デュエル・マスターズ Aoharu Revolution   作:カレーパンパフェ

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疲労困憊! 勝太のアビドス回顧録っ!

「……疲れた」

 

『先生、大丈夫ですか?』

 

「ありがとな、アロナ……」

 

『勝太、あんまり無理せんときいな」

 

「カツドンもサンキュー……。でも、いま踏ん張らねぇとアビドスがやべぇ……」

 

 シッテムの箱内部の空間。

 アロナにいちごミルクとバナナカステラ、そしてカレーパンの差し入れをしに来た勝太だったが、日々の疲れがどっときて机に突っ伏してしまったのだ。

 

「っはぁ~~~この程度で情けねぇ……俺も年かねぇ」

 

 ここ数日の出来事を、勝太は振り返る。

 

******

 

 最初は、勝太やジョー達とは別の世界から来たという少年、ウィンとの邂逅からだ。

 

「俺たちの活躍が」

 

「漫画やアニメで伝わってる……」

 

「「すっげぇ!!!!!!」」

 

 切札親子は興奮のあまりぴょんぴょんと飛び跳ねている。

 その様子を見てウィンは笑っていた。

 

「すごいな。自分たちが漫画やアニメの登場人物扱いされてもそんな反応するのか」

 

「…………正直私も、もっと違う反応するかと思ってた」

 

 ヒナは、てっきりショックを受けたりするものだと思っていた。

 しかし実際はこの様子である。受け入れがたいような事実を二人はあっさりと受け入れてしまう。

 

「しっかし、別の世界からやってきたとはな……。そういや、その隣の悪魔みてぇなのはウィンの相棒なのか?」

 

「貴様、不敬であるぞ。余は深淵を統べる――――――」

 

「邪神くん。たぶんこの人たちそういうの効果ないと思う」

 

 悪魔に例えられたことでプライドが傷ついたのか、勝太に軽く圧をかける邪神くん。

 しかし勝太はどこ吹く風である。

 

「で、改めて紹介すると、こいつは邪神くん。闇の世界、深淵の支配者なんだ」

 

「…………なんつーか、やばそうだな」

 

 ウィンはあっけらかんと言い放ったが、邪神くんはクリーチャー世界の中でもそうとうやばい存在である。

 そんなのを学園の中にいさせて大丈夫なのか、と勝太はヒナに疑問を投げかける。

 ヒナからは困ったような顔が返ってきた。彼女も彼らの扱いに苦労しているのだろう。

 

「今のところはフウカ――――――うちの給食部の部長で、彼女が手を焼く、くらいで済んでる。正直フウカには申し訳ないわね」

 

「なんで給食部が出てくるのよ」

 

「……もしかして、餌付k…んぐ」

 

 セリカのツッコミに反応して自分の見解を述べようとしたシロコだったがヒナに口をふさがれた。

 実際邪神がタコさんウィンナーに夢中なのはそうだが、それを餌付けなどと評してしまえばぶちぎれ確定である。

 ウィンもこれには苦笑いである。

 

「―――ねぇ、俺たちの冒険が漫画やアニメになってるってことは、ジェンドルのことも知ってるの?」

 

 ウィンが示した事実に対して、ジョーが自分の考えをいう。

 ウィンはうなづいてそれを肯定すると、事の詳細を話し始めた。

 

「便利屋と会った、てことは、ゼーロがこっちに来てることも知ってるよな。今のところは大人しくしてるみたいだけど……癇癪起こすとほんっとに大変で……」

 

 暴れるゼーロをデュエマによって抑えようと試みたことが何度かあったらしい。

 最近は頻度が減っているようだが、ゼーロ自体便利屋にとどまっておらずあちこちふらふらしているのが余計たちが悪いとのこと。

 

「で、ゼーロが現れたときに私が聞いたのよ。ゼーロみたいに、キヴォトスに現れたら大変なことになりかねない人物はいるのかって。それで、ウィンがいの一番に挙げたのがジェンドルだった」

 

「父ちゃん。ジェンドルってやつはほんとにやばいんだ。未来を見たり、時間を越えたりってめちゃくちゃだけど……父ちゃんも見たよね? ディスペクター」

 

「…………あの合体クリーチャーか」

 

 スペルサイクリカやベートーベンなどは勝太も知っている。

 特にベートーベンはかつて戦った強大なライバルの切り札でもあったため、あんな風になっており少々驚いたものだ。

 

「ジェンドルは、自分が一番強くなって、世界の王様になることを考えてるんだ。俺たちはジェンドルを止めようとしたけど、邪魔するやつには容赦ない奴でさ……」

 

 ジェンドルがかつて率いたガットルズとの戦いでは、何度危険な目に遭ったか数えきれない。話すだけでもジョーはうんざりしていた。

 

『確かに、あの巨大なクリーチャーを、周りの被害も考えずにけしかけてきましたね……』

 

「風紀委員長が来てくれていなかったらと思うと、ぞっとします……」

 

 絶体絶命の状況を思い返しながら、アヤネがノノミがジョーの言葉に納得する。

 あのドルファディロムの攻撃がそのまま放たれていたら、アビドスは、自分たちはどうなっていたのかと想像してしまう。 

 そしてキヴォトスを守るためには、そんなやつと戦わねばならないのだろう。

 

「……おそらく、あやつが真の意味で制作できたのはドルファディロムのみだろう。であれば、切札勝太と切札ジョーを潰すのに、ドルファディロムだけで挑むはずがなかろうて」

 

 他は全部ただの紙切れのはずだ、と邪神は自らの推測を述べた。

 

「それこそバラモルドとか出すだろうしなぁ……。なんか理由があるのかなっと」

 

「そのドルファディロムも、ここにあるし」

 

 ヒナが指に挟んだドルファディロムのカードを示す。

 唐突に出てきた厄ネタに全員がぎょっとしてヒナの方を見た。

 

「え、ヒナ、それどうした?」

 

「どうって、さっきジェンドルがドルファディロムを身代わりにしたでしょう? その時力を使い果たしてカードに戻ったみたい――――――ん?」

 

 ヒナがカード入手の経緯を説明していると、突如カードが震えだし宙に浮かぶ。

 やがて1枚のカードはアルカディアスとバロムに戻り、空へと飛び去って行った。

 

「…………なくなっちゃったわね」

 

「いや、まあそれでよかったというか……。というかヒナ、ジェンドルに勝ったの!? 俺、てっきり勝太かジョーが倒したとばかり……」

 

「あら、意外だった?」

 

 意外も意外である。

 ヒナはデュエマを始めてから日が浅く、多忙でウィンたちとも十分に遊べていない。

 現在の焼き鳥は横並べのメタビートがゆえに考えて殴らないといけないはずだが…………もしくは数の暴力で轢き倒したか。

 

「やっぱヒナは将来有望だなっと!!! ヒナがどれだけ強くなったか知りたいし、後でデュエマしようぜ!!!」

 

「後で、がいつになるかは分からないけど。できる限り時間取れるようにするから」

 

「ちょーっとまったっ! 俺も混ぜてもらおう!」

 

「ん、私も行く。デュエマ始めたいから、構築のアドバイスが欲しい」

 

 ウィンとヒナの会話に勝太とシロコが割り込む。

 ヒナは少し面食らったような顔になったが、ウィンは歓迎ムーブだ。

 

「もちろん、大歓迎だぞっと!!! 新入部員2名様、ごあんな~い!!!」

 

「あのね、アビドスの生徒はともかく、先生はシャーレの職員なんだから……どちらかというと顧問でしょう」

 

「あ、確かにそうだな! うっかりしてたぞっと!!!」

 

 ウィンが頭を掻いて笑う。

 それはそれとして、ウィンの「デュエマさいこークラブゲヘナ支部」と顧問になってほしいと勝太に頼んだ。

 

「おうっ!!! もちろん大歓迎だ」

 

「やった!!! 顧問になるなら、勝太先生、って呼んだ方がいいかな?」

 

 ゲヘナの一部活にシャーレの先生が顧問として就任して大丈夫だろうか、とヒナは思ったが、対策委員会の顧問をしているらしいし今更だろう。

 そういう政治的な問題は万魔殿の仕事だし、とヒナは先ほどの心配を放っておく。

 

「お互いに忙しいでしょうし、日にちについてはまた後ほど。連絡先の交換をお願いしても?」

 

「あ、俺も俺も!!!」

 

 こうして勝太はウィンとヒナの連絡先をゲットした。

 ちなみにちゃっかりシロコも二人の連絡先を手に入れている。

 

「シロコちゃん、風紀委員長ちゃんの連絡先ゲットしたってほんと?」

 

「うん、これでいつでも挑戦しに――――――」

 

『行かないでくださいね!!!???』

 

 自慢げに話していたと思ったら、突如戦闘狂の一面をのぞかせるシロコである。

 そんな姿に勝太とウィンは苦笑した。

 

「ゲヘナの外にも面白い奴らがいっぱいいるんだな、他の学園に遊びに行くのが今から楽しみだぞっと!!!」

 

「おう、何ならシャーレにも来いよな!!! 歓迎するぜ!!!」

 

『もしよろしければアビドスにもいらしてください!!! 精一杯おもてなしさせていただきますので』

 

 ダメもとでアヤネは言ってみたが、ウィンは笑顔できっと行くと返した。

 これで用件が済んだため、ウィンとヒナは邪神に乗ってゲヘナ学園へと帰っていった。

 

******

 

『ほえー……先生たちとは別の世界の方、ですか……。自分が漫画やアニメの登場人物だって言われて、変な気分だったりします?』

 

「いやべつに。というか俺自分で自分のアニメ作ったことあるし」

 

 アロナの頭に疑問符が浮かびまくる。

 問題の回について話を聞いたことがあるカツドンは、やれやれと言いたげな表情だ。

 

『でも、それだけだったらまだ疲れるとかではないですよね?』

 

「ウィンと会ったのが疲れたっていうか、その日全体的に疲れたっていうか……」

 

 自分から頼んだとはいえ木に乗ってアビドスまで吹っ飛び、イオリをたしなめアコを煽り、神経をすり減らしつつ興奮しつつでヒナのデュエマを観戦した。非常に濃い一日だったと言える。

 

「で、問題はその後だよ。まさか砂漠を歩くことになるとは思わなかったぜ……」

 

******

 

 アビドス自治区のほとんどが、カイザーの手の中にあった。

 柴大将の証言を契機にして、アヤネとセリカが調べたこの情報は対策委員会に衝撃をもたらした。

 土地を売ったのはアビドスの生徒会で、借金を返すために売買を行ったとのこと。

 しかし砂漠化した土地が高値で売れるはずもなく、土地の売買を繰り返し――――――。

 現在アビドス高校に所有権が残っているのは、学校とその周辺の土地だったのだ。

 学校に返しきれないほどの借金をさせ、返済の過程で土地を奪う。何十年にもわたる、カイザーの壮大なマッチポンプだったというわけだ。

 悔しがったり嘆いたり、怒りを爆発させもするアビドスの面々。

 カイザーが土地を狙う原因を探るため、勝太はジョーと対策委員会を引きつれて砂漠に向かったのだが……。

 

「「あッちぃぃぃぃぃぃ……」」

 

「もう、いい加減にしてよっ!!! こっちまで熱く思えてくるでしょ!!!」

 

「まあまあセリカちゃん。先生やジョーくんはキヴォトスの外の人ですから……」

 

「お前らが、おかしい、だろ。キヴォトス人、おそるべし……」

 

 砂漠に突入してから、暴走ロボットや暴走オートマタなどと戦闘を繰り広げつつ、勝太たちは前進している。対策委員会の面々は特に疲れた様子はないが、キヴォトス人ではない勝太とジョーはもうへとへとである。

 エネルギー補給のカレーパンも底をつき、水をちびちびと飲んでいた。

 いまは暑さに耐えかねたジョーを勝太が背負っている状態である。

 

「よかったら、私が背負おうか」

 

「でしたらジョーくんの方はお任せください!」

 

「いや、だいじょぶ、だ…さすがに、メンツが立たねぇ」

 

「俺も、大丈夫だよ、ノノミ、ちゃん……」

 

『先生とジョーくんは校舎でお待ちいただいて、そこから指示をする、とかでもよかったのですけれど……』

 

「それこそ、メンツが、立たねぇ、だろ。生徒が砂漠に行くってのに、安全な校舎に残ってる、なんてよぉ」

 

「俺も父ちゃんと同じ気持ち、だよ……。それに、ジェンドルがいつ出てくるかも、わからないし」

 

「うへぇ~~~……おじさんたちのことを想ってくれてるのは嬉しいなぁ。でもそれよりまずは自分の身だよ~。熱中症になったらどうするのさ?」

 

「んぇ、チューしようって? 何言ってんだ、ホシノ……」

 

「……おーっと、これはかなり重症かな?」

 

 勝太の聞き間違いをきっかけに、ホシノが「熱中症ってゆっくり言って」をみんなに仕掛けていく。和気あいあいとした様子になごみながら、勝太はペットボトルの水を頭にかける。

 さっきのような、下手したらセクハラ扱いされる醜態はさすがにさらしたくない。

 

「よし、気合い入れ直したっ!!! 進むぞーっ!!!」

 

「今度は暑苦しいわよっ!!!」

 

 復活した勝太に、もはや彼の奇行へのツッコミ係と化したセリカが声を荒げる。

 ジョーも勝太の背中から降り、冷えピタをおでこに貼って歩き始めた。

 

「あーあ、前だったら、快適に過ごせるジョーカーズ描いてたのかな」

 

 彼らとのお別れはきっちり済ませたが、それはそれとしてジョーカーズたちの便利な力を思い返すジョーである。

 

「描いて、その後はどうするんですか?」

 

「あ、ノノミちゃん気になる? それはねぇ」

 

 ジョーはデッキーのこと、ジョーカーズのことをみんなに語って聞かせた。

 さすがにデッキーがクリーチャーを生み出す過程は省略したが。

 

「そんな力があったなら、なんでもできそうなもんだけど」

 

「まぁ、いたずらとかはしたけどね。楽しかったなぁ」

 

 厳密にはいたずらというにはやり過ぎなこととかもしていたしトラブルも起こっていたが、私欲のために助けを借りたことはあれど、他人を陥れようとジョーカーズの力を使ったことはないという。

 対策委員会の面々は改めてジョーはいい子だ、と思ったし、勝太もうんうんとうなづいていた。

 話が一段落したころ、みんなから少し離れたところで、ホシノが少し遠慮がちにジョーに疑問を投げる。

 

「その…………みんなとのお別れは、寂しくなかったの?」

 

「そりゃ、寂しかったよ。特にデッキーがいなくなったときはね」

 

 ジョーがデッキケースをポケット越しになでる。

 学ランを着ることが日常になってから、デッキケースを首から提げることは少なくなった。

 それでも毎日欠かさず持ち歩いている。

 

「でも、デッキーの想いをちゃんと受け止めて、前に進もうって決めたんだ。そしたらジョーカーズのみんなとも、笑ってお別れできたよ。――――――それに、いなくなっちゃっても、思い出はたくさんあるしね!!!」

 

 今度はリュックからスケッチブックを取り出すジョー。

 そこにはたくさんのヘンテコな生き物に合体ロボ、ガンマンやドラゴンなどが描かれていた。

 彼らがジョーとともに歩んでいた証、そのうちの一つ。

 そしてその歩みがあったからこそ、ウィンの世界でジョーカーズはみんなに親しまれる種族の一つとなっているのだ。

 

「……想いを受け止めて、前に進む、か。それに、思い出、ね……」

 

「―――? ホシノちゃん、どうかした?」

 

「いや、なんでもないよ。ただ、昔のことを思い出してたんだ」

 

 果たして自分は、想いを受け止められているのか?

 思い出は大事にしているが、それにすがってばかりではないか?

 ――――――前に、進めているのか?

 自問自答しても、答えは出るはずもなく。

 やり場のない気持ちを、ジョーを撫でることで解消しようと試みる。

 

「うへ~。 ジョーくんは強いね。おじさん感動しちゃったよ」

 

「ちょ、やめてよ恥ずかしい!」

 

 ニコニコしながらジョーをなでくりまわすホシノ。

 すると今度は勝太がホシノの頭をわしゃわしゃとなではじめた。

 

「ホシノさんよ~? うちの息子をあんまりいじめるんじゃないぞ?」

 

「うわーっ! やめてよせんせ~!!!」

 

 対策委員会のみんなと親交を深めながら進む勝太とジョー。

 しかし、その穏やかな空気は突如として一変することになる。

 

『皆さんみてください! 前方に、何か巨大な施設のようなものがあります!』

 

「はぁ? この砂漠のど真ん中に?」

 

 砂塵の奥、勝太が目を凝らしたさきには確かに建造物らしきものが見える。

 そこにあったのは、カイザーコーポレーション傘下の民間軍事企業、カイザーPMCの基地だったのだ。

 警備員の襲撃、そして大規模兵力の包囲をなんとか突破した一同だったが、通信妨害と再びの包囲に遭い、絶体絶命のピンチに陥る。

 そして彼らの前に、カイザーコーポレーションの理事が現れたのだった。

 

~~~~~~

 

「では、来週までに保証金3億円と、月々の返済額9000万円。よろしく頼むよ」

 

「なによこれ……こんなやり方」

 

「受け入れられないというのなら、転校なりしてアビドスを去ればいいだろう。こんな荒れ果てた土地に一体何の未練があるというのだ」

 

「未練とか、そういうものではありません。アビドスは私たちの学校、それだけです」

 

「ノノミの言うとおり。私たちの学校は、私たちが守って見せる」

 

「そうかそうか。では3億9000万円のほう、しっかりと返済してくれるのだろうな?」

 

 理事の手により、アビドス高校の信用ランクが最低まで落とされ利子が上がる。

 さらに彼は9億円を返済できるかの保証金として3億円を要求してきたのだ。

 

「…………っ」

 

「……そこの大人、何を考えてこのような奴らについているかは知らないが―――もう少し時間を有効的に使った方がいいと思うぞ?」

 

「だだっ広い砂漠で宝物探ししてるお前よりはましだ」

 

「言ってくれるじゃないか。……他に言いたいことがあるのなら、はっきり言った方がいいと思うぞ?」

 

「…………いや、これ以上言い争っても時間の無駄だ」

 

「先生の言う通りだね。みんな、帰ろう」

 

 勝太の言葉の続きをホシノが引き取る。

 顔に悔しさをにじませたまま、一同は帰途に着いた。

 

「悪かった。あいつになんも言ってやれなくて」

 

「先生の考えてたことは分かってるよ。おじさんも、あれ以上何か言っても事態が悪化するだけだと思ってたから」

 

「……それでも、悔しいんだよ」

 

 勝太はきつくこぶしを握り締めた。

 

******

 

『そう気を重くするんやないで、勝太。そこで噛みつかんかったのは、お前が生徒のこと考えれる立派な大人になった証や』

 

「ありがとな、カツドン。でも俺が正しいと思った道でも、生徒に被害が出る可能性がある道があるかもしれねぇ。ちょーっと難しいけど、自問自答しながらやってみることにするよ」

 

 宇宙での自由奔放な生活から一転、多くの生徒の責任を取る役割を担うことになった勝太。

 これまでも「先生」という役職の重みを味わってきたつもりだったが、今回の件でさらに重く感じることとなった。

 

「デュエマだったら、どんだけ重いドローもこの腕一本でひっくり返せる。おんなじ心持で、やってやるしかねぇか」

 

 現在の状況は最悪だ。

 3億9000万円という大金を来月までに払う、という無理としか言えないことがアビドスには課せられた。

 かと言って、アビドスに妨害を仕掛けてきた理事をボコボコにしても何の意味もない。

 調べたことだが、カイザーコーポレーションはキヴォトスの中でも有数の大企業で、数々のインフラに関わりがあるらしい。開設したてのシャーレとの地力は比べるまでもなかった。 

 

「あとは、ジェンドル」

 

 勝太とジョーを始末するために攻撃を仕掛けてきたジェンドル。

 あの時はヒナのおかげで助かったものの、次いつ襲ってくるか分からない以上、警戒しておく必要がある。

 そもそも、あいつの目的は不明である。勝太とジョーを狙ってきたとはいえ、それだけが目的とは限らないのだ。

 

(最強の王になるのがやつの目的なら、狙うのは連邦生徒会か?)

 

 ただ、現在連邦生徒会には顧問として勝舞がついている。

 よっぽどのことがない限りは大丈夫なはずだ。

 ただ、クリーチャーの実体化ができない以上、こちらがまた襲撃されたときには勝太は相当不利だ。

 

(……そうなったら、"これ"を使うしかねぇか)

 

 財布から取り出した「大人のカード」を見やる。

 一見クレジットカードにしか見えないそれは、着任時に勝舞から渡された「キヴォトスでの切札」。

 代償を伴う代わりに、奇跡を起こせるらしい。

 渡してきた勝舞もよくわかっていないようだったが、法外な代物なのは間違いないようだ。

 

(クリーチャーの攻撃さえかわしちまえば、あとはデュエマに持ち込めばいい。……俺もジョーみたいな武器作ってもらってもいいかもな)

 

 ジェンドルの方はいくつか対処法が思いつくので、現在はカイザーの方が脅威的だ。

 現状向こうがぼろを出したところを叩くしかないし、そもそもあいつらが出す可能性のあるぼろがどんなものか見当もつかない。

 

『先生! シロコさんからメッセージが届いていますよ!』

 

「シロコから? ……あぁ、あの件か」

 

 カイザーよりもジェンドルよりも、早急に解決すべき案件があったことを勝太は思い出した。

 

「んじゃあ、ちょっくらアビドスまで行ってくる、行くぞカツドン」

 

『そろそろワイも活躍したいで……』

 

「わりぃな。もうちょっとカードの中で我慢しといてくれ」

 

『気を付けてくださいね、先生!』

 

 アロナに見送られ勝太はシッテムの箱を出ていく。

 目下最大の問題、「小鳥遊ホシノの退部届」の真相を知るために。 

 

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