宇宙世紀0079年 5月28日
ジオン軍はドズル中将立案の多方面同時強襲作戦を実行に移した。
作戦名『三矢作戦』
キャリフォルニアベースで鹵獲した連邦軍潜水艦を用いた強襲上陸部隊を用いて、オデッサより進軍した部隊と北京を挟撃。
それに先行して北米で生産した水陸両用モビルスーツ部隊をもってハワイを強襲。
これとほぼ同時に宇宙では、ソロモンから海兵隊艦隊とドズル中将旗下の艦隊を用いてルナツーに対して攻撃を仕掛けるというものだ。
ともすれば地球降下作戦以上の大規模作戦だが、ドズル中将の真の目的はこれら拠点の制圧ではなかった。
この三矢作戦の目的はひとえに連邦のモビルスーツ量産計画のキャッチにあった。
北京、ハワイにおいては連邦の配備状況がどれほどのものか。そしてその発展はどれだけのものか。それを探る意味合いが強かった。
そして宇宙に関してはルナツーを本気で攻略しようなどとは少しも考えておらず、サイクロプス隊とシャアをサイド6とサイド7へと派遣する為の陽動でしかなかった。
作戦の開始前にドズルは地上侵攻軍のガルマ、そしてマ・クベに対して『拠点の制圧は優先せず、敵のモビルスーツ部隊の量が多ければ早めに撤退すること』を命じていた。
もし仮に北京という、ジャブローから反対の位置にある拠点にすらモビルスーツが大量に配備されていたとしたら。それは連邦の状況が大半のジオン軍人が思っている以上に良好であり、大規模反抗作戦を企図しているという意味を含んでいるからであった。
ドズルはこの戦争をいち早く終わらせる必要があると分かっていた。彼我の戦力も、国力も、そして政治的安定力にすら差があると分かっていたからである。
≪≫
俺は某眉無しの野望ゲームのお陰で北京が史実においてジオンの支配下であった事を知っているが、実際にどの程度の時期に攻めたのか、そしてその時の彼我の戦力差がどうだとかは全くと言っていいほど知らない。
なにせ某ゲームはプレイヤーの選択次第で状況が余りにも変化するからだ。
極端な例を出すなら、ゲルググだのジオングなどができた後で地球降下作戦を開始する事だって不可能ではない。
まあ流石にこれは極端だが、そういう訳で北京攻略の時期については「地球降下作戦終了後」ぐらいの認識でしかなかった。
ハッキリ言って俺はこの戦場を舐めていた。
これまで負けなしであったこともある。だがそれ以上に、俺は連邦のモビルスーツ運用練度と配備状況がこれほどだとは思ってすらいなかった。
完全に俺は連邦を舐めてかかっていたんだ。
『クソッ、次から次へと……まるでモグラ叩きだ!』
アイゼンが悪態を吐きながらもマシンガンを連射する。
作戦は予定通り進行し、オデッサからの侵攻部隊に正面を向けていた防衛部隊に対し、俺達上陸部隊は挟撃を仕掛けることができた。
そこまではよかった。
潜水艦からの対地ミサイルの雨をバックに、俺達は沿岸部のトーチカや野砲を破壊していった。
だが、余りにも連邦の防衛線はぶ厚かった。
彼らはモビルスーツサイズの蛸壺をいくつも用意していたのだ。
「いくらなんでも多いが……空から対地攻撃さえできれば」
『ですが対空砲陣地が邪魔でドダイは前に出られないようで』
アイゼンは言うが、それは逆を言えば対空砲さえ潰せばある程度ドダイの援護を受けられる状態まで持ってけるというわけだ。
この作戦はなにも俺達で全ての敵を倒せなんて言ってるわけじゃない。
俺達は自分たちのいる戦地を優位に進められるように、優秀な駒でいればいいのだ。
「この機体の性能を試すぞ。各機、高速移動モードを入れろ」
『敵モビルスーツのいる防衛網を突っ切るんですか!?』
「そのための陸戦型ヅダだろう?クラッカーをそれぞれ指定ポイントへと投擲、その後突撃するぞ」
『了解!』
クラッカーを各機手に持ったのを確認して、俺はカウントを始めた。
「2、1……投擲!行くぞ!」
高速移動モードを起動した陸戦型ヅダの凄さはすぐに分かった。
通常のヅダの走行速度の倍に相当する程の速度が出ており、敵モビルスーツのバズーカ弾を避けるのすら容易であった。
俺は新規製造され、ヅダの腰に帯刀されていたヒートソードを引き抜くと、その速度を維持したままに蛸壺から顔を出したザクの胸部から上を両断した。
「これは凄いな!」
『ヘヘ……これなら連邦の雑魚共が何機いようと!』
『シュッツ!余り前に出て隊列を崩すなよ!』
『心配ないですよ曹長!こちとら隊長についてくのに一杯一杯ですからね!』
シュッツのヅダは残りのクラッカーを蛸壺に投げ入れながら進軍し、防衛線に設置されたトーチカに対しバズーカを放ち、後続の味方の邪魔になりそうなものから撃破していく。
対するアイゼンはそんなシュッツの援護に回っており、トーチカを防衛するために迂闊に顔を出したザクに的確な射撃を行った。
2人ともあんな風には言っているが、俺のテンポに合わせながらも良い攻撃をしてくれている。
周りは俺をエースだなんだと持て囃すが、こいつらがついてこなければそんな活躍は不可能なのだ。
「これで最後のラインだな!」
マシンガン下に追加装備されたグレネードでザクを沈黙させ、その周囲に掩体を築いていた戦車陣地を更にマシンガンを撃つことで黙らせる。
ヒートソードを地面に沿わせながらホバー走行をすれば、走りながら道端の敵機を撃破できるので便利だった。
そうして対空砲陣地まで到着した俺達は、高速移動モードを終了させ、マシンガンでその陣地を滅多撃ちにしてやった。
「こちらフレズベルグ隊、敵対空砲火を黙らせた!対地攻撃隊、掃除を頼んでもいいか?」
『こちらスカイレイダー隊、貴隊の尽力に感謝する!各機、地球が好きな連邦共を地球の一部に還してやるぞ!』
『あの灰の凶星まで参加してるのかよ!』
『こりゃあ気合入れて更地にしないとな!』
間もなくしてドダイとそれに乗ったヅダによる空爆が始まった。
史実ではグフ運搬のための
『隊長、追加のモビルスーツです!』
「なんだと?」
今の突撃だけでも3機で10機以上を撃破した。それなのに、後続の味方への迎撃ではなく、ここまで浸透した俺達を攻撃する余裕まであるとは、連邦は既にザクの本格的量産を済ませていると見える。
報告のあった方へ機体を向けると、そこには衝撃の機体がいた。
「な、なんでこんなところに……」
その機体は、旧ザクとはお世辞にも言えなかった。
セモベンテ隊が用いていた、ヅダに肩部などを似せていた機体とは異なり肩にはスパイクが装備されていた。それも両肩にだ。
「
先端がカーブしたスパイク。それを両肩に装備し、機体の各所にはジオニック製モビルスーツのザクの系譜を感じさせる動力パイプが露出していた。
もちろんそのままのグフではない。頭部はモノアイではなくジムのようなバイザータイプのものになっており、形状はどちらかといえばザニーのような形。
胴体部は陸戦型ガンダムのような見た目をしており、ジオンの丸っこいデザインではなく、全体的に角張った感じだ。
それでも尚、俺がヤツをグフだと認識できたのは、あの特徴的な肩部スパイクの形状と脚部と胴体に配置された動力パイプ、そしてなにより右手首にはヒートロッドと思わしき兵装がチラ見えしていたからだ。
『連邦の新型か!』
慌てたシュッツがバズーカを放つも、推定グフの敵機はザクより機敏な動作でそれを躱し、前進してきた。
前に出された左腕から放たれた、ガンタンクを思わせる4連装ボップミサイルを、シュッツの機体の前に出た俺は左肩のシールドで防ぎ、そのままホバー機能で勢いよく体当たりを仕掛ける
「そんな紛い物で!」
敵は突撃してくる俺にビビったのかシールドを構えるが、それは悪手だ。
速度を武器に俺はシールド同士をぶつけるように突撃。相手を弾き飛ばす。宇宙なら距離が空くだけのそれは、重力下では機体バランスを大きく失わせる攻撃に変わる。
だが相手も伊達ではない。
背中から倒れたところを狙う俺に、右腕からワイヤーを射出。攻撃態勢に入っていたヅダのシールドに先端部が吸着する。
「南無三!」
電流が流れるか否かの瀬戸際でシールドの分離に成功すると、やはりそれはヒートロッドだったようでシールドからバチリという炸裂音が響く。
俺が避けたのを見た敵はヒートロッドを戻そうとするが
「慣れてないのが分かる!」
ヒートソードでワイヤー部を切断して無力化。
左腕を足で押さえつけながらコックピット部を突き刺した。
『連邦はこんなモビルスーツまで開発しているのか……』
「明らかに近接戦を意識した機体だな。相手がエースなら結果は変わっていたかもしれん」
グフと同様のコンセプトという事は、それだけ手馴れた相手が使えば脅威となるという事だ。
ここは北京。史実通りでいくなら、極東方面軍にはコジマ大隊がいるはずだ。それも本来より2ヶ月も早くモビルスーツが配備された部隊がだ。
「シュッツ、平気か?」
『ありがとうございます、隊長』
「連邦のモビルスーツが出て焦るのは分かるが、命を守ることを優先しろ。まだこの戦争は長くなるぞ」
『ええ、まだ死ぬ気はないですから』
俺はドダイを使っているスカイレイダー隊に別の区域の援護をしに行くと伝え、アイゼンとシュッツを連れて戦域を移動する事にした。
まだ北京は騒がしかった。
ガルマが優秀すぎるとあのSSを思い出す人多いようで笑いました
やっぱり色褪せない名作ですわ
・推定グフについて
陸ジムとグフを足して割ったものをザニーで薄め、仕上げにガンタンクの左手を添えたものって感じです
詳しくは別の話で出ます