デュエル・マスターズ Aoharu Revolution   作:カレーパンパフェ

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アビドスに吹き荒れる嵐っ! 切札ジョー、キヴォトスに参ジョー!

「いらっしゃいませー! 何名様ですか?」

 

 アビドス自治区、柴関ラーメン。セリカのバイト先である。

 一週間ほど前から始めたバイトだが、なかなか首尾よく進んでいる。

 今日もいつも通り、ハキハキとした声で客を案内していた。

 ただ、気がかりなことが一つ。

 

(あいつに私がバイトしてるってこと、バレちゃったなぁ・・・・・・。なんか余計なことしでかさないでしょうね)

 

 厳密にはバレたではなく自分からバラしてしまったわけだが、とにかくセリカはそれが気がかりであった。

 実はバイトをしててることは、対策委員会の他のメンバーには秘密なのだ。

 単純に見られるのが恥ずかしいからである。

 

(それが先生経由でバレようもんなら――いやだからって別にどうということはないんだけど)

 

 しつこいくらいに絡んできたあの大人なら、何をしてきてもおかしくないという妙な確信がセリカにはあった。

 そして、そう思うこと自体がフラグである。

 

「いらっしゃいませー! 何名様で・・・・・・え!?」

 

「ん、お疲れ」

 

「お疲れ様・・・・・・」

 

「なんでみんながいるのよっ!?」

 

 対策委員会、ご来店である。

 

「ど、どうしてここを・・・・・・」

 

「うへ、セリカちゃんのバイト先といえば、ここしかないでしょ~?」

 

「そ、そうじゃなくて、なんで私がバイトしてるって・・・・・・はっ!」

 

 ホシノたちの後ろで、バツが悪そうにしている勝太をにらみつける。

 

「いや、これに関しては悪かったよ・・・・・・。秘密にしてたんだな、バイト」

 

「やっぱり先生のせいじゃない!!」

 

 羞恥とか焦燥とか、ごちゃまぜになった感情をぶつけるようにセリカが言う。

 しかしここがバイト先であることを思い出し、失礼しました、と他の客に謝罪する。

 

「アビドスの生徒さんと・・・・・・あんたが噂の先生か。まぁとにかくセリカちゃん、いろいろ言いたいことはあるんだろうが、まずは注文受けてくれな」

 

「あうぅ・・・・・・はい、大将」

 

 弱々しい声を漏らしながらセリカがうなだれる。

 そのままセリカが勝太たちを席へ案内しようとしたとき、再び店の扉が開いた。

 

「あ、いらっしゃいま『大将ー! ラーメン一丁!!』うわぁ!?」

 

 来店のあいさつを言おうとしたセリカだったが、勢いのある声にかき消される。

 びっくりして声のした方を見ると、そこにいたのは一人の少年だった。

 クリーム色のマフラーを首に巻き、画材などが入ったリュックを背負っている。

 

 この少年こそ、デュエル・マスターズ三代目主人公にして勝太の息子!

 切札ジョーであるっ!!

 

「って、ジョーくんじゃない!?」

 

「あれ、セリカちゃん? もしかして・・・・・・アルバイト?」

 

 ジョー、と呼ばれた少年がセリカの方を向く。

 そこにいたのは対策委員会の面々と――。

 

「ん?・・・・・・えぇ!? ととと、父ちゃん!?」

 

「ジョー!? ジョーじゃねぇか!?」

 

「「「「「え、父ちゃん!!??」」」」」

 

 まさかの遭遇に驚く二人。

 そして二人の親子関係に、驚く対策委員会の面々。

 揃いも揃って大声を上げた結果、他の客か視線を向けられ、頭を下げることになったのであった。

 

***

 

「父ちゃんが先生かぁ・・・・・・えぇ?」

 

「そこで疑問に思うなよ」

 

「だって、父ちゃんが先生とか想像できないよ。むしろ生徒に助けてもらってそう」

 

「うぐっ」

 

 領収証の管理をユウカに手伝ってもらってることを思い出し、勝太がうなだれる。

 

「というか、こんなのが所帯持ちなのが驚きだわ・・・・・・」

 

「うへ~、セリカちゃんは手厳しいねぇ」

 

「そりゃそうよ。今朝もこいつのせいでひどい目にあったんだから」

 

「父ちゃん、何したの・・・・・・?」

 

 セリカの発言を聞き、父親に疑惑の目線を向けるジョー。

 勝太はその目線からさっと視線を逸らすと、あわててシロコの隣に座る。

 ジョーはノノミの隣に座った――のだが、妙にドギマギしている。

 

「どうしたジョー。しょんべん我慢でもしてんのか?」

 

「それなら早く行ってきた方がいいと思う」

 

「違う、違うって、その・・・・・・」

 

「もしかして、体調でも悪いんですか?・・・・・・えい」

 

「わぎゃっ?!」

 

「うん、熱はなさそうですね☆」

 

 ノノミに徐におでこを触られ、びっくりしたジョーが座ったまま器用に飛び跳ねる。

 その反応を見て、勝太は合点がいった。

 

「な~るほどなぁ・・・・・・。ジョーも立派に男子中学生やってるってことか」

 

「なにその言い方・・・・・・」

 

 頬を膨らませつつジョーは父親を軽くにらむが、勝太はどこ吹く風である。

 

「・・・・・・で、ご注文は?」

 

 急かすようにセリカが言う。

 正直バイトしていることがバレてしまったのはかなり恥ずかしい。

 質問攻めにあう前に一刻も早く立ち去りたかった。

 が、注文を聞いてしまったせいで、みんなの意識が勝太とジョーの会話からセリカの方へ向く。

 バイトをいつから始めたのかという至極まっとうな質問から、ユニフォーム姿がかわいいだの、その姿を写真に撮って儲けようだの・・・・・・。

 

「真面目に写真は撮りたいかも。そういう服描いたことないし」

 

 至って真面目な顔でジョーからも追撃が入った。

 

「真面目な理由でもだめっ! というか早く注文決めてよ!!」

 

 セリカに急かされ、勝太たちは矢継ぎ早に注文をしていく。

 

「みんな、今日はじゃんじゃん食べていいよ! 全部父ちゃんがおごってくれるからさ!」

 

「てめぇ、ジョー!?」

 

「ん、なら私はトッピング全部盛り。麺も大盛りで」

 

「シロコぉ!?」

 

 慌てて対策委員会、ジョーの注文をメニュー表と照らし合わせる勝太。

 合計金額を脳内で計算。

 

「あ、逃げた」

 

「うへ~、逃がさないよぉ」

 

「どわぁ!? 離せ! 年頃の学生なんて食べ盛りに決まってるっ! これ以上出費がかさんだらカレーパン買えなくなるだろうが!」

 

「昨日コンビニで大量に仕入れてませんでした・・・・・・?」

 

 結局ホシノからは逃げられず、勝太はがっくりと肩を落としながら席へと戻る。

 祝勝会やカレーパンの補充で昨日大量にお金を使ったのにもかかわらず、今日の出費もかさみそうであった。

 

「・・・・・・大丈夫ですよ先生。もしよろしければ、私のカードを――」

 

「いや、さすがにそれはやめとく。・・・・・・こうなりゃやけだ!オレも腹破裂するくらいまで食べてやるっ!!」

 

「あはは・・・・・・無理はしない方がいいと思います」

 

「いいじゃんアヤネちゃん、ここのラーメン絶品だし~? というか、アヤネちゃんももっと頼んだら?」

 

「ねぇ・・・・・・まだ注文まとまらないの?」

 

 ぎゃあぎゃあと賑やかになっていくテーブル。

 やっとのことで注文を終えセリカが場を離れると、今度はジョーのことへと話題が移る。

 

「というかお前、いつキヴォトスに来てたんだよ。まぁでこちゃんが来てたから、薄々ジョーも来てるのかなぁとか思ったりはしてたけど」

 

「なんならでこちゃんより前だよ?」

 

「そんなら挨拶くらいこいよ・・・・・・父ちゃんちょっと寂しいぞ」

 

「仕方ないじゃん。勝舞おじさんにおすすめされて、キヴォトスを巡る旅に出てたからね。父ちゃんが先生になったのもいま知ったし」

 

 男子中学生に一人旅させるとか何考えてやがるバカ兄貴・・・・・・。

 と思ったが、ジョーも数多の死線をくぐりぬけている。

 ちょっとやそっとでどうにかなるやつでもないし大丈夫か、と勝太は思い直した。

 

「ジョー。今度はどこに行ってきたの?」

 

「お、シロコちゃん聞きたい? まず最初に――」

 

 そこからジョーの土産話が始まった。

 なんでもキヴォトスの絶景を巡り、絵を描いているらしい。

 今回は百鬼夜行連合学院で木々や花々の絵を描いたそうだ。

 

「ほぉー、相変わらず絵がうめぇじゃねぇか」

 

「にひひ、でしょでしょ! こいつはオレの中でも会心の出来なんだ!」

 

 なんだかんだ、父親との久々の再開で嬉しいジョー。

 絵を褒められて天狗になっていた。

 

「そうだ、久々にデュエマしようよ父ちゃん!! オレの新しいデッキ、父ちゃんに見せたいんだ!」

 

「お、いいぜ! オレも本邦初公開のすっげぇカードを見せてやるからな!」

 

「デュエマか・・・・・・。私もデッキ組みたい」

 

「お、シロコもデュエマやってるのか」

 

「余ったお金でコツコツパックを買ったの。見て、このレアカード」

 

「どれどれ? ・・・・・・うお、バトガイ刃斗じゃねぇか!? ほんとに激レアじゃん!?」

 

 キヴォトスで発売された新弾では、ドラグハートがフィーチャーされた。

 その中でもバトガイ刃斗は封入率が低くなかなか手に入らない代物なのだが、シロコは

豪運をもってゲットしていたのだ。

 

「でも、まだドラグナー? っていうのが当たってない。だから使えなくて・・・・・・」

 

「ありゃりゃ・・・・・・オレのデッキがありゃ、モルトNEXTとか貸してやったんだけどなぁ」

 

 まさかこんなところでデッキをなくしたことを後悔するとは思わなかった。

 シャーレ稼働から数日、宇宙船付近をこれでもかと探し回ったが見つからなかったのである。

 

(宇宙に落としちまったんならマジで取返し付かないんだが・・・・・・。でもカツドンはキヴォトスのどっかにはあるだろうって言ってるんだよな)

 

 勝太のなくしたデッキには『切札勝太&カツキング』のカードが入っている。

 よって朧気ながらカツドンにはカードの気配がわかるらしかったが、ほんとに朧気にしかわからなかったようだ。

 キヴォトスのどっか、とか言われても無理ゲーである。

 

(それこそ盗まれたりとかしてたら探しようがねぇよな・・・・・・)

 

「・・・・・・先生? ラーメン来たよ」

 

「ああわりぃ。ちょっと考え事してた。しっかし、こいつはうまそうだな!」

 

「ほんっっっとにおいしいんだよ、大将のラーメン!さ、冷めないうちに食べようよ!」

 

 いただきまーす! と元気よく言って、ジョーがスープをすくったレンゲに口をつける。

 それにならって、勝太や対策委員会の面々もラーメンをすすり始めたのだった。

 

***

 

「ん~!まんぷくまんぷく!」

 

「お前、食べすぎだろ……」

 

「カレーパン狂いの父ちゃんに言われたくないし」

 

 腹が膨れるくらいの勢いでラーメンを掻きこみ、替え玉しまくっていたジョー。

 好物ならいくらでも胃に入るところは親譲りだろうか。

 

「あ、ちょっとコンビニ寄っていいかな。ライディング用のスポドリ、まとめて補充しときたくて」

 

「お、別にいいぞ」

 

 アビドス高校へ向かっていた足の向きを変え、勝太たちはコンビニへと歩き出す。

 

「そういうのって、スポーツショップとかのやつじゃなくていいのか?」

 

「それはそうだけど、ここら辺にそんなお店ないし」

 

「アビドスが衰退していって、ほとんどのお店が出てっちゃったからねぇ。コンビニが残ってるだけでも奇跡だと思うよ~?」

 

 勝太の素朴な疑問に、シロコとホシノから補足が入る。

 あんまりな事実に対して反応に困ってしまう勝太であった。

 

(連邦生徒会……だったか、リンのとこ。どうも支援の手が回ってないみたいだし、今度兄貴に相談してみるか?)

 

 とはいえ、アビドスの砂漠化の原因は不明らしい。

 時期的にクリーチャーのせいでもない以上、超人の勝舞に頼んだとて解決は難しいだろう。

 そんな風に考えを巡らせていると、気付けばコンビニに到着していた。

 

「お、ここにもパック売ってるのか」

 

「新弾はすぐ売り切れるけど、アビドスは人が寄り付かないから、ここは穴場」

 

「嬉しいんだか悲しいんだかよくわかんねぇな」

 

 そんな風に会話する二人の手には、しっかりとパックが握られていた。

 そそくさとお会計を済ませ、いざ開封タイムへ。

 

「……! これは!」

 

「シロコちゃん、欲しかったカードは引けましたか?」

 

「んー‥‥‥本命じゃなかったけど」

 

 シロコが引き当てたのは『炎龍覇グレンアイラ / 「助けて!モルト」』。

 現代のドラグハートデッキには欠かせない強力なツインパクトカードだ。

 バトガイ刃斗のデッキを組みたいのであれば必須といえる。

 

「あれ、先生、どうかしましたか?」

 

 アヤネは、引き当てたカードを見て固まっている勝太を目撃した。

 その目には、なんだか複雑げな表情が浮かんでいる。

 

「ん? あー、いや、なんでもねぇ。 このカード、シロコにやるよ。グレンモルトのデッキに入るのは怪しいけどな」

 

「いいの? そういうことなら、ありがたくもらっておく」

 

 なんとなく気になって、アヤネはシロコの下に渡ったカードの名前をちらりと見た。

 

『MMM ジョーキング』

 

 アヤネには、そのカードが「パックから出てきたこと」の意味は分からない。

 そしてちらりと見ただけだったので、イラストレータ―名が書かれている下に、「Special thanks 切札ジョー」と書かれていたのにも気付かなかった。

 ジョーカーズ実装時に、勝舞が施したささやかな配慮だった。

 

「……よかったのか?」

 

 隣に立っているジョーに向かって、勝太が静かに問う。

 ジョーの顔に哀しみはなく、むしろすっきりしたような表情をしていた。

 

「いいんだ。オレは、みんなとお別れしたから」

 

「それにさ、オレが考えたカードをいろんな人が使ってくれるって、すっごくいい気分だしね!」

 

 やせ我慢とか、そういったものは一切感じられない。

 ジョーカーズとの別れを受け入れて、彼は次のステージへと進んでいた。

 

「……強くなったな、ジョー」

 

 勝太が感慨深げに呟いた言葉に、ジョーは笑みを返した。

 

 

***

 

 

「はぁ・・・・・・ほんと疲れた」

 

 時刻は夜。バイトを終えたセリカはとぼとぼと家路についていた。

 朝は奇妙な大人に追いかけられたと思えば、その大人が対策委員会のメンバーをバイト先に連れてきたり。

 本当に変な一日だった。

 

「あいっつ・・・・・・ほんとにぶん殴ってやりたいくらいだわ」

 

 脳裏に浮かぶのは切札勝太とかいう大人の顔である。

 セリカのバイト先をばらしたことをちゃんと謝ってきたのが逆に腹立たしかった。

 

「素直に謝ったところで私が許すと思うわけ? ましてや認めるなんて冗談じゃない!」

 

 万が一会おうものなら文句を言ってやる、とセリカが誓った時だった。

 

「っなに、あんたら・・・・・・カタカタヘルメット団の残党?」

 

 虫の居所が悪かったセリカは、すぐに制圧してやろうと銃口を向ける。

 しかし。

 背中側から強い衝撃がセリカを襲った。

 薄れゆく意識の中振り返ると、そこにあったのは改造戦車。

 

(ま、ずい・・・・・・。いし、き・・・・・・が)

 

 そのまま、セリカが気絶する。

 拘束された彼女は雑にトラックの荷台へと放り込まれ、そしてトラックが闇へと消える。

 

 

***

 

「とどめだーっ!」

 

「どわぁ!? まじかよ!」

 

 ラーメンを食べ終わりアビドス高校に戻ってから、早速デュエマを始めた勝太とジョー!

 が、ジョーの新デッキと勝太のデッキは相性が悪すぎて、なすすべなく勝太は負けた。

 

『カツカツドンドン……』

「」

 

「うるせぇぞカツドン!」

 

 やっぱり肝心な時には勝てんの、勝太らしいなぁと、お茶をすすりながら勝太をからかうカツドンであった。

 憤慨する勝太は。その後彼はガックシと肩を落とすのだった。

 

「なんでこねぇんだよ、S・トリガー……」

 

 一方のジョーはゲス顔で勝太を煽り散らかしていた。

 

「うへへ、父ちゃんよっわぁ? 『運ならだれにも負けない』とか前に言ってなかったっけぇ?」

 

「ち、ちくしょう・・・・・・」

 

 とうとう半べそまでかき始めた勝太であった。

 

「ジョーくんのあんな顔、見たことないです・・・・・・」

 

「父親相手だから遠慮がなくなってるのかも」

 

「にしたって無遠慮すぎません!?」

 

 観戦していた対策委員会メンバーから口々に感想が飛ぶ。

 

「くそっ、もう一回だ! ジョー!」

 

「いいよ~? ま、どうせ次もオレが勝つけどねぇ?」

 

「いいや、次はオレがかぁつ!!」

 

 そうして対戦を繰り返すこと十回。

 すべての試合でジョーがS・トリガーを踏まずに勝った。

 

「おかしいだろぉ!! しかもなんだよその戦い方! 元主人公がやるような戦術じゃねぇだろぉ!!」

 

「この話の主人公は父ちゃんでしょ? だからいいんだよ!」

 

「……こんちきしょうめぇ!!」

 

『カツドンドン?』

 

 こんなくだらない場面で名言使うんか? とカツドンがツッコミを入れる。

 あまりにもくだらなすぎる親子のやり取りに、カツドンは溜め息をついた。

 

「・・・・・・そういえば、セリカちゃん帰ってきませんね」

 

「バイト先バレたのが気まずいんじゃねぇの? みんなで押しかけちまったし」

 

 勝太はセリカの様子を思い出す。

 恥ずかしさで顔を真っ赤にしていたセリカ。

 羞恥のあまりとんでもない暴言を連発もしていた。

 

「私、ちょっと様子を見てきますね。先生の推測が正しいなら、謝らないとですし」

 

「ありがとな、アヤネ」

 

 そうしてアヤネがセリカの家へと向かう。

 しばらくして。

 

「――セリカちゃん、帰ってきてません・・・・・・」

 

 アヤネが、心底肝を冷やしたような声で言った。

 シロコが柴関ラーメンへと駆け出す。

 勝太とホシノはちょいと調べてくる、とだけ言い残して教室を出て行った。

 教室にはジョー、ノノミ、アヤネが残される。

 

「セリカちゃん、大丈夫かな・・・・・・」

 

「こんなに遅くまで帰ってきたこと、今まで一度もありませんでした」

 

「もしかして、ヘルメット団が・・・・・・?」

 

 しばらくして、まずはシロコが戻ってきた。

 バイトは定時で上がっていたようだ。

 今度は勝太とシロコが教室に戻ってくる。

 

「先生の権限を使って、連邦生徒会のセントラルネットワークにアクセスしてきたよ~」

 

「先生、そんな権限をお持ちなんですね・・・・・・」

 

「ま、バレないようにこっそりだけどな。バレたらど叱られるだろうなぁ」

 

 大丈夫なんですか!? とアヤネに突っ込まれるが、勝太はバレなきゃオーケー♪ と笑って流した。

 勝太の調べによると、セリカの最後の位置情報はアビドス郊外の荒廃した地区。

 チンピラたちの溜まり場となっているようで、カタカタヘルメット団のアジトもそこにあるようだ。

 

「やっぱ、セリカはヘルメット団にさらわれた、って考えるのが妥当だな」

 

 そういうなり、勝太はシッテムの箱をしっかり持ち、カレーパンと支援物資の入ったリュックをしょいなおす。

 

「こうしちゃいられねぇ! 早速セリカを助けにいくぞ!」

 

 対策委員会の面々が大きくうなづく。

 装備を整え、そのまま学校を出ようとして――。

 

「父ちゃん、オレも行くよ」

 

「わかった」

 

 ノータイムで勝太は承諾した。

 いまのジョーには戦える力はない。

 それでも、友達がさらわれたのに自分は動かない、なんてことはしたくなかった。

 

「先生、大丈夫なんですか? ジョーくんは先生と同じ普通の人間です。もし流れ弾が飛んで来ようものなら・・・・・・」

 

「大丈夫だ、オレの息子だぜ? ――それに」

 

「それに?」

 

「あいつは、たくさんの死線をくぐり抜けてる。下手したら、オレよりもな」

 

 自分の身くらい自分で守れるだろ、と楽観的すぎるくらいに笑って勝太が歩を進める。

 アヤネは、勝太の発言に絶句していた。

 

(死線を――くぐり抜けた? ジョーくんが?)

 

 アヤネからすると、ジョーは絵を描くこととラーメンが大好きな中学生、それ以上の印象はない。

 そんなジョーが何度も危険な目に遭ったことがあると言われても、アヤネにはとても信じられなかった。

 

(切札勝太先生と、切札ジョーくん・・・・・・一体、何者なのでしょうか?)

 

 アヤネは二人が過去にどんな経験をしてきたのか、気になって仕方がなかった。

 

***

 

「・・・・・・ここは」

 

 トラックの荷台の中で、セリカは目を覚ます。

 固い床に寝転ばされていたせいか、体の節々が痛い。

 

(そっか・・・・・・。私、さらわれたのか)

 

 バイトから帰宅するときに隙を突かれ、ヘルメット団にさらわれた。

 トラックの扉の隙間から外を見る。

 そこは砂漠だった。

 連絡も取れず、脱出できたとしても仲間たちに知らせる手段がない。

 

(このまま私、砂漠に埋められちゃうのかな。連絡が途絶えて・・・・・・みんなには、逃げたって思われるのかなぁ)

 

 嫌だ。

 そんな思いばかりがこみあげて来て、涙となってセリカの瞳からあふれてくる。

 そのまま、涙はぽろぽろとこぼれてきて――。

 

ドカーン!

 

「うわぁぁ!!??」

 

 驚きで涙が一瞬で引っ込む。

 

「セリカぁ!! 助けにきたぞぉ!!」

 

「うぇ、先生!?」

 

 ウザイくらいにバカでかい、よく通る声が聞こえた。

 直後扉が破られ、セリカが荷台から放り出される。

 そして次々と対策委員会と先生が現れた。

 

「無事で安心した」

 

『本当に良かった・・・・・・! セリカちゃんに何かあったんじゃないかって・・・・・・!』

 

「アヤネちゃん・・・・・・」

 

「感動の再会中悪いが・・・・・・」

 

 勝太が顎で向こうを示す。

 カタカタヘルメット団の軍勢が迫っていた。

 重戦車まで揃っていた。

 

「それじゃあ・・・・・・行こうか?」

 

「おぅ、行こうぜ!」

 

 そうして始まった、対策委員会とカタカタヘルメット団の戦闘。

 セリカを攫われたことで怒りに燃える対策委員会は、次々と敵を倒していく。

 その後方で勝太は指揮を執る。

 カツドンはジョーの護衛についていた。

 

「……ぃよしっ、準備オッケー!」

 

 なにやらかちゃかちゃと音を立てていたジョー。

 彼の右腕にはヘンテコな機械が装着されていた。

 

「……なんだそりゃ」

 

「にひひ、勝舞おじさんからもらったんだ。 オレの新兵器~♪」

 

「生身でついてくるっていうから何かと思えば、それ試したかっただけかよ」

 

 それの正体がなんなのかは分からないが、戦える力はあるらしい。

 勝太はジョーも指揮下に入れていいと判断した。

 

「よっしゃ! なにがなんだかわからんが、あいつらに目にもの見せてやれ!」

 

「アイアイサー!」

 

 ジョーは、右腕につけた機械にカードをセットする。

 すると機械は瞬く間に形を変えてゆき――――――。

 巨大なバズーカが現れる。

 

「なんじゃあありゃあ!?」

 

「ひ、怯むな、進めー!」

 

 突如出現した見慣れない武器に戸惑うヘルメット団たち。

 そんな彼女らに向けて、ジョーは照準を合わせる。

 そして、いつものきめ台詞だ。

 

「引き金は、二度引かねぇ!」

 

「一発が、すべてだ!」

 

 バキュン! と小気味いい音がして、バズーカの弾が発射される。

 弾丸は見事に敵の戦車にヒットし、大爆発を巻き起こした。

 ヘルメット団たちにとっては阿鼻叫喚の地獄絵図。統率が崩れていた。

 

「ジョーくん、すごいです!」

 

「やるじゃねぇか! さすがは俺の息子!」

 

 ノノミや勝太が賞賛の言葉を言いながら後ろを振り返る。

 ―――そこにジョーの姿はなかった。

 

「……あれ、ジョーくんは?」

 

『あのー……大変いいづらいんですが……』

 

 苦笑しながら、アヤネがジョーの行方を報告した。

 

『バズーカの反動で、吹っ飛んで行っちゃったみたいですね……。幸い意識はあるようですが』

 

 勝太たちの間に、気まずい雰囲気が漂う。

 アヤネのドローンからの映像には、目を回しながら砂漠に仰向けで倒れるジョーが映っていた。

 

「……締まらねぇな」

 

 吹っ飛んでいったジョーをカツドンが回収する合間に、対策委員会はヘルメット団を撃破した。

 ジョーは確かに見せ場も作ったし活躍もしたが、総合的には残念な感じになってしまったのであった。

 

 

***

 

 

 勝太たちがアビドス高校に帰還してから数時間後。

 

 とある事務所にて。

 

「みんな! 大口の依頼が入ったわよ!」

 

 黒電話の受話器を置くと、陸八魔アルはうきうきで準備を始める。

 浅黄ムツキもそれに続く。

 伊草ハルカはあわあわとした様子で身支度を整える。

 そんななか、鬼方カヨコはソファで猫と戯れている人物に声をかけた。

 

「仕事が入ったんだけど・・・・・・行く?」

 

「・・・・・・こわす、おしごと?」

 

「壊すのはダメ。やっつけるだけにしてね」

 

「・・・・・・わかった。ゼーロも、いく」

 

 真っ白な肌に、真っ黒な衣服。

 便利屋68、インターン。

 その名は、ゼーロ。

 

―――

 

 次回!

 便利屋68、アビドス高校に強襲!

 そこにいたのは!

「なんで、ゼーロがここに!?」

 ジョーのかつての宿敵、闇王ゼーロ!

「本当に悪い奴かどうか、デュエマして試してやらぁ!!」

「ゼーロ、たのしみ!!」

 主人公VSかつてのラスボス!波乱のデュエマが幕を開けるっ!

 

 次回デュエル・マスターズAoharuRevolution!

「便利屋参ジョー!? 熱血バカと闇の王!」

 

 どっどどどっかーんと起こしてやるぜ! 俺の! 青春デュエマ革命っ!!

 

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