イカロス・シンドローム  かくして少女は翼を捨てました   作:虚憂

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自画落な日々

 唐突であるが、私は画家だ。

 絵をそこそこの額で買い取ってもらった実績もある程度の、ではあるけれどね。

 

 まーいつもいつも才能のなさに辟易しながら描いてるんだけどねえ、こんな趣味全開の絵を買い取る物好きには感謝感謝、かなぁ。描くモチベになるし。

 少なからずこの値段分の評価をしてくれてるってことだからね、嬉しいもんだよ?

 

「最近さー、というか不定期に、名目上では匿名からの支援ってことなんだけど。誰からのものなんだろうね〜?」

 

「ほへぇ、優しい物好きがいたもんだね」

 

「うへぇ、そうだよねぇ。飛んだ物好きがいたもんさ」

 

「あはは〜」

 

 だからって訳でもないんだよ?

 まあ受けた善意は善意で返そうと、なんとなく思って知り合いの支援を匿名でやってたんだけど。

 なんか、バレそう。てかなんならもうこれ確信に至ってそう。

 

「そんな話なんで私に?」

 

「先輩以外にうちの現状知ってる人がいないから、だけど?」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

 ていうかお兄さんは? あ、シロコちゃんに校舎の案内を、いつの間に……。

 と言うかなんで私。

 

「で、それが私の現状と何の関係が?」

 

 セリカちゃんが私の右、ノノミちゃんが私の左にピッタリ構えてて逃げられないんだけど、私こんなことされる理由ある?

 

「なんで支援なんてしてるんですか?」

 

「いや、私じゃないけど」

 

「往生際が悪いわね、白状したらどうなのよっ」

 

「違うからねー?」

 

 バラしたら匿名の意味ないじゃないの。

 意地でも言わないからね。

 

「てか支援されてるんならそれでいいじゃん。匿名なんでしょ? 後からどうのこうの言われる心配もないんだし」

 

 名前を出した上の支援とか、今のアビドスの現状鑑みたら胡散臭さしかないけど。

 匿名なら後から名乗り出ようがそれ嘘ですよね? 私達は知りませんが押し通せるんだからそれで万事オッケーでしょ。

 

「それだと気がおさまらないからこうなってるんだよ〜」

 

「つくづくお人好しだねぇ皆」

 

 銀行強盗考えたり、誘拐の証拠を揉み消す方向に考える人達とおんなじとは思えないね。おんなじ? あれまぁ。

 

「ま、私じゃないからとだけ」

 

「そっか〜」

 

「うぬぬ、こんなあからさまなのに……」

 

「まあ、匿名である以上本人が名乗りでないとなんとも……ですから」

 

「その手がありましたか〜……」

 

「ノノミちゃん?」

 

「何でもありませーん」

 

 おや、ノノミちゃんも同志かな。

 いやまあノノミちゃんは私なんて砂粒程度にしかならないくらいのお金持ちの実家らしいんだけどね、ネフティスだっけ。

 

「ま、やるにしても少額じゃないと色々めんどくさいよー?」

 

「わかりましたっ☆」

 

「ユウキ先輩とノノミ先輩?」

 

「さて、それじゃ私はこれくらいでお暇させて貰うね」

 

「ちょっと!?」

 

「あはは、また機会があったら寄るね〜」

 

 セリカちゃんは真面目だねぇ。

 両サイドの2人をいなしつつ、ささっと教室を出て玄関へと向かう。

 

「私が介入すべき問題じゃありませんよと」

 

 シャーレの先生だと言うお兄さん、もとい先生。

 何だろうね、彼ならここの問題をどうにかしてくれそうっていう感じがあるんだよね。

 解決はしなくとも。

 

「ホシノの信頼を得られるかな〜?」

 

 当面はそこ? いや、もっと初歩的な部分か。

 

「カイザーコーポレーション、か」

 

 いやぁ私も驚いたよ。なんか土地の持ち主違わない? って。

 匿名で支援しようとして、振り込む先を調べて初めて気付いた事柄だ。

 

「あ、ホシノ達に言うの忘れてた」

 

 アビドス来訪の目的、半分はこれだったのに。

 まあ、私の口から言わなくても何とかなるでしょ、所詮は部外者よ私。

 

「……次は、どこに行こうかな」

 

 もっともっと、空を描かなきゃあね。

 私の夢の残骸は、まだまだ燃え尽きてないんだから。

 

 


 

 

「てことで来ました便利屋68」

 

「どういうことよっ!?」

 

「こういうことだよ〜、はいこれ差し入れ」

 

 何となーく電話してみたら、アビドスからそう遠くない位置にいたからね。

 来ちゃった。

 

「くふふっ、相変わらずだね〜」

 

「まぁね〜。ムツキちゃんも元気そうで何より」

 

 この可愛さ溢れてるのが浅黄ムツキちゃん、頼られ甲斐のある可愛い後輩ちゃん。

 

「……まあ、とてもありがたいタイミングで差し入れてくれたね」

 

「おろ、なんかあったの?」

 

 このすらっとしててカッコいいのが鬼方カヨコ。

 私の元クラスメイト、になるのかな?

 

「ユウキが気にすることでもないよ。とりあえずありがと」

 

「はーい。……んでゲヘナは相変わらず?」

 

「さあね。社長の元に来てからはあんまりかな」

 

「ほへ〜」

 

 まあ私が転校するまでのちょっとの間だけどね。

 んなもんでゲヘナ云々はほとんど知らないってのが現状。

 

「あんたも調子は大丈夫なの?」

 

「ばっちり。ふらふら〜っと絵描きしながら生きてるよ」

 

「そ、なら良かったよ」

 

 そう言えば怪我のことも知られてる組か、カヨコ。

 なんか忘れてるような……。

 

「セナには会いに行った?」

 

「……あっ」

 

「あっ、ってあんたまさか」

 

 やば、すっかり忘れてた。

 どうしよ。

 

「……こってり絞られて来なよ。私は知らないから」

 

「うぐ……はーい」

 

「怪我って……?」

 

「社長は知らないんだっけ」

 

「私は知ってるよ〜」

 

「わ、私は知らない、です……」

 

 セナのことはとりあえずさっぱり忘れといて。

 社長は後回し、とりあえずはもう1人の方から。

 おどおどしてるように見えて、実はめちゃくちゃ大胆ですごい伊草ハルカちゃん。

 怒ったりしたら怖いけど、褒め甲斐があって反応も楽しい子だね。

 

「……まあ、ユウキは一時期、ゲヘナの生徒だった時期があって」

 

「入った時に、というか入る前から大怪我しててさー。怪我ってのはそのこと。今はもう完治してるから気にしなくていいよーって話」

 

「そ、そうなのね。良かったわ」

 

 あからさまにホッとしてるアルちゃん。

 アウトローが他人の怪我に一喜一憂してどうするのか。まあそこが可愛いんだけどね。

 

「アルちゃん達はこれから仕事?」

 

「そうなるかな〜」

 

「ふふ、久々に大きな依頼なのよっ!」

 

「おおー、さすがアルちゃんだ」

 

「そうでしょう、そうでしょうともっ!」

 

 なんかやらかしそうなのは置いといて。

 まあそれなら長く滞在するのも迷惑か。

 

「じゃあ差し入れついでのお鍋、さっさと作っちゃうね?」

 

「鍋なんだ」

 

「うん、アルちゃん達って結構な頻度で引越ししてるし、キッチン設備が結構バラバラだなーってなるからさ」

 

 これはまあ切実な問題。

 アルちゃん達自身は外食とかで良いのかもしれないけど、それじゃあ栄養はどうしても偏るし値段もちょっぴりお高い。

 

「持ち運びが楽なガスコンロセットで作れるお鍋を持って来たんだ〜」

 

 その点で見るなら、野菜の比率を高めたりすれば諸々が解決するお鍋はとても優秀なのだ。

 

「今夜はお鍋パーティ、闇鍋でも良いよ?」

 

 当然と言うか必然と言うか、闇鍋は却下されました。

 ムツキちゃんは賛成してくれたのにねぇ、残念残念。




便利屋と鍋パーティしたい……したくない?
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