デュエル・マスターズ Aoharu Revolution 作:カレーパンパフェ
開店祝いの花束を持って、勝太はフウカと共にメイのお店を訪れた。グランメゾン・ドゥ・メイ様、キヴォトス出張店の開店である。
最初に訪れたゲヘナは当然論外。理想はトリニティあたりだが、うちの方に入りすぎると土地代が高くなり高級志向にせざるを得なくなるため、トリニティ郊外に拠を構えるデ落ち着いた。開店資金はシャーレの全力協力に加え、勝舞のポケットマネーが少々。超獣世界の物に限りなく近い屋外型のレストランを再現し、観葉植物や花々を大目に配置。大都市のなかに突如おとぎ話の世界が切り取られて現れたような、不思議な雰囲気を醸し出していた。
バックヤードから店内を覗くと、人型に変身したアンティハムトたちがせっせと接客を行っている。人前には人間の姿を取れる、または人に近い姿のクリーチャーを配置し、獣人よりのクリーチャーは厨房に配置と、客に気を遣っていた。
「人とクリーチャーが仲良くなる、俺からしちゃあり触れた話だけどな‥‥‥」
「先生のところがどうかは知りませんけど、まだクリーチャーが発生仕立てのキヴォトスじゃ無理もないですって」
「まあ、こういう形で徐々に慣れてもらうのがいいかもね」
現在はケモミミコンセプト‥‥‥と見せかけた本格派レストランとして徐々にSNSなどで話題になっている様子。クリーチャー経営の店舗ということで少なからず興味を持つお客さんも多いようで、客足も伸びていた。
「いちかばちかだったけど、キヴォトスにお店出してみて正解だったよ~! フウカちゃんもありがとね、おかげでいい伝手をゲットできたよ!」
「‥‥‥ははは」
メイは喜んでいるが、フウカとしては微妙な顔をせざるをえない。なんせその伝手とはあの美食研究会なのである。メイの料理はちゃんとハルナのお眼鏡にかなったようで美食研の公式SNSでも取り上げられた。そして美味しいレストラン選びに美食研の口コミを参考にする人も少なくないので、一応は役に立っているのである。
「頼まれたとはいえ、よくテロリスト紹介したな」
「ハルナのやつ、味覚と食への真っすぐさだけは信用できるので。たいていは暴走してお縄についてるんですけどね」
「私がオーナーのお店が爆破されるなんてあるわけないからね! お料理もサービスも衛生周りも完璧なんだから!」
「まあプレオープンに招待してもらったときにそれはわかってたからね。だからハルナ呼んでも大丈夫だろうとは思ったよ」
「それに万が一爆破されても建て直せばいいしね~。クリーチャーワールドだと、レストラン破壊されるのなんて日常茶飯事みたいなものだし」
「勘弁してくれよ‥‥‥シャーレからも費用出してんだから」
その後学校がお昼休みに入り客が次々とご来店。慌てて厨房のヘルプに入るメイを見送ると、勝太とフウカはトラックに乗ってゲヘナ学園の方へと戻っていく。
「なんかわりぃな。ほんとなら俺が運転するシチュだろ、こういうの」
「別に気にしなくても大丈夫ですよ」
「免許、宇宙船のしか持ってねぇからさ」
「それはちょっとよくわかんないです」
トリニティの敷地を離れたあたりで、フウカはトラックの速度を上げた。今日は食材を積んでいるわけでもないので、多少スピードを出しても問題ない。加速してもいいかと断られた勝太はOKサインを出したが、想定以上だったので面くらう。
「け、結構飛ばすな」
「今日はウィンとデュエマする約束してるので。食材の仕込みもあるし、休憩時間は限られてるので急がないと」
「お! あの後もデュエマ続けてんのか!」
「やってみると思ったより楽しかったので。さいこークラブにも入りましたよ」
「それは俺としても嬉しいけどよ‥‥‥時間あるのか?」
一日に四千人分の給食を作っているらしい給食部。デュエマをしている時間すら惜しいのではないかと勝太は問うが、まったく休憩時間がないわけでもないらしかった。できるのはせいぜい一、二戦くらいだが、フウカ的にはそれで十分だった。
それに、あんなに楽しそうにしている様子を間近でみてきたのだ。さすがのフウカも歯がゆかったので、メイからデッキをもらったのはいいきっかけだった。
「というかあんだけデュエマしまくれるウィンもウガタもカレンもおかしいですよ。全員そろってデュエマバカです」
「まーそりゃ仕方ねぇよ!」
がっはっはと笑う勝太に、困ったような、しかし優しい笑みをフウカは浮かべる。
「まあとにかく、さいこークラブの所属生徒としても、シャーレの所属生徒としても、改めてよろしくお願いしますね、先生」
ついでに給食部の面倒も見てくださると助かります、とちゃっかりフウカは付け加える。勝太は快く返事をしたのだった。
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「とまあ、さっきはフウカとの絆が深まったいい一幕だったと思うんだが‥‥‥」
倒れ伏すさいこークラブメンバー。目に涙を浮かべるジュリ。なぜか食堂内で増殖するド:コータに似た謎のタコ型生物と、必死にそれらを深淵へ押し込むジャシンとジャガイスト。
「落差がひどすぎるだろうが!? なんだこの地獄絵図!」
「なにが! どうして! こうなるの!!!」
「ごめんなさいせんぱいーーー!!!」
今度はフウカが泣きそうになりながら絶叫する。それに耐えかねてジュリも叫びながら謝り倒す。まさに阿鼻叫喚であった。
後ほど語られた事の顛末はこうだ。
あのデュエルの後、みかねたフウカはジャガイストにタコさんウィンナーを食べさせる約束をしたのだが、その日時までは決めていなかった。多忙のフウカはその約束をすっかり忘れていたところ、ジャガイストがSDサイズで食堂に襲来。今すぐタコさんウィンナーを焼かなければ、元のサイズに戻り食堂を破壊する、と脅したのである。また食堂を壊されてはたまらないと意を決したジュリが調理に挑戦し‥‥‥この有様であった。
「ジャガイスト! 貴様があの者にタコさんウィンナーを焼かせるからこうなるのだ!」
「仕方ねぇですわよね!? あの女が食物からアビスを生み出すなんて想像もしてなかったですもの!」
「あんなのが我の眷属であってたまるか!!!!!!」
「もう口ふさげお前ら! ジュリが死にそうな顔してるだろ!」
「大丈夫、大丈夫だからねジュリ‥‥‥」
ボロクソ言われたジュリが泣きだしてしまい、勝太とフウカは全力でフォローに回る。
このあと先日のデュエルを再現するかのように、ジャガイストが勝太と鬼の形相のフウカにデュエマごしにボコボコにされたのは言うまでもない。
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「‥‥‥フォローありがとうございます、先生」
「明日の献立がカレーでラッキーだったぜ」
「あの時は冗談だと思ってたんですけど‥‥‥まさか本当に手伝ってもらうことになるとは」
さいこークラブの面々を救急医学部に担ぎ込み、ジャガイストに制裁を降した後。見かねた勝太は給食部の活動を手伝うことにしたのだ。幸い明日の給食はカレー。一流のカレーパン調理技術を持つ勝太が、カレーを作れないわけがないのである。
「にしたって、こんな大量のは作ったことねぇけど」
「でしょうね」
先ほど泣いていたジュリは慰められて元の調子を取り戻し、せっせこ野菜の皮をむいている。さすがに何の会話もないまま四千人分のカレーを作るのは酷だったため、勝太は一つ気になることを聞いてみることにした。
「そういやメイんとこ行ったときにさ、やたらフウカのことじろじろ見てくるやつがいた気がするんだが‥‥‥なんでだ?」
「たぶん――――――私がゲヘナの生徒だからだと思います。見てるの、トリニティの生徒が多かったんじゃありません?」
もう一個浮かんだ可能性として「美食研究会によく誘拐されている人だ」的な感じで見られている可能性もゼロではなかったが、そんな可能性あり得てほしくないのでフウカは口には出さなかった。
「たしかに、なんか白っぽい制服着てるやつが多かったな。そういや、あんまトリニティの領内でゲヘナの学生見なかったな、郊外なのに」
「キヴォトスでは昔から、トリニティとゲヘナは仲が悪いって風潮があるみたいです」
まあ全員が全員じゃないと思いますけどね、とフウカはカレーの味見をしながら答えた。フウカは頭に大きな二本ヅノが生えているため、他の生徒より目立ちやすいのもあるだろう。フウカの話を聞き、勝太はむー‥‥‥っと唸った。
「そりゃ人によって好き嫌いはあるだろうけどよぉ」
「好き嫌いってよりかは、差別に近いですよね。トリニティ側も、もちろん私たちゲヘナ側も」
「俺も昔は色眼鏡で見られてたもんだけどよ‥‥‥実際にそいつと触れ合ってみねぇと、なかなか外してくれねぇからな」
勝太も昔、「切札勝舞の弟」という色眼鏡で長いこと見られ続けていた。勝太のそれに関しては素晴らしい友人やライバルのおかげで気にしなくなっていたが、色眼鏡が学園全体を覆う巨大レンズと化していると話は別である。
「たまたまで誰かどうしがダチになれたとしても、学園全体に広がってる雰囲気ってのは簡単にはなくならねぇよな。学園のトップ同士がダチになっちまえば早いと思うが」
「それは難しいんじゃないでしょうか」
トリニティはともかく、万魔殿のアレがトリニティと仲良くするとは到底思えないフウカであった。
「今度のなんとか条約で、そこらへんが上手いことまとまるといいんだけどな」
「‥‥‥確か、エデン条約でしたっけ。ちらっとニュースで見ましたよ」
「あー、そうそう、そんな名前だった。ヒナともそこんとこ話したんだけど、だいぶ厄介そうな案件みたいだ」
「風紀委員長がめっきりさいこークラブに来なくなったの、それが理由か‥‥‥」
エデン条約。大雑把にまとめると、ゲヘナとトリニティの、恒久的平和を実現するための第一歩だ。その締結の中心人物の一人がヒナであるため、彼女が多忙になるのもさもありなんである。
「で、ヒナじゃない方‥‥‥トリニティのお偉いさんから呼ばれてんだよな。まーた面倒なことに巻き込まれないといいけどな」
「‥‥‥先生も、結構忙しいんですね。カレーパン巡りの話ばっかりするから、てっきりお暇なのかと」
「こう見えてな、結構忙しいんだよ俺」
「誇るようなことじゃないと思いますけど‥‥‥なんだかすみませんね、手伝っていただいて」
「いいってことよ! 仕事よりも生徒の助けになるのを優先するのが先生ってもんだろ!」
「ありがとうございます、先生」
そうして一旦会話が終わり、夜までに仕込みを終わらせるためにペースを上げる。調理器具やガスコンロが奏でる音が食堂にこだましていたのだった。
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こうして様々な生徒との交流を深め、ときに面倒ごとに巻き込まれつつ、勝太の日常は流れていく。そして、約束の日が訪れる。
「んーと、来るのはアビドスの一件でお礼しに行ったとき以来か? しっかし立派だなぁ」
いかにもな雰囲気を漂わすお嬢様学校、トリニティ総合学園!
勝太と生徒たちの次なる闘い、その舞台となる場所である!
そうとは知る由もない勝太は、再びトリニティの門をくぐる。
この先勝太に待ち受ける出会い、戦い、そして選択とはっ!
次回より、エデン条約編開幕っ!!!