それでは、どうぞご覧ください。
絆斗が研究室から去った後、酸賀は絆斗が使う新たなゴチゾウを作るために、様々な菓子の入った箱を漁っていた。
「絆斗君に合わせるなら……やっぱりチョコ関連かなー」
すると……
「!おっと……」
入ろうとした扉に、ストマック社のマークが浮かび上がった。そして……
「こんにちは酸賀さん」
その扉から、ニエルブが出てきたのだ。
「何ニエルブ君久し振りじゃない?」
「……ちょっと後処理に忙しくしていたもので」
「あー……もしかしてハルマ君の件?あの子がヴラムだったもんねー」
「ま、そんなこともあるよ……それは?」
ニエルブは酸賀の持っている箱に入っている菓子について訊いた。
「ヴァレンの強化を図っててねー……ニエルブ君に倣って、俺も人造眷属の研究始めたんだよね」
「ふーん……随分彼がお気に入りだね?僕は彼に、余程魅力を感じないけど」
「なに?ニエルブ君はやっぱりハルマ君がお気に入りな感じ?」
「否定はしないよ。何せ、わざわざ能力を安定させるための改造までしたからね」
酸賀の問いに対し、ニエルブはそう答えた。
「でもね、俺にとっちゃ救世主―――になるかもしれない、貴重な人間」
「へぇ……」
ニエルブはそう呟くと、PCの画面に映し出されている何かの細胞の画像に目を向けるのだった……。
◇
浩二はベンチに座り、プリンを食べていた。そこに……
「見つけた」
「あっ……」
ハルマがやってきて、浩二の座っている隣にあるベンチに座った。すると……
「……ごめん」
「え……?」
「あんなこと言って……」
浩二がハルマに、はぴぱれでのことを謝ってきたのだ。
「それなら気にしてない……僕の方も、いきなり悪かった」
「!」
「それよりも、1人で乗り込んでなくて良かった」
ハルマはそう言い、浩二が無事であることを安堵するような言葉をかけた。その後、ハルマは浩二の横に置いてあるスイーツの紙袋を見て……
「……スイーツ、本当に好きなんだね?」
浩二にそう尋ねる。
「うん……だからみんなに紹介したくて、配信を始めたんだ。そしたらみんな凄い喜んでくれて……それが嬉しくて」
「……」
「あのチャンネルは、そういう嬉しい場所……大切な場所なんだ。でも……もう諦めるしかないのかな……」
浩二がそう言って顔を俯かせると……
「諦めろ、なんて言った覚えはないよ」
「え?」
ハルマはそう口にしたのだ。
「浩二の大切なものは無くなっていない。まだ、取り返せる」
「!ハルマ……」
「それに、大事なものを奪われた上に侮辱までされる気持ち……よく分かるから」
「……」
すると……
「はい」
「……?」
「あげるよ」
浩二は袋の中から取り出した濃厚純プリンをハルマに差し出した。
「……でもそれ、好物なんでしょ?」
「嬉しかったから……あんな風に言ってくれて」
そんな浩二の言葉を聞き……
『ハルマ、はい』
『お母さんありがとう!』
『どうだ?』
『うん、美味しいよお父さん!』
ハルマは、昔家族で過ごした時のことを思い出していた。
「……」
「……ハルマ?」
「!いや、貰うよ」
プリンを受け取ったハルマは、スプーンで掬い一口食べた。
「……うん、美味しい」
「!良かった……」
プリンがハルマの口にあったことに対し、浩二は安堵しながら自身もプリンを食べ進めた。それから少しして……
「ん?」
ガヴフォンが鳴り、ハルマはプリンを一旦置いて電話に出た。
『!もしもしハルマ?』
「どうしたの?」
『カブトダンシ見つかったって』
電話の相手はショウマで、どうやらカブトダンシが再びファンを招くつもりらしい。そのことを聞いたハルマは……
「……多分、狙いは僕だろうね」
「!」
自身が狙われていることを察し、隣でその言葉を聞いた浩二は驚いた表情をしていた。
『どうするの?』
ショウマはそう訊いたが……
「むしろ好都合……乗ってやる」
ハルマはあえて罠に乗ることに決めた後、ショウマとの通話を切った。
「ハルマ、今のって―――」
「偽物が見つかった……というよりは、ファンミーティング?をするらしいから、そこに乗り込むことにした」
「!?」
浩二はハルマの発言に驚いていたが……
「大丈夫。何でも屋に任せておいて」
ハルマはプリンを食べながら、浩二にそう言ったのだ。何故か落ち着いているハルマを見て……
「ハルマ、君って一体……?」
思わず浩二は、そう呟くのだった……。
◇
そうして迎えたカブトダンシのファンミーティング当日、その会場には選ばれた10人のファンが極上プリンに舌鼓を打っていた。すると……
『みんな、良く集まってくれたね。お礼に……最高の闇菓子にしてあげよう」
ル・ビートはそう言い、集まったファンたちをヒトプレスにしてしまったのだ。その後ゆっくりと、ル・ビートはヒトプレスを拾おうとしたが……
「どうだい?美味しかっ―――」
「そこまでだ」
そこに丁度、ハルマが現れたのだ。
「嬉しいよ……君を待ってたんだ」
「さっさとヒトプレスを渡してもらおうか。それと、カブトダンシも」
ハルマはそう言ったが……
「それは出来ない相談だ」
ル・ビートの言葉と同時に、ランゴのエージェントが2体現れ……
『フッ!』
『ハァッ!』
ハルマに背後から襲いかかった。だがハルマは、エージェントのことを見ることなく、最小限の動きで避けていく。その後も、エージェントやル・ビートが攻撃を仕掛けるが……
「ヴラスタムギア」
ハルマはそれを避けながら、ヴラスタムギアを腰にセットし……
「カップオン!」
続けてゴチゾウをギアにセットした。
『フッ!』
その直後、エージェントがハルマに殴りかかるが……
『っ!?』
ハルマはそれを左手で受け止め……
「……変身」
「プディングヴラムシステム!」
右手でレバーを倒してヴラムへと変身し、ル・ビートとエージェントたちに向かって駆け出して行く。
「フッ!」
『『ぐっ!?』』
「ハァッ!」
「ぐあっ!?」
ヴラムは鎌モードのブレイカーで攻撃を加えると、敵たちを次々と外に吹き飛ばしていく。その後、ヴラムも外へ出て行き、ル・ビートとエージェントたちを追っていく。
『『!』』
エージェントたちは銃を撃つが、ヴラムはそれをブレイカーを振るうことで弾いていく。そうして距離を詰めたヴラムに、今度はル・ビートが自身の角を巨大化させて攻撃を仕掛けてきたのだ。それに対し……
「っ!」
ヴラムはその攻撃を自身の能力の速さを活かして避けると、一瞬でル・ビートたちの背後に回り……
「ハァッ!!」
『『「ぐあっ!?」』』
ブレイカーを振るい、まとめてダメージを与えたのだ。
「っ……お前は手負いのはずだろう!?何故僕らを圧倒しているんだ!?」
自身とエージェントたちが押されている状況に、ル・ビートは思わずそう口にした。
「僕は君を倒して闇菓子を手に入れる―――そうだ!勝ち組になるんだよ!愚かで臆病なお前の父親と違ってね!」
「お前……!!」
ル・ビートは前と同じくオースのことを侮辱し、ハルマは怒りを露にしながら駆け出していく。そこに……
「!いた……!」
遅れてショウマが到着したのだ。そして……
『いくベェ!』
「アイス!」
「EATアイス!EATアイス!」
「変身!」
「ブリザードソルベ!ヒエヒエ!」
ブリザードソルベへと変身した。ガヴはヴラムの戦っている場所へ駆け出そうとしたが……
「!これって……!」
その右手に、ケーキングフォームの武器であるガヴホイッピアが出現したのだ。
「ホイップパーティー!」
「!」
ガヴがホイッピアのホイップッシュを押すと、ホイップ兵の前垂れがアイスクリームのコーンの柄をしているアイスクリーム兵が2体出現したのだ。
「ソフトクリームみたい……!そうか!アイスケーキを食べたからか……!」
ガヴとソフトクリーム兵はそれぞれの武器を構えると、今度こそヴラムの戦っている場所へと駆け出した。
「今度は溶ける前に、こいつで決着を付ける!」
「!ショウマ兄!」
「遅れてごめん!ハァッ!」
ガヴはホイッピアを振るい、近くにいるエージェントに攻撃を加えた。ヴラムもガヴと背中合わせになりながら、ブレイカーを振るいル・ビートやエージェントにダメージを与えていく。その後、ヴラムはル・ビート、ガヴはエージェントたちと分かれるように対峙した。
「くっ!ハァッ!」
攻撃を受けたル・ビートは、ヴラムに向かっていくが……
「っ!」
ヴラムはブレイカーを弓モードに変形させると、背を向けたまま矢を放ち、それを命中させたのだ。そして……
「父さんは確かにストマック社にいた……でも、そんな中で間違いを正そうとしていた……お前はどうなんだ?」
ハルマはル・ビートにそう問いかけたが……
「ハハハハハ!間違いなどどこにある?俺たちにとって、ストマック社ほどありがたい存在はない!」
「あくまでも闇菓子と……ストマック社とともにあるんだね?」
「あぁそうだ!死んでも止めるつもりはない!」
その返答を聞いたヴラムは
「なら……ストマック社と一緒に消えろ」
「カップオン!」
「ゼリーヴラムシステム!」
そう言ってゼリーカスタムへと姿を変えた。さらに……
「フッ!」
「カップREADY!」
「インビジブルゼリー!」
ヴラムはル・ビートの攻撃を背を向けたまま受け止めると、レバーを倒して姿を消した。
「!何処に―――ぐっ!?」
ル・ビートはヴラムを探していたが、次々と透明になったヴラムに攻撃されていく。
「ゼリーOVER!」
「っ!」
「インビジブルゼリー!」
姿を現したヴラムは、ゼリーカスタムの副作用がありながらも、再びレバーを倒して透明化した。
「ぐっ!?」
ヴラムはル・ビートの背中を攻撃し、それによってル・ビートは地面に倒れ込む。そして姿を現したヴラムは……
「ゼリーOVER!」
「フッ!」
「なっ!?」
「ハァッ!」
ル・ビートの首元を斬り付けて空中に浮かせると、そのまま連続して攻撃を加えていく。
「インビジブルゼリー!」
さらに透明になったヴラムは、ル・ビートから少し離れた場所に行き……
「ゼリーOVER!」
「ハァッ!!」
「ヴラムスラッシュ!」
「ぐあっ!?」
一気に加速して攻撃を加えてきたのだ。その一方……
「フッ!」
『ぐっ!?』
ガヴやアイスクリーム兵たちも、氷のフィールドの上でエージェント相手に有利に戦いを進めていた。
「カッチーン!」
「ハァッ!」
ガヴはゴチゾウのブレードを回してから冷気を吐き出すと、氷の坂を形成する。そこをアイスクリーム兵が滑って勢いをつけ、エージェントたちに攻撃を仕掛けていった。さらに、ガヴがもう一度ブレードを回すと……
「アタリ!」
「!当たりだ―――って!」
アイスクリーム兵の内の1体が巨大化し、エージェントたちを踏みつけて攻撃を仕掛けていた。もう1体のアイスクリーム兵はというと……
『――!―――!!』
『……ふん』
逆に小さくなってしまっており、必死にエージェントの足に攻撃していたが、蹴り飛ばされてしまっていた。
「!大丈夫?」
そこに、ガヴと元の大きさになったアイスクリーム兵が駆け寄ってきた。それと同時に、蹴り飛ばされたアイスクリーム兵も、元の大きさへと戻る。そして……
「よし……!」
「ソルベ!」
ガヴはゴチゾウをホイッピアにタッチさせた。すると……
「デコレーション!」
「うわっ!」
ガヴだけでは支えきれないほどに、巨大な氷のホイッピアが形成された。それを見たソフトクリーム兵2体が両側からガヴを支え……
「ハァッ!!」
『『ぐああああああ!?』』
そのまま振り下ろし、エージェント2体を一刀両断して倒したのだ。
「!?ちっ……これはまずいね……!」
それを見たル・ビートは不利を悟ったのか、羽を広げて飛び上がり、この場からの逃走を図る……が、
「ここは退散―――」
「させると思う?」
「!?」
ヴラムは透明になったままル・ビートの上に乗っており、そのまま角を切り落とした。
「つ、角が!?」
「ゼリーOVER!」
その直後、ヴラムは姿を現し……
「セット!」
「浩二の大切なものを……返せ!」
「ヴラムスラッシュ!」
「ぐああああああ!?」
ル・ビートにブレイカーを振り下ろし、空中で撃破したのだった……。
◇
カブトダンシのチャンネルを取り戻した数日後……
「幸果さん!浩二君の配信、もうすぐ始まるよ!」
「浩二君じゃなくて、カブトダンシね」
はぴぱれにいる3人は、カブトダンシの配信が始まるのを待っていた。
「あれ?ハルマそれ、プリン?」
「バイト代で買ったんだって。浩二君おすすめのプリン」
「へぇ……!」
そんなやり取りをしていると……
『さぁ、始まるよ!カブトダンシのSweets Channel!今日のスイーツは、濃厚純プリンさ!』
カブトダンシの配信が始まり、3人は画面に目をやった。そうして配信を見ていると……
「ねぇ、ハルマ」
「ん?」
「はぴぱれの手伝いしてみて、どうだった?」
ショウマがハルマにそう尋ねてきたのだ。
「……今までは、命を奪うことでしか役に立てなかった……でも、それ以外のことで役に立てた」
「ハルマ君……」
「それに、こっちの世界の方がずっといい……あっちと違って、友達もいるし」
ハルマはそう言い、プリンを口に入れる。ハルマの言った友達というのは、もちろんうたたちのことも指すが、浩二のことも含まれていた。実は、依頼を達成した後……
『……ねぇ、ハルマってもしかして―――』
どうやら浩二は、ハルマが仮面ライダーであることを察していたようで、直接そう訊いてきたのだ。
『想像通りだよ』
『あ、あっさり認めるんだ……』
『浩二は自分がカブトダンシって秘密を明かしてくれた……だからこっちも秘密を言わないとフェアじゃない。それだけだよ』
ハルマは浩二に自身の正体を告げた……が、
『その代わり』
『?』
『僕は浩二の秘密を言わない。だから浩二も言わないでよ?』
『!あぁ、もちろんだよ』
互いの秘密を漏らさないように、念を押してそう言った。すると……
『あのさ!』
『?』
『僕と友達にならない?』
浩二がハルマにそう提案したのだ。
『っ……それは―――』
ハルマは自分と関わることで、戦うことのできない浩二を危険に晒すことを避けるために、断ろうとしたが……
『いろんな経験をして欲しいし、友達だって沢山作って欲しい―――』
(友達、か……)
幸果の言葉を思い出し……
『いや、分かった。よろしく、浩二』
『!こっちこそよろしくね、ハルマ』
という経緯で、浩二と友達になっていたのだ。ちなみに、連絡先も既に交換済のようだ。そんなことを思い出しながら、ハルマは椅子に座った。
「それ美味しそう!俺にもちょうだい!」
「ウマショー今体調悪いでしょ?ウチが食べる!」
「えー!?俺も食べたい!」
ショウマと幸果はそう言っていたが……
「そう言うと思って、2人の分も買ってある」
ハルマはこうなることも見越して、2人の分もプリンも買ってきていたのだ。
「マジで!?ありがとう!」
「やったー!」
それを聞いた2人は喜びの声を上げた後、プリンに舌鼓を打つのだった……。
◇
酸賀の研究室から去った絆斗は、とある公園を歩いていた……が、
「ぐっ!?」
痛みを感じたのか胸を抑え、近くにあった柱に寄り掛かった。
「っ……また……!」
絆斗はベンチに座ると……
「こいつを使っている間は、マシになる……はず……」
「チョコ!」
ヴァレンバスターにチョコルドゴチゾウをセットした。
「Setチョコ!Setチョコ!」
「ダメだ……余計に、悪化してやがる……!」
だが痛みは増す一方のようで、絆斗は酸賀のところに戻ることにした……その時、
「あ、あの!大丈夫、ですか?」
「え……?」
絆斗の前に、偶然通りかかった学校帰りのうた、なな、こころの3人が駆け寄ってきたのだ。すると、絆斗の顔を見て……
「!もしかして、あなたはハルマ君の……」
ななは、ハルマとショウマがグロッタと戦った後に見た人物と同じだということに気付き、そう尋ねたのだ。
「!何であいつのこと知って……?」
絆斗は目の前の少女がハルマのことを知っていることに驚き、思わずそう訊いた。
「今はそれよりも病院に―――」
「救急車呼びましょうか?」
うたとこころがそう言うが……
「!それは、ダメだ……!」
『えっ?』
救急車を呼ぼうとしたこころであったが、絆斗にそれを止められてしまう。
「で、でも―――」
うたはベンチから立ち上がり、歩き出そうとする絆斗を止めようとしたが……
「俺は、大丈夫だ……」
絆斗はそう言うと、酸賀の研究室に向かっていく。その後、3人は絆斗の背中を見ながら……
「ど、どうしましょう……」
「あの人は大丈夫って言ってたけど……」
すると……
「ついて行ってみるプリ!」
『え!?』
プリルンはそう言い、絆斗が歩いて行った方に飛んで行ってしまう。
「プリルン!?」
「とにかく追いかけましょう!それに、あのまま放っておくことも出来ませんし……」
「そ、そうだね」
それを見た3人も、プリルンに続いて後を追いかけていく。そうして辿り着いたのは……
「ここは……?」
酸賀の研究室のある建物の前だった……。
◇
「はぁ……はぁ……!」
絆斗は何とか、酸賀の研究室へと戻ってくることができた。
「何だか怪しいにおいがするプリ……」
その後ろからは、気付かれないようにプリルンもついてきていた。そして、階段を降りていったのだが、その先には……
「みてみて!眷属作れたよ!」
「これ、チョコチップクッキー!」
「……は?」
奥にある扉から、酸賀とダークショウマ2人が出てくるという光景が広がっており……絆斗はそれを見て、動揺することしか出来なくなっていた……。
「た、大変プリ……!!」
そんな絆斗の後ろからプリルンも、その光景を隠れて覗いているのだった……。
読んでくださりありがとうございます。
今回でル・ビートとの決着が付き、浩二とは友達になりました……ハルマにとって、何気に初めての男友達です。そして、ついに酸賀の真実が……?
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いいたします。