イカロス・シンドローム  かくして少女は翼を捨てました   作:虚憂

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機械仕掛けの宮廷舞曲

「アリスはユウキにお願いがあります!」

 

「はいはい、どうしたの?」

 

 君はいっつも元気だねぇ、えーと……天童アリスちゃん?

 こんな子いつの間に入ってたんだろうと思ったのもちょっと前の話である、存在感どこに置いてきたのさ。

 

「アリスのお姉ちゃんになって下さい!」

 

「いいー……今なんて?」

 

 いいよー、と気軽に答えかけたけど。

 なんかとんでもないこと要求してなかったこの子?

 

「アリスは、ユウキにお姉ちゃんになって欲しいです!」

 

「いやどうしてそうなったのかなっ!?」

 

 ANE……姉???

 話に脈絡がなさすぎるんだけどー?

 

「えーっと、アリスちゃん? どうしてそんなことになったのかな」

 

「ミドリやモモイを見て思いました。お姉ちゃんと言う存在はどんなものなのかって」

 

「ふむふむ」

 

「だから、アリスが1番頼りにしている人にお姉ちゃんになって欲しいと、アリスは考えました!」

 

「それで私ぃ?」

 

 えっ私この子とそんなに絆深めてたっけ。

 甘やかし甲斐がある子だなぁってついつい色々した覚えはある。

 あっ。

 

「まあいっか。それで何して欲しいの?」

 

「撫でて欲しいです!」

 

「モモイ達を見てていの1番に思い付くのがそれ!?」

 

「ゲームではよく撫でられて幸せそうです!」

 

「あそっちかぁ、はーい」

 

 アリスの綺麗な黒髪に触れる、サラサラだー。

 ワンチャン触れる側も幸せになれそう。

 

「……♪ もっともっと! とアリスはおねだりをしてみます」

 

「いいよ。こんな感じ?」

 

「はい!」

 

 子供……じゃなくて妹だったね。

 妹に激甘な姉ってこんな気分なんだ、どこまでも甘やかしちゃいそう。

 

「アリスちゃんは愛される才能があるねぇ」

 

「?」

 

「勇者の才能があるってことだよ。ほれほれ〜」

 

「わわわっ! あ、アリスはもみくちゃにされています!?」

 

「あははっ」

 

 静かに撫でていた手で、いきなりわしゃわしゃっと撫で始める。

 んー、驚いた顔も可愛いって、もう反則だよね?

 

「いきなりごめんね、痛くなかった?」

 

「大丈夫です、むしろアリスは幸せな気持ちになりました!」

 

「そっか」

 

 ……懐かしい。

 昔、こうやってアッちゃん達に……。

 

「……ありがとう、アリスちゃん」

 

「? アリスがお礼を言わなければいけない立場ですよ?」

 

「んーん、私もいいことを思い出せたから、そのお礼」

 

 決して、あの場所は幸せだとは言えなかったけど。

 こうして、思い返せる幸せもあったんだなぁって思えることが嬉しいな。

 

 ……昔?

 

「あ」

 

「?」

 

「ごめんねアリスちゃん。ちょーっと用事思い出したから、数日出かけて来るねっ!」

 

「! クエストですね! 目的地はどこですか?」

 

「ゲヘナ!」

 

「……え?」

 

 いっけないすっかり忘れてた!

 セナとの約束すっぽかしてたんだった!

 

 


 

 

「……3ヶ月ぶりですね、ユウキ」

 

「あ、あははー……」

 

 数日後、超特急でゲヘナまでやって来た、めっちゃ怒ってる。

 

「あなたの翼跡が痛むと仰るので、定期的に検診をとお伝えしていた筈ですが……」

 

「ご、ごめんってば、出席日数がギリギリでずっと学校の方に居たんだからさー」

 

 これは本当だからね。

 実績ある部活動と言うことで大半は免除されてるんだけど、定期的に滞在することになってる。

 

「……だからとは言わないけど、許してセナ!」

 

「許しませんよ、心配していたこちらの身にもなって下さい」

 

 ああ、今のセナの背後に修羅が見える……。

 仏ってこんな顔するんだね、初めて知ったなー。

 

「待つことには慣れていると自負していますが、この3ヶ月でそれがまだまだ未熟であると痛感させられました」

 

「あはは……えっと、ほんとにごめんね?」

 

「覚悟して下さいね」

 

「えっちょっ話聞いて? ね、ねぇセナ? お願いだから」

 

「問答は無用」

 

「それ分けて使うの初めて聞いたんだけどっ!? ちょ、待ってぇ!?」

 

 この後、めちゃくちゃ検診された。

 もうお嫁に行けない……訳でもないか、流石にね。

 

「傷跡、濃くなっていますね」

 

「背中の奴?」

 

「はい。通常であれば薄くなる筈なのですが……」

 

 おろ、濃くなってるとな。

 

「んー、まあ本来なら"ある"ものがないんだし。そういうこともあるんじゃない?」

 

「……本人がこの様子では、改善は難しそうですね」

 

「あはは、まぁ私だからねっ!」

 

 よし、要件は済んだしさっさと帰ろうかな。

 ユウカちゃんに怒られるし、私ってば怒られ過ぎじゃない?

 

「待ってください」

 

「おろ? まだ何かあったっけ」

 

「いえ、私とデートしましょう」

 

「……うぇ、デート?」

 

「はい」

 

「いいけど、いきなり何で?」

 

 デートとはまた大胆な。

 まーセナのことだしそんな意味はないんだろうけどさー。

 

「あなたと出かけたいと思っただけですよ」

 

「仕事はいいの? 忙しいんでしょセナ」

 

「ええ、普段もそう休める立場ではありませんが……今日は休暇を貰っておきます」

 

「ん、りょーかい」

 

 要するに息抜きに付き合えってことでしょ。

 それなら万事おっけー、こんなゲヘナでもそんなに荒れてない場所ってどこだったかなー……?

 

「……そうだ、あそこなら」

 

「?」

 

「行きたい場所とかある?」

 

「特には」

 

「おっけー、じゃあ私のおすすめスポット行こ」

 

 ふふふ、絵描きのリサーチ力を見せてあげようじゃないですか!

 

「セナがリラックスできる、近場の場所へご案内。ってね」




アリスさんの姉になりセナさんを焦らす女、屍ユウキ。
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