それでは、どうぞご覧ください。
「その口……二度と開けないようにしてやる……!!」
ヴラムは怒りのままに、矢をル・ビートへと放った。
「くっ!?」
その矢は吸い込まれるように命中し、その後もヴラムは間髪入れずに矢を放ち続けた。
「ちっ……しつこいぞ!!」
ル・ビートは攻撃を受け続けていたが、自身の角を伸ばして反撃に転じた。その角はヴラムを捉え、攻撃は当たったかに思われた……が、
「フッ!」
「ぐっ!?」
「ハァッ!!」
「ぐあっ!?」
ヴラムはその攻撃を躱しており、ル・ビートの背後から急接近して蹴りを何度も入れた後、再び壁に向かって蹴り飛ばしたのだ。さらに、ヴラムはブレイカーを鎌モードに変形させながら無言で近づき……
「くっ……ハァッ!」
「……」
「ぐっ!?」
ル・ビートの反撃を最小限の動きで避けつつ、何度もル・ビートを斬り付けたのだ。
「調子に……乗るな!!」
「!」
ル・ビートもただ黙ってやられるだけではなく、角を伸ばして反撃してきた……が、ヴラムはその場から後ろに飛び退き……
「っ!?」
「ハァッ!!」
「ぐあああああ!!」
再び急接近してル・ビートの懐に入り込むと、ブレイカーを振り抜きそのまま吹き飛ばしたのだ。
「ぐっ……くそっ!こんなはずでは……!」
吹き飛ばされたル・ビートは立ち上がろうとしたが、ダメージが大きかったのか、その場に倒れ込んでしまった。
「ぐっ……!?」
「……」
ヴラムは倒れているル・ビートを踏みつけると……
「セット!」
ブレイカーにゴチゾウをセットし、レバーをゆっくりと3回引いた。そして……
「……消えろ」
「ヴラムスラッシュ!」
とどめを刺そうと、首を狙ってブレイカーを振り下ろした………その時、
「っ!?」
突如サソリの尻尾のようなものが現れ、ヴラムの攻撃からル・ビートを守ったのだ。ヴラムはすぐに後ろに飛び退き、尻尾が伸びてきた方向―――ル・ビートのいる場所の背後を見た。そこには……
「……」
「エスコル……!」
ハルマの両親の仇であるエスコルが、頭だけがグラニュートとなった姿で立っていたのだ。
「!……助かったぞ。さすがは最強の処刑人」
「邪魔だ。さっさと行け」
「なら、お言葉に甘えて」
ル・ビートはそう言って羽を広げると、窓を割ってその場から逃げて行った。
「!待て―――っ!?」
ヴラムはすぐに追いかけようとしたが、それはエスコルによって妨げられてしまう。
「お前の相手は俺だ」
「っ……ハァッ!!」
ヴラムは飛び上がると、エスコルに向けてブレイカーを振るうが……
「……」
「ちっ!」
エスコルの持つ短剣によって、難無く防がれてしまう。それを見て、すぐさま後ろに下がったヴラムは……
「っ!!」
エスコルの周りを走り、隙を見て攻撃を仕掛けていく。だが、エスコルはその場から一歩も動くことなく攻撃を2本の短剣で防ぎ続けており、時折ヴラムに攻撃も加えてダメージを与えていたのだ。さらに……
「さすがの速さだ……だが―――」
「ハァァァーー!!」
「フッ!」
「っ!?」
エスコルは自身に迫るブレイカーを左手の短剣で止めると……
「ハァッ!」
「ぐっ!?」
そのまま右手でヴラムを殴り飛ばしたのだ。吹き飛ばされたヴラムは床を転がるが……
「っ……だったら―――」
「カップオン!」
「ゼリーヴラムシステム!」
すぐさま立ち上がるとゴチゾウを変え、ゼリーカスタムへと姿を変化させる。
「カップREADY!」
「っ!」
「インビジブルゼリー!」
ヴラムはすぐさまレバーを倒して透明化し、エスコルの前から姿を消す。一方で、エスコルも油断することなく短剣を構えていた。
「……」
(一撃で、確実に―――)
ヴラムは気配も消してエスコルの背後に回ると、その首を狙ってブレイカーを振るった……が、
「っ!?」
気配を読まれていたのか、尻尾の針によって受け止められてしまう。さらに……
「ぐっ!?」
透明のままにもかかわらず、エスコルはヴラムを尻尾で拘束すると……
「フッ!」
ヴラムを周りの床や壁に何度か叩き付けた後、そのまま投げ飛ばしてしまったのだ。
「ゼリーOVER!」
「ぐっ……!」
倒れたヴラムは立ち上がろうとしたが、ゼリーカスタムの副作用により、胸の辺りを抑えながら膝をついてしまった。そんなヴラムに対し、エスコルは追撃する構えを取ったが……
「!……そうか」
「……?」
急に動きを止めたかと思えば、人間でいう左耳の辺りを抑えながら誰かと話し始めたのだ。
「……時間切れだ」
「……は?」
「依頼はあくまでバイトの護衛……お前を始末することではない」
エスコルはそう告げると、この場から去ろうとヴラムに背を向けた。
「待て!!」
ヴラムはブレイカーを弓モードに変形させると、エスコルを逃がすまいと矢を放つも、その矢は容易に避けられてしまったのだ。
「っ……」
エスコルが去った後、ヴラムは他に気配がないのを確認すると、静かに変身を解除する。そんなハルマの額や頬には傷があり、両腕からはエスコルに切られた傷から少ないものの血が流れていた……。
「父さん……母さん………」
ハルマは拳を握りながらそう呟いたが、それは誰にも聞こえることはないのだった……。
◇
「……ただいま」
「お帰り―――って、その怪我どうしたの!?」
浩二と共にはぴぱれへと戻ったハルマは、幸果に顔の傷や腕に負った怪我に驚かれていた。
「っ……何でもないよ」
「いやいやいやいや!?何かあったでしょ!?」
「……とにかく大丈夫―――」
「まずは手当て!はいそこに座る!!」
幸果はハルマの肩を掴んで椅子に座らせると、怪我の手当てを始めていく。ハルマは手当てされている間……
「……言ったでしょ、危険だって」
向かいの椅子に座った浩二に向けてそう言ったのだ。すると……
「……盗まれたんだ」
「盗まれた……?」
浩二は詳しい事情をハルマと幸果に話し始めた。
「僕の作ったチャンネル……甘いもの好きだし、バーチャル配信でスイーツを紹介するチャンネルを始めようと思ったんだ。イラストや取材も1人で頑張った……それが『カブトダンシのSweets Channel』なんだ」
「えっ!?めちゃくちゃ凄いじゃん!」
カブトダンシを浩二が作ったものだということに、幸果は驚きを隠せずにいた。
「視聴者数も順調に増えてた……でもある時、誰かにチャンネルを乗っ取られたんだ。僕じゃない誰かが、カブトダンシを名乗るようになった。ずっと悔しかったんだけど、ある配信で変なコメントを見つけて……それが『カブトダンシに会いに行ったファンが帰って来ない』っていうものだったんだ」
「!そのコメントウチも見た!」
ハルマの傷の手当てをしながら、浩二の言っていたコメントを見たことのある幸果はそう返した。
「悪用までされてると思ったら、本気でムカついてきて……取り返そうと思って、ファンのふりしてメッセージ送ったんだ。そしたら返事が来て、会えることになった」
「それで乗り込もうとして、ウチに依頼くれたんだ」
浩二がはぴぱれに依頼した理由を聞き、幸果は納得した様子でいた。
「そういうことなら、最初からそう言ってくれればいいんじゃ―――」
「僕がカブトダンシだってバレたくなかったんだ!学校のみんなにも、配信をしていることは秘密だし、今日だって探りだけのつもりだった!……でも、実際に目の前にしたら、やっぱり許せなくなって……あいつからカブトダンシを取り返したいんだ!もう一度一緒に来てよ!」
浩二はそう頼んだが……
「……ダメだ」
「何で?」
「人間ならともかく、化け物が関わっているからだよ」
ハルマは浩二の安全を考えてか、そう返したのだ。
「じゃあ、諦めろっていうのか?」
「そういうわけじゃな―――」
「僕のカブトダンシで好き勝手されるくらいなら、死んだ方がましだ!!」
だが、浩二はカブトダンシを取り返したい気持ちが大きく、思わずそんなことを口にし……
「ちょ、浩二君……勢いでそういうこと言うものじゃ―――」
「それに、何も失ったことのないやつに何が分かる!!」
ハルマに対して、そんなことを言ってしまったのだ……。
「浩二君、一旦落ち着こ―――」
「……ふざけるな」
「ハルマ君……?」
「何も失ってない?そんなわけあるか!!僕だって―――」
ハルマは立ち上がると、つい声を荒げてそう言ったのだ。
「っ……あいつを探してくる」
「!ハルマ君待っ―――」
だが、幸果や浩二の驚く表情を見て、ハルマはル・ビートを探しにはぴぱれから飛び出して行くのだった……。
◇
一方、ビターガヴを撃破した絆斗は、戦闘直後に起こった身体の異変を調べてもらうために、酸賀の研究室に訪れていた。
「……どうだ?」
検査を終えたのか、服を着ながら絆斗は酸賀にそう尋ねる。
「うーん……黒いチョコが想定以上に身体に負担をかけてるみたいだねー……今も痛む?」
「いや……」
「戦闘中は?」
「まったく。むしろ調子いいくらいだ」
「……」
絆斗がそう答えると、酸賀は少しの間何かを考えた後……
「……そんじゃ、一旦回収して調整してみますか。その間悪いんだけど、今まで通りショウマ君から貰ったやつで変身して」
酸賀はそう言い、絆斗にチョコドンゴチゾウを渡そうとしたが……
「……まだ使う」
絆斗はそれを受け取らず、一度渡したチョコルドゴチゾウを持つ。
「……いや、負担少ないのも欲しいけど」
そう頼む絆斗に対し……
「……分かった。やってみましょ」
酸賀は頷きながら、今よりも負担の掛からないゴチゾウを作ることを承諾するのだった……。
◇
「……ただいま」
ビターガヴを逃がしたショウマは、フラフラになりながらも何とかはぴぱれへと帰って来ていた。
「おかえり―――って、ウマショーフラフラじゃん!?早く座って!」
「ありがとう……ごめん、また俺の偽物が暴れてて……」
謝りながら椅子に座るショウマに対し……
「はいこれ。食べな!」
幸果はすぐさまアイスを渡した。
「!ありがとう……いただきます」
未だに体調が良くならないショウマを見て……
「……ハンティーに連絡する?」
幸果は絆斗に助けを求めるかを訊いた……が、
「……それは、大丈夫……あっ、カブトダンシはどうなった?」
ショウマはまだ絆斗に会うのが気まずいのか、幸果の提案を断りカブトダンシのことに話題を変えた。
「やっぱりグラニュートだった。浩二君はハルマ君が守ってくれたんだけど……」
「?何かあったの?」
幸果の複雑そうな表情を見て、ショウマはそう訊いた。
「カブトダンシは元々、浩二君が作ったもので、それをグラニュートが乗っ取ってたんだって」
「!それでファンの人たちを誘い出してたのか……」
「浩二君、どうしてもチャンネルを取り返したいらしくて……でもハルマ君は危険だからって、浩二君を止めたの」
幸果はショウマに、ハルマと浩二の間にあったことを話していく。
「ハルマ君は浩二君の安全を考えて止めたと思うんだけど……浩二君、それを諦めろって言っているのと思っちゃったらしくて………一旦落ち着かせようとしたんだけど、その前に浩二君がハルマ君の地雷踏んじゃって……」
「地雷……?」
「うん……『何も失ったことのないやつに何が分かる』みたいなこと言って……そしたらハルマ君、珍しく感情的になっちゃって……」
「!そっか……ハルマは多分、お父さんとお母さんのことを……」
ショウマはそう言い、少し心配そうな表情を浮かべた。
「!そういえば2人は?」
「ハルマ君は、怪我もしてたのに1人でグラニュート探しに行っちゃったし……その後、浩二君も1人で飛び出して行っちゃったんだ。ウチは追いかけたんだけど……見失った」
それを聞いたショウマは……
「みんな!ハルマと浩二君のこと探してくれる?」
『!』
ゴチゾウたちを呼ぶと、ハルマと浩二を探すように頼んだ。ゴチゾウたちはそれを聞き、2人を探しに行くのだった……。
◇
はぴぱれから飛び出した後、ハルマは1人でル・ビートのことを探し回っていた。
「っ……さっさと見つけ出さないと―――」
すると……
「ハルマ!」
背後から、ショウマと幸果が駆け寄ってきたのだ。
「!2人とも……何でここに?」
「ゴチゾウちゃんが教えてくれたの」
『!』
幸果の手のひらの上で、ポッピングミゴチゾウは『えっへん!』と言っているかのように自慢げにしていた。
「……」
「無理しない方がいいよ。それに今のハルマ、いつもより様子が―――」
「無理してない……怪我くらい別に平気だよ」
ショウマが心配してくれているのに対し、ハルマは素っ気なくそう返した。
「それにあいつは父さんを馬鹿にした……必ず、僕が倒す。それにエスコルも―――」
ハルマはそう言い、ル・ビートを探しに戻ろうとしたが……
「待って!」
「……何?」
「業務命令です!グラニュートを探すよりも、まず先に浩二君のところに行くこと!」
幸果がそれを止めたのだ。
「……何で?」
「何でって、お試しだけどハルマ君は今日ウチのバイトだし」
「それは分かってるよ。そうじゃなくて―――」
「ウチさ、みんなのこと幸せにしたくて何でも屋やってるんだ。浩二君の依頼はまだ終わってないし、依頼人の安全確保が先。それにグラニュートを倒したとしても、ハルマ君と浩二君は気まずいままで、2人とも幸せじゃないよ」
「幸せじゃない……?何で僕も?」
幸果の言葉を聞き、ハルマは思わず疑問を覚えてそう訊き返した。
「まだ短い付き合いだけどさ、ウチはハルマ君には幸せになって欲しいと思ってるんだ。今まで辛い思いしてきた分だけ―――ううん、それ以上に。もちろん、ウマショーにもね」
「!幸果さん……」
「……」
「いろんな経験をして欲しいし、友達だって沢山作って欲しい……でもこのままじゃ、ハルマ君きっと後悔しちゃうと思うんだ」
そんな話をしていると……
『――!――!!』
「!浩二君見つけたって!」
浩二を探していたドーマルゴチゾウが、ショウマたちのところへとやって来たのだ。すると……
「僕が行く」
「「ハルマ(君)?」」
ハルマはショウマの手のひらの上に乗ったドーマルゴチゾウを掴み……
「依頼は必ず成功させる……何処にいるか教えて」
『!』
案内を頼むと、浩二がいる場所に向かうのだった……。
◇
「何?ヴラムを見つけた?」
エスコルのおかげで撤退したル・ビートは、人気のない場所でランゴのエージェントにヴラムを見つけたことを報告していた。
「あぁ……流石は元処刑人だ。ただ事じゃない強さだった……そこで、少しだけ手助けをして貰えないかと」
「……居所は?」
「おびき出す手段ならある……幾らでも。それに、エスコルのおかげで奴も手負いだと聞く……チャンスは今しかないだろう?」
ル・ビートは、エスコルによってダメージを負っているハルマをエージェントの協力を得て倒すつもりのようだ。
「……分かった」
エージェントはル・ビートの提案を飲み、この場を去ろうとしたが……
「手伝ったからって、報酬は減らさないでくれよ?」
「……それは結果次第だ」
ル・ビートに対し、そう口にするのだった……。
読んでくださりありがとうございます。
次回でカブトダンシ関連の話は書き切りたいと思います。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いいたします。