ない。
これはまだマシな方で世界によっては世界の歴史が変わっていたり、日本の歴史の教科書が自分の知る物とは違っていたりとかするのだ。並行世界の知識共有能力にはそう言う落とし穴があるのだ。
「鎌倉幕府が何時始まったかと言う話だから本当はどっちでも構わないけど、テストで点を取りたい場合はいいはこ(1185)だからね。他にも1180年とか1190年とか説はあるらしいけど」
と、亮太郎は語る。
これも転生を繰り返したり並行世界自分自身との知識共有が出来たりした御陰だ。
「前々から思ったけどさ、亮太郎自分の事を蛮族だのパワープレイヤーだの言うけど頭良くなイ?」
「二度言うけど、何度も転生繰り返してるようなもんだからね。これで頭悪かったら詐欺じゃよ」
尊敬の眼差しで見られるが亮太郎は苦笑する。
それに大人になった後から学生時代に戻ると勉強へのモチベーションが上がると言うのもある。
また日本社会においての勉強の重要性と言う奴も分かっているのもあるからだ。
「転生も大変なのネ」
「本当にね。変に人間出来ちゃうと教師から介護職員みたいな扱いされるからな。色々と大人の苦労も分かってしまうから教師に対してあまり文句も言えなくなる」
「日本のティーチャーってどんな感じなノ?」
「琴乃学園の教師はいいけど、中学時代や小学校時代の教師はハズレだったな。あいつらいじめっ子十人よりも、いじめられっ子一人を学校から追い出せばいいって言う思考回路だし。僕は中学時代教師の便利屋扱いだった」
中学時代を思い出す亮太郎。
まるで日本の社会の負の縮図のような学園だった。
亮太郎はなまじ人間出来てるせいでもっぱら便利屋扱いである。
不良達やいじめっ子達よりも亮太郎を異常者のように扱う節すらあった。
「障害児童のサポートとか、不良とのケンカもよくやった。教師と口論もした。いっそ不良になれたら楽だったけど、それはそれで親がもっと泣くからな。それに妹も同じ学校に通ってたから甘い対応はし辛かったんだよ」
「貧乏くじ体質ネ、亮太郎」
「本当にね。偽悪だのアウトローだの気取っても根は善人みたい自分」
何度か重ねてもこれだったのだ。
一生苦労人としてアレコレ抱えて生きて行くのかもしれない。
でもそう言う人生でも今この状況みたいにいい事はあったりするし、今は無理して変わりたいとは思わない。
「と言うかデートの場所は日本橋でいいの? 梅田とかじゃなくて?」
「うん、いいの。それに亮太郎と一緒ならネ」
「分かった。とことん付き合うよ」
それ以上は尋ねておかないでおいた。
☆
=夕方・日本橋北西部・南海難波駅前周辺の信号前=
それから頑張って日本橋と言う街を遊び倒した。
ゲーセンとか行ったり、オタク向けのカフェに行ったり。
その果てに帰りの駅前に辿り着いた。
「……そろそろ帰らないとな」
「うん」
正直言うと二人とも心中はまだ帰りたくなかった。
亮太郎もジェイミーも。
「どうしても異世界に行かないとダメなノ?」
「なあに安心しろ。記憶は持ってないが向こうには強い仲間が沢山いる。シノブもシノブで平凡を演じているが、勇者として召喚されるだけあって素質は十二分にある。僕も死に物狂いで強くなって」
「そう言うのを聞きたいんじゃナイ!!」
と、人前に憚らず大声を出す。
「そう言うのを聞きたいんじゃ……でもオカシイナ? 上手く言葉に出来ないヨ……」
「ごめんなジェイミー。でも行かなくちゃいけないんだ。本当にごめんよ」
そうやり取りして、亮太郎は何かを振り払うようにしてその場を立ち去った。
ジェイミーは暫くその場に立ち尽くし、やがて帰路についた。
☆
=異世界帰還後・谷村 亮太郎の部屋=
亮太郎は異世界に帰還した。
久しぶりに家族と再会して、「何か雰囲気が変わった?」と言われたが誤魔化した。
外見上の変化は無いが腕や首の筋肉の変化に気付かれなかっただけ幸いだ。
(命のやり取りとかしまくったからな。やっぱり知ってるだけと経験するのとは違いが大きいね)
などと言ってオタク部屋に置いたソファーに腰かける。
そこでスマホを手に取り、事情を知る様々な人に返事をする。
その中にはジェイミーもいた。
ただ短いメッセージで「厄介事は終わった。これで普通の高校生に戻れる」と。
『ちょっと亮太郎!? つまりその、終わったのネ? 本当に? 生きてるのネ?』
「ああ終わった。片がついた。土産も土産話も沢山ある」
その後、亮太郎はジェイミーを含めた様々な人間から問い合わせが殺到するのであった。
どうもMrRです。
小説家になろうもそうですが、ハーメルンでの評価はあまりよろしくはありませんが例え低評価になっても描き続ける悲しきモンスターになろうかと思ったりしています。
あとカクヨムの方でも書きましたがどんどん谷村 亮太郎の奴、ダメ人間になっている気がしますね。
まあ大勢の人間が死ぬのが確定している戦場に向かう前の話だから仕方のない部分もあるんでしょうが。