デュエル・マスターズ Aoharu Revolution 作:カレーパンパフェ
給食部のトラック。
あるときは普通に食材を運搬する役割を担い、またあるときはテロリストの移動手段として強奪され、挙句の果てに川底に沈んだり。
様々な用途で活躍しているこのトラックは、今日も今日とて普通ならあり得ない使い方をされていた。
「どわああああああ!?」
「畜生、あの女いかれてやがる!」
「誰か闇のマナ持ってこーい!」
脅しとタコさんウィンナーの誘惑に屈し、ジャガイスト側へ移った末端のアビスたち。そんな彼らをジュリはトラックで容赦なく撥ねたり轢いたりしていた。
なお本人はそんなことしてるつもりはない。ブレーキが上手く踏めなかっただけであり、悪気は一ミリもなかった。
「にしたって恐ろしいけどな‥‥‥」
「勘弁してください‥‥‥私だって轢きたくて轢いてるわけじゃないんですぅ‥‥‥」
ドン引きする勝太の様子を見て、自らの無意識な蛮行に慄いているジュリは若干涙目。
しかしてブレーキなど踏んでいる余裕はないので仕方あるまい。
ちなみにトラックの横には、撥ね飛ばす気まんまんで自転車アタックを仕掛けているシロコがいた。こちらに関しては微塵の容赦もない。挙句の果てには、撥ね損ねたアビスに対しヘッドショットを決める始末だ。両手をハンドルから離しても運転してのけるとは、とんでもないバランス感覚である。
「ってか、なんで自転車がトラックに並走できてんだよ! そこがまずおかしいだろ!」
「ん、日々の努力のたまもの」
「そんなんだけで片付けてたまるか!」
キヴォトスで生徒が起こすことはいろいろと規格外。勝太もそろそろツッコみ疲れているところであった。
「ちくしょう、俺がツッコミやるのなんてたまにでいいんだよ‥‥‥基本ボケ側だろ」
「いや知らないよ」
意味不明な文句をたれる勝太だったが、ミロクは冷たくあしらった。
現在トラックの助手席に座る勝太。どうもシッテムの匣で指揮できるのは生徒くらいなものだったので、主にシロコの方に指示を飛ばしている。そもそもカレンは指揮しなくても勝手に一人で動けていた。さすがは忍者といったところか。
「メイ様さぁ、ちょっとの間だけでいいから、パジャマに着替えてくれない?」
「えぇ‥‥‥せっかく起きたのに。もしかしたらまた長いこと寝ちゃうかもだし、あんまり気が進まないかも」
「なんなら分裂できない?」
「カードを変えられたらできないよ‥‥‥」
「となると、EXウィンじゃない方向性で考えるか。イザナイも採用できないなら展開の速度も落ちる‥‥‥どうするウィン?」
「じゃあやっぱり、数の力で攻める方向で行こう。4ターン目には動きたいし、マナ加速突っ込んでみてもいいかも」
「何言ってるかぜんぜんわかんない」
トラックの後部座席では、ひどい揺れに耐えながら四人がデッキ構築を行っていた。とはいっても実際にやっているのはウィンとウガタの二名だけなのだが。
そして彼らの邪魔にならないよう、陰ながらカレンがそこを守っている。姿は確認できないが、流れ弾が来るとどこからともなくクナイが放たれそれを弾く。バイクで追従してくるアビスがいればいつの間にかまきびしが巻かれ、車輪がパンクする。忍者らしき防衛の仕方であった。
そうこうしているうちに、激戦区と形容できるような地帯に入る。
屋根の瓦や歩道のレンガなどは戦いの余波であちこち剥げており、窓ガラスが割れているところもある。被害は甚大といえなくもないが、これで済んでいるならまだかわいい方だろうと勝太は思う。
本気のクリーチャー同士がぶつかりあったときの被害はこんなものでもない。ジャガイストはあの振る舞いからして手加減など考えていなさそうなので、ジャシンの方がかなり手を抜いているのだろう。勝太はそう推測していた。
******
「あなた、私を相手にして手を抜くとは! なんてひどい真似を!!!」
「仕方あるまい。街を壊すとタコさんウィンナーを減らされる」
ジャガイストが放った深淵の炎を、ジャシンはあくびしながら手を振り払い霧散させる。そのまま腕を振りぬき軽めのボディブロー。みぞおちにクリーンヒットされたジャガイストは呻き声をあげる。
負けじとジャガイストは尻尾を振り回して攻撃するが、逆にその尻尾を掴まれてしまう。そのまま尻尾を脇に抱えたジャシンは、ジャガイストを豪快にフルスイング!
「まあ、これくらいはいいだろう。ふんっ!」
「ごばほぇ!」
ジャガイストの巨体が、広場に脳天から叩きつけられる。
歩道は爆ぜ、ひび割れ、広範囲に揺れをもたらした。
「くっ、まだまだ‥‥‥」
「さすがにしぶといな。手を抜いた状態では倒しきれんか」
「あなた、深淵にいたころは私に対し手を焼いていたはず‥‥‥軽くあしらうとは、一体どのように進化を遂げたのです!」
「ぬ、どのように、か」
ジャガイストに問いかけられたジャシンはしばし考え込む。配下がいうには「愛」とやらの影響が大きいそうだが、自覚が薄い。他に強さにつながるようなものと言えば――――――。
「おそらく、タコさんウィンナーのおかげだろう」
「は?」
ここに勝太やウィンがいたら、なんでそういう結論になるんだよ! とツッコまれていたところだろう。しかし、実際彼らはここにはいない。ジャシンは自信たっぷりに回答したのであった。
「あの肉肉しい見た目、香ばしい香り、口のなかでパリッとはじける感触、濃厚な肉汁のうまみ‥‥‥あれを喰らった我は闇のマナ不足の状態からたちまち回復し、エネルギーに満ち足りたのだ!」
「え、嘘ですわよね!? 下賤な下等生物どもの食事で、あのジャシン帝が満たされたとでもいうおつもりで!?」
「無論、そうだ!」
「はぁ!?」
深淵にいたころとは大違いの様子にドン引きするジャガイスト。しかし整合性はとれる。先ほどジャガイストが食堂を襲撃した際、ジャシンはド:コータに形の似た何かを喰らっていた。直後に始まったその戦闘に影響していてもおかしくはない。
何よりそこまでジャシンが熱弁していると、彼女としても気になってくるのだ。
タコさんウィンナーとは一体どのような代物なのか、と。
そしてある意味最悪のタイミングで、フウカたち逆襲チームがジャガイストのもとに到着したのだった。
「おいクソトカゲ! 食堂壊された仕返しに来たぞ! フウカが!」
「ちょ先生!? あんまり煽るようなこと言わないでください!」
「だって、事実じゃん」
「確かに事実にはなっちゃいましたけど!」
半ば周囲のノリに乗っかる形で逆襲に参加したフウカ。当事者でありながら、いまいち実感が薄いのだった。改めてみると、鋭い牙や爪、とげとげしい体、ぎょろぎょろと動く眼と、美しいながら得も言われぬ恐ろしさを感じるジャガイスト。今更ながらこんなことに付き合ったことをフウカは後悔していた。
「二本ヅノの小娘。まさか、矮小な存在の分際で私に挑む気なのでしょうか」
「いや、なんというか、その場の空気にあてられたというか‥‥‥ここまでみんなが協力してくれるなら、一発行っとこうかなって」
「‥‥‥そんな態度で挑んでこられても、こちらとしては乗り気にならないのですが」
ジャガイストからしたら、フウカなどジャシンを怒らせるための餌にすぎない。微塵も興味など湧かないのだ。
「いや‥‥‥そうでもないかもしれませんわね」
ふと、先ほどの会話を思い出したジャガイスト。自分でもバカバカしいとは思いつつフウカに聞いてみることにした。
「そこの小娘。‥‥‥‥‥‥タコさんウィンナーとは、なんでしょうか」
「なにって、普通の食べ物だけど」
「そんなはずありませんわ!?」
「いや、ほんっとうに、ふっつうの食べ物。そこらへんのお店で売ってるよ?」
ジャガイストは生まれて初めてかどうかというレベルで困惑していた。一般的に流通している食べ物であれば、なぜジャシン帝があそこまで夢中になるのか? 闇のマナが枯渇したジャシン帝を回復させるほどの効能があるのか?
全てにおいてジャガイストの考えすぎであった。そして着々と勘違いを拗らせていく。
「いや、わざわざ私に教える義理もないということですわね‥‥‥ああ、そうだ」
「おいおい、今度は何を思いついたんだよ」
ジャガイストの一挙手一投足に警戒する一同。しかし次に飛び出してきた言葉はあまりにも拍子抜けであった。
「そこの小娘。私に挑みたいと言っていましたわね、受けて立ちましょう」
「え、それはどうも」
「ただし、私が勝った暁には、お前が所持しているタコさんウィンナーとやらを、すべて私に捧げると約束しなさい!!!」
「「な、なんだとぉぉぉ!!!???」」
「は?」
言うまでもないが、大真面目に驚いているのはウィンとジャシン。フウカは提示された条件に心底あきれ果てていた。
「正直、負けたらお前を食べてやるとか言われるのかと」
「は? お前のようなあばずれ、腹の足しにもなりませんわ」
あばずれ呼ばわりにはさすがにイラっとしたものの、クリーチャーと人間の価値観なんて違うんだし、と割り切る。
ジャガイストが何言いだすか分かったものじゃなかったので内心怯えていたフウカだったが、バカバカしくなって肩の力が抜けていた。
「じゃ、条件をそっちが提示したんだから、勝負の内容はこっちで決めるね」
いつもの呆れ顔をしながらデッキを抜いたフウカ。メイが貸してくれたデッキにウィンとウガタが調整をくわえた、突貫ながらも扱いやすいデッキだ。さいこークラブが食堂に入り浸っているおかげで、なんとなくはルールが分かっているフウカ。ウィンとウガタ、メイから詰め込まれたノウハウをなんとか自分の中で消化しつつ、ジャガイストへと挑むっ!
「‥‥‥なるほど、デュエル・マスターズですか。いいでしょう、紙しばきなら私に勝てると驕ったその態度、完膚なきまでに叩きのめしてあげますわ!!!」
フウカ 開店! グランメゾン・ドゥ・メイ様
VS ジャガイスト 深淵を貪りし邪幽
デュエマ、スタート!
かなり強引なノリで始まったフウカのリベンジ、もとい初デュエマ!
果たして、ジャガイストの実力は! そしてフウカはどのような戦法をとるのだろうか!
「えーと、先攻はドローなしだっけ」
「そうそう」
「ありがと。っと、最初は多色のカードを置くといいんだっけ‥‥‥?」
さいこークラブの活動を間近で見ていたものの、まだデュエマのルールはあいまいなフウカ。そんな彼女の様子に、ジャガイストは苛立ちを隠せない。
「ちっ、どれだけの強者かと思えば初心者ですか。舐められたものですわね」
「ただの初心者じゃないぞっと! 俺とウガタンがデッキの回し方しっかりレクチャーしたからな!」
「ちょっ、ウィン! あんま目立つようなこと言うなって」
ジャガイストの標的にされかねないと少しビビるウガタ。一方のウィンは怯えの感情なんて微塵もわかないようで、親友のふるまいに不思議そうな顔をしていた。
その発言を聞き、ジャガイストは考えを改める。なかなか出番こそなかったが、斬札ウィンの戦いぶりは彼女も把握しているのだ。闇の王状態での的確なカード捌き。通常時であっても様々な文明のカードを使いこなすテクニックは健在。そのような人物から教えを受けたとなれば、多少なりとも警戒はしておくべきだろう。
「いいでしょう。闇の王が手を貸したというその実力、見せてもらいましょうかぁ!!!」
「私初心者だし実力なんか皆無なんだけどぉ!!!」
もはや目に涙すら浮かびそうな勢いで困惑するフウカであった!
しかし、初心者という自認とは裏腹に、しっかりデッキを回すことに成功していた!
「トレスをタップして、ヴィヤンドゥの‥‥‥えーと、ハイパーモードを解放! そのままド:ノラテップを攻撃!」
序盤からフウカはドリームメイトたちを展開し、攻め立てていく。ヴィヤンドゥがド:ノラテップに攻撃を仕掛け、そのまま殴り倒す。しかし倒れたと思われたそれはヴィヤンドゥをその鋭い口ばしで突き刺し、両クリーチャーは共倒れとなった。
「あ、あれ?」
「あちゃー‥‥‥ド:ノラテップはスレイヤーだぞっと」
「でもバトルに勝ったから、ヴィヤンドゥのハイパーモード効果は使えるよ!」
「そ、そっか。じゃあ山札をめくって‥‥‥ラビシェフをバトルゾーンに!」
外野のアドバイスを受けながら、フウカは着実にアドバンテージを稼いでいく。しかしジャガイスト側もただ黙ってやられているわけではない!
「『力が欲しいか?』」
フットレス:トレースの力により山札がめくられる。その中身を見たジャガイストは、興奮のあまりところどころ上品さをかなぐり捨て、高らかに宣言する。
「ぎゃはははっ! 来ましたわ、私の切り札は私自身、『邪幽 ジャガイスト』のおでましですわー!!!」
「おぉ‥‥‥来るのね、かつてジャシンすらも困らせたという、アビスドラゴンの一角!」
「え、ジャガイストってそんなにすごいやつだったの?」
「なんで持ち主のあんたが知らないのよ」
実は持ち主でありつつも、あんまりアビスたちのことがよく分かってないウィンである。面白そうなものには首を突っ込みなんでも研究対象にしかねないミロクからすると、意味が分からなかった。
ジャブラッドよりもジャシンに従うことは少なく自由奔放。幽玄にして狂暴。それが、『邪幽 ジャガイスト』である。その力は強大であり、一度の顕現で二体の眷属を同時に呼び出すことが出来るのである。マーダン=ロウがその炎を燃やし、フウカの手札を一枚と、トレスをこんがりと焼いてのけた。その背後にはテレスコ=テレスが立ち、戦況を自慢のレンズで観測している。そして機を見計らい、フウカの手札を一枚撃ち抜いた。先ほどラビシェフの効果で稼いだ手札が、瞬く間にプラマイゼロになる。
「‥‥‥やな戦い方」
「シールドは殴ってこずに、クリーチャーと手札破壊‥‥‥俺もあんまし好きじゃねぇや」
「でも、それが効果的なのも事実だ。ウィンは積極的にシールドを攻めていたけど、黒緑アビスはああいう戦い方もできる」
シロコや勝太がジャガイストの戦術に難色を示す一方、ウガタはそれも戦い方の一つであると肯定的だ。実際問題、相手の選択肢を奪い取り袋小路に追い詰める戦術は確実に勝ちを拾いに行くのに向いている。
「でも、逆に言えばプラマイゼロだからまた増やせばいいよね」
二体目のラビシェフを召喚し二ドローを行うフウカ。このターンは大きくアクションを起こせなかったが、盤石な体勢を整えることが――――――。
「果たして、本当にできたのかしら?」
「え」
ジャガイストが、妖艶に、しかして獰猛にほほ笑む。笑っているのはわかるのだが、その竜から放たれる圧倒的なプレッシャーに、フウカは身震いしてしまう。
「‥‥‥そちらのお二方、言外に私の戦い方が陰湿だとおっしゃいましたね?」
ギクッ、と擬音が浮かんできそうなほどに二人が体を震わせる。あとで報復でも喰らうのかと身構えたが、そんなつもりはジャガイストにはないようだ。
「あらあら、怖がってしまってお可愛いこと。別にとって喰おうって魂胆じゃあありませんわ。陰湿、それすらも闇文明にとっては誉め言葉ですもの」
「えぇ」
「おい待てフウカ。変な目でこっちを見るな! あいつが特殊なだけだ!」
傍からみたらドMそのものなジャガイストの発言。闇文明ってみんなこうなの? とジャシンの方をみやるフウカだったが、視線を向けられた本人は首をブンブン横に振り全力で否定した。そんな様子は意に介さず、ジャガイストは続ける。
「ですが、陰湿というのはあくまで一つの側面に過ぎません‥‥‥。今からは、深淵の眷属、その狂暴性をご覧に入れましょう! あははははははっ!!!!!!」
甲高い金切声でジャガイストが哄笑、たまらず一同は耳をふさぐ。
そしてそれが、蹂躙の合図となる。
開幕を告げるのはフットレス:トレース。力を欲するものに応え、再びその力を振るう。
瞬く間に現れるアビス・クリーチャーたち。
二体目のマーダン=ロウがフウカの手札を再度焼き討ち、さらにはヤバーダン=ロウまで現れる。ヤバーダン=ロウがマーダン=ロウから力を受け取ると、霊体の小さな体はたちまち深淵の超暖炉へと変貌。
ヤバーダン=ロウがフウカのシールド目掛けて攻撃を仕掛けた瞬間、巨体はいつの間にか消失。しかして、代わりに二柱の超越者が姿を現す。片方のラビシェフを殴り飛ばしながら出現する『邪闘シス』、そして――――――。
「あいつ、勝手な真似をしおって!」
「少しばかりお力を拝借しました。お許しください、ジャ・シ・ン・サ・マ?」
おちょくるような言動を取りながら、ジャガイストが革命チェンジにより『アビスベル=覇=ロード』を呼び出す。
「す、すごい‥‥‥湧き出るみたいに、どんどんクリーチャーが」
これこそ、黒緑アビスの真骨頂。たった一度のメクレイドを起点として、ジャガイスト、ヤバーダン=ロウ、覇=ロードの能力がシナジーを起こし、たちまち戦場は深淵で染め上げられるのだ。
数の暴力、圧倒的物量。アビスたちの総攻撃によって、フウカのシールドはたちまち消失した。
「せ、先生、どうしましょう!? このままじゃ先輩負けちゃいますっ!」
「いーや、大丈夫だよ。なんせデュエマの醍醐味は、逆転だからな! フウカー! 諦めるにはまだ早ぇぞお!!!」
アビスたちの進軍に気圧されていたフウカが、勝太からの熱い声援で我に返る。慌ててシールドをチェックすると、割られたフウカのシールド、そのうちの一枚が光輝いた。
「S・トリガー! モーニンジョーの効果で、ゴールドハム・サックスをバトルゾーンに!」
モーニンジョーの能力で現れた大きなハムスターが、サックス型ゴルフクラブを高らかに吹き上げる。するとどうしたことか、アビスたちの動きは瞬く間に止まってしまった!そしてハム・サックスの胸には、超魂レイドにより得た「コアラ大佐の虹勲章」が光輝いている!
「ちっ……では覇=ロードの能力を発動しますわ」
覇=ロードにより二体目のジャガイストが呼び出され、メクレイドが連鎖。テレスコ=テレスが追加で招集された。二体のテレスコにより、フウカの手札が刈り取られる。
「なんとか、耐えた‥‥‥よし」
ド:ノラテップのときの反省を活かし、フウカはジャガイストの盤面を確認。超えるべきは、覇=ロードの攻撃誘導と、二体のブロッカー。
幸い先ほどはジャガイストがシールドブレイクに集中してくれたおかげで、クリーチャー面での被害はゼロ。モーニンジョーとハム・サックスが来てくれたおかげで、ブロックすることもなくラビシェフが健在だ。
「ああ見えて先輩、結構したたかなんですよ」
「だな。目が諦めてねぇもん」
ジュリの先輩評を聞き、勝太はフウカへの認識を改める。これ以上何か言うのも野暮かと思って、他の面々と一緒に固唾をのんで見守る。
(頭数が足りない‥‥‥どうすれば)
ここまで来たら、フウカだって勝ちたいのだ。誘導とブロックに三体吸われると、残りは一体。それではジャガイストのシールドを割り切れない。
悩みに悩むフウカの耳に、声が届く。
『大丈夫だよ、フウカちゃん! 心配することないよ!』
「え、この声‥‥‥メイちゃん?」
『私を呼んで!』
考え込みすぎて、まだドローもしていなかった。
山札から声が聞こえてくる。先ほど出会ったばかりの友達の声を、フウカは確かに信頼してカードを引いた。
「‥‥‥ほんとに来てくれたんだ」
カードから顔を出したメイがにっこり微笑む。つられてフウカも顔に笑みを浮かべると、意を決してジャガイストに向き直る。
「まずは、モーニンジョーをプワソンに進化! その登場時能力で――――――」
いよいよ、フウカの切り札をお披露目するとき!
「『龍后幻獣 パティシエ・メイ様』をバトルゾーンに!」
たくさんのアンティハムトたちが、大きな大きなお皿を運んでくる。そこに空中から落下してきた巨大なスポンジ生地がすっぽりと収まった。その周りをぐるぐると回り、瞬く間に色とりどりの飾りつけを行うクリーチャーが一人。純白の生クリーム、カラフルなフルーツ、仕上げは可憐な花々でデコレーション!
この神業こそ、グランメゾン・ドゥ・メイ様のオーナーシェフにして最高のパティシエ、龍后に選ばれしメイ様の実力であるっ!!! 完成した巨大なケーキを前にして、アンティハムトたちと一緒に決めポーズだ!
対面のアビスたちは、おいしそう‥‥‥と言わんばかりの仕草をしている。デュエル中でなければ、いますぐケーキに飛びついていたことだろう。
「まずはプワソンで覇=ロードを攻撃!」
ラビシェフの能力で +3000、ハムサックスの超魂X 効果でさらに +3000! いまフウカのクリーチャーは全員パワー +6000 となっているのだ!
うなり声を上げながら覇=ロードに迫る料理猫! プワソンはバイクの車輪を狙うことで覇=ロードの無力化に成功した! さらにプワソンの効果でヴィヤンドゥが姿を現す!
「ちっ、幻影とはいえ、猫ごときに我が弄ばれるのは気分が悪いな」
「まあまあ、これもフウカが勝つためだぞっと。それにフウカが負けたら、タコさんウィンナーぜーんぶ取られちゃうんだぜ?」
「‥‥‥! そうだったな! 行けー、小娘! なんとしてもジャガイストに勝つのだ!」
「ったく、調子いいなぁ」
あまりの変わり身にげんなりするフウカ。しかし動機はどうあれ、応援をしてもらえるのは普通にありがたい。
『フウカちゃん、一発、行っちゃおっか!』
「だね! メイちゃんでジャガイストを攻撃!」
『へぇ? 獣畜生が、この私に勝てるとでも!?』
口調は丁寧、しかし舐められたと思ったジャガイストは確かに憤慨している。怒りのままにメイ様へむけて闇のブレスを放った! それを見たラビシェフはメイ様へ向かってフライパンをぶん投げ、彼女は空中でそれを華麗にキャッチ! なんとフライパンの底面でブレスを防いでみせた! ちゃちな道具で自分の攻撃を防がれたことに、ジャガイストは怒りと驚きを隠せない!
『はぁ!?』
『ふんっ!』
霧散したブレスの残滓を、フライパンをぶん回して振り払うメイ様! そのままジャガイスト目掛けて急降下! その時、背後からサックスの音が聞こえ、同時に虹勲章が吹き飛んできた! ハムサックスがつけていた勲章を、サックスの開口部に乗せて思いっきり吹くことでメイ様に渡したのだ! そう、パワーアップしたメイ様のパワーは、ジャガイストを超えた 12000!!!
『んー‥‥‥うりゃああああああ!!!!!!』
かわいらしい掛け声とは裏腹に、振り下ろされるのは純粋な物量、重量の塊。それは、巨大化したフライパンだった。ジャガイストの脳天を、メイ様が巨大なフライパンで思いっきり叩き潰した!!!
『ぎゃああああああ!!!???』
『じゃ、ジャガイストがやられたぁ!?』
自分たちの総大将は、フライパンに頭を下敷きにされ、断末魔を上げながら地面に叩きつけられた。ほどなくして大爆発! こんなショッキングな光景を見せられては、いかに深淵の眷属と言えど怯えざるをえない。
そしてどことなく敗戦ムードが漂ったアビスたちに、さらなる追い打ちがかかる!
「あれは、ボルパンサーか!」
パティシエ・メイ様は攻撃時にドリームメイト・メクレイド5 を行うことができる! その力で『幻獣竜機ボルパンサー』を呼び出していたのだ! メイ様、ラビシェフ、ヴィヤンドゥ、プワソン、ハム・サックス。5体の力がボルパンサーに集まる! ラビシェフと虹勲章の効果も合わさって、いまのボルパンサーのパワーは、驚異の24000だ!!!
「ボルパンサーで、ジャガイストのシールドと、クリーチャーをぜんぶ破壊っ!!!」
ボルパンサーが吼える。ドリームメイトたちの力が龍炎となって、その拳に集まる! 轟音とともに放たれた燃える一撃は、ジャガイストの盤面を蹂躙した! シールドが吹き飛び、アビスたちが苦鳴を上げ次々と倒れていく。
「そんな嘘ですわよねぇ!?‥‥‥この私がぁ!!!」
「あまりそういう言葉を使わんほうがいいぞ。小物に見える」
「ぐっ‥‥‥‥‥‥!?」
悔しさのあまり叫ぶジャガイストに、ジャシンからの言葉のナイフが突き刺さる。下手するとさっきのフライパンよりも痛い、痛烈な刃だった。
「ハム・サックスでとどめ!」
威勢のいい鳴き声を上げながら、ハム・サックスが宙へ飛び上がりゴルフクラブを振りかぶって――――――。
「ごぼぇあぁぁぁぁぁぁ!!!」
頭部をゴルフボールに見立てられたジャガイストは頬にフルスイングを喰らい、吹き飛びはしなかったものの、バランスを崩して倒れ伏したのだった‥‥‥。
「‥‥‥ここまでメタメタにしなくても」
「いーやフウカちゃん、やるんなら徹底的にだよ!」
メイはすがすがしい笑顔だったが、リベンジを達成した当人は少し困ったような表情だった。
「でもまぁ、リベンジやってよかったかもね」
フウカは自分の胸に手を当てる。シールドをブレイクされたときのハラハラ感、逆転に成功したときの高揚感、そして自分のカードを信じて掴み取った勝利。
「ウィン! デュエマって面白いね!」
「‥‥‥!! だろ!!」
今まで見ているだけだったが、自分でやってみてその面白さを感じ取ったフウカ。ウィンは満面の笑みでサムズアップして見せた。他の面々にも笑顔が灯る。
こうして、ジャガイストが巻き起こした比較的小規模な闘いは、無事に幕を下ろしたのだった。
想定デッキレシピとかって皆さん興味あったりするんでしょうか。出して!ってコメントが来るようなら作ってみようと思います
エピローグ書いたら、エデン条約編行きます