ヅダですが?   作:のり

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珍しく連邦サイド


コジマ大隊ですが?

 地球連邦軍 極東方面軍 独立機械化連隊は、地球連邦軍内で初のモビルスーツを主軸に添えた部隊である。

 連隊長であるイーサン・ライヤー大佐は軍部でも有名なモビルスーツ配備賛成派の人間で、ジオンの地球降下作戦の最中には、しきりに「これからの重力戦線を支えるにはモビルスーツの実戦配備が必要」と言い続けた。

 しかし、頭の固いジャブローの上層部は、軍事産業を担う企業との利権などの関係で重い腰を中々上げず、レビル将軍が提案した地球連邦軍製モビルスーツ開発計画であるV作戦の発動すら危ぶまれていた。

 

 だが転機は突然訪れた。

 3月半ば。とある人物がジオンから連邦へと亡命したのだ。

 彼の名はエリオット・レム。ジオニック社からジオンへと出向し、佐官待遇の少佐としてジオンのモビルスーツ開発に携わった男だ。

 ジオン軍が正式採用したヅダというモビルスーツ。それと主力量産機の座を争っていたザクの開発に携わり、更にはテストパイロットまでこなしていたこの男の存在が大きく連邦を揺らした。

 レビル将軍からすればモビルスーツの開発に詳しい人物の亡命は願ったり叶ったりであり、また彼の亡命理由が「自身の故郷であるサイド1をジオンに燃やされた挙句、ヅダに主力生産機の座を奪われた後、ジオニック社や周囲からの扱いが悪くなったから」というもので、同情するしかない理由だったが為に上層部も疑うのをやめたのだ。

 

 こうして連邦軍に好待遇で迎えられたエリオット・レムの手引きにより、ジオニック内の彼のシンパ経由で連邦はザクのテスト機を3機裏取引することに成功する。

 データと実物の取得により現実味を増したV作戦は、3月末には予算の付与が決定され、4月1日に発動された。

 更に同時にザクのリバースエンジニアリング計画「ツポレフ計画」も発動され、完全な連邦製モビルスーツの開発と並行し、ジオンの技術を吸い取った先行量産型モビルスーツも製作することになる。

 

 その最初の一歩こそ連邦製ザクである、RRf-05 ダーレだ。

 セモベンテ隊という特殊部隊に、更にヅダにカモフラージュした外装が取り付けられた状態で配備され、MSによる奇襲攻撃という形で用いられた。

 そしてこのダーレを改修したものが、現在の独立機械化連隊にも多く配備されているRRf-06 ザニーである。

 ダーレの基本性能を全体的に10%程度底上げし、見た目もザクのものから変更されたこれは、暫定的な連邦軍の量産モビルスーツとして量産され、そして一番初めにこの部隊へと配備された。

 これはイーサンが再三モビルスーツの重要性を説いた成果であり、彼自身これを得た時は内心でかなり喜んでいた。

 

 しかし、良い事はそう続かなかった。

 5月初頭、セモベンテ隊との連絡が途絶えた。それと同時に北米戦線が活発化した上、現地住民と北米戦線の司令官であるガルマ・ザビがかなり良好な関係を築いているというのも分かった。

 そして兵士達が最も噂したのは、あの『灰の凶星』の噂だった。

 

 灰の凶星 グラン・リース

 かのブリティッシュ作戦でティアンム提督の乗る旗艦タイタンを含む、マゼラン級3隻とサラミス級3隻を沈め、シドニーを灰に帰した凶星(コロニー)になぞらえて付けられた二つ名が『灰の凶星』。

 続くルウム戦役でもマゼラン級2隻にサラミス級4隻という異常なまでの大戦果を挙げ、名実共にジオンのエースパイロットとして連邦軍内では恐れられていた。

 そんな彼が地球へ降下したという噂がまことしやかに流れた。セモベンテ隊を知る上層部内でも、彼らを仕留めたのが『灰の凶星』であるとする声も多い。

 そんなエースが地球に降下してきた。

 どこから湧き上がってきたのか分からないこの噂は、どういう訳か兵士達の間で瞬く間に広がってしまった。

 

 そして5月28日。

 ジオン軍は地球降下作戦以来の大規模作戦を実行に移した。

 ハワイ、ルナツー、そして独立機械化連隊がモビルスーツの慣熟訓練を行っていた北京基地に同時強襲攻撃を仕掛けてきたのだ。

 情報を数日前に察知した諜報部により各部隊に齎されると、独立機械化連隊はすぐさま訓練を中止し、訓練場を利用して防御陣地を構成した。訓練用とはいえ、モビルスーツサイズの蛸壺がいくつも用意されており、アンブッシュには最適であった。

 そんなものが対抗部隊用のものを含めて幾つも構成されており、モビルスーツ24機で構成される大隊3個で構成される独立機械化連隊は、まさにこの北京の防衛の要であった。

 

 ところが防衛戦がいざ始まってみればどうだ?

 

「Cフィールドに展開中の第3機械化大隊、第3中隊通信途絶!」

 

「大佐!Eフィールドで灰色のヅダを見たという報告が相次いでいます!」

 

 始まりはGフィールドだった。ジオンの潜水艦隊が朝鮮半島付近でソナーに引っかかったという情報から、第2機械化大隊をそちらに向かわせた。

 ザニー23機に近接戦用試作モビルスーツであるダーレ・ストライカーを1機という編成で、3つの大隊の中でも特に防衛戦闘の練度に秀でた部隊だった。

 元々北京基地に所属していた戦車大隊とも共同し、対空砲陣地の充実も相まって相当持ち応える算段であった。

 しかし、とある部隊員から『灰色のヅダがいる』という報告があった後、第2大隊の敷いた防衛陣地は中央突破され対空砲陣地は壊滅。大隊のモビルスーツも10機以上が撃破され、更に新型のダーレ・ストライカーも失われたという。

 最初に灰色のヅダの報告があってからたったの5分の出来事だ。

 その後、『灰色のヅダ』は2機の僚機と共に各フィールドに現れてはその防衛線をかき回し、そして壊滅状態に追いやっては去っていくという最悪の状態を作り上げていた。

 

「灰の凶星め……」

 

 イーサンは己の拳を血が流れんばかりに握りしめ、呪詛めいた言葉を気づけば口にしていた。

 兵士達が噂をし、恐れていた者が現実に現れたのだ。

 まだなんとか被害を大きく出していなかった第1機械化混成大隊(コジマ大隊)への通信を開き、イーサンはすぐさま北京基地からの撤退命令を伝えた。

 状況を既に把握していたコジマ中佐の行動は迅速であった。

 自らの指揮車には最低限ザニー1機の護衛を付けると、残りから志願兵を募り味方部隊への殿部隊とし、残りについては『灰の凶星』が一度訪れ、破壊し尽くした戦線への電撃的な攻勢を仕掛けた。

 この攻勢によって東南アジア地方への脱出口を作ったコジマ大隊は、第2、第3機械化混成大隊の生き残りのみならず、一度は撤退を諦めていた連隊本部のイーサン・ライヤー大佐を逃がし、自らの部隊も7割の帰還率を叩き出すことに成功する。

 この英雄的な退却劇は後に「コジマの退き口」と呼ばれ、士官学校の教本に載るまでに至る。

 コジマ大隊の奮闘により、北京を失った連邦はどうにか東南アジアにて再度戦線を構築することに成功、マドラス・トリントン間での防衛線をなんとか維持する事が可能になったのであった。

 

 史上初のモビルスーツ同士による大規模戦闘が行われた北京攻防戦において、『灰の凶星』グラン・リースは実に20近いモビルスーツ撃破スコアを出したとも言われ、この報告はジャブローの連邦軍上層部にも届く事になる。

 

 

 

 

≪≫

 

 

 

 

 地球連邦軍の宇宙における唯一にして最大の拠点、ルナツー。

 全長120㎞を誇る巨大な要塞は、ブリティッシュ作戦とルウム戦役で壊滅した連邦艦隊がその修復と再編成を行っていた。

 しかしながら艦隊が壊滅に等しい被害を受けていたのは何も連邦だけではない。ジオンもまた、モビルスーツ投入までの囮として艦隊を運用していたが故に無視できない被害を受けていたのだ。

 ギレンが地上侵攻を決めたのは、ジオンの艦隊が回復するまでの間に地上で作った艦隊を宙に上げられては意味がないという点も大きかった。

 つまるところ、連邦に艦隊再編成の時間と余裕を与えないが為、このルナツーはなんとか生きながらえたという訳だ。

 

 そして、ティアンムが戦死した事でこのルナツーの防衛司令を任されていたワッケインは、その事実を承知の上で艦隊を滅多に出すことはなかった。

 地球降下作戦の報を受け、ジャブローからの要請でパトロール艦を出す事はあったが、基本的にはジオンからこれ以上の攻撃を受け、ルナツーの防衛すらままならない状態に陥らないために。

 そして来るべき反抗作戦の時まで力を蓄えるために。

 ワッケインは苦渋の決断をして、これまで地上が好き勝手にされるのを見逃してきた。

 しかし、それも無駄に帰したのだと今ワッケインは思っていた。

 

「第2ブロック沈黙!」

 

「第6ドックに直撃弾発生!サラミス級2隻に被害が出ているそうです!」

 

 ジオンはこれまで見向きもしなかったルナツーに突然攻撃をしかけてきた。

 艦隊をもって仕掛けてくるなら、やりようはあるとワッケインは考えていたし、実際に有事の際の防御作戦も練られていた。

 だがジオンが行ったその攻撃の仕方は予想外のものであった。

 仕組みは簡単。ルナツー及び、ルナツーにいる連邦艦が撃てる距離より遠くから強力なビーム砲を用いる事である。

 偵察衛星により確認されたソレは、ルウム戦役にて複数の艦艇に被害を出したプラズマ砲に似た兵器であった。

 報告と記録に残っているものより小型化され、独立運用ではなくムサイやチベに直接装備されて利用されているそれは、2000㎞弱という余りにも遠い距離から砲撃戦を仕掛けてきたのだ。

 完全なワンサイドゲーム。

 どういう訳かその距離でもルナツーの砲台やドッキングベイは被害を大きく受けていた。

 

「ジオンめ……ミノフスキー粒子下でどんな魔法を使えば2000㎞先から的確に防衛設備を破壊できるというんだ」

 

 このままいけばルナツーは丸裸に等しい姿に変わる。そう考えていたワッケインだが、相手の射程を見た時点で艦隊は一隻たりとも出すことはしなかった。

 まさしく臆病な手であったが、しかしてそれはルナツーの運命を救う行動であった。

 

 ドズルは本気で攻める気はほぼなかった。

 だが例外があった。それはヨルムンガンド改を撃てる射程まで、連邦艦隊が捨て身の突撃を仕掛けてきた時であった。

 ドズルがソロモンから連れて来た艦隊は、あくまでヨルムンガンド改の移動手段兼外部ジェネレーター扱いに過ぎず、それらの防衛とその後の制圧に関しては海兵隊艦隊が担当することになっていたのだ。

 連邦艦隊を叩ける距離まで連邦艦隊自ら、ルナツーという要塞からの援護がなくなる場所に来た時、海兵隊によってそれらを壊滅させて制圧する気でいた。

 だがワッケインが臆病と罵られても仕方がない程、冷静にヨルムンガンド改の性能とドズルの思惑を感じ取ったがため、ドズルはルナツーの攻撃艦隊を退かせる事にしたのだ。

 

 偶然にもドズルによる侵攻作戦を受けきったワッケインだが、そんな彼でも2つのサイドに潜入することになった2つの部隊を察知することはできなかった。




今回のメカニックコーナー

ダーレ
型式番号 RRf-05
OVA版サンダーボルトで出てきたのとは全くの別物
ザクⅠに改修を加えたもので、セモベンテ隊はこれを偽ヅダチックな見た目に改造していた

ザニー
型式番号 RRf-06
Gジェネとかでお馴染みのやつとは全くの別物
ダーレ(連邦製ザク1)を改良し、ザクⅠ以上ザクⅡ未満ぐらいの性能になった
見た目も若干連邦機っぽくなったが、性能面で言えばザク1.5といったところ

ダーレ・ストライカー
型式番号 RRfX-05S
ダーレをV作戦のデータを基に改修した機体
対モビルスーツ戦闘における近接戦を意識した右腕と、換装可能なモジュール規格を実験的に導入した左腕が特徴
第2機械化混成大隊に配備されていたのは、右腕にウミヘビ、左腕がガンタンクの腕のモデル

ヨルムンガンド改
ルウムで活躍したヨルムンガンドを再設計した大型ビーム砲台
ムサイ1隻のエネルギーを丸ごと使用してギリギリ足りるレベルのエネルギーを用いて運用ができる程度のメガ粒子砲へとクラスチェンジ
可能な限りビームの拡散を抑える事のみに集中した結果、威力は落ちたが射程はなんとか維持できた
コロニーレーザーが面に撃てるデカいゲロビなら、こちらは点を焼く細いゲロビ
ムサイやチベなどの外部に頼り切った設計にすることでコストカットもできた。それでも高い
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