ソシャゲ世界って結局中堅勢力が一番良い空気吸ってる   作:しゅないだー

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ランダムQ&Aでーす!

Q.武力のみで他の勢力への抑止力になるようなキャラっているの?

A.まず百花ですね。シンプルに強い。
他にも一個人で「あいつ面倒臭いからマジでやめとこう」みたいな枠はいますけど、基本的には個人単位だとやはり異能省やら水生会が本気で潰そうとするとどうにもなりません。
それをしないのはリスクとリターンが見合わないから、仮に潰せても他の勢力に漁夫の利を差し出してしまうから。
今出てるキャラだと百花と同格なのは自警団の广ですね。



Q.遺物って餅武器もある感じ?

A.一般的なソシャゲのそれをイメージしてもらって構わないです。
基本的にはそのキャラの持ち味を強化しつつ、遺物の成り立ちからキャラの掘り下げまでしてくれる優れ物。
強化系統の異能力者が実装キャラとしては多いので、百花の餅武器はお察しの通りアタッカーにとりあえず着けとけって感じの性能です。











#14「伊勢屋春陽」

 

 

 

 伊勢屋春陽にとって家族は、両親というものはいつまでも側にいる筈のものだった。

 "いつか"はお別れをしなければならない時が来る事は、何となく分かっているけれど。

 それはきっと自分が誰かを好きになって、結婚して、子供を持って、そんな人並みの幸せの先にある遠い"いつか"の事だと。

 

 

 

 伊勢屋百花、20歳。

 

 伊勢屋彩葉、16歳。

 

 伊勢屋春陽、14歳。

 

 

 惜しみない愛情を注いでくれる両親と、大好きな姉達と、ずっとずっと一緒にいられるのだと信じて疑わなかった。

 

 

 そんなまだ蝉が鳴き止まない晩夏の頃、隕石は落ちてきた。

 

 

 

 

 

 

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 それは最初、彼女にとってテレビのニュースの中の出来事だった。

 春陽達が暮らしていたのは現在の"都市"近くの地域だった事もあり、隕石群衝突の被害を直接受ける事はなかった。

 最寄りのプラントだって生きていたし、まだその時点では水も電気も止まっていなかったから。

 

 他の県では町が消し飛んだり、多数の死傷者が出ている事は知っていたけれど。

 それでも春陽にとって、それはあくまでも画面の中の他人事だった。

 

 

 

 

 

 

 

「彩葉〜、お姉ちゃんの調子どう?」

「……良くないねぇ」

 

 そう姉が顔を曇らせたのを見て、春陽の眉も同じように下がる。それを受けて彩葉は安心させるように笑顔を作った。まるで何も心配する事はない、という風に。

 

「それより春ちゃんは、なーんで私の事はお姉ちゃんって呼んでくれないのかなぁ」

「だってあたしの方が彩葉より強いもん。しゅっしゅっ」

 

 そうじゃれてくる妹を、彩葉は愛おしそうに抱き締める。

 

「なるほどねぇ、だから百花ちゃんには尻尾振って服従してる訳だ」

「長い物には巻かれろって言うもんね〜」

 

 春陽は姉二人をとても尊敬していた。

 百花はその強さを、彩葉は自分達のように強くはないもののいつも優しく接してくれる事を。

 

「お姉ちゃん、本当に熱下がらないならさ。病院連れてった方が良いんじゃない?」

「でもこの近くの病院、どこも満員だからねぇ。それに……」

 

 隕石群の衝突から数日。

 原因不明の体調不良、激しい発熱に苦しむ人々が急激に増えている。

 

 ストレスだと言う者もいれば、冗談めかして隕石に何かそういうウイルスが付いてたんじゃないかと言う者もいた。

 いずれにせよ原因究明に乗り出そうにも隕石群衝突による交通の分断、そして肝心の人材が体調不良に倒れ、復興への目処すら経っていない。

 

 

 そんな状況の中で、伊勢屋は人々の為に動き続けた。

 

 

 伊勢屋が元々営んでいた古武術道場は、他県からも入門希望者がその扉を叩くほど各地に名が知れ渡っており、尚且つ春陽達の両親は悲しいくらいに善良だった。

 隕石の被害を重篤に受けた地域では、直接的な破壊以外にも生き残った人間が暴徒と化す二次被害が深刻視されており、そこから逃げ出す人も多かったと言われている。

 それがウイルスの蔓延を早める一助だと、露も知らずに。

 

 

 兎にも角にも隕石被害で住む家を無くした生徒やその家族が道場に助けを求めてきた時、それを断る選択肢は彼らの中にはなかった。

 そして生徒達を受け入れた両親は、食事や宿泊などその対応に追われていて。

 春陽にはそれが誇らしくも、不満でもあった。

 

 

 彩葉と別れた後に春陽は父の部屋をノックし、返事が返ってくる前にその扉を開けた。

 疲れてうたた寝していたのか、授業中に急に起こされた生徒のように父の背筋が伸びるのを見てけらけらと笑う。

 

「春陽、ノックするなら返事した後に開けなさい」

「ごめんごめんって、お父さん。あたしちょーっとだけ……病院行ってきていい? 市販の熱冷まし、お姉ちゃんに効いてないみたいだし」

 

 自分や彩葉とは違い6つ歳の離れた姉だけが、何故か高熱に苦しんでいる事に春陽は心を痛めていた。それと同時に、皆を助けている両親がもっと「皆じゃなくて、お姉ちゃん1人の事を見てくれたらいいのに」とも思う程に。

 

「お姉ちゃんにはまだ立ち合いで勝てないけど、でもあたしが一番逃げ足速いし。外の治安が悪いって言ってもこの辺は全然変わんないじゃん」

 

 お父さん達が忙しいなら、あたしがやる。

 そう頬を膨らませる娘の頭を撫でて、彼女の父は努めて誠実であろうとした。

 

「……百花の事も心配だけどな、お父さんは春陽の事だって同じくらい大切なんだ。何かあってほしくない」

 

 幼子に言い聞かせるようなその優しい口調が、妙に春陽の癪に障った。

 

「お父さんのバーカ! お姉ちゃんに何かあったらどうするの、もう知らない!」

 

 そんな癇癪をぶつけて春陽は部屋を飛び出す。後ろから呼び止める声に耳を貸す事もなく。

 

 

 

 

 

「春陽。病院行くつもりなんでしょ」

 

 その晩、こっそりと暗い玄関で靴を履き替えている所に春陽はそう声を掛けられた。

 

「いや、違……ってなんだ、お母さんか」

 

 心配性な父とは反対に、放任主義の母。タイプは真逆ではあるけれど、春陽はどちらの事も同じように愛していた。

 

「春陽の気持ちも分かるから私は止めないけど。お父さん、本当に春陽の事が大好きなんだからあんな事言ったら可哀想よ」

「……帰ったら謝るもん」

 

 素直になれないお年頃か、と呆れながらも笑う母に「からかわないでよ」と春陽は言い返す。

 

「無理はしない事。何かあったらすぐ逃げる事。まあでも大丈夫よ、貴女も百花も彩葉も、私達の自慢の娘なんだから」

 

 そう送り出してくれた母が、春陽が見た最後の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 ───────────────────────────────────

 

 

 その夜の始まりは、やけに静かだった。

 この辺りの地域は比較的いつもと変わらない生活をしていた筈で、穏やかにも思える静寂が却って不気味だった。

 

 でも下手な男なんかよりあたし全然強いし、いざとなったら蹴り飛ばしてやる。

 そう息巻いて、自分を奮い立たせる。あたしがお姉ちゃんを助けるんだ、と。

 

 違和感こそありつつも、道中何事もなく目的地へ辿り着く。

 ただこの数日はいつも煌々と明かりが点っていた筈の病院は、何故か真っ暗で。

 

「すみませーん、誰かいませんか?」

 

 そう声をかけながら夜間通用口へ回る。

 そこでまるで強盗にでも入られたかのように荒れ果てた入り口を見て、春陽は息を呑んだ。

 明らかに何か異常が起きている事は分かったが、ここで意地を張らずに帰れるほど彼女はまだ大人ではなかった。

 

 念の為、靴のまま院内へ足を踏み入れる。

 薄暗い廊下を歩いていった先に、広々とした待合室には微かに明かりが点いているのが見えた。

 

 良かった、人がいた。

 そう小走りで部屋に入ろうとした瞬間、目に映ったのは。

 

 

 体調不良を訴えていたと思しき患者達が、血走った目で医者や他の患者達を()()()()()()

 

 

 まだ生きている筈の人間の腕を、付け根から粗末な刃で挽き切り落とそうとする者。まるで太鼓のように、鈍器で人の頭蓋を殴り続ける者。

 誰しもが玩具で遊ぶ幼子のように、心底楽しそうに。

 複数人の男に群がられた女性が絞り出す啜り泣くような声が、止まったBGMの代わりに院内を木霊していた。

 

 

 異能を齎すウイルスに適応できなかった人間は、最後にその欲望をぶちまけるかのように本能のままに動いて死ぬ。

 それを春陽が知ったのはずっと後の事だったが。

 

 

 食欲、嗜虐欲、性欲。

 目に付いた物を貪り食らい、これまでに築き上げてきた物を全て壊し、ただ一時の快楽に浸る。

 それは人間と呼ぶには到底似つかわしくなく、まるで獣の群れを思わせた。

 

 地獄があるとするならば、それはこんな景色をしているのかもしれない。

 熱に浮かされたようにぼーっとする頭で春陽はそんな事を考えていた。

 

 幸いにも彼らは自分達の遊び(・・)に夢中で、自分の存在に気が付いていない。

 叫び出したくなる気持ちと吐き気を堪えながら、ゆっくりと入り口まで引き返す。

 

 あと少しで病院を出られる、そんな時。先程まで誰もいなかった筈の扉の近くに男が1人立っていた。

 離れた所からでも漂ってくる血の臭い。どう考えてもまともではなかった。 

 

「……女?」

 

 噛み切れなかったのであろう肉の筋を赤黒い血と共に口から垂らしながら、男がそう呟く。それが何の肉なのかは考えては駄目な気がした。

 その舐め回すような視線に、春陽は背中へ氷柱を差し込まれたような心持ちがした。

 

「可愛いねえ、お嬢ちゃん。怖くないから、楽しい事しようねえ。楽しくて、気持ち良くて」

 

 そう手を伸ばしてくる男に対して、恐怖で春陽の身体は動かなかった。

 普段ならこんな奴、やっつけてやるのに。自分が酷く脆い事を知った。

 

「そこの女、伏せろ!」

 

 その怒声が彼女の硬直を解く。

 言われるがまま、春陽が地面に倒れ込んだ瞬間。

 稲妻か何かのように飛び込んできた少年が、すれ違いざまに男の頭部を蹴り飛ばす。

 蹴りが男の頭部へ命中した途端、花火のような閃光と共にその脳漿が爆ぜ散った。

 

 助かった、と思うと同時に次は自分がそうなる番なのかもしれないと春陽の身体が震え出す。

 けれど少年は春陽の顔を眺めると、鬱陶しそうに顎で出口を指し示した。

 

「おい、さっさと行けって。もうここにまともな人間いねえから」

 

 彼の手足からはぱちぱちと何かが爆ぜるような音が鳴り続けていた。

 礼を言う事すら覚束なくて、ふらつく足で立ち上がると出口へ向けて歩く。

 後ろから断続的に聞こえてくる爆発音は、その後も院内で戦闘が続いている事を示していた。

 

 

 

 各地で多発的に起こったその惨劇は、ウイルスの不適合者が死に絶えるまで続いた。その間に僅かに残っていたインフラは殆ど失われ、日本という国は実質的に終焉を迎える。

 そしてそれは、これまで現代日本に培われてきた倫理観を数日で形無き程に破壊するには十分だった。

 適応できない人間はただ玩具のように扱われ、その死体を晒す他ない。

 地の底を舐めるような数日を生き抜いた者だけが、次の時代へ進む権利を得た。

 

 

 ある者は、家の中でただ嵐が過ぎ去るのをじっと待って。

 ある者は、息の続く限りその足で逃げ続けて。

 そしてある者は、自らに与えられた異能を振るって。

 

 

 

 

 

 ─────────────────────────────────

 

 

 

 病院の外を出てすぐ、異変に気付く。

 あちこちで立ち上る煙と人の叫び声が、何かの終わりを告げるように街を満たしている。込み上げてくる不安感にいても立ってもいられなくて、春陽は息を切らしながらもただ走った。

 

 その途中で嫌でも見せ付けられる、1つの時代が終わる様に目を背けながら。

 

 家にいる筈の家族の事を思って、ただひたすらに走り続けて辿り着いた先。

 道場の門前からでも漂ってくる鉄錆びた臭いに顔を顰める。血だ。

 

「……なんなの、これ」

 

 地面に転がっているのは、紛れもなく人の死体だった。何か鈍器のような物で強く殴られたのか顔面が陥没している遺体。鋭利な物で切り開かれ、刺し貫かれたと思しき遺体。

 どれもこれも見覚えのある、生徒達のものだった。

 

 たまらず夕食を吐き戻しながらも、それでも家族を探して春陽は歩みを止めなかった。落ちている遺体が家族の物でないか、1つずつ震えながら確かめつつ。

 

 道場の奥で、夥しい死体の山の側に座り込んでいる姉達の姿をようやく見つけた時、春陽の瞳に涙が滲んだ。血に塗れてこそいるが、確かに生きている。

 

「春陽……? 貴女、どこに行ってたの。ずっと心配してた」

 

 疲れ切った顔でそう呟く百花の肩に飛び付いて顔を埋める。

 

「お姉ちゃん、熱は!? 怪我してない!? あのね、あたし薬もらってこようとしたんだけど」

 

 数日食事を取れていなかったからか、少し痩せた百花の拳は鮮血に染まっている。よく見てみれば百花が被っている血はどれも返り血のようだった。

 その隣には何故か服がはだけているものの、こちらも無傷の彩葉が座っている。しかしその右腕は蟷螂の鎌を思わせる異形へと形が変わっていて。

 実の妹である春陽すら一瞬近付く事を躊躇うような有様だった。

 

「彩葉で……いいんだよね? それ、どうしたの。痛くない?」

 

 彼女が力無く首を横に振ると、少しずつその腕は元の形を取り戻していく。ひとまず無事なようで春陽はほっと息を吐いた。

 

 早く逃げようと言おうとした瞬間、違和感に気付く。

 

「ねえ、お父さんお母さんは?」

 

 のろのろと百花は立ち上がると、すぐ側にあった毛布を取り除く。そこには並んで寝かされている両親の姿があった。

 冷たい床へ横たわった母に触れながら声を掛ける。その肌は、床と同じ冷たさをしていた。

 

「お母さん、起きてよ。あたし、お姉ちゃんの薬もらおうとして」

 

 両親の姿は記憶よりもずっと小さくなっていた。

 それもそのはずで、引き裂かれた母の四肢は無惨にも辺りにばら撒かれ、父の身体は腰の辺りで両断されていた。乾いた眼球に止まった蝿が忙しなく前脚を擦り合わせている。

 

「お姉、ちゃん。お母さん、起きないよ? お父さん、なんか半分になってるし、これドッキリ……ドッキリだよね」

 

 あはは、と可笑しくもないのに春陽の口から乾いた笑いが漏れ出す。

 

「もしかしてお父さん怒ってるの? あたしがバカなんて言って、勝手に病院に行ったから……それで怒って、こんな意地悪してるんでしょ」

 

 現実だと思えなかった。つい数時間前まで何でもないお喋りをして、お父さんには酷い事言っちゃって、あたしまだ謝れてないのに。

 そう春陽が頭を抱え込む。

 

「……間に合わなかった」

「え、なに、なんで、なんで、意味分かんない」

 

 限界だった。今はこれ以上、何を聞いても自分が壊れてしまうような気がした。

 

「避難してきていた生徒達がいたでしょう。彼らが突然……暴れ出した。だから、私達が処理した」

 

 春陽の脳裏に、病院で見た凄惨な光景が過ぎった。

 あれが、ここでも? 

 処理ってどういう意味? 

 

 そんな疑問が浮かんでは消えて。本当は全部分かっているのに。

 

 それきり黙り込む百花の肩を掴んで春陽は揺さぶる。

 

「なんで、なんでお父さん、お母さん、助けてくれなかったの」

 

 違う、と分かっていた。

 目の前の姉達がむざむざ両親を見殺しにするはずがない、と。

 きっとどうにもならなかったのだ、と。

 

 でも、それでも。

 

 誰かのせいにしないと心が押し潰されそうだった。

 自分の一番大切な人達が一番苦しんでいる時、側にいられなかった事実に。

 

 死ねばいい。

 お母さん達をこんな目に遭わせた奴らなんて皆死ねばいい。

 ああ、もう死んでるんだっけ。

 じゃあ誰が死ねばいいの? 

 お母さん達を助けられなかったのは? 

 お母さん達が苦しんでる時に、側にいられなかったのは? 

 

 もし、あたしが側にいたなら。どれだけ痛かったんだろう、どれだけ苦しかったんだろう。

 あたしが代わってあげられたなら。

 

 ああ、駄目だ。

 

 強烈に抱いた殺意がぐるぐると渦を巻いて、肺を押し潰すように、全部自分の背中を刺すように。

 

 お前が死ねば良かったのに、と頭の中で囁くのは春陽自身の声だった。

 

 息ができなくなって、視界が色褪せていく。

 あたしのせいじゃない、あたしはそこにいなかったもん。

 

「お姉ちゃん達のせい──」

 

 その言葉を言い切らんとした瞬間に、鋭い痛みが春陽の頬を走った。

 長姉に平手で打たれたのだと気付いて、途端にモノクロがかった視界に色が付き始める。

 

「春陽。今自分が何を言おうとしたか、分かっているの?」

 

 百花の顔に滲んでいたのは怒りではなく、深い悲しみだった。

 

「ちが、そうじゃ、なくて。あたし、あたし、なんで」

 

 彩葉が泣きそうな顔で「ごめんね」と一言呟いた時に、初めて理解した。

 自分がもう取り返しの付かない言葉を吐いてしまった事を。

 

 

 

 全部悪い夢であってほしかった。

 

「お母さん……起きて、起きてよ」

 

 そう春陽が母に縋り付こうとした次の瞬間、その身体は血溜まりに倒れ込んでいた。

 反対に先程まで彼女が立っていた場所に、母だった物がべちゃりと音を立てて落ちる。

 

 それが春陽にとって、初めての異能の発現だった。

 

 必着配達便(トランスポーター)、対象の位置を入れ替える異能。

 

 もしもあの日、私と入れ替えられたら、私が入れ替われたら。

 そんなどうしようもない願いは、最早届く事はないけれど。

 

 

 

 

 

 

 烏丸礼が知る由もない、読まれる事のなかったマテリアル。

 

 

 

 

 

 

 

 ─────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 烏丸礼と名乗る少年が伊勢屋を訪ねてきたのは、それから1年ほど経っての事だった。

 

 

「えー、妹さん1人は門限破りでもう1人は引きこもり!? 聞いてた話と違うんだけど、不良姉妹じゃないですか。やーばいっすね、この家」

「門限破りとはまた違うわ。春陽だって……仕事の時は出てきてくれるもの」

 

 そう言い淀む百花の口振りからして、姉妹の仲が良好ではない事は明らかだった。

 

「それで、お二人って俺から話し掛けたりしても大丈夫なんですか? 家庭の事情だから口出すな、って言われれば従いますけど」

 

 まだあどけなさの残る少年が、そう何でもないような調子で話す様子に百花は懐疑的な視線で答えた。

 

「……構わないわ、でも何があっても私は知らない。そもそも貴方に関わってメリットがあるとも思えないけれど」

 

 その言葉とは裏腹に、彼女の声色には動揺が滲む。

 今のこの状況が少しでも好転してほしい、そんな哀願にも似た祈りをいつも百花は内に秘めていた。

 

 俺がやる事は全部自分の為なんで、と少年は前置きして。

 

「前も言いましたけど、俺良い空気吸ってたいんですよ。こーんなギスギスしたお家で過ごすのやだやだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






感染初期、ウイルスに適応できた人間でもその影響で自分の感情に一時的に歯止めが効かなくなる事があり、クロスタにおける胸糞成分を補強しています。
子供にやらせたくないソシャゲランキング1位の中でも子供に見せたくない裏設定上位は伊達じゃない!
春陽の場合は謝れなかった、言いつけを破った後ろめたさから「自分は何も悪くない、認めたくない」という感情が顕著に出ちゃった訳ですね。


次回、コミュニケーション大失敗メスガキ三女vs無自覚カウンセラー

ファイッ

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