ソシャゲ世界って結局中堅勢力が一番良い空気吸ってる   作:しゅないだー

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いっぱい感想もらえて嬉しいです、倫理観の欠片もない物ばかりで最高だなあ!
特に多かった主人公の能力関連について軽くQ&Aを、あとがきにより詳細な能力解説を置いてます。よければぜひ〜

Q.毒虫とか蜂みたいな昆虫の群体系やウイルス、菌類とか作った方が強いんじゃない?

A.群体系は鼠でもそうだったんですが、1匹単位で制御する事が不可能なんで常に自爆のリスクを孕んでいます。鼠が駆け回るくらいなら可愛いもんですが、自分が蜂に刺されちゃ世話ないぜ!それに加えて毒を持たせるなど性能を上げれば上げるほど、かかるコストも1匹単位で増えていくので生半可な自傷や代償では賄えなくなってしまうぞ!
あくまでイメージした動植物を生み出すというだけなので、菌類やウイルスは主人公の想像力だと漠然とし過ぎていて難しいですね。
礼は戦闘中に自分をサポートさせる、という意味で人間とコミュニケーションを取るイメージのしやすい猟犬を多用しています。
まあでも命に別状もない低リスクのリスカで呼べる犬の出力なんか高が知れてますわな、がはは!




#4 「それは腐る程ありふれたバッドエンド」

 

 前回までのあらすじ。

 格好付けて女の子を助けたらもう本当に修羅場、慣れない事はするもんじゃない。

 

 百花さんは淡々と、けれど一切の異論を認めないといった調子で俺に言葉を投げ付けた。

 

「早急に、その子を異能省に引き渡しなさい。できないなら私がやる」

「ちょちょちょ、ちょっと待ってくださいよ」

 

 本気(マジ)のトーンだ、これ。大体いつもふざけた調子でへへへと揉み手してりゃ割とほだせる事もあるんだけど、これ駄目なやつだ。

 ちらりと春陽の方に視線を向けるが、露骨に目を逸らしている。使えない奴め、となるともう俺一人でどうにか切り抜けるしかない。

 

「この子を異能省に渡したらどうなるか知ってます?カイボーですよ、解剖!」

 

 初期の方で素直にアリスを異能省に引き渡す事で起こる、通称"解剖"エンド。面倒臭え戦闘も何もかもスキップできるけど得られる物は僅かな端金(はしたがね)、"アリスの亡骸"も得られないプレイヤーにとっては最悪のルートだ。

 ゲーム内での直接的な描写がある訳じゃないが、開発陣がしばらく経った後の質問コーナーで『ああ、あのエンド?色々調べ尽くされた後で解剖でもされたんじゃないですかね』とかいう爆弾発言を放り込んだ事に由来する。

 というか報酬以前に、色々と駄目だろ。

 

「何故貴方にそんな事が分かるの?」

「……勘です!」

 

 危ねえ危ねえ、うっかり「実はここってゲームの世界、前世で僕はプレイしてたからこの先の流れが分かるんです〜」なんてくねくねしながら言ってみろ、即刻病院に叩き込まれる所だった。

 百花さんは溜息を吐いた後、じっと俺の目を見つめた。

 

「礼。仮に貴方の言う通りになったとして、けれどそれを前提としてもその子はうちに置いておけない」

 

 先程とは打って変わって、宥め透かすような口調だった。彼女がそんな話し方をする所なんて見た事がなかったから、思いもかけず面食らう。

 

「仔細が回っていないから断定できないけれど、わざわざ異能省が懸賞金を付けてまで探すというのはつまりそういう事でしょう?」

 

 儚げな少女の見た目をしていても、何かしらの厄ネタを抱えているんでしょう、と。暗にそう詰めてくる彼女の考えは当たらずとも遠からず。

 

 

 人造人間(ホムンクルス)、または試験管の兵士(フラスコソルジャー)

『秩序ある世界の再構築』なんて御題目を掲げている、異能省の暗部。

 隕石衝突前から政府が秘密裏に研究していたクローンだとか何だとかと関連してるらしいけど、俺文系だからよく分からん。

 ざっくり言うと遺伝子弄って強い異能、便利な異能に目覚めた人間擬きをデザインして大量生産、水生会や他のボケ共と戦わせる兵隊にしよう!人間じゃないから傷付いてもすぐ取り替えられて便利!という倫理観の終わったプロジェクトである。

 人の数倍の速度で成長し、余計な情緒を持たず、死ぬ事すら厭わない。

 幸いにして、新時代の尖兵として遺伝子単位で『異能』をデザインされた人工の彼らはまだ実用段階に至っていない。

 その中でもA-1-ICE、アリスは『ICE()』の名を冠するように氷雪系統の能力を得るようデザインされた。しかし何故だか『不思議の国(ワンダーランド)』とかいう全くもってその要素のない異能と、本来人造人間が得るはずのない感情を持つ謂わばイレギュラーである。

 

 そんなイレギュラーが運の悪い事に、たまたまカチコミかけられた研究施設にいて、たまたまその騒ぎの中で逃げられてしまったという訳で。そりゃ異能省も連れ戻そうとする。

 現段階では人造人間(ホムンクルス)自体が異能省の最重要機密なので他勢力に知ってる奴はいない、何なら異能省の下っ端連中もなんで捕獲しなきゃいけないのかよく分かってないまま探してるくらいだし。

 まあ俺は例外として。

 

「異能省がどのくらいその子に入れ込んでいるのかも分からないのが現状でしょう。ここで突っぱねて、事を構える事態になったとしたら」

 

 百花さんは口下手だ。あまりに直接的過ぎるようにも思える言葉の数々は、彼女の持つ威圧的な雰囲気の一端となっていた。人としてはどうかと思うが、このご時世で一勢力のトップとして他と渡り合っていく為にはそれくらいが丁度良いのかもしれない。

 そんな彼女が、確かめるようにゆっくりと言葉を選んでいる。

 

「私は雇用主として貴方を守れる自信がない」

 

 百花さんの言葉は率直で、嘘偽りの匂いがなかった。

 この世界は終わっている、なんて事は嫌になるほど分かっている。弱けりゃ食い物にされるし、強けりゃ道理が通る。そんな世界で奪うのも、奪われるのも嫌だからここ(伊勢屋)に身を寄せた。

 でも、それでも限度がある。俺達は自分の身を守るので精一杯で、見ず知らずの他人に手を差し伸べられるような慈善事業団体ではない。そんな事は分かっている。

 

「そりゃ俺だって分かってますよ、分かってますけど……!」

 

 会話の意味はあまり理解できていないのだろうけど、目の前で繰り広げられている言い争いにアリスが怯えた表情を見せたから思わず口を噤んでしまう。

 俺だって他人の心配ができるほど自分に余裕があるなんて欠片も思ってない。けど一度拾い上げてしまったものを、もう一度放り捨てろってのはあんまりにもあんまりだろ。

 

「俺は……」

「これは"伊勢屋"としての結論。揺るぐ事はないわ、貴方も雇われの自覚があるなら弁えなさい」

 

 何も言えなかった。

 この言葉の裏に隠れている『この少女を見捨てる咎は全て貴方の上司である自分にある』という優しさを、土足で踏み付けるような真似は俺にはできなかった。

 

 だから、もうこの話はこれで終わり。

 

 

 ─────────────────────────────────

 

 

 

 異能省の支所までは少し距離がある。一人で行かせれば辿り着くまでに懸賞金目当てのチンピラや変態性欲者の餌食になるのは目に見えていたから、せめて『そこまで送らせてほしい』と百花さんに頼み込んだ。

 少しでも罪悪感を和らげたかったのかもしれない。

 

 この都市では少し目立ち過ぎる髪を隠すためにキャスケットを被り、春陽の小さかった頃の服を着た姿はちんちくりんではあるが、その甲斐あって一目で件の少女であるとは分からない。

 

「まあ、解剖なんて言ったけどさ。そんな事ある訳ないって、飯だって出してもらえるしこんな所よりマシだよ」

 

 そうに決まってる、『解剖でもされたんじゃないですかね』なんて所詮与太話でしかない。どちらかと言えば、自分にそう言い聞かせるように。

 隣を歩くアリスはそもそもそんな言葉の意味なんて理解できていない。

 

「もどったら、おねえちゃんに会える?」

「お姉ちゃん?」

 

 こくりと彼女は頷いた。

 

「おねえちゃんはね、いつもご飯をくれて、遊んでくれるの。たまにちくっとするやつするのはいやだけど」

 

 拙い話を拾い集めるに、彼女の世話係をしていた研究員らしい。

 

「あのね、すごい音がして。部屋の中におねえちゃんが入ってきたの、いつもはまだねてる時間なのに。こーんな、こわい顔して」

 

 両手を使って懸命に怖い顔を作ろうとする姿は、悲しくなるほどに幼い。

 

「外にでたら『もう戻ってきちゃ駄目』って言って、だっこしてくれたの。ぎゅって、ぎゅーって」

 

 あたたかくてうれしかったんだ、と懐かしむようにそう言いながら。

 

「もっとぎゅってしてほしかったんだけど。いっぱい人がきて、こっちに走ってきたんだよ。おねえちゃんよりももっとこわい顔して。だけどね」

 

 ぱあっと顔を輝かせた。

 

「おねえちゃんがね、みんなこうやってかちーんって冷たくしたの。うごかなくなっちゃった」

 

 アリスのデザイン元は氷雪系統の能力。いや、考えるな。考えたって仕方ないだろ。

 だって人造人間だぞ、仮に遺伝子提供者だとして情なんか湧く訳ない。そう言い聞かせながらも、頭の中には考えたくもない想像が止めどなく湧いてくる。

 デザイン元として遺伝子を提供し、ずっと我が子のように育ててきた子。そんな愛娘の処分が決定したとしたら。たとえこの欲望渦巻く『都市』に放り出されても、その方が生き延びる事ができる可能性が僅かにでもあるとしたら。

 

「『もう戻ってきちゃ駄目』って言われたから、たくさんはしってきたけど」

 

 そこまで言った後、彼女の顔がふっと曇る。

 

「じゃあもう会えないのかな、って。あそこにもどったら、また会える?」

 

 成り行きか水生会と共謀したのか知らないが、いずれにしても脱走を手引きしたような反逆分子をそのままにしておくはずがない。

 

「……会えるんじゃない?」

「そうだよね!」

 

 知らない、知らない。気付いていない振りをしているだけで、こんなバッドエンドはこの世界に腐るほど転がっている。

 

 ……『お姉ちゃん』は何を思ってアリスを逃がしたんだろうか。こんな掃き溜めみたいな都市で、薄っすらと常に人の悪意が漂うような所で、それでも彼女がそこにいるよりはマシな未来があるかもしれないと。

 1人くらいは、身を寄せる場所も自分を守る力もない女の子を拾い上げて助けてくれるようなお人好しがいるだろうと本気で思ってたんだろうか。

 自分の全てを賭けてまで、そんな砂粒みたいに小さな可能性を信じて?

 

 どんな甘ったれだよ。

 そんな人間ぶったまま、生きていけるほどこの『都市』は優しくないのに。

 

 

 

選択せよ。

 

 

 シンプルながら、クロノスタシスというゲームを一言で表したキャッチコピー。

 その言葉通り、クロスタとは選択のゲームだ。無数の選択を積み重ねた先に届く結末は、プレイヤーによって千差万別。

 考え無しに踏み出したたった一歩で、全てが変わってしまう事すらある。一人の人間の結末(エンド)その物すら良い方向にも、悪い方向にも。

 

 

「会える訳、ないじゃんか」

「え?」

「会える訳ない。だってお姉ちゃんは『もう戻ってきちゃ駄目』って言ったんだろ。ならそうするべきだ」

 

 アリスの手を、強く握った。

 もうここからは後戻りできない。そんな分岐点のフラグを踏んだような、歯車が動き出したような。ぞわりとする感覚が、背中を駆け登った。

 

 でも、それでも。俺は人間でいたかった。

 

 

 

 

 ─────────────────────────────────

 

 

 

 

「……遅いね。だからレイくんにこういう同情しちゃうような仕事回さないようにしてたのにね、優し過ぎるから。なのに自分で拾ってきちゃうなんてね〜」

「……」

「お姉ちゃん、こっちまで萎えるからその顔やめて。ほら、コーヒー入れたげたからさ」

 

 ソファに深く腰を預けたまま、湯気の立つカップを受け取った百花の顔は暗く沈んでいた。

 

「やっぱり私が行くべきだったかしら……」

 

 軽快に扉が開く。涼やかなドアベルと共に入ってきた人物に、部屋の中の二人は落胆の様子を隠さなかった。

 

 伊勢屋(いせや)彩葉(いろは)。三姉妹の、自由気ままな次女。

 藍色の着物に腰まである豊かな黒髪が、優美な所作と共に揺れた。その腰元には乾いた血で汚れた刀が下がっている。

 

「なんだ、彩葉か……うわ、血生臭っ!どこまで行ってたの?」

「今日は共同墓地の辺りまで……かなぁ」

 

 早くシャワー浴びてきて、と春陽は彩葉を手振りで追いやりながらも思い出したように尋ねた。

 

「また遠くまで……一応聞くけどさ、レイくん見てない?」

「見たよぉ」

「まあ、そうだよね。本当、どこ行ったんだろ……え?」  

 

 空気が凍る。正気の人間であれば、用も無しに共同墓地へ行く筈がない。遠回しな自殺行為ですらある。

 そうそう、と彩葉が口を開く。

 

「礼ちゃん、もう戻ってこないかもね」

「……は!?」

 

 思わず頓狂な声を上げる春陽の隣で、百花がコーヒーカップを手から滑り落とした。

 

 

 

 

 

 







贄の檻(テラリウム)

保有者:烏丸(からすま) (れい)

召喚型異能力。
『血液などの自分の肉体』と『自傷行為』をトリガーとして発動する。
その2つの質や量によってスペックや数が変わってくるため、同じ猟犬でも『自分の臓器を代償に、腹を捌いて生成した』猟犬と『リスカしたついでにこぼれた血で生成した』猟犬ではスペック面に遥かな開きがある。

生成物には簡単な指示をインプットする事もできるが、その分生成時のコストがかかる上に元となった動物の知能にも依存するため、昆虫や魚類などを思うように操る事は不可能に近い。

生成時のコストで多少伸ばす事はできるが、基本的に生成物の持続時間は10分程度。逆に持続時間を数十秒に限定する事でスペックを底上げする事もできるが、コスパが悪い。

①数やサイズなどのハード面
②性能や指示などのソフト面
③持続時間

低い出力の中、この3点のバランスを取りながらビルドする必要があり、突発的な戦闘よりは相手の情報を知った上でメタを張る運用に向いている。


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