デュエル・マスターズ Aoharu Revolution 作:カレーパンパフェ
前回のぉ……あらすじっ!!!
様々な勢力との協力を取り付けた勝太は、対策委員会とともにホシノ救出作戦を敢行っ!!!
ゲヘナ風紀委員会やトリニティの援軍、便利屋たちに助けられた一同は敵の本拠地へとたどり着くっ!
一方、ハムカツたちの手引きで拘束を抜け出したホシノは、盗まれた勝太のカードたちを発見!
救出に成功するも、ジェンドルや彼の使役するディスペクターによって大けがを負ってしまう!
勝太は「大人のカード」の奇跡でビクトリーモードを限定解放、ドギラゴンを実体化させホシノを救ったぁ!!!
そして今、勝太とアビドス対策委員会の戦いは、最終局面に入ろうとしていたっ!!!
雲一つない青空の下、灼熱の陽光が照り付ける砂漠で、二人の男がにらみ合うっ!
一人は、デュエマとカレーパンをこよなく愛するシャーレの先生、切札勝太! 旧友たるハムカツ団たちとの再会を経て、決戦に臨もうとしている!
相対するは、デュエマの強さの身をひたすらに追い求め、ディスペクターを生み出す外道、ジェンドル! ホシノから奪い返した勝太の切札たちをディスペクターに仕立て上げ、勝太に襲い掛かろうと牙を研ぐっ!
対策委員会の面々、ウィンやジョーが見守るなか、いよいよ決戦の幕が――――――実は、まだ上がらなかったりして。
「んー……これどうすっかな」
勝太のいう"これ"とはビクトリーモードのことである。
勝舞いわく、大人のカードには代償があるとのことなので長い間は出さない方がいいだろう。
とはいえいちいち引っ込めたり出したりするのもそれはそれでめんどくさい。
「あ……そうだ」
何か妙案を思いついたらしい勝太は、少し離れたところにいるみんなの方へ呼びかける。
「おーい!!! 誰かヴァンソーコー一枚くれないかぁ!」
勝太のバカでかい声が砂漠に響きわたる。
一同は、そんな大きな声出さなくても聞こえてる、と言いたげな顔だ。
「……先生も、どこかしらお怪我をなされたんでしょうか。あのドラゴンに受け止めてもらっているとはいえ、高所から落下したわけですし」
「そういうことなら、私が行ってくるよ」
アヤネが救急箱から取り出したばんそうこうを受け取ると、シロコは勝太のところに駆け寄った。
「お、ありがとなシロコ!」
「どういたしまして、先生。……怪我したところがあるなら貼ってあげるけど」
「あー、いや、ケガとかそういうんじゃなくてな……ここに貼ってくれねぇか、ここ」
勝太が指定した箇所に、シロコは困惑した。
そこは今まさに「V」の形をした炎がごうごうと燃えているおでこだったからだ。
「貼ってくれって言われても…………やけどしちゃいそう。それに、ばんそうこう自体燃えちゃうんじゃない?」
「別に燃えもしねぇしやけどもしねぇよ、だいじょぶだ。こう、Vを上から潰す感じで頼む」
「とりあえず、わかった」
シロコは言われた通り、勝太のおでこにばんそうこうを貼った。
なぜか勝太はばんそうこうの角度まで指定してきた。シロコからしたら謎すぎるこだわりである。
そうして貼ってみると、なんということだろうか。ばんそうこうを貼っていくにつれて炎は引っ込んでゆき、あとにはばんそうこうの貼られたおでこだけが残った。
「……どういう仕組み?」
「俺もよくわからんっ!!! しかし、いやーっ懐かしいな! そんでもってしっくりくるっ!!!」
もう20年近く前になるヴァンソーコースタイルだ。
このスタイルで駆け抜けた激しく熱かりし1年間が思い起こされ、勝太はますます燃えてきた。
「…………まぁ、元気になったならよかった」
半ば無理やり自分を納得させると、シロコはみんなの下へと戻る。
シロコが勝太のところに言っている間に、ディスペクターと戦っていた功労者が戻ってきたようだ。
「つかれた。ゼーロは寝る」
砂だらけの地面にもかかわらず、ゼーロは寝っ転がると寝息を立てた。
先ほどのディスペクターとの戦いでは、「無」の力を使い相手の攻撃をことごとく消し飛ばしていた。
しかし、キヴォトスは多量の「無」を生成できるほどマナが潤沢なわけではない。
一度に大量の力を使ったため、ゼーロは体力を回復するための睡眠が必要になったようだ。
一方邪神の方は、ディスペクターを殴っては蹴ってと大躍進だった。
だが思いのほか早く切札勝太がやってきたため、自分の出番が一瞬で終わったことに文句があるようだ。
「ちっ、これではドギラゴンの方が目立っているではないか。 せっかく我が活躍する場面だったというのに。 ……そうだ、いっそウィンがあいつと」
「はいはい却下却下。ここは勝太先生がかっこよく決めるとこだぞっと」
ワルドバロムとの決戦以降、なぜか邪神くんはウィン第一になっている。
妙なことを言い出した相棒をたしなめているウィンに、今度はジョーが話しかけてきた。
「ねぇ、さっき父ちゃんのおでこから出た……あれ、なに?」
「えっ……? ……あ、あーそっか! ジョーって見たことないのか」
ジョーの質問を受け、ウィンは何度も読み返した漫画、見返したアニメの記憶を探る。
結果、勝太は中学時代にあの力を失っているためジョーが知らないのも無理はない、という結論に落ち着いた。
ふと他に目を向けてみると、アビドスの生徒たちも興味津々といった様子である。
ウィンはわざとらしくコホンと咳払いして解説し始めた。
「あれはビクトリーモード! 切札勝太がピンチになると発動するすごい力で、カードの声を聞いたり、コンボが上手く繋がるようになったりするんだ!」
ウィンが心底すごそうに語るので思わず「おぉ~」といった声が漏れる一同。
しかし肝心のあれがなにか、についての言及は一言もない。ウィンだって何か分からないからだ。
「す、すごそうですね……正直、すごそうっていうだけでよくわかりませんが」
「私もノノミ先輩と同意見。説明だけじゃイメージしづらいっていうか」
「まあまあ、そこは勝太先生がデュエマしてる様子を見ればわかるでしょ!」
そこで会話が途切れると、あたりには緊張感が漂う。
ウィンが勝太の方を向き、つられて他の面々もそちらを見る。
視線の先には、デュエマを始めんとする勝太とジェンドルがいたっ!!!
「とりあえず、ボコボコにされる覚悟はできてるな?」
「そのような覚悟などありませんよ。なぜなら、デュエルに勝つのは私ですからね」
火花が散る、という言葉すら生ぬるい、激しいにらみ合い。
そして、今、激しく熱かりし戦いの火ぶたが切って落とされるっ!!!
切札勝太 VS ジェンドル
デュエマ、スタートっ!!!!!!
アビドス、ひいてはキヴォトスの命運をかけたデュエマが幕を開けたっ!!!
卑怯にも勝太の切札たちを奪い、ディスペクターに仕立て上げたジェンドル! 彼に対し勝太は、ジョーとウィンが思考を凝らしたデッキに、帰ってきたハムカツ団をくわえた魂のデッキで挑むっ!!!
「私のターン。『獅子王の遺跡』と『フェアリー・ミラクル』を発動」
ジェンドルは得意のビッグマナ戦略を展開しマナの数で勝太を圧倒っ!
一方勝太は『ボルシャック・栄光・ルピア』を召喚しこちらもマナをブーストする!
「ドロー! ……にひっ、んじゃあまずは、その増えたマナから封じさせてもらおうかねぇ」
「何をする気だ?」
「答えはこいつさ! 『メガ・マナロック・ドラゴン』を召喚っ!!!」
大ナタを振り回す獰猛な龍が見参っ!!!
そこから繰り出されるのは、大量のマナを溜めこむ欲張り野郎へのお仕置きだ!!!
「登場時効果で、ジェンドルのマナを5枚タップ!!!」
使用可能マナを一気に減らされ、ジェンドルは苦い顔。
その効果に観戦組も同様に苦い顔だ。
「……デュエマって、マナを溜めてカードを使うゲームだよね?」
「そのマナを封じられたら、何もできなくなっちゃいますね……」
「……だから足湯浸かることになったんだよね……あぁ、俺らの世界では、マナロはデッキに1枚しか入れられないんだ」
「それはわかったけど足湯って何?」
ウィンたちが会話を繰り広げている間もデュエルは進む!
勝太はジェンドルに追撃を仕掛けたっ!!!
「容赦はしねぇ、ガンガン行くぜ! 栄光ルピアで攻撃! ……こいつは、火のドラゴンっ! つ~ま~り~?」
ルピアの背後から、青白く光る装甲を身にまとった龍が飛び出してくる!
ルピアは翼を広げその龍に追いつくと翼を彼に向けて差し出し、龍もそれに応える!!!
「革命っ! チェンジだぁ!!!」
『『タッチ!』』
ハイタッチが決まり、栄光ルピアが勝太の手札に戻る。
代わりにバトルゾーンに現れたのは、『ボルシャック・サイバーエクス』だ!!!
その光景に、またも観戦組が盛り上がりを見せる。
「かわいい鳥さんが、かっこいいドラゴンさんになっちゃいました……!」
「あれこそ父ちゃんの得意な戦術、『革命チェンジ』だよ! 条件を満たしたクリーチャーが攻撃するとき、攻撃しているクリーチャーとタダで入れ替わるんだ!」
「さっきのマナロックといい、先生のやってることもだいぶ無法ね……」
勝太の勢いは止まらない! そのままジェンドルに対し攻撃を仕掛けた!
「ボルシャック・サイバーエクスでシールドを
サイバーエクスが両腕の手甲を振りぬき、豪快にシールドをブレイク!
シールドの数では勝太が一気に優位に立った!
しかしっ!!!
「シールドチェック…………ふははははは! 来ましたよ!
マナゾーンより、『DS電融 ザ=デッドNEXT』をバトルゾーンへ!」
「っ、でやがったなぁ!!!」
モルトNEXT。デュエマ甲子園、そしてその先の最終決戦をともに闘い抜いた勝太の相棒の一人。
それがくしくもかつてのライバルの切り札、デッドマンと融合され、狂暴な怪物へと姿を変える。
「『蒼龍の大地』の効果で、デッドNEXTとメガ・マナロック・ドラゴンをバトル!」
バトルゾーンに現れた勢いのままダッシュで加速するデッドNEXTは、左腕の槍でマナロックドラゴンに向けて突きを放った!
デッドNEXTの槍と、マナロックドラゴンのナタが正面から打ちあう!
拮抗する両者。しかし突如として、マナロックが苦しみに呻き始める。
なんということだろうか、マナロックのどてっぱらに、デッドNEXTの右こぶしが風穴を開けているではないか!
"グレンモルト"からは考えられない不意打ちをかまし、下卑た笑いを浮かべるデッドNEXT。
それが拳を引き抜いた直後、マナロックは爆発四散してしまった。
「マナロックっ!」
「ふふふ、どうですか? かつての相棒に自分のクリーチャーが倒される気分は?」
「てめぇ……そんなもん、最悪に決まってんだろうがぁ!!!」
純然たる怒りを込めて勝太は吠える。
相棒を奪われたことへの怒り、悲しみ。遠くで観戦していたシロコたちにも十分に伝わってくる。
しかして勝太と相対する外道はそのような感情を意に介さない。クリーチャーとは、自分が最強になるための駒でしかないからだ。
ジェンドルは粛々と自分のターンを開始する。
「私のターン! デッドNEXTの効果を発動! 6マナでドキンダンテXIIを召喚っ!!!」
「っ!?」
勝太の表情が驚愕に染まる。
彼としては、S・トリガーを喰らったとしても、マナロックの効果が生き続ける限りディスペクターの降臨は抑えられると思ったわけである。
その目論みは、無条件にもデッドNEXTによって打ち砕かれてしまったのだが。
「ちょ、あれどういうことよ!? インチキじゃないのっ!」
「いや、あれで合ってるんだ」
ジェンドルのプレイングに対し文句を言うセリカ、しかしそれをウィンが否定する。
「デッドNEXTが場にいる限り、火、水、自然のマナを2枚ずつタップすれば、カードを使うことが出来る。つまり……」
「どんなカードも、全部6マナ?」
ウィンの解説の続きをシロコが引き取った。
どんな巨大獣でも、たった6マナ払えば使いたい放題だ。しかもジェンドルは以前のターンで大量にマナブーストを行っている。マナロックの効果により今でこそ止まっているものの、次のターンになればデッドNEXTの能力を使って次々と大型クリーチャーが飛び出してくることは想像に難くない。
「先生、大丈夫でしょうか……」
「だいじょぶだよ、ノノミちゃん。父ちゃんはどんな状況でもひっくり返せちゃうからねっ!」
自分の父親を信じているからこそ、楽観的な態度をとるジョー。
一方邪神は、現在のデュエルの進行状況に対し現実的な意見を述べる。
「だが、あのドキンダンテが出てきた以上、切札勝太にとって不利な状況であることには変わりない」
「……それは、その通りかもしれないですね」
アヤネはジョーと理事のデュエルを思い出していた。
あの時はジョーの戦略によりドキンダンテは一瞬で沈んでいった。しかし勝太のデッキに、同じような除去カードが入っているとは限らない。
果たして先生は、ドキンダンテに対抗することはできるのだろうか。
「デッドNEXTでボルシャック・サイバーエクスを攻撃!」
咆哮を上げ走り出すデッドNEXT。
迎え撃とうとするが、突如サイバーエクスの足が動かなくなる。
ドキンダンテが放った禁断と奇跡の波動により、徐々に石化していたのだ!
サイバーエクスがなすすべなく石の像と化してゆく。
出来上がった石像を、デッドNEXTは何のためらいもなく殴り砕いた。
「モルトNEXT……完全にジェンドルに操られちまってるみてぇだな」
「操る? そんな生易しいものではありませんよ。――――――道具に自我は必要ないですからね。デッドマンとの合成を得て、あなたのモルトNEXTは意思のない、私の駒となったのですよ!!!」
「さっきからいちいちむかつく言い方しやがる。そんなに俺に殴り飛ばされたいのか?」
「とんでもない。殴り飛ばされたくなどありませんよ。紳士として、身だしなみは整えておかなければなりませんからね」
ジェンドルがわざとらしくタキシードの襟を整える。
勝太も負けじと、ゆるくなっていたネクタイをきつく締め直した。
「ジョーから聞いてるぜ。ドキンダンテの対処法は、攻めて攻めて攻めまくることだってなぁ!」
勝太は栄光ルピア、ヴァルキリー・ルピアを連続召喚!
しかしそれらのクリーチャーは全て、ドキンダンテの放つカウンター呪文により消し炭となってしまった。
「呪文!『
栄光ルピアは万力に潰され、ヴァルキリー・ルピアは冥府の裁きを受け墓地へと落ちてゆく。
「こいつらにはわりぃけど想定内だ。これでお前の手札はだいぶ削れたしな」
クリーチャーたちをいたわりつつ、勝太はにやりと笑いターンエンドを宣言。
しかしジェンドルは自分の手札が枯渇しかけていることについて全く興味を示さない。
「さて、そろそろ決着をつけましょうか。私も早く新世界の創造に取り掛からないといけませんのでね。あなたに時間を使っているひまはないのですよ」
見えます、私の来るべき未来が…
見えます、全てに勝利する輝かしい未来が!!!
見えますよ、未来を切り拓く、究極の切り札!!!
「来ましたよ! デッドNEXTの能力により、『終末縫合王 ミカドレオ』を6マナで召喚っ!!!」
『黒月王』と『獅子王』。根源たる存在が悪意の糸で縫合された。其がもたらすのは、世界の終末。
"王"の名を冠するディスペクターが、ドキンダンテに続いて降臨したのだ。
「あれは、ハイドの……!!!」
ジョーはかつての戦いを思い出していた。
ミカドレオはハイドの切り札であるはずだ。
「ハイド……ああ、そんな方もいましたね。ですが、今は私の切り札ですよ。さぁミカドレオよ、その威光を愚かな切札勝太に知らしめるのです!」
ミカドレオの神体が輝きを放つ。
その光は、このデュエルに絶望をもたらす終末の光。
自らの眷属となりうる、新たなディスペクターたちを呼び出すのだ。
「山札より、まずはガイゼキアール、ガイアトム・シックスをバトルゾーンに」
勝太の切り札を素体にしたディスペクターがまたも現れる。
オンセンたちとの戦い、大会優勝に力を貸してくれたガイアール。
モルトとともに、勝太とデュエマ甲子園を戦い抜いたガイギンガ。
どれも思い出深い切り札だからこそ、彼らがひどい目に遭っていることに対する怒りも大きくなる。
しかし、悪夢はまだ終わらなかった。
「これで終わりではありませんよ? さあおいでなさい!
『勝災電融王 ギュカウツ・マグル』っ!!!」
「なっ……」
『熱血の物語』から再現した『無法王』のデータと、『天災王』を掛け合わせて作られた異様な存在。
武術を極めし者の頭と、策謀を極めし天才の胴体を用いるというこれ以上ないディスペクトをなされた存在。
それが、勝災電融王。我欲にまみれた醜い咆哮をあげ、それが戦場へと降り立った。
『なんや、あれ…………ワイ、なんか?』
勝太の手札、『熱血の物語』のカード内で待機中のカツドンは思わず恐怖に震え上がった。
何かの間違いが起こっていれば、自分自身がああなりうる未来もあったのだ。
勝太は、怒りの声を上げることもなく、絶句した。
眼前にいる存在は、これまでの存在と比べても、とりわけ許されるものではなかった。怒り、なんて言葉で済まされていいわけがない。
本物は、ここにいる。それでも、眼前の冒涜的な存在を、勝太は許せない。だって、カツドンは家族なのだ。勝太が相棒とする多くのクリーチャーの中でも、ひときわ特別なのだ。
いくら偽物とはいえ、その存在が、悪党に弄ばれている。
よく耐えたほうだったが、とうとう、堪忍袋の緒が切れた。
「こんちきしょうめええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!」
天に向かって、勝太が絶叫する。
こんな気分になるのは、怒りで頭がおかしくなりそうなのは、ずいぶんと久しぶりだった。
「この野郎……絶対に許さねぇ!!! ジェンドルぅ!!!!!!」
「許さない……? 先ほどからおっしゃっていますが、何の冗談でしょうか」
「……は?」
「私はあなたの切り札をこれ以上ない完璧な形に合成してあげたのです。むしろ感謝してほしいくらいですよ」
勝太は悟った。
ジェンドルと勝太とでは、見えている世界が違うのだ、と。
クリーチャーも、他人も、ジェンドルにとっては等しく自分のための駒にすぎない。他者を思いやる心が欠落しているとしか思えなかった。
怒りが留まるところを知らず、勝太の脳は煮え切る寸前。
その時だった。
何者かが後ろから駆け寄ってくるが、ジェンドルとのデュエマに集中する勝太は気付かない。
その人物は瞬く間に勝太の正面に回り込むと――――――その口にカレーパンを押し込んだ。
「ん、とりあえずこれ食べて」
「んぐぅ!?」
口の中に少しべちゃりとしたもちもちのパンと、程よく具の入った甘めのカレー。これは、コンビニのカレーパンの味!
怒りでいっぱいだった頭が、一瞬にして好物を食べた多幸感に支配されていく。
「次はこれ。エナジードリンク」
「……んく、んく、んく……ぷはぁ」
カレーパンに続いてくわえさせられたエナドリのボトルをなんとか手でつかむと、勝太は一気にそれを飲み干した。
エナドリを飲み下すと同時に怒りの留飲も少しずつだが下がってゆく。
「ふぃ―……頭が冷えたぜ、サンキューなシロコ」
「落ち着いたみたいでよかった」
彼女たち観戦組から見ても、勝太はいかにも情緒不安定といった様子であった。
もしも冷静なプレイングができなかったら? と不安の種が芽生えるわけである。
ジョーやウィンからしたらそんなことはないと思いたいが、今回は状況が状況だ。
勝太の相棒たちの尊厳が踏みにじられるという未だかつてない事態であり、彼の内心がどれだけ荒れ狂っているのか想像できるものではない。
そんなわけで念には念を入れ、シロコはアヤネがヘリから持ってきた物資を漁り、ありったけのカレーパンとドリンクを持って勝太の下へやってきた、というわけだ。
「次イライラしたら、またカレーパンをキメればいい」
「そんじゃあ俺がやばいもんに手出してるみたいじゃねぇか…………でもまぁ、そうさせてもらうわ」
「合図をくれたらすぐに来る」
そうしてシロコはいそいそと戻っていった。
観戦組の大半は呆れもしくは困ったような表情を浮かべてシロコを出迎えた。
それを確認すると、勝太はジェンドルの方へと向き直る!
「わりぃわりぃ、待たせたな」
「構いませんよ。過程はどうあれ、デュエルの決着は変わりませんから」
「はっ、なんとでも言ってろ。カレーパンを摂取した俺は、さっきまでとは格段に違うぜ?」
「ほぅ…………では、この猛攻を裁き切ることはできるのでしょうか?」
ギュカウツが虚空に手をかざす。するとその手のひらから青白いデータブロックが無数に放出された。
そのデータブロックはやがて集まり、一つの形を取り始める……。
巨大な両腕に、背中に背負うはロケットエンジンと大剣。さながら巨大な戦車のようなその巨体には、『殿堂王』と『禁断王』、2体の頭部が接合されている。
Vol-Val-8 とギュカウツ・マグル、2体の電融王が今ここに並び立ったのだ。
「行きますよっ! まずはVol-Val-8で攻撃! この時に山札から3枚を手札に!」
「せっかく削った手札が回復してしまいました!」
「たぶんジェンドルは、ドキンダンテで撃てる呪文をくわえたはずだ」
観戦組からも不安の声が上がる。
Vol-Val-8は暴走特急がごとき速度で走行、そのまま勝太のシールドを叩き割るっ!!!
勝太のシールドにトリガーは……ない。
「続いて、ガイアトム・シックスでシールドを攻撃!」
ガイアトム・シックスの6つの神体からまばゆい光があふれ出る。
その光はやがて6本の巨大なレーザービームとなり、サーチライトのごとき動きで戦場を破壊しつくした!
当然勝太のシールドも、それに巻き込まれてしまう!
「ちょ、まずいわよ!? このまま、シールドトリガーってやつが来なかったら、先生の負けじゃないっ!!!」
「大丈夫――――――父ちゃんを、信じるんだ」
しかし、結果は期待に反するものだった。
「シールドチェック。…………なにも、なしだ」
観戦側から悲鳴染みた声が漏れる。対称的に、ジェンドルの方からは歓喜の声が漏れる。
「はははははは!!! まさかあの切札勝太が、これほどまでにあっさりと散るとは!!! 私に歯向かったことを後悔しながら、かつての切り札に虐殺されるがいい!!!」
ガイゼキアールが動き出す。
2本の剣から血と炎にまみれた斬撃が繰り出され、勝太に迫る!
それに対し、勝太は――――――――――――。
「なに勝った気になってんだ?」
「は?」
「まだまだ勝負はこれからだぜっ!」
おもむろに、勝太が山札の一枚目をめくる。
呼び出されたのは、チャラ・ルピア。
「そして、その上に、進化だぁ!!!!!!」
土壇場での超大逆転、革命0トリガーっ!!!
そしてここからの大逆転を始めるのは、まさかのカードだったっ!!!
「頼むぜ、『ミラクル・ミラダンテ』っ!!!」
未来から、奇跡が降臨する。
その奇跡は味方に祝福を、敵に天罰を降すのだっ!!!
ガイゼキアールの攻撃はミラクル・ミラダンテの張ったバリアに弾かれる! 跳ね返ってきた自分の攻撃を避けようとガイゼキアールは体勢を崩した!
ミラクル・ミラダンテはそこを見逃さず、ガイゼキアールに向けて聖なる光のビームを放った! ガイゼキアールはなすすべなく飲み込まれ、そのEXライフを散らすこととなった。
そして、その聖なる光は戦場全体に拡散していく。
他のディスペクターたちは、気付けば光の茨に縛られていたっ!!!
ジェンドルの顔が怒りで歪んでいく。
大ピンチを紙一重で凌いだ勝太。観戦組もとりあえず安堵した。
「よ、よくわかりませんけど、しのぎ切ったってことでいいんでしょうかっ!?」
「ぎりぎりでしたね…………正直、心臓が口から飛び出ちゃうくらいドキドキしました……」
アビドスの面々が口々に感想を漏らす。
一方ジョーとウィンは、眼前の逆転劇を目にして思わずハイタッチをかわした。
******
それはヘリでのデッキビルディング中のことだった。
『父ちゃんのことだから、S・トリガー引けずに革命0トリガーっ!!! っていうこともありそう』
数は少ないが、それなりに勝太の戦いを見てきたジョー。
自身も革命0トリガーで逆転されたことがある以上、デッキにその系統のカードは入れておくべきだと考えた。
『確かになぁ。でも正直な話、ボルドギは高パワーぞろいのディスペクター相手だと分が悪いし……』
勝太の革命0トリガーといえば、『ボルシャック・ドギラゴン』。しかしそのパワーは12000であり、フィニッシャー級のディスペクター連中には到底かなわないのだ。
二人で頭を悩ませていたジョーは、カードボックスの中からあるカードを見つける。
『あ、じゃあこっちは!? ルシファーおじさんが使ってるやつ!』
『っ、なるほど、『ミラクル・ミラダンテ』か!! ディスペクターには結構コマンド持ちいるし、案外刺さるかもしれないぞっと!!!』
こうして意見はまとまり、いつものボルドギの代わりにミラクル・ミラダンテが採用される運びとなったのである。
******
「いつもの俺だったら『ボルシャック・ドギラゴン』なんだが――――――今回はあいつらの采配に助けられたぜ」
勝太がジョーとウィンの方へサムズアップ。
二人もサムズアップを返した。
ジェンドルは大焦りだ。余裕をもった勝利のために大量展開を行ったつもりが、たった1枚のカードによりひっくり返されてしまったのだから。
「だが、たった1ターンの猶予だ。貴様の勝ち目はないに等しい、切札勝太ぁ!!!」
確かに、素人目から見たら絶望的な盤面だ。
ディスペクターを大量に展開したことでEXライフが蓄積、ジェンドルのシールドは現在9枚に達していた!
それに加え、Vol-Val-8の能力で増やした手札から、ドキンダンテのカウンター呪文を撃つことも可能。
耐えしのいだとはいえ、圧倒的ピンチであることには変わりない。だが――――――。
「上等じゃねぇか。大ピンチをひっくり返してこそ、燃えるってもんだぜ!!!!!!」
威勢よく、"主人公"が啖呵を切る。
そしてジョー、ウィン、対策委員会の面々を見て言い放った。
「いいかお前ら、よぉく見とけ!!! 俺の、熱血デュエ魂をなぁ!!!!!!」
額の、ヴァンソーコーに、手がかかるっ!!!
そう、このドローは激しく重いぜ!!!!!!
べりゃああああああ!!!!!!
ヴァンソーコー、わっしょおおおおおおいいいぃぃぃ!!!!!!
からの、俺は引く!!!!!!
たとえこの指がぁ!!!
べぇっきり折れようとぉ!!!!!! ごうごうに燃えちまおうとなぁ!!!!!!
ドカンと、いくぜぇ!!!!!!
ドォロドロドロドロドロドロドロ、ドロドロドロドロドロオオオオオオォォォォォォ!!!!!!
来やがったぜぇ!!!!!!
俺の!
切、札!
かっ、たああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!
そして、ヴァンソーコーは貼り直されない!
勝太の額に、ごうごうと青白い炎が灯るっ!!!
「っしゃあ!!!!!! こっから、反撃開始だぁ!!!!!!」
切札を引き込み、ビクトリーモードを解放した勝太!!!
果たして、ジェンドルの鉄壁の守りを打ち砕き、逆転することはできるのかっ!?
次回、決着っ!!!!!!