人の子~(気さくな挨拶)   作:蓮太郎

1 / 1
人の子~(気さくな挨拶)

 

 我はエンシェントドラゴンである。宇宙が誕生した瞬間から生きるドラゴンである。

 

 とにかく漂い、暇を持て余す我は遥か遠くの星にて生きる生物たちを観察するのが趣味である。

 

 覗き見?我は全てを見ているのだから別に構わんだろう。それくらい退屈してはいるのだから。

 

 我だってこっそり混じりたいものだが我の図体がデカくて少し動けば、やれ星が崩壊するだの超重力が発生するだでちょっと、その、な?

 

 だから数億年かけて色々考えてみた。

 

 我の力は人の子にとって強すぎる。

 

 現状で我以外で一番強い生命体でも精々銀河を消滅させる程度だ。我と比べるのはいささか酷と言うものであろう。

 

 とはいえ暇なものは暇。人の子や化生の子の人生を眺めているだけでは到底つまらぬ。

 

 高度な文明を持った生物は我に接触を試みたりすることは本当にだが稀にあったりする。

 

 そういう時は、大抵は恐れであり、そして我を利用しようとする者達である。

 

 我を恐れ崇めるのは別に構わないが、扱えもせぬのに我が力を手にしようとは愚かと言わざるを得ない。

 

 我、何千億と生きる生物ぞ?たかだか数万年程度の命しか持たぬ身が扱おうなどと、人の子で例えるならデーモンコア(人間命名)を素っ裸でいじり倒しているようなものよ。

 

 気づいたときには全身に致命的な毒素を受けてしまっており絶滅する、なんてことはザラであった。

 

 身の程というのは難しいものだ。自分を誇大に見立てる者も居れば自分は矮小だと自身の大いなる力を認識できていない者も居る。

 

 我は、そうだな…………どちらかというと後者である。

 

 我自身ですら全貌を把握できていないのだから致し方あるまい。本気を一度も出したことが無いのだ、銀河数個分の船団が我を襲撃したこともあったが、少し力を入れただけで一瞬で消し飛んでしまったのだ。

 

 本当に我の力は多大すぎて我の精神が追い付いていないのがあるんだがな!

 

 さて、そんな我だが暇とはいえど人の子らの生活をただ眺めるのは飽きてきている。

 

 あの中に混ざりたいという気持ちはある。我も生物だ、恐れ崇められるだけで満足できるわけでもないし、刺激だって欲しい年ごろなのだ。

 

 ふむ、こうして眺めていて気付いたことは一つある。

 

 人の子、やはり力が弱い。しかし力を内包する能力は非常に高い。

 

 我は力を常に垂れ流しにしており、宇宙一つ分を我が力で満たしている。

 

 つまり我はわざわざ力を隠す必要がないからこそ垂れ流しであり、他生物は力を内包していざ使う時に吐き出すといったことをしている。

 

 無限機関がないからこそ必要な時まで貯めておくということだ。

 

 よくある真の力とか秘められた力とか言っているが、単純に修行が足りないか力の使い方を全く理解していないだけだからな?

 

 万物を見通す我の目だからこそ言えるが当事者からはそんな感じでしか内なら力を感じたことしかできていない。

 

 ならば我も力を内包して矮小な存在として擬態すれば彼らに並んで生活できたりするのではないだろうか?

 

 流石に我自身が行くのはどう足掻いても星系サイズになってしまうので、僅かなカケラから分体を作る。

 

 

 

 我だって生物、何も摂取せずとも代謝はあるため鱗の生え変わりとかするぞ。基本的に我の体から離れたら即消滅するが、今回は敢えて残す。

 

 そして抜け落ちた鱗をそれを我そっくりに…………いや、あえて愛嬌を出すためにやや丸っこく寸胴に作るか。

 

 こうして出来たのが『ちびドラゴン』と言われるやつだ。体長50cm(人の子基準)で人の子が抱えられる程度の大きさだ。

 

 我からしたら砂どころか原子レベルの小ささなのだが、我だからこそ操ることもできる。

 

 操作は感覚を共有して手足を動かし歩いたり浮遊することもできる。視覚もあえて縛りプレイのように我の分体だけの目で見るようにする。

 

 この『ちびドラゴン』を操作している間は我はどうなっているか?

 

 本体は一時的な睡眠状態となりロクに動けなくなるのだが、まあ問題はない。

 

 我、寝る時は何百万年と寝るからなぁ。寝ている間に多次元からの侵略があったりしたが、どうやら我が寝返りを打っただけで全滅したようだから大丈夫だろう。

 

 そう簡単に我が力を奪われたり操れたりするものか。この『ちびドラゴン』も我が力を内包しているのだから同じである。

 

 さて、ではこの『ちびドラゴン』をどうやって人の子らの元へ届けるか。

 

 どこかの召喚魔法を上書きして勝手に行く。

 

 流石に人の子が移動するような魔法に便乗するわけにはいかない。下手したら人の子どころか我の力をほんの少し外へ抽出しただけで焼き星が出来上がってしまうからな。

 

 では行くのだ『ちびドラゴン』。そして我はぐっすりと感覚共有するのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヒーヒッヒッヒュ!邪神様が降臨なされる!貴様らの苦労は無駄!犠牲も無駄!我々の勝ちだぇ!」

 

「そんな、くそぉ!」

 

 これはある戦いの一部。とある学校にて近くの森で探索し課題を達成するグループがある邪教徒とかち合ってしまい、邪神降臨の儀式を阻止しようと戦っていた。

 

 本当に偶然ではあったが、何十年と潜伏して行方不明者と称して生贄を集めていた邪教徒のたくらみを見つけてしまった少年少女は自身の身を、友を、家族を守るために未熟ながら戦いに身を投じた。

 

 才能はあった、足りないのは経験と技を磨く時間。若く未熟な彼らに比べて何十年と計画を立てていた邪教徒がぽっと出の学生に計画を止められる訳もなく。

 

 だが妨害を受けて怒り心頭なのは違いなく、邪魔をした学生共は邪神の餌にしようと考えていた。

 

 信仰してやまない神へ人間を餌として与える、という考えが不敬になっているのには一切気付かず。

 

「魔法陣を破壊して!今すぐに!」

 

「もう遅い!阻止不可能よぁ!」

 

 邪教徒の長、ナーナシ・ナッシが高らかに叫ぶ。

 

 三人が必死に他邪教徒を倒しても魔法陣は光り、そして力があふれ出す。

 

 闇に輝き、そしてキラキラと輝くソレから現れたのは…………

 

「……………………はぉ?」

 

 四足歩行だった。

 

「え?」

 

 鱗で覆われていた。

 

「ドラゴン?」

 

 翼が生えていた。

 

「小っちゃい、可愛い…………?」

 

 一匹のちびドラゴンだった。

 

 少し丸い感じを残して、しかし場の空気を全く読まずきりっとした顔をしている小さなドラゴンは周囲を見渡した後に右足を上げた。

 

「ちゅみみ~ん(人の子~)」

 

 とても気が抜けて、そしてとても気さくな挨拶だった。

 




 ~エンシェントドラゴン~
宇宙の創世から何故か生きてるドラゴン。
滅茶苦茶強大な力を持つが故に人の子らと接触することは滅多になかった。
観測されたところでヤバい生き物と思われたり、力を利用しようとして自滅していく様を常に見続けていた。
暇すぎて『ちびドラゴン』を創り出し、いざ人の子と接触。

 ~学生三人~
この星の主人公枠。紹介は後の話に。

 ~邪教徒~
我々なんのために苦労したんですか?

 ~召喚に割り込まれた邪神くんちゃん~
出番は?????????
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。