RE:召喚勇者の現代帰還〜それでも勇者は勇者としてあり続ける〜   作:MrR

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怒りのセイバーキック

 Side 宇宙刑事 リリナ

 

 =朝・琴乃学園周辺の市街地=

 

 銀河連邦所属。

 宇宙刑事リリナ。

 犯罪組織ジャマルを追って地球にやって来た、地球の年齢換算でまだ10代半ばの少女だ。

 

 見た目は白髪白肌の美女。

白いショートヘアー。

 知的でミステリアスな、地球で言うなら北欧系の顔立ちで男装が似合いそうである。

紫色の瞳。

背もあり、体つきや両腕、両脚はアスリート系のソレ。

胸のサイズは黒川 さとみと同じぐらいの爆乳。

 そんな彼女は白色のヘルムにコンバットスーツ(胸当ては大きな胸に合わせた形状)の戦士に変身し、赤青白のトリコロールからのシンプルな造形の巨大ロボ、ヴィクトリオンに乗って犯罪組織ジャマルの巨大ロボットと戦っていた。

 場の流れで共闘している赤いヒロイックな剣を持つ巨大ロボットについてはリリナも分からない。地球のロボットだろうかと考える。

 

 相手の銀色の巨大ロボット、正確にはメガニカと呼ばれる惑星の戦闘用ロボット、ギンブラスだ。

 それがジャマルの手に渡ってこうして悪事を行っているのだ。

 

(思った以上に手強い!!)

 

 速く戦いを終わらせてこれ以上の被害を食い止めないといけない。

 だが2対1にも関わらず、ギンブラスを倒すには至らなかった。

 一緒に戦ってくれる剣を持つ赤い巨大ロボットと出会ったばかりで連携が取れてないと言うのもあるが、それを差し引いても手強い。

 

(早く無力化しないと! 犠牲が増える!)

 

 周囲ではこの地球のヒーローなのか、危険を顧みずに懸命に救助作業を行っている様々なヒーローの姿があった。

 

そこに混じって救助活動をしたく思うが、ここで誰かがギンブラスを止めなければ被害は拡大する。

かと言って周囲にお構いなしに戦えば犠牲者の数は一気に跳ね上がる。

 

(相手に隙さえ出来れば――)

必死にヴィクトリオンを動かし、距離を詰めて火力を使わせないように格闘戦に持ち込んで、周囲の被害を抑える。

それが精一杯だった。

 

 そんな時だった。

 高速で飛翔する人間大サイズの飛翔物体をレーダーで捉えたのは。

 

『セイバーキック!!』

 

 2mにも満たない。

 昆虫モチーフの暗い緑のプロテクターの戦士が相手の巨大ロボ顔面、2階建ての一軒家以上のサイズの鉄の塊に飛び蹴りをかます。

 あまりの破壊力に装甲に大穴が空いて50mの巨体が数歩後退りする。

 

(えっ、待って!? パワードスーツで戦闘ロボットの顔面を蹴り砕くなんて!?)

 

おかしい。

地球の文明技術、科学力では外宇宙製で宇宙犯罪組織の手でカスタムされた50m級の戦闘用ロボットの頭部を蹴り砕く事が出来るコンバットスーツなど作れない。

銀河連邦のコンバットスーツでも無理だ。

それが出来るのなら宇宙刑事に巨大ロボ戦力は必要ない。 

 

(ともかく、このチャンスは逃さない!!)

ヴィクトリオンの右腕にエネルギーを充電。

 外部スピーカーをONにした。

 

『今すぐ巨大ロボットから離れて!!』

 

 右手が青白く光り輝き、同時に周囲に居たヒーロー達が退避する。

 その入れ替わりで相手の胴体に右手を強引に押し当てた。

 眩い閃光が辺りを照らす。

 そして銀色の巨人がその場で停止した。

 

『敵巨大機動兵器、機能停止――』

 

 相手を爆散させて街をこれ以上傷つけるワケにはいかない。

 だから爆発させず、威力がある必殺技を使わず、機体に大量の電磁パルスを流し込んで無力化させた。

 顔面が破壊されていたのでその部分から電磁パルスを送り込んで黙らせる事が出来た。

 

(ジャマルのロボをどうにかしないと—―たぶん証拠隠滅の為に部隊を差し向けて来る)

 

 回収のための宇宙船を呼び寄せる。

 物資を運搬するためのエネルギー波、トラクターフィールドを浴びせて天高く牽引。

 後はオート操縦やAIに任せて、自分も救助作業に入った。

 

 

 Side 藤崎 シノブ

 

 機能停止した巨大ロボットが何かの光に照射されると同時に天高く昇っていく。

 

 この際、敵が回収したとかでもいい。

 救助作業に集中する。

 

 その時、様々な変わった背格好のヒーローを遠巻きに目撃した。

 ヒーローとはまた違うジャンルの人もいたが、皆危険地帯に自分の身を顧みずに飛び込んで救助作業を行っている。

 もう手遅れの人間もいた。

 それでも駆けずり回る。

 助けを求める人々の声を求めて。

 

 金がもらえるわけでもない。

 感謝されるわけでもない。

 きっと偽善だの何だの言われる行為。

 

 テレビやネットで「もっと早く助けろ」とか「対処が遅すぎ」とか色々と言われるんだろうか。

 それでも藤崎 シノブは救いの手を差し伸べ続ける。

 

 

Side 黒川 さとみ

 

 =夕方・琴乃学園のグラウンド=

 

 SNSは大混乱。

 空はヘリが飛び交い、報道陣が殺到。

 警察や消防、救急車。

 自衛隊も来るかもしれない。

 帰宅難民と化している生徒もいて、教師も対応に追われている。

 激しい巨大ロボ同士の戦いが起きた場所では今でも煙が立ち込めていた。

 

 さとみ達や琴乃学園の生徒は一旦は学園から退避したが、戦いが終結したのを見て恐る恐るではあるが、自然と琴乃学園へと戻って来た。

 

 SNSは役に立たない。

 ただ遠巻きでロボットが殴り合っている戦いが映し出されるぐらいだ。

 当事者でもないのに、遠巻きで愚痴を言っている連中の言葉がやたら目につく。

 一方で琴乃学園の生徒の中にも何を考えているのかスマホで撮影をしていた。

 

 さとみはスマホで連絡を入れるか、入れないかで悩んでいた。

 手が離せない、人の命が掛かっているような状況だ。

 迷惑になるかもしれない。 

 でも心配だった。

 

(皆あんたの事待ってるのに……)

 

 藤崎 シノブは今回の事件、琴乃学園の生徒達を救った人間だった。

 

 学園に核シェルターでも常備していたのなら話は違ったのだろうが、普通の学園に核シェルターなど存在しない。

 それに相手は大地震でも津波でも火災でもない。光線兵器を搭載した巨大ロボなのだ。

 ロボットの光線で皆纏めて消し飛ぶリスクを考えた場合、狙われやすい学園よりも学園外に退避させるのは自然な判断だ。

 

 それでも文句を言う人間はいたが少数派。

 皆、藤崎 シノブに感謝している。

 同時に教師として、大人として怒らねばならないと考えている者もいるが、これは立場上仕方ないだろう。シノブが平謝りする姿が容易に想像できる。

 

 そして、一通りの救助を終えると物語の正義の味方のように巨大ロボットへと向かって行った。

 子供達のヒーロー、元祖ライドセイバーに変身した時は驚いたが正真正銘の命懸けの戦いに挑んだ。

 その後に決着がついた。

 何となくだがさとみは、シノブが何かしたのだろうと思った。

 

(早く帰って来なさいよ……馬鹿……)

 

 などと涙を隠すようにして運動場と校舎の境目にある緩やかな小さい坂。そこにある階段に腰掛け、隠れて泣く。

 マスコミ連中はお涙頂戴なシーンで視聴率を稼ぐ連中である。そう言う連中の為に泣いているのではない。

 

「はあ~すっかり夕日が上がってる」

 

「……っ!!」

 

「ただいま」

 

 藤崎 シノブだった。

 学生服姿。

 疲れた様子だった。

 人目など気にせず、さとみはシノブに抱き着く。

 胸が当たろうが構わない。

 シノブの胸は服越しでも分かるぐらいに硬かった。

 そう言えば体育の時間で男子が言っていた。シノブと亮太郎の体が凄いって。まるでプロの格闘家のように鍛えこまれているって。

 こう言う事だったのだ。

 

「おいおい大丈夫か?」

 

「大丈夫じゃない! あんた人が良すぎんのよ! 心配するこっちの身にもなってよ!」

 

「ははは……ごめんな—―俺行かないと、この分だとしばらく学校も閉まるだろうし——」

 

「待って!? もう行くの!?」

 

 ハッとなって顔を挙げる。

 シノブはとても優しそうな笑みだ。

 

「時間との勝負だ。時間を掛ければ掛けるほど、この場所みたいな場所が出来る」

 

「そんな言い方――卑怯よ。第一それシノブがやる事じゃないし! こう言う時こそ自衛隊とか秘密の組織とか、とにかく大人に任せときゃいいのに!」

 

 半グレとか政府の悪の実験とかそんなスケールの戦いではない。

 どう考えてもそれとは比較にならない規模の戦いに挑もうとしている。

 シノブは強いのは分かってる。

 だが今回の相手にどれぐらい、どれ程通用するかなど分からない。

 無事に帰って来れる保証もない。

 

「ごめんな—―」

 

「分かってる。それでも行くんでしょ?」

 

「ああ。行ってくるよ」

 

 シノブはゆっくりと離れて、そして消え去っていった。

 黒川 さとみは急いで人気のない場所を移す。

 学園内を走り、誰もいない屋上へと駆け込む。

 そこで泣きじゃくる。

 

「バカ……バカ……バカァ……人が良すぎんのよ、シノブ……」

 

「どうしてそこまで誰彼構わず救いの手を差し伸べらんのよ」

 

「何時か絶対に正直者が馬鹿を見る展開になってるんだってば」

 

「本当にバカなんだから」

 

 などとひとしきり言葉を吐き出すと、さとみは立ち上がった。

 自分自身に出来る事。

 それが何なのか分からないが、それを探すために行動した。

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