カメラと棒付きアメと   作:クロウズ

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7話目

 翌日、鈴ちゃんと春ちゃんは着替えやら何やらで一旦家に帰り、俺は今日は日直な為、先に行かせてもらうことにした。あー、日直ダルい。朝早くに出なきゃいけないし、帰り遅いし。って、どうせ部活やるから結局遅いんだけど。

 

 

 

 

 

「はい、それじゃあお願いね火野君」

「うっす」

 

 

 職員室で佐藤先生から鍵を貰い、教室に向かう。

 教室の前には誰もいない。まあ、日直でもないのに早くに学校に来るのなんてそうそういないしな。鍵を開けて中に入っても、もちろん誰もいない。むしろいたら怖い。

 鍵は所定の位置に引っ掛け、鞄を机に置いたら教室から出て屋上に行く。この時間じゃすることなんてないし、暇だしな。

 

 

「っく、あー……やっぱり屋上だと風気持ちいいなー」

 

 

 そこまで強いわけでもないし、日差しもいい具合だから、これは眠くなる。授業までまだ時間あるし、ちょっと仮眠を取ろうとベンチに寝転ぶ。枕代わりになるようなものはないけど、別にいらないか。20分ほど………寝る……。

 

 

 

 

 

「霞黒くん、そろそろ起きなさーい」

「んぅ………?」

 

 

 微睡みの中にどっぷり浸かってたけど、頰への違和感と上からかかってきた声で引き戻される。薄目を開けると、髪が掛からないように押さえながら上から覗きこんでたエレナと目が合った。丁度太陽と重なる位置だったから眩しくて目を逸らしたら、視界の端で何かニヤついてた。どう受け取ったんだか。

 

 

「おはよ、霞黒くん」

「ん……おはよ………」

 

 

 前髪を弄るように撫でてくる手を払おうと思ったけど思いの外気持ちいいから、されるがまま。

 それにしても、さっきから後頭部にある柔らかな感触は。

 

 

「……なぁ、これって」

「膝枕よ?」

「………だよな」

 

 

 なんでわざわざ膝枕なんてしてるんだろうか。いや、俺としては嬉しいけどな。

 でも、そろそろ起きなきゃいけないらしいから手を退けて起き上がる。そのまま伸びをすると、背中や首がゴキゴキと音を鳴らす。

 

 

「もういいの?」

「ちょっと寝過ぎてるっぽいしな。じゃ、教室に戻るか」

「えぇ」

 

 

 もう一回伸びをして、エレナと一緒に教室まで向かう。

 

 

 

 

「おーっす」

「おっはよー」

 

 

「ああ、2人とも。おは………ん?」

「おはよ……おぉ」

「おはよーございマース!……おヤ?お2人とも、手を繋いでどうしまシタ?」

「「え?…………あっ」」

 

 

 ルメールに言われて、顔を見合わせてから繋がってる手を見る。そういえば階段降りる時、自然と繋いでたっけ。

 ちなみに繋ぎ方は、互いに指を絡め合う、いわゆる恋人繋ぎだ。付き合ってるから別におかしくないし、こっちの方がはぐれたりすることもないからいいなと思ってたから忘れてた。付き合い始めたのが昨日の放課後だから、こいつらにはまだ知られてなかったんだった。まあ言ってないし、言いふらすものでもないから当然といえば当然か。

 

 

「え、なになに2人共いつの間にそんな関係になったのさ」

「あー、その」

「昨日から付き合い始めたのよ、わたし達」

 

 

 誤魔化すべきかどうか迷ってたら、エレナが堂々と宣言した。しかもどこか誇らしそうに。

 

 

「「えぇええええええええっ!?!!」」

「マジかよ火野爆発しろ!」

「シスコンとレズのカップルか。たまげたなぁ」

「お前ら、佐藤先生が見たらあの人卒倒するぞ」

「くたばれ火野!」

「というかまだ付き合ってなかったのね」

「普段からバカップルっぽかったのにねぇ。去年はNo. 1カップル決定戦に出てたし」

「あー、あれね。手錠したままお姫様抱っこでの飛び入り参加」

「コスプレだったから目立ってたな、あれは」

「その事詳しく」

 

 

 あーもー五月蝿い!!散れ!

 そろそろ授業の予鈴が鳴るからと、全員を無理矢理黙らせて席に着く。とりあえず、くたばれとかシスコンとか言ってた奴らは後でしばくとしよう。

 

 

「おはようございます。お疲れみたいですね」

「文緒ちゃんおはよ〜」

「……見ての通り」

 

 

 他の連中と違いずっと席に着いてた村上に軽く挨拶して突っ伏す。

 

 

「そういえば、お付き合いするようになったんですよね。おめでとうございます」

「ありがとう、告白された時はびっくりしたけどねぇ」

「ちゃんと出来たんですね、火野さん」

「うっさい……」

「?」

「望月さんは、気にしなくていいですよ」

 

 

 エレナは首を傾げて頭に?マークを浮かべるけど、村上はそれ以上何も言わずに授業の用意をし出した。こっちに来られても答えたくはないので、俺もさっさと用意をしておく。そんな俺を見て諦めたのか、エレナは特に何も言わず授業の用意をした。すまんな、エレナ。あれはあまり聞かれたくないんだ。

 

 

 

 

 

 そんなこんなで午前の授業が終って昼休みになり、昼飯を食べようと思ってたらエレナが女子数人に捕まってた。

 

 

「望月さん、火野君と付き合い始めたって本当なの?」

「う、うん。まあ」

「最近避けてたのにどうして急に?」

「あ、それは、その……」

「どこでどんな告白されたの?」

「それは……内緒………」

「もうヤった?」

「ふぇっ!?」

 

 

 女子の1人が爆弾発言をかまし、真っ赤になったエレナが慌てふためきながら助けを求める目で俺を見てくる。やめろ、こっちにまで飛び火する。

 で、案の定その女子は視線の先にいる俺に気付き、狙いをエレナから俺へと変更する。

 

 

「で、どうなの彼氏クン。もうヤった?」

「直球すぎやしませんかね……」

 

 

 キスまでしかしてないし、付き合って初日からそこまでは流石にないと思う。というか何故にこういったことを聞きたがるんだろうか?

 

 

「ほら、早く教えてよ。でないと君の彼女の胸鷲掴みすんよ?」

「わわ、わたしの胸は霞黒くん専用よ!?」

「いきなり何を言い出すんだお前は」

「ふむふむ、つまりもうヤるとこまでヤったと」

「ヤってねぇよ」

 

 

 あらぬことをメモに取りだすから、思わず吐き捨てる風に言う。おっかねぇな、まだ事実しか書かない神楽坂の方が安心出来るぞ。………いや、あいつはあいつで安心出来ないな。安心しろって言う方が無理だ。

 

 

「なんだ、つまんない。じゃあ、どこまでいった?」

「言うわけな「き、キスまでなら…したわ……」なんで言ったエレナ!?」

「ほほう?」

「あ、つい……」

 

 

 

 俺の言葉にハッとして口を押さえたけど、時既に遅し。ばっちり聞かれてしまった。

 このままだとさらに突っ込まれるのは明白。ならこの場合取る行動は、

 

 

「三十六計逃げるに如かず!」

「ひゃっ、霞黒くん!?」

 

 

 エレナの手を掴み、全力で走る。

 

 

 

 

「お、駆け落ち?」

「ちげーよ!!」

「廊下を走るな火野」

「今回ばかりは見逃してくれ!」

「青春してるなぁ。………妬ましい」

 

 

 途中すれ違う知り合いに色々言われたりしたけど、走りきって屋上に出る。……あー、しんどっ。

 

 

「もう……急に引っ張って走らないでよぉ………」

「あ、悪い…」

「ま、まあ、わたしもつい口滑らしちゃったし………あんな強引なのも悪くなかったから吝かじゃないけど……」

「?」

 

 

 なんか下向いてぶつぶつと呟き出した。どうしたんだろうか。

 

 

「と、とにかく、今度からはこういう事は控えてよ?」

「解った解った。それじゃ、飯………あ」

 

 

 言い出したところで、弁当を教室に置いてきたことに気付いた。

 

 

「あー、ちょっと購買行ってくるから待っててくれ」

「もう、しょうがないわねぇ霞黒くんは。はい、これ」

「おぅ?」

 

 

 懐が厳しい状態でも背に腹は代えられないかと考えてると、エレナがそこそこの大きさの包みを渡してくれる。この形と重量からして、

 

 

「弁当、わざわざ作ってくれたのか?」

「霞黒くんが引っ張って走るから、崩れちゃってるかもしれないけどねー」

「うっ、ごめん……」

「ふふ、別に怒ってないからいいわよ。さ、食べましょ」

「あ、ああ…」

 

 

 からかうためにああやって拗ねた風に言ったのかこいつ……。素直に謝って損した気分だけど、実際形崩れてる可能性もあるし、俺に非があるし、うーむ………。

 ベンチに座って弁当を開けると、まず形は崩れてなかった。良かった。弁当の半分は白飯で、もう半分に卵焼きやタコウインナー、サラダなどが綺麗に敷き詰められてた。美味そうなんだけど、白飯の上にある、たらこを使って書かれた「大好き」の文字は恥ずかしすぎて直視し辛い。エレナはさっきからニコニコとこっち見てるし。

 

 

「食べないの?」

「いや、食べる食べる。いただきます」

 

 

 まずはアスパラのベーコン巻きを一つ取って口に運ぶ。うん、美味い。美味いけど、少し違和感がある。この違和感の正体を確かめるべく、もう一つ食べる。……む、ん?

 

 

「これ、巻いてるの豚バラか?」

「うん、正解。どう?豚バラも結構いけるでしょ?」

「正直、豚バラの発想はなかったよ。ところで、お前の分は?」

 

 

 そう訊くと、待ってましたと言いたげな目をして、あーん、と可愛らしく口を開ける。

 

 

「一応聞くが、なんのつもりだ?」

「霞黒くんが食べさせて」

 

 

 顔を近付け、目を閉じてもう一度口を開けるエレナ。こういうの見ると少しいたずらしたくなるな。しないけど。

 俺は卵焼きを一つ取ってエレナの口の中に入れてやる。卵焼きが入ると、エレナは口を閉じて咀嚼し始める。その様子を見てから箸を抜いて白飯や他のおかずを食べ、また可愛らしく口が開くと入れてやる。

 

 

 

 そうした食べさせ合い、合いじゃないな。俺が一方的にやってるよな。まあそれを続けながら食べ進めた結果、そこそこあった量もあっという間に平らげる。

 

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末さまぁ。美味しかった?」

「ああ、すごく美味かったよ」

 

 

 鈴ちゃん達は俺の料理が一番って言ってくれるけど、正直エレナの方が美味いと俺は思う。

 

 

「これなら毎日食べたいかな」

「言い過ぎよぉ。でもそれなら、これから毎週木曜日は、お互いのお弁当を交換するっていうのはどう?」

「お、いいなそれ」

 

 

 エレナの提案は中々に魅力的な内容だった。もちろん俺は二つ返事でOKだ。

 

 

「早速来週からの楽しみが出来たわぁ。あら?霞黒くん、ご飯粒付いてるわよ」

「え、どこだ?ここか?」

「ああ、取ってあげるからじっとして」

 

 

 俺じゃ見えないしその方が確実だから素直に言うことを聞いてエレナの方を向く。エレナは俺の頬に手を伸ばすも、米粒を取るような素振りは見せず手を添えてくる。あれ、なんか変だ―――むぐっ。

 

 

「ん、ちゅ……」

 

 

 気付いた時には遅く、俺はエレナにキスされてた。しかも深い方の。

 

 

「………ぷはっ。はい、取れたわよ」

「……嘘吐け、ただの口実だろ」

 

 

 顔を離したエレナはご満悦といった表情で、熱の籠った目でこっちを見ている。対して俺は不意打ちでされたキスの所為で顔が熱く、直視出来るわけもないので顔をそむけながら口元を手で覆い隠す。あー、くそっ。こんなベタな騙し討ちしてくるとか、反則だろ………。

 こうなったら仕返しでもするかと考えてたら、エレナが視界の端でもぞもぞ動いてたかと思うとベンチに寝転んで俺の太ももに頭を乗せる。

 

 

「ふみゅ…霞黒くぅん………♪」

「……やれやれ」

「ん、えへへ……♪」

 

 

 猫みたいに擦りつけてくる頭を撫でてやると、気持ち良さそうに力の抜けた笑顔を見せる。なんだこの生き物、可愛すぎるだろ。

 それから昼休みが終了する予鈴が鳴るまでの間、可愛い彼女の可愛らしい姿を独占し続けた。




 あてーんしょーん、はろはろ~。壁を殴り過ぎて手が痛いクロウズです。壁殴り代行いません?
 今回は書いてる自分が吐き気催すほどいちゃつかせてみますた。砂糖吐きそうです、げっろ。この日は人のいない屋上だったから良かったですが、これが教室や中庭だったらラブコメの波動を感じさせる砂糖テロです。いずれ起こします。



 付き合ってから1週間。順風満帆な恋人関係なのも束の間、2人の前に現れる謎の美少女。彼女は、既に付き合っていることを知りながらも霞黒を寝取ろうと誘惑する。一体この少女は何者なのか、そして霞黒はこの誘惑を振り切り、エレナとの幸せを勝ち取れるのか!?次回『恋は空模様』。あの子の笑顔に、シャッターチャンス!!(嘘です)




それではこの辺で。はらたま~きよたま~。
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