RE:召喚勇者の現代帰還〜それでも勇者は勇者としてあり続ける〜 作:MrR
半グレとクラスメイトの少女・黒川 さとみ
Side 藤崎 シノブ
勇者とは何だろうか。
魔王を討伐し、異世界を救った今でもシノブは考える事がある。
何となくだが永遠に自分が満足する答えは出せないだろうなとシノブは思う。
それでも自問自答してしまうのだ。
勇者とはなんなのか。
正しい勇者とはなんなのか。
自分は人様に誇れるような勇者だったのかと。
勇者の一つの在り方として困ってる人を助けられる人と言うのがある。
何を当たり前な事をと言う人もいるだろうが、現代社会で人助けをすると偽善者呼ばわりされ、酷い時は犯罪者呼ばわりされる。
人助けしないのではなく、できないのだ。
それでも手を差し伸べられる人がいたのなら、きっと素晴らしいこと何だろうなとシノブは思う。
✩
=放課後・琴乃学園正門前=
放課後。
体育授業の時に体を見られて一騒動が起きた。
と言うのも藤崎 シノブ、谷村 亮太郎の肉体はもはや戦う人間の体付きその物なのだ。
それについては谷村 亮太郎が「夏休み期間中にメチャクチャ鍛えた」と言ったので、その話にシノブも便乗した。
ちなみに谷村 亮太郎のメチャクチャ鍛えたと言うのは本当である。
彼は藤崎 シノブが異世界に召喚されるタイミングを把握していたのだ。
その事で異世界に居た時にシノブと亮太郎は色々と問題を起こした。
異世界での旅路は楽しい事ばかりでは無かったが、それすらも愛おしく想えてしまう。
(ネクプラバトルでも再開しようと思ったけど、学力が不安だから勉強に専念しないとな)
授業が終わり、帰宅部の生徒の流れに沿って藤崎 シノブも下校する。帰って遊ぶのではなく勉強である。
数年間異世界で戦って来たが、鍛えた体とか剣の腕は学業で役に立たない。
今大事なのは学力である。
(将来自分が何になりたいかとか、真剣に考えないとな)
あれこれと勉強し続けている内にふとシノブは将来の事を考えた。
自分は何になりたいかわからないが、一定の学力や知識は必要だと考える。
少なくともFラン大学に入って親に迷惑は掛けたくはないと思った。
(あとバイトとかして金も稼ぎたいし)
それと出来るならアルバイトしたいとも思った。
金は多すぎても考え物だが少なすぎるのも考えものだ。
(とにかくやりたい事やするべき事h沢山あるし、あと二年ちょいを無駄に過ごしたくはないな)
高校の三年間は短く、残酷だ。
大人たちが口酸っぱく勉強しろと言うのも分る。
異世界に行ってなかったらボンヤリしたまま適当な大学にでも行っていたのだろう。
中学時代まではネクプラバトルと言う競技に打ち込んでいたが、あれも現実逃避になっていた可能性するある。
こうして変われたのも異世界生活の御陰であるが、そうでもしないと変われなかったのかと残念に思う時がある。
(うん? なんだ?)
などと考えていた矢先、トラブルに遭遇する。
(また古典的と言うか典型的と言うか……)
正門前で複数人でウチのクラスの女子生徒にナンパしている。
ナンパしている男たちはチャラく、壊滅的に頭が悪そうだ。九九の掛け算とかも怪しそうなレベルで。
ニヤニヤとスマホを構えてタバコや酒をやっている。
そばにある黒塗りのワゴン車も彼達の所有物だろうか。
(教師達はアテにならなさそうだな)
教師はどうしていいか分からず遠巻きに見ているだけ。
学校、大学でチンピラのあしらい方など教えてくれる筈もないのでこの有様も無理からぬ事だ。
「さとみちゃんさぁ? 最近調子乗ってると思うんだよね」
と、危機的状況に陥っている女子生徒に対して同じ学校の女子生徒三人が何やら話かけている。
「私達との付き合いも悪いし、反抗的だし。だからちょっと痛い目みないとね」
などと傲慢な態度を隠そうともせず、女子生徒をチャラ男たちに差し出す。
どうやら彼女たちはクラスの女子をお仕置きのつもりでチャラ男たちに差し出したようだ。
(エグいことを)
見ていて気分の良いものではない。
周囲の生徒たちも「警察呼んだ方がいいんじゃ?」とか言ってるがこの様子だと誰も通報しないだろう。
海外で日本の学生はどう思われているかしらないが、こう言う時は見て見ぬふりをし、正義感がある人間は馬鹿を見ると言ってしまっちゃう人間なのだ。
酷い時は助けた人間をカッコつけだの偽善者呼ばわりである。
シノブも以前はそう言う人間の一人だったのでそう言う心理はよく分かってしまう。
「なんだテメェ?」
気がついた時にはシノブは女子生徒とチャラ男の間に割って入っていた。
チャラ男の背格好は私服で眼前の男はタバコとアルコールが混じった臭いがする。
今日は平日で私服姿で車で女を拐うのはよっぽど暇な人達なのだろう。
「ちょっと何よアンタ。アンタには関係ないでしょ」
対して後ろの女の子。
長い黒髪で切れ長の瞳、女子にしては背もある近寄りがたい感じのする雰囲気を身に纏う。
胸はとても大きく、メロンやスイカを胸の中に仕込んでいたとしてもまだ大きい。人の頭より大きいのではないか。
腕も細く、脚のボリュームの方は程よい。爆乳であるにも関わらず全体のバランスは崩れていない。
まるで雑誌のモデルか何かだ。
こんな女子ならば確かに柄の悪い下品な不良連中に目を付けられるのは納得出来る。
むしろ過去に何度か経験していたとしても不思議ではないだろう。
(と言うかあの子はウチのクラスの……)
シノブのクラスのクラスメイトは個性的である。
胸とか抜きでも綺麗な部類の美少女なので見間違える事はまずない。
クラスメイトで黒川 さとみ。
同じクラスの人間であるが、高校入学してから腑抜けていたシノブとの接点はない。
「なんだ兄ちゃん? カッコつけてるつもりか?」
異世界で本物の命のやり取りを幾度も経験したシノブにとって、地球のチンピラの脅しなど通用はしない。
「それよりもいいんですか?」
特に動じた様子も見せずにシノブは不良に語り掛ける。
その不良は「あん?」と返した。
「さっき警察呼んだんでそろそろ警察来ますよ?」
「テメェ!?」
驚く不良。
(これで退いてくれるといいんだけど)
ハッタリだった。
これで退いてくれればこの場で暴力を振るわずに済む。
「舐めやがって!! ぶっ殺してやる!!」
だがそれがまずかったのか殴りかかってくる。
シノブから見てとてもスローな拳だ。
パワーインフレが激しいバトルマンガのキャラが一般人の攻撃を直視するとこんな風にみえるのだろうかと感心して受け止める。
「あっ!?」
そしてヤケになったのか出鱈目に殴りかかって来る。
それを全部受け止めた。
周囲も静かだ。
「な、なんなんだよ!? なんなんだよお前!?」
息を切らして幽霊でもみるかのような表情でシノブをみる。
シノブ本人は「お前って言われましても……」と困り気味の様子だった。
どう対処すれば良いのかシノブとしても困っていた。
相手との実力差があり過ぎて、変な対応をすれば過剰防衛で捕まってしまうからだ。
「これならどうだ!?」
そう言って他のチャラ男が鉄パイプを振り下ろしてくる。
何時から日本はこんな治安が悪くなったのだろうかと考えつつシノブは自分の腕で受け止め、鉄パイプのほうが折れる。
「ひ、ひぃ!?」
「なんだこいつ!?」
化け物にでも遭遇したかの様にチャラ男達は大慌てで退散していく。
「この口先だけの役立たずども!!」
「ちょっと待ってよ!?」
「置いてかないで!?」
チャラ男たちをけしかけてきた女子たちもその場から逃げる。
場はシーンと静まり返った。
「……助けてくれてありがとうと言いたいけど、あなた目をつけられたわよ」
助けてくれたさとみはお礼を言わずに、現実を突きつける。
「ははは、そうだね」
シノブはシノブであまり命の危機的な実感は無かった。
異世界での過酷な経験でその辺りの感覚は麻痺しているのかもしれない。
「そうだねって状況分かってるの? 相手は半グレ連中よ?」
半グレ連中。
ようは893ではない、犯罪組織の人間である。
どの程度の規模かは分からないが、一般人が相手するには確かに荷が重い。
異世界でもその手の連中、山賊や野党に闇ギルド、暗殺者とも戦ったりしたが。
地球の生活でそんな奴達と関わる破目になるのかとシノブは苦笑した。
「ともかく私バイトあるから」
そう言ってさとみは足早に立ち去ろうとする。
「大丈夫? バイトまで付き添おうか?」
異世界生活で性格が変わり、お節介焼きな所が芽生えたシノブ。
さとみのボディーガードを申し出る。
「あなた命惜しくないの? 噂じゃあいつら893と繋がって人も殺したこともあるのよ」
「うわ~まるで不良漫画のタチの悪いのみたいだ」
「まるでじゃなくてその物なの」
そこまで言うとさとみは周囲を見渡して「ついてきて。遠いけどバイト先まで案内するから」と言う。
「バイト先は?」
「ちょっと遠いわよ。日本橋」
日本橋。
関西のオタク街。
西の秋葉原。
琴乃市から電車でそれなりに時間が掛かる。
学生の所持金からすればそこそこするが、人の命が懸かっているのだ。
仕方ないかとシノブは日本橋まで付いていく事にした。
てなわけで初回連続更新終わります。
ご意見、ご感想お待ちしております。