RE:召喚勇者の現代帰還〜それでも勇者は勇者としてあり続ける〜   作:MrR

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天川 マリネ編その5・尋問

 Side 谷村 亮太郎

 

 =夕方・スターズ芸能事務所前=

 

 スターズ芸能事務所大阪日本橋の近くにある。

 人の出入りが激しく、社員の一人一人を上の人間を把握するのは困難そうだ。

 この分だと正社員に化けたスパイが潜り込むのは簡単だろう。

 ましてや警備員だ。

 幾ら芸能事務所とはいえ、務めているのは普通の人間だ。

 普通の人間は一々自分の会社の警備員が犯罪を犯しているなど知りもしない。

 

「まあ、君も来たんだね」

 

「面白そうって言う気持ちもあるけど、アイドル事務所の中を探索するなら私がいると何かと便利よ?」

 

 傍には変装した天川 マリネがいた。

 上手い事言っているがノリノリだ。

 

「それを言うなら警察とかには言わなくていいの? 警察がダメでも会社の社長とかマネージャーとかさ?」

 

「そうするのが普通なんだろうけど、誰が敵で誰が味方か分からない状況だ。迂闊に事情を話すのは避けた方がいい」

 

 それに警察も大きな事件にならないと動けない組織だ。

 容赦なく具体的に言えば人が死なないと動けない組織であり、殺し屋とかが出張って来そうな刑事ドラマでもやらないような事件をどうこう出来るとは思えない。逆に死人が出るだけだ。

 逆に警察官に変装した殺し屋とか、汚職警官とかにも気を付けないといけない。

 本当に日本の話かよと思われるが、警察に変装した犯罪者の物語は決して創作物の話ではなく、実際に日本でも起きている現実である。

 安易に警察を信用できない、嫌な世の中だ。 

 

「周囲を探ってるけど—―怪しいのはまあ、どっかのゴシップ雑誌の3流記者とかだな」

 

「そう言うの、何処にいるのか分かるの?」

 

「大体は」

 

 そう言って亮太郎は周囲を探った。

 スキルを使わなくても潜んでそうな大体の位置は分かる。

 カメラ映りとか良さそうな場所にいるのはどっかの雑誌のゴシップ記者だ。

 

「最近はカメラとかデジタル機器も小型化して高性能だしね。日本は個人情報流出してもあまり騒がない民族だし、今の世の中誰がどう情報を漏らしていても不思議じゃないよ」

 

「そうね……ウチの会社の警備員がそう言う輩だったわけだし」

 

 今はもう警察だからと安易に信用できる時代じゃない。

 亮太郎は嫌な世の中になったものだと思う。

 

 

 =スターズ芸能事務所・警備員用ロッカールーム=

 

 スターズ芸能事務所内は、世間の流行りを先取りしなければならない人気が命のアイドル事務所らしく、広々としていて近未来的な内装だ。

 空調も利いていて、一流の勝ち組企業ってこんな感じなのかなと思った。

 マリネの話によると、現在上の方はストーカー問題で会議中。

 とりあえず、亮太郎の依頼内容を考えれば警備員の件を明かせばそれで依頼完了になるが、今回の事件の黒幕はその程度で引っ込むとは思えない。

 

「うわ~異世界の魔法って凄いわね。皆、私達を無視してる?」

 

「いわゆる催眠状態だからね」

 

「知ってる。それでHな事してるんでしょ?」

 

「してないよ。そう言われそうだから君を連れて来たくなかったし、この魔法を披露するのも嫌だったんだ」

 

 そう言って宇藤 タツヤが渡してくれた怪しい奴リストを片手に警備員を人気の無いロッカールームで尋問する。

 見た目は普通の男性だ。 

 虚ろな目で突っ立っている。  

 

「今の時代に高そうな腕時計か。靴も新品だ。大企業の警備員って羽振がいいのかな?」

 

「さあ? そこまでは知らないけど……」

 

「じゃあ尋ねてみようか? 何でそんなに羽振がいいんだい?」

 

 亮太郎は警備員に尋ねた。

 

「警備員やってれば誰も怪しまない。小遣い稼ぎで金を稼いでいる」

 

「情報を売った相手は?」

 

「情報を売った相手は様々だ。マスコミや週刊誌の記者……ちょっと前までは須藤とか言う奴にも情報を売っていた」

 

「須藤ね……」

 

 須藤。

 話の感じからして息子の須藤 勇也の方だろう。

 その方が自然だ。

 

「知ってる奴なの?」

 

「ちょっと前に関わった奴さ」

 

 父の須藤 正嗣や息子の勇也を破滅させた張本人は涼しい顔をして「続きをどうぞ」と警備員に話を促した。

 

「最近は新しい雇い主が出来た。一人は用心深い奴で金に困っている奴を経由して情報を集めていらしい」

 

「成程――」

 

 今の時代、金に困っている人間は幾らでもいる。

 そう言う人間を金で雇って情報のやり取りをしているのだろう。

 

「もう一人はこの芸能事務所のマネージャーをやっている金成 マサトって奴だ」

 

「金成!? あいつが!?」

 

 知ってる奴なのか、マリネは目を見開いて衝撃の態度だった。

 

「知っているのか?」

 

「色々とあくどい事はしてるって噂は聞くけど、実力は確かなのよね。それに金の羽振も良くて女受けが良くて……ほら、今超少子高齢化で社会人になっても恋愛経験がない大人とか珍しくないでしょ? それであんなのでもコロっといっちゃう人が多いみたいなのよ」

 

 そこまで言ってマリネは険しい顔をする。

 

「マネージャーからも注意するように言われて……正直どうして社長も野放しにしているのか謎なところがあるのよね」

 

「その辺はどうなんだ?」

 

 亮太郎は手っ取り早く警備員に聞くことにした。

 

「俺も詳しくは知らない」

 

「その話本当?」

 

 マリネは疑いの眼差しを向けるが、亮太郎は「今催眠中だから嘘はつけないよ」とフォローを入れる。

 

「ただ、金城は自慢げに女の取引先を喋っていた」

 

「女の取引って、それ人身売買!?」

 

「だろうな。男は女を見てるんじゃなくて、容姿とか人気とか、そう言うのを求めてるんだとか……この芸能事務所に近づいたのも前の事務所で出荷をやり過ぎたらしく、適当に情報屋から金を出して弱味を握りまくって潜り込んだらしい」

 

「こうして聞くとエグイわね……」

 

「興味本位で聞くようなもんじゃないね。席を外す?」

 

「いや、いい。最後まで聞く」

 

 根は善人なのか、顔を青くしていた。

 サラリと語られた衝撃の事実だが、その内容はこの世の地獄を想像させるような物だ。

 普通の人間が聞いたらアマネのようになるのが普通なのだ。

 

「で、アンタはそれを聞いて見て見ぬ不利をしたワケ!?」

 

「そうだ。誰だって自分の命がかわいい。戦争のニュースを見て、かわいそうだとは思っても、実際に戦場に行ってどうにかしようと思う奴はいないだろう。それと同じだ」

 

 思わずアマネは手を出そうとする。

 それを亮太郎が止めた。

 魔法で隠蔽も可能だが、なるべくなら誰かを殴ったと言う事実は止めておきたい。

 

「やめておけ。どうせ放置してもここまでゲロッたら明日にでも死体になるような奴さ」

 

「でも!?」

 

「この状態にしてネットで洗いざらい暴露させると言うのも面白いかもな」

 

「……それって」

 

「何なら一週間後、こいつが生きてるかどうか賭けるか? もしかして生きているかもしれないが、ここまでやらかしてるんだ。野良犬以下の地獄の様な人生が待っている。まあ、ヤケを起こされて何かされると問題だし、強めの呪いを掛けて無力化するけどね」

 

「……アナタが言うんだからそれ本当にできるのよね?」

 

 などとヤバイ奴を見る様な目をするマリネ。

 若干引いてる。

 

「他にも精神に死ぬ程苦痛を与える系の呪いを掛けるのもいいね。何なら伝手を使って知り合いのオカマを嗾けて、博多〇骨ラー〇ンズみたいな目に遭わせてもいいかな?」

 

「……それもう素直に死なせてやった方がマシなんじゃないかしら?」

 

「でも、少しは頭を冷えただろう」

 

「う、うん。ごめんなさい……」

 

 謝ることはないと言いたいところだが、変に励ますのも間違いな気もするので亮太郎は黙っておいた。

 

「落ち着いたし仕掛けてみるか。せっかくだし、コイツのスマホを使おう」

 

「ちゃっかり、さっき言ってたエグイプランを実行に移すのね?」

 

「相手が相手だ。それに僕は聖人君子じゃないし、精神異常を訴える弁護士や、頭のおかしい裁判長がしゃしゃり出る可能性もある。どっかの怪盗団みたいに、改心させる事も出来ないしね」

 

 もっともそんな事が出来たとしてもやる必要性も感じないが、ふとこう言う場面で異世界での仲間達やシノブの顔、そして何故だかマリネがどう感じるかを考えてしまった。

 

「だが、平和的に済めばそれに越したことはないかな?」

 

 そう言って警備員のスマホをロッカーから取り出し、ロックを解除させて指示を出した。

 

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