デュエル・マスターズ Aoharu Revolution 作:カレーパンパフェ
来たぜアビドスっ! 勝太と対策委員会っ!
シャーレが稼働して早数日。
「先生っ! 何ですかこの領収書の山は!」
ユウカが勝太に大量のレシートを突きつける。
それらはすべて、カレーパンの購入記録であった!
「なにって、カレーパン買ったレシートだろ。言われた通り、ちゃんと捨てずにとっといてあるぞ」
「それはそれ、これはこれです! いくら好物だからといって、こんなに購入する必要ないでしょう!? 奥様も毎日作ってくれてるじゃないですか!」
「わかってないなぁ・・・・・・。 カレーパンは、いくらあっても困らないんだぜ!」
「そんな笑顔で言われても納得できませんっ!!」
その後もユウカに小言を言われ続ける勝太であった。
ユウカからすると、初めて会ったときは案外頼もしい人だな、とか思ったりしていたのだが――。
蓋を開けてみれば、自分の貯金どころかシャーレの予算までもカレーパンに使い込むとんでもない大人だった。
とても所帯持ちとは思えない。
「はぁ・・・・・・まさか知り合ってそんなにしないうちに、こんなガミガミ言われるような関係になるとはなぁ」
「こっちだって、ガミガミ言いたくて言ってるわけじゃないんですけどね・・・・・・」
それを聞いて、子供を叱る親みたいだな、と勝太は思うのだった。
つまり叱られている自分は子供の立場ということである。
解せぬ。
自分は生徒たちを導く大人という立場にいるはずなのだが。
「はぁ・・・・・・。それじゃあ、私はシャーレのカフェに寄ってから帰りますから。カレーパンにかまけてないで、ちゃんと仕事してくださいね」
「はーい」
ほんとに親に叱られる子供じゃねぇか、と再度思う勝太なのだった。
「・・・・・・それにしても、でこちゃんのカフェは大人気だな」
シャーレ併設カードゲームカフェ「喫茶たきがわキヴォトス支店」。
るるちゃんが経営する喫茶店である。
Sサイズドリンク一杯無料という破格のサービスでお金のない生徒にも優しい。
さらには店内には小規模なカードショップもあり、店内限定でデッキの無料貸し出しサービスなども行っている。
フリードリンクサービスを打ち出したにもかかわらず、経営が黒字であるあたり多くの客が訪れているのだろう。
「ほんのちょーっぴりムカつくけど、ユウカの言ってることは正論だわな。でこちゃんも頑張ってるみてぇだし、オレだって仕事しねぇと」
「生徒に言われてムカついとるのってどうなん・・・・・・?」
カツドンが呆れた目で勝太を見ている。
その手には一枚の封筒が握られていた。
「ん? その手紙はなんだ?」
勝太が尋ねると、カツドンに代わってアロナが回答をした。
『その手紙は、アビドス高校の方からの救援要請です。・・・・・・少し不穏な内容でしたので、先生には早めに目を通してもらった方がいいと思いまして』
「アロナちゃんに頼まれて、ワイが持ってきたんやで。ほれ」
勝太は二人にサンキューな、と感謝を述べてから、手紙に目を通した。
奥空アヤネという生徒から届いたその手紙の内容は、思いのほか衝撃的だった。
地域の暴力的組織に学校が狙われており、その対応で補給が底を突こうとしている。
このままでは、暴力組織に学校を占領されてしまいそうである――と。
「これは・・・・・・結構切羽詰まってそうやな」
横から手紙を覗き見たカツドンが、思わずといった感じでつぶやく。
「・・・・・・よし」
勝太は手紙を読み終えると、机の引き出しを漁り始める。
ほどなくして、勝太の身分証明証が入ったIDケースとネックストラップが現れた。
「そんな大事なもん、引き出しの奥にしまっとったんかいな」
「持ってくの忘れなかっただけ褒めてほしいけどな」
小言に対する勝太の返事に、カツドンはやれやれ、とため息を吐いた。
IDケースを首から提げ、腰には「切札在中」と書かれたデッキケースを装着する。
「ぃよしっ! 善は急げだ! アビドス高校に向かうぞ!」
「よっしゃあ! シャーレの初仕事、ワイも張り切っていくでぇ!」
『二人とも、その調子です! シャーレの初めての依頼を解決しに行きましょう!』
勢いづく三人!
そのまま三人はアビドス自治区へと向かい、そして――。
「ダレカ・・・・・・タスケテ」
市街地のど真ん中で干からびていたぁ!!
***
『・・・・・・で、なんでこんな時でもお二人はカレーパンを食べてるんですか?』
アロナがドン引きといった感じでコメントする。
カバンからカレーパンを取り出して貪り喰らっていた二人は、食べ終わると同時にすっかりツヤツヤになっていた。
「当たり前だろ! カレーパンは命の源だからだ!」
『まぁ、野菜もお肉もパンも一度に食べれますけど・・・・・・ぜったいのど乾きますよね?』
揚げたてから程遠く、ぱさぱさになったカレーパン。
そんなものを食べれば、たちまち口の中がカラカラになっていくのは誰でもわかるようなことだろう。
「アロナちゃんの言う通りやで・・・・・・。そろそろ水分摂れる場所を探さないとワイら干からびてまうわ」
現在、遭難三日目。
意気揚々とアビドス自治区にやってきたはいいものの、学校は見つからない。
地図アプリにも現在地は映らない。というかそもそも回線が雑魚であった。
結果、街のど真ん中で遭難するような事態になってしまったのである。
こんな事態になると思っていなかったためろくな食料もなし。大量のカレーパンと一本の水筒で繋いだものの、とうとう限界が訪れた。ちなみにいま貪ったのが最後のカレーパンである。
「カレーパンを食べながら死ぬのなら・・・・・・本望だ」
『まだこの作品始まって三話目ですよ!? 主人公が亡くなってバトンタッチ! っていう展開をやるにしても早すぎます!』
アロナからのメタいツッコミは、しかし勝太に届かない。
「あーまって、これほんとうにやばいやつだぁ・・・・・・」
「あかん、また勝太が干からび始めたで!」
『先生、しっかりしてください!』
カレーパン頭の天使が、視界の隅で微笑んでいる。
その笑顔に釣られ、勝太の魂が天国へすーっと連れていかれ――とは、ならなかった。
「・・・・・・あの・・・・・・大丈夫?」
キキーっ、とロードバイクのブレーキの音がして、カツドンがそちらの方を見る。
銀色の髪に、大きな獣の耳が映える美少女であった。
「嬢ちゃん、ちょうどよかった! なんか飲み物持っとらんか!?」
「ん、エナジードリンクなら・・・・・・」
少女がカバンを漁り、ライディングのために用意したエナジードリンクを取り出した。
「サンキューな! うっしゃ勝太、これを飲むんや!」
コップ出そうと思ったのにな、と少女は思った。
このまま自分が口をつけたエナドリが人様の口に入っていく様子を見ることに――はならず。
「あばばばばばばぁ!?」
「・・・・・・えぇ」
蓋を開けるなり、カツドンは容器ごとひっくり返し、勝太の口に滝のようにしてエナドリを流し込む。
結果的に間接キスは回避したものの、少女はもったいないなと思わずにはいられない。
「っぷはぁ!! 生き返ったぁ! カレーパンの天使が手招きしてたぜ・・・・・・」
「なんやカレーパンの天使って」
水分補給を終え復活した勝太。
カツドンとの会話が終わると、その目は目の前のケモミミ少女に向いた。
「飲み物くれたのはお前――じゃなくて、きみ?」
初対面をお前呼ばわりは行儀が悪いとユウカに口酸っぱく言われ、先生なのだから言葉遣いくらいしっかりしてくださいとリンにも釘を刺された。
それを思い出して勝太は慌てて訂正するが、――なんかぎこちない。変な感じがするから「お前」でいい――、と言われてしまった。
「というか、名乗るからそれで呼んで。私、砂狼シロコ。アビドス高校の二年生」
「シロコか! よろしくな! ところで・・・・・・いまアビドス高校って言ったか?」
「そう。この辺に唯一ある高校。私はそこの生徒」
なんという幸運。
遭難していたところを助けてくれた生徒は、目的の場所の生徒でもあったのだ。
「・・・・・・もしかして、アビドスに用事があるの?」
「ああ、シロコのところの――アヤネ、だったか? その子からの手紙が届いてさ」
「・・・・・・そっか」
シロコの顔に笑顔が浮かぶ。
救援要請が届いたことで安心したのだろう。
「今までいろいろ大変だったんだろ? オレに任しとけ!」
「ありがとう。着いてきて、学校に案内する」
――と言ってから、さっきまで水分不足で倒れていた人だし歩けないかもしれない、とシロコは少し心配になった。
しかし。
「ん・・・・・・すごい、元気そう」
「水分は摂れたからな。あとはカレーパンさえありゃ完全復活だぜ!」
カツドンがやれやれといった感じで溜め息を吐く。
勝太の発言に対してシロコは――。
(カレーパンって、そんなにすごいものだっけ・・・・・・。今度コンビニで買ってみよう)
結構純粋に勝太の言葉を聞いていた。
いや、純粋に受け入れていいのだろうか・・・・・・。
***
「ただいま」
「おかえり、シロコ先輩・・・・・・って、誰、そのボロボロの大人」
「初対面で酷くね?」
黒ケモミミの生徒からいきなり辛辣な一言。
実際ぼろぼろの格好だから仕方ないとはいえ、そんなに直接的に言わなくてもいいだろう。
「ごめん先生。セリカに悪気はないから、許してあげて」
「んー、まあ、じゃあ、うん、仕方ねぇか」
「納得するのに時間がかかってるわね」
しぶしぶといった感じで勝太はセリカを許した。
「というかシロコちゃん、いま『先生』って言いました?」
「っ! もしかして、『シャーレ』の!?」
黄色のカーディガンを羽織った生徒――ノノミと、眼鏡をかけた生徒――アヤネが、さきほどのシロコの発言に疑問を覚える。
それを耳にした勝太は自己紹介を始めた。
「オレは切札勝太! 連邦捜査部『シャーレ』の先生だ! 対策委員会のみんな、よろしくな!」
その言葉を聞いて、対策委員会の面々にぱぁっと笑顔になる。
支援要請が受理されたという事実を認識して嬉しくなったのだ。
それを見てると勝太まで笑顔になってくる。
やはり人助けはいいものだ。
「よし、とりあえず今回持ってきた分はここにあるぜ。また足りなくなったら言ってくれよな、いつでも持ってくるから――」
その時だった。
ダダダダダダダダダダ!!!!!
「どわぁ!? これ、銃声か!?」
いきなりの銃撃音に勝太が驚きの声を上げる。
対策委員会の面々も大慌てだ。
窓の外を見ると、ヘルメットをかぶった生徒たちが、アビドス高校を包囲していた。
「あれが手紙に書いてあった暴力組織か!?」
「はい、カタカタヘルメット団です!」
「・・・・・・カタカタ?」
なんだその名前、と勝太は思ったが、アヤネの声色が真剣だったのでその疑問はぐっと飲み込んだ。
どうやらその変な名前の武装集団から高校を守るのが、勝太の初仕事らしかった。
ピンクの長髪を持つ小柄な生徒をセリカが連れてきた。シロコから聞いた話と照らし合わせると、おそらくあれが「ホシノ先輩」なのだろう。
「これで対策委員会は全員か?」
アヤネに尋ねると、手短な返事が返ってくる。
それを確認すると、勝太はシッテムの箱を起動して号令をかけた。
「よしっ! 指揮はオレに任せてくれ! 対策委員会、出動だぁ!」
シロコとノノミがノリノリで号令に乗る。
ホシノはまだ寝ぼけていて生返事だ。
セリカとアヤネは、なんでいきなりこの人が仕切ってるんだろう――と思わなくもなかったが、緊急事態なので黙っておいた。
「――あ、そうだ、こいつも連れてってくれ!」
勝太が一枚のカードを取り出すと、カードからカツドンが飛び出してきた!
「えぇ!!? なによこの赤いまんまるは!?」
「・・・・・・もしかして、クリーチャー、ですか!?」
「わぁ☆ すごいです! 私初めて見ました!」
初めて目撃するクリーチャーに驚く対策委員会の面々。
シロコは一度目撃しているのでさしたる反応はなし。
ホシノはうへぇ、すごいねぇ・・・・・・とだけ返していた。まだ寝ぼけているようだ。
「うっしゃあ! 対策委員会の嬢ちゃんたち! ワイも手伝うから、みんなで学校を守るんや!」
***
「シロコはそこに隠れてるやつに手榴弾! ノノミは障害物ごと薙ぎ払え!」
「セリカは一人ずつ確実にバトルして仕留めろ! ホシノは前線を押し上げてくれ!」
直感的かつ、簡潔な指揮。
アロナのサポートがあるとは言えど、作戦の伝え方はまだまだ練習中の勝太なのであった。
時折相手のタンクの盾をシールド、と言ってしまったり、一対一の撃ちあいになったときにバトルと言ってしまったりと、デュエマ節も入っていた。
『勝太、ワイになんか指示はないんか!?』
「んー、カツドンはいるだけで十分だからな。適当に遊撃しといてくれ」
『ワイだけ扱い雑すぎんか!?』
実際、勝太の言っていることは本当だ。
クリーチャーがいる、という事実は、それだけで相手にとっては脅威に感じるのだ。
おまけに見かけに反してカツドンは強い。
動きもとらえづらいため常に警戒しなければならないが、そうすると今度は対策委員会からの銃撃への対応がおろそかになる。
というわけでカツドンは本当にいるだけで十分だったのである。
「すごい・・・・・・! 普段のみんなと動きが全然違います!」
「お、そうか? 前は指示が大雑把すぎるって言われたもんだが」
「あはは・・・・・・それは否定しづらいですが・・・・・・。細かい移動距離の指示はオペレーターの私がやりますから、先生は思うがままに指揮していただいて大丈夫です!」
「・・・・・・悪ぃな、ありがとう!」
指示が大雑把というのを暗に肯定されたのは少し来るものがあるが、それは経験を重ねるうちに上達するだろう、と勝太は前向きに考える。
「よし、お前ら! このまま押し込むぞ! ヘルメット団に一泡吹かしたれやぁ!」
勝太はそう叫ぶと、及び腰になっているヘルメット団たちに向かって突撃するように指示したのだった。
***
「お前らお疲れぇ! オレのおごりだ、存分に食え!」
「わあ☆ありがとうございます!」
学校からヘルメット団を追い払った後、ホシノの提案で勝太たちは逆にヘルメット団に奇襲を仕掛ける運びとなった。
作戦は成功、意気揚々と帰還する途中、勝太は祝勝会を提案したのだった。
多種多様な食べ物や飲み物、デザートが机に並び、和気あいあいとした雰囲気が部屋を包む。
しかしその机の上には、ひときわ異彩を放つものがあった。
そう、大量のカレーパンである。
「おごっていただけるのはありがたいのですが・・・・・・」
「なんでほとんどがカレーパンなの?」
祝勝会用の食べ物を仕入れた時、勝太は店にあったカレーパンを買い占めてしまうかのように次々とカレーパンをかごに放り込んでいた。
アビドスの生徒たちはドン引きしていた。
「遭難中に食いつくしちまったからな。補充しとかねぇと」
「あ、私たちのじゃなかったわけか・・・・・・」
勝太がカレーパンをいそいそとカバンに詰めていく。
その様子を見ていたセリカは、変な奴、と思いながらおにぎりを頬張った。
「・・・・・・先生はカレーパン狂いかもしれないけど、すごく頼りになる」
「すげぇはっきり言うな、シロコ。まあ否定しねぇが」
「だから、先生にならあの問題のこと、話してもいい・・・・・・と思う」
「え」
全員の視線がシロコに集まる。
祝勝会の明るい雰囲気は一転、重くなり始めた。
「なんだよ、問題って?」
「せ、先生には関係ないから! これは私たちの問題なの!」
勝太が尋ねたそばから、セリカが口を出して止めにかかる。
「いいんじゃないセリカちゃん。先生に話してみれば、何か解決法が見つかるかもよ~?」
「・・・・・・でも、今まで大人たちは、この学校がどうなるなんて気にも留めなかった。連邦生徒会だって、助けてくれなかった! それを今更、連邦生徒会の部活の、大人に助けてもらうですって!?」
だんだんと、セリカの語気が強くなる。
「そんなの冗談じゃない! こんなカレーパンのことしか考えてないような馬鹿、私は認めないっ!!」
そう叫ぶように言うと、セリカは慌てて教室を飛び出してしまった。
「おいっ、待てって!」
飛び出したセリカを慌てて追いかけようと、勝太は急いで席を立つ。
「ついてこないで! あんたなんか信用できない!」
「信用なんかできなくたっていい! 一回ちゃんと話し合えば――」
「先生」
粘り強くセリカに接しようとする勝太。
しかしそれをホシノが止める。
「セリカちゃんが飛び出していったのは先生が原因なんだよ。その原因に話し合おう、なんて言われても、余計に刺激するだけ」
「・・・・・・そうだな、悪かった」
自らの過ちを自覚し、勝太が大人しく席へと座りなおす。
「・・・・・・そんで、結局何なんだ、お前らの問題って」
言ってから、これもデリカシーに欠ける発言だったか、と勝太は思った。
話したくないなら話さなくてもいい、と続けようとしたが、その前にホシノが口を開く。
「実は、この学校には――」
***
「ふぃー・・・・・・疲れたぁ」
「お疲れ様です、先生!」
「あぁ、ありがとな、アロナ」
シッテムの箱内部の廃れた教室にて。
勝太は疲れから、学生机に突っ伏していた。
カタカタヘルメット団を奇襲したとき、往復60㎞を徒歩で移動。
戦闘の指揮もこなして、だったのでやることは多かった。
それに加えて、今日の最後に聞いたことが一番衝撃だった。
「九億の借金ねぇ・・・・・・」
以前の生徒会が作った借金。
砂漠化を止めるための融資を受け続けた結果、どんどんと膨れ上がっていったのだという。
その話を聞いてすぐのときは、お前らを見捨てるなんてしねぇ! と宣言したものだが。
「実際どうすりゃいいんだ、九億の借金なんざ」
シャーレの予算を回すことも考えたが、アビドスだけに多額の資金を使うわけにもいかなかった。
「借金は借金で厄介だけど・・・・・・セリカに信用されてないのもつれぇ・・・・・・」
「年頃の女の子って、難しいんやな・・・・・・」
近くにやってきたカツドンが机に腰掛ける。
中学で宇宙に旅立ったため、高校生というものを経験していない勝太。
一応でこちゃんとは一緒に暮らしていたが、参考になるかと言われると難しいだろう。
「どうすりゃ仲良くなれるのかねぇ・・・・・・」
机に突っ伏したまま、勝太は珍しく物憂げな溜め息を吐いたのだった。
***
翌日。
「というわけで、まずはカレーパンのおすそ分けから試してみることにした」
「え、ありがとう・・・・・・いやいや、受け取らないわよこんなの!? 昨日の件で気まずい、とかそういう感情はないわけ?」
「カレーパンを受け取らないだと!? どういうつもりだセリカぁ!」
「反応するとこそっちなの!?」
結局押しに負け、セリカはカレーパンを受け取った。普通においしかった。
「で、なんで付いてくるのよ」
「仲良くなるためには、相手のことを知るのが近道だろ?」
朝食代わりのカレーパンをかじりながら、満面の笑みで勝太が答えた。
気持ち悪いくらいに眩しい笑顔に、セリカはかえってうんざりする。
「というか、それならあんたのことから教えなさいよ。正直、得体が知れなさすぎて怖いんだけど」
「お? オレのこと知ろうとしてくれてるのか? 嬉しいねぇ」
ニヤニヤしだした勝太に対し、セリカは今度こそはっきり気持ち悪い、と声に出して言った。
「つうか、オレのことって何話せばいいんだよ」
「え? ・・・・・・身の上話とか?」
「んー、じゃあ家族の話でもするか」
何を話すか考えようとして、ほんの一瞬勝太が立ち止まる。
その隙をついて、セリカは一目散に駆け出した。
だが。
「おーい! 置いてくなよ薄情者ぉー!」
「なんで薄情者呼ばわりされないといけないのよ!? というか、なんで私についてこれてるの!?」
「そりゃあお前、クリーチャーとの追いかけっこで鍛えてるからな!」
「クリーチャーとの追いかけっこってなに!?」
余計に気味が悪くなったため、セリカは全力疾走。
「なんでこんな目に遭わなきゃいけないのよ!? 私バイト行くだけなんだけど!!」
「ぜぇ、ぜぇ、なるほど、バイトか」
「うげっ」
思わず口を滑らせてしまったセリカである。
それからしばらく追いかけっこが続く。
しかしながら、クリーチャーワールドで鍛えられた勝太も、全速力のセリカに追いつくことはできなかった。
「ぜぇ・・・・・・ぜぇ・・・・・・つか、れた」
一緒に行動することで自然と距離を縮める作戦は失敗である。
やっぱり年頃の女子高生って難しいと思う勝太であった。
ここにカツドンがいたら『逆になんでそれで行けると思ったんや・・・・・・』と辛らつなツッコミを入れるだろうが、彼はいまカードの中であった。
しかしあんなに嫌がるとは思わなかった。余計に信頼を失ってしまったか? と一瞬思った勝太だったが、それ以上に――。
「・・・・・・悔しいな」
クリーチャーワールドで過ごしてきた自分なら――と思っていたものの、結局キヴォトス人の身体能力には敵わなかった。
変なところで悔しがる勝太なのであった。
そして勝太の頭の中には、負けたままでは終われないという謎の対抗心が芽生えていた。
「セリカに一泡吹かしてやりてぇ。でも見失っちまったし・・・・・・そうだ」
なんでこんな簡単なことに気付かなかったのだろうか。
勝太は仕事用のスマホを取り出し、昨日連絡先を交換したシロコに連絡した。
「――――あ、もしもしシロコ? セリカのバイト先知らねぇか?」
『・・・・・・? セリカ、バイトしてるんだ。初耳』
「んんん?」
これ、もしかして言っちゃいけなかったパターンだったか? と勝太は思ったのだった。
次回、セリカのバイト先柴関ラーメンに突撃!
ところで、デュエマでラーメンというと、皆さんは誰を思い浮かべますか?