てなわけで2話投稿です。
ではでは!
期末考査が終わり,いよいよ冬休みが近づいて来た。
と言っても,テストを返されるためにまた登校する必要があるが,流石に冬休み入る前までにまた新しい範囲の課題が出される事は無いだろう。
「終わったーっ!!」
釜木辺りの声が心の底からテストが終わった事を喜んでいる様に,他のクラスメイト達もお互い期末考査の健闘を称えあう。
かくいう俺も,プロ資格受領確定による弊害か…おかげで勉強時間を十分に取れたとは言い難かったが…まあ,俺がピンポイントで勉強した所がド直球に来た事が多かったから成績も大丈夫だろう,多分。
「導志君,テストどうだった?」
「いつも通りだったな。勉強した所がピンポイントで助かった」
燈火さんとこうして平凡な会話をする光景も,既に当たり前みたいな光景になりつつあった。
「そっか…うう,古文の大門5絶対間違えちゃったよ」
「あれ普通に引っかけすぎるわ。まあ,終わった事はしょうがない。」
「導志~!さっきの古文が~!」
そこまで話した時,明後日の方角から園田が燈火さんと同じ所で躓いたと愚痴りに来て,俺達は可笑しくて少し笑った。
先生が来るまでの短い間の話,一しきり愚痴った園田は思い出したように聞いて来た。
「そう言えば…いや聞きたい事は色々あったんだけど,導志の耳は調子どうなんだ?」
突発性難聴と診断されはや1カ月,結局しばらくは補聴器ありの生活をしていたが今ではすっかり補聴器も取れている。
だからぱっと見では俺がまだ聴こえないのか分かりづらいのだろう。
「なんか自分でも分からないけど,医者もビックリな速度で快復してるって。実は最近また足音で人の判断が出来るようになって来た」
「おおっ!良かった!結局原因は分からずじまいなのか?」
園田,この野郎…俺が誤魔化すの面倒な所を丁度聞いてきやがって。
「さあ,プロ試験への緊張でストレスかかりまくってたのかもな」
「ほんとう?導志君,文化祭の時に私を庇ってぶつけたとかじゃなくて?」
そして燈火さんは鋭い。
まあ,時期的に物理的な原因はあれしかないからな…ただ,ここはそれなりの反論はを用意しておいた。
「それならぶつけた直後から聴こえなくなってるよ,あのあと神楽さんと普通にファイトしてたろ。」
「それは…そうだけど…」
あの後,俺にとっては聴覚がものを言うファイトを普通に行っていたことを引き合いに出されば,燈火さんは反論できない。
彼女はあの場で一番近く,俺のファイトを見ていたのだから俺に異変があれば気づけるはずだ。
それ位彼女は細かい事によく気がつくからだ。
だが,突発性難聴になった理由は間違いなくあの事故。
彼女が気にかけないように別の要因だと言っているが,何度もこの話題をやると怪しまれてしまう。
というか,俺が嘘つくのが向いていない。
演技している時よりも,ファイトしている時の俺の言葉の方が心に響いたってガールズバンドパーティーの一部に感想で言われてしまったからな。
ファイトしている時の俺は素で,演技はある意味嘘だからだろう。
そんな訳だから,俺は自然と話題を反らす事にした。
「それよりも,今日が文化祭打ち上げだけど…待ち時間長くねーか」
そう,文化祭のグランプリ受賞の打ち上げ。
当日は燈火さんがダウンしてしまい,それ以降は俺が難聴のせいで不登校気味になってしまったからまだやっていなかった打ち上げを,期末考査が終わる今日行うのだが,予約時間は18時からだ。
今がまだ12時にも入っていなくて,12時に入る頃には既にホームルームが終わっている事だろう。
つまり待ち時間は6時間もある事になる。
「んー,でもこんなものだろ。部活がある連中もあるし,皆一度家に帰りたいだろうしな」
「それもそうか…普段から制服だから着替えるとか考えたことなかったな」
「うん,クラスの中で導志だけが制服なのが想像出来る。」
何でかと言えば,俺はプロ試験最終戦でも制服で戦っていた。
純粋にそれには俺にとっては着替えやすいというのと,何となくファイターとしての戦闘服みたいだと思っているかもしれない。
「でも導志君の私服も見てみたいな~」
しかし,そこで異を唱えるのは燈火さん。
ニヤニヤ,という形容詞がピッタリな声色で問いかける。
「と言ってもな,俺が私服着る時って大概姉ちゃんが選んでるやつだぞ」
それは俺の私服というよりも,姉が選んだ俺の私服であって微妙に違うのではないだろうか。
「あ…そっか」
「なぜ落胆する。…まあ,それもそうか。俺も約束あるし,丁度良くはあったし。」
「約束?」
「約束というよりも,仕事?」
「え,でも導志…CiRCLE辞めたって言ってなかった?」
突発性難聴とクラスメイト達にいった日,当然バイトの事も聞かれ辞めるしかなかったという旨を言ったばっかりだ。
まだ1カ月位しか経っていないとはいえ,それを忘れる彼らではなかった。
だけどこれはプロ試験後の話,彼らもまだ知らないサブストーリーだった。
「いや,俺も辞表を書いて出したんだけど――」
無事,奨励会からプロ資格の決定通知が来て正式にプロになれると決まった日。
俺は香澄さんから貰ったギターの練習と…CiRCLEの人達に諸々の説明と謝罪をしに行った。
予め電話をして予約を取り,やっぱ気まずいなーと思いながらCiRCLEに着いた所,珍しくオーナーが来ていて俺の難聴の事,どれだけ回復してどこまで治るのかという話をした。
結果から言うなら,また変な事にならない限り元に戻るでしょうという医者の結果をそのまま伝えたら
『うん,じゃあこれいらないね』
そう言ってオーナーは何かびりびりと破いた。
『え,何破いたんですか今?』
『なにってどっかの誰かさんが持って来た辞表』
『ええ…』
という訳で
「オーナーの強引なプレイにより,俺はバイトを続行する事になりました。」
「お,おう…じゃあ仕事ってのはやっぱCiRCLEか」
「そう,姉ちゃん達ポピパのクリスマスライブのPAだとよ。身内だから復帰戦には丁度いいだろという事で」
姉ちゃん達ポピパのクリスマスライブ,去年の事があったからか姉ちゃんが早々に予約を取っていたらしく無事に枠を取る事が出来た。
と言っても,俺もバイト復帰してまだ間もないから月島さんがシフトを調整して以前よりは時間は短め。
今日は当日のセトリを聞いたり,演出の相談にポピパがCiRCLEへとやって来る日なのだ。
あと個人的にしばらく触れてなかったPA機器を触っておきたい。
最後にPAしたのはAfterglowさんの時だし,その時はもう難聴に片足突っ込んでいたから余りPAをした気にはなれなかった。
「そうなんだ。でも良かったね,元に戻れて」
「本当に,あのまんま耳まで使えなくなったらどうしようかと思った。」
「軽く言ってるけど,また異変感じたら直ぐ言えよ。」
「うん,分かってるから地味に怒気感じるの止めてね」
まあ,1人で抱え込まないと文化祭で気がついたばかりなのに余りの絶望感で知らせるの遅くなってしまい,彼らに教えたのは回復の兆しが現れた時だ。
園田が若干拗ねているように見えるのはそれがあったからだ。
「おうおう,盛り上がっているところ悪いがホームルームするぞお前ら~」
そこで津島先生が他の教室から帰還し,教室のテストが終わった直後の弛緩した空気に一石を投じながら教卓へとつく。
園田も自分の席へ着き,”長い話聞き飽きただろうから簡潔にするぞー”と言って津島先生は本当に軽くホームルームを終わらせた。
最後に打ち上げではしゃぎすぎてお店に迷惑かけないようにという言葉を貰って期末考査最終日は無事に終わりを告げた。
俺は自分の荷物を持ち,部活に行くという園田や神田さん,燈火さん…他の部活勢たちに別れを告げ深川君と一緒に教室を出た。
最寄りまで一緒に行く約束をしていたからな。
「そう言えば…あの人とはどうなったの?柴咲君だっけ…?導志君との話は聞いたけど」
結局,俺と悠馬の関係はクラスメイト達が知ることとなった。
あの決勝でのガキみたいな言い争いが何事かとなって,俺も話さざる得なくなったからな。
俺達の過去を踏まえて,俺達の今がどうなったのかはまだ深川君には話していなかった。
園田とかには割と速攻で聞かれたから応えてはいたけど。
「ああ,悠馬なら今は北海道に戻ってるよ。お母さんの手術も無事に成功,今はまだ都内の病院に入院してるけどもう少しで退院。悠馬は悠馬でこっちに残りたそうだったけれどあいつ俺と同い年だから高校があるんだよな」
「そっか…でもお母さんが無事になって良かったね。決勝は…少し苦しそうだったけど」
「悠馬の気持ちも分かるけどな,点火剤が無くなった薪と同じだな。動機がない目標程空虚になるものはない。自分を動かし続けた原動力が大事な時に無くなってしまったら特に」
悠馬が昔のように戻るのはまだ少し時間がかかるかもしれないけれど,でも…あいつなら大丈夫だろ。
俺がいなくてもあいつは元もとプロ試験を勝ち進んだ。元から出来る奴なんだから俺が保護者面するのも変な話だ。
…ただ,あいつがプロになるのかは正直分からない。
目指す理由が無くなっているのはマジ,決勝でのファイトはお母さんの為じゃなく俺の為のファイトであってまたプロを目指すのかは俺のあずかり知らぬところだ。
いや,連絡先はまた交換してるから聞こうと思えば聞けるけどもしもプロになるのならまたどっかで会えるだろ精神で聞いていない。
「今の悠馬なら大丈夫だろ,またどっかの大会で会える。」
「そうだね…最後なんか2人ともいい顔してたし。」
「姉ちゃんからは餓鬼の喧嘩かよって言われたけどな」
「良いんじゃないかな,喧嘩するほどで」
「…違いない」
そうこうしている内に最寄りに到着し,俺と深川君はまた後でと言い合って別れた。
背負っていたギターを身体の前に回し,抱え込むようにして電車に揺られる。
俺のギターの腕は今の所そこそこ,エンタメ性を抜いた純粋な実力ではガールズバンドパーティーの中でなら桐ケ谷さんよりもちょい上くらい。
成長速度やたら早いと言われるが,元々アコギをやっていたし,指を抑える場所とか一度分かれば視界を通さずに直せず刺激として脳に刷り込まれるから割とやりやすい。
コード進行も同じ,アコギと違って早いのが普通だが人と違っていきなり弦がうねる訳でもあるまいしでまだ出来る方だった。
ただしエンタメ性を入れたら普通に終わる。
今日もライブ打ち合わせ終わりにCiRCLE少し借りられる事になったのでこうしてギターを持って来たのだ。
電車を降りて,CiRCLEへ。
近づくと,流石に黎明よりも近いからか既に彼女達がカフェにいた。
「導志,こっちこっち」
「段差あるから気を付けて」
「あ,今だよ!」
彼女達も俺に気がついたのか,姉ちゃんと山吹先輩,牛込先輩が教えてくれた通りに進んで大股に歩くと無事に彼女達の近くにやって来れたが…あれ。
「香澄さんと花園先輩はどうしました?」
いつもなら真っ先に声を上げてくれる香澄さんんと,挨拶してくれる花園先輩の気配が無くて首を傾げる。
「あいつらならまりなさんにスタジオが空いてるって聞いて行っちまったよ」
「私達は休憩してたんだ」
「ああ,なるほど。期末考査,少しずれている学校もありますもんね。」
黎明と花咲川はほぼ一緒の時間でやっていたが,例えば羽丘は若干ズレて土曜日までやっているし,月の森も同じ。
「そう言う事,少し遅くなっちゃったけど導志君復帰おめでとう」
「本当におめでとう,導志君!」
「ありがとうございます,山吹先輩,牛込先輩。色々ご心配をおかけしました」
「ううん,導志君が隠したい気持ちも分かるしね」
「あはは,香澄さんにはブちぎれられましたけど」
だって色々追い詰められてたとは言え普段は温厚な香澄さんがビンタして来たんだもの。
怒っていたんだな~と今ならよく分かる。
「導志君耳はもう大丈夫?」
「はい,なんか香澄さんが突撃してきた日から調子は良くなってます」
「そうなんだ…」
一瞬何かを言いたそうに言葉詰まらせた山吹先輩だったが,やっぱり言うまいと言葉を飲み込んだのが分かる。
何を言おうとしたんだろうか,気になるけど何となく自爆する気がしたから口をチャックする事にした。
「じゃあ行きますか」
「そうだな,香澄達も終わる頃だろうし」
俺達はそう言ってCiRCLEの中へと行くと,丁度香澄さん達も慣らしが終わったのかラウンジへと集まっている所だった。
「あ,どーくん!」
「こんにちは香澄さん。」
俺が挨拶すると俺の眼前にふわりとした星みたいな香りが鼻に入って来る。
何だろうな,なんか香澄さんの匂いって事だけはとても分かりやすい。
彼女は俺に近づくと,小さく袖を掴んで…
「どーくんこっちだよ~」
ラウンジの席へと案内される。
何となくだけど,前よりも距離が近いように感じる。
いや前から距離感バグっていたけど最近は特にそうな気がするというだけ。
俺がラウンジの椅子に座らせられると,近くに月島さんや姉ちゃん達も座ったらしく,月島さんの挨拶から始まった。
「じゃあクリスマスライブのお話するね。皆どんな演出がしたいとか考えてくれた?」
月島さんには俺がバイトの復帰が決まった時に1つ約束させられた…いや,ガールズバンドパーティーの先輩組からはほぼ同じことを言われたんだが,また身体に異変を感じたら直ぐに言う事を約束させられた。
それも香澄さんを中心に,俺の逃げ場を無くされて約束という名の強制に近かったなあれは。
因みに,例えばどんな人達が俺に言ったのかと言えば…
『導志君,ほんっとうに辛い時はいってよね?!』
Afterglowから上原先輩にこう言われ
『導志本当に心配したんだからね?また何かあったらちゃんと誰かに言うように!』
Roseliaからはリサ先輩が持ち前のお母さん風と共にそう言われ
『導志君,言いたい事は分かるわよね?』
パスパレからは白鷺先輩の,顔は多分笑ってるけど声が笑っていない声で脅された。
他のバンドからも,バンドのお姉さん枠の人達から似た事を言われた。
あ,でもモニカに関しては倉田さんからなぜか謝られた。
『気がつかなくてごめんなさい!』
曰く,文化祭の次の日の彼女達のPAの時に耳が聴こえなくなっていくなかで色々と要望を出しまくったから(主に桐ケ谷さん)との事だが,当日俺の異変に気がつかなかったのならそれはある意味誉め言葉だから気にするなとは言っておいた。
まあ,バイト中にいきなり耳が聴こえなくなりました―とか洒落にならないからな…って理由で素直に応じておいた。
…守れる自信は微妙だけど。
そうして俺はポピパの人達のクリスマスライブについてのお話を聞き,セトリを聞きながらどんな音にしたいのかを聞いて行く。
正直早めにリクエストを貰わなければ勘が今鈍っているから対応できない可能性がある。
まあ香澄さん達だから前日リハの時に変更させられるところはあるかもだけど,聞いていないよりはマシだろう。
そうやってクリスマスライブの話を聞き,演出面や音響面の話は30分程度で終わった。
元から姉ちゃんがある程度メンバーの意見を纏めてくれていて助かった。
ただしやっぱり香澄さんの突拍子の無い思いつきもあったからこれでも結構時間を使った方だ。
ライブの話が終われば姉ちゃん達の話はライブ後の蔵で行われるクリスマスパーティーの話へ変わる。
そこからは完全にライブではなくプライベートのお話なので,月島さんにPA機器触ってきますと言って席を立つ。
そこで香澄さんにハイテンションなまま問いかけられた。
「どーくんもクリパ一緒にしようよ!プロ試験合格祝いに!」
一応と言っては何だが,プロ試験が終了した時に合格祝いと称してご飯に誘われていたが,まだプロ資格の証明書が届いた訳でもないし,悠馬とあれこれ話したい事があるから申し訳ないと思いながら遠慮した過去がある。
その時は香澄さんも”分かった!”と言ってくれたのだが,本人的にはどうしてもやりたいらしい。
うん…嬉しいけどね。背中むず痒いし。
ただ――
「いや,俺は遠慮して気持ちだけ貰っておきます。」
「え…?どうして…?」
香澄さんにしては珍しくトーンが落ちるなと少し気になったけれど,ちゃんとそれなりに理由は存在する。
多分プレイボーイじゃない男性の皆様なら分かってもらえる。
複雑な理由では無くて単純に
「普通に敷居が高いので。」
俺の事を見ている第三者の神様的な視点にいる人達には分かってもらえると思うが,基本的に俺は大人数の会話の中に入るのは苦手だったりする。
精々が4,5人の間にしか入れないし大体男が何人か入っているのも会話に入れる理由の1つとなっている。
だけど姉ちゃん達のクリパは当たり前だが全員女性で,そんな所に1人でポツンといるのは精神的敷居が高すぎる。
もちろん花園先輩も山吹先輩も牛込先輩も知らない中では当然ない。
各個人と色々仲良くなることが出来たイベントもあったから仲が悪いわけじゃない。
寧ろバンド友達の弟としての関係値で言えばかなり高い方だ。自分で言うなやって話だけど。
けど,よく考えてみて欲しい。いくらバンドメンバーの弟だからと言って年上の女子高生がクリパを楽しんでいる所に放り込まれる男子高校生…気まずい事この上ない。
例え山吹先輩達が気にしていないと言った所で俺が気にするレベルで遠慮願いたい。
山吹先輩達もこういった待ち時間とかで話す分くらいで俺には丁度いい。
あと,彼女達がバンドを結成してから守っている彼女達のバンド活動には余り干渉しない(正確には出来ない)を貫いているだけ。
「え,なにが…?」
そして分かってはいたけれど,大体巻き込む側の香澄さんにはそう言う心は分からない。
分かって欲しいとも思っていないから別に良いんだけれど,そんなに心を抉るようなか弱い声を出さないで欲しい。
結構世親的に殴られるから。
どう答えたものか,懇切丁寧に言ったら山吹先輩達に”大丈夫だよね?!”とか言いかねない。
若干困った俺の援護をしてくれたのは姉ちゃんだった。
もと不登校として俺の気持ちを分かってくれたのか
「なにがじゃねえだろ,導志は私達がライブした後の片付けとかあるんだし無茶言って困らせんな」
「うぅ…じゃ,じゃあ片付け手伝うよ!」
「いえ,それはこっちの仕事なので気持ちだけ貰っておきます」
別に,香澄さんとクリスマスを過ごしたくない訳ではない。
視覚的な事が楽しめなくなった今,それこそイルミネーションとかも俺には分からない。
きっと一緒にいても淡泊な反応をしてしまう自覚がある。
けど…香澄さんと一緒ならきっと楽しいて言うのは思っている。彼女ならきっと分からないなりにはしゃいでくれるんだろうって思っているから退屈がしないだろう。
でもだからと言ってバンドの時間を奪いたい訳じゃない。
これは自己犠牲じゃなくて,純粋にそう思ったからの言葉だ。
「…そっか,うん…分かったよ。でも絶対合格祝いはするからね!」
「はい,楽しみにしてます」
姉ちゃんにまで諭されれば香澄さんでも止まってくれるようで,残念そうにしながらもそう言ってくれてきっと俺は微笑んでいた。
ライブ打ち合わせ後,姉ちゃん達はスタジオで練習,俺もライブ会場でのPA機器のさわりを確認してから別のスタジオでギターを触る。
基本的なコード進行を復習し,そこから練習曲を使って音を奏でる。
定期的に時間を確認しながらやっていたが,15時位になった時に内線を通じて月島さんから連絡があった。
俺は集中していた所に発生した埒外のコール音を疑問に思いながら出ると
『あ,導志君。練習中にごめんね?今大丈夫かな…?』
「大丈夫ですけどどうかしましたか?具体的には姉ちゃん達が」
「ううん,香澄ちゃん達は今カフェで休憩してるよ…じゃなくて,導志君に会いたいって人が来てるんだけどスタジオに通しても良いかな?——って所の人なんだけど…」
俺はその人の所属している会社の名前を聞いて訝し気に思ったが,別にいきなり刺されるわけでもあるまいしと思い,休憩には丁度いいかと思って月島さんに大丈夫ですと伝える。
でも,なんであの会社の人がここに来るのだろうか。
どちらかというと用事があるのは湊先輩達Roseliaの方ではなかろうか。だってあの会社に所属しているのはそれこそ…
そこまで考えた時,こんこんとノックされる音が聴こえ反射的に「どうぞ」と答える。
「こんにちは,初めまして,市ヶ谷導志君」
聴こえて来た壮年の男性の声は落ち着いていて,どことなく,彼が俺の新しい世界に連れて行ってくれるのかもしれないと…漠然と思ってしまう位何かが始まる予感を俺は感じていたのだった。
☆
あいつはどんな顔するんだろうなって,俺は生徒の流れに逆らわずに歩きながらどことなく愉快に笑ってしまう。
もしかしたらなんの反応もしないかもしれないし,滅茶苦茶ビックリして飛び跳ねてしまうのかもしれない…って考えている内は俺の方が緊張してしまっているんだよな。
『じゃあ,悠馬も頑張れよ。またどっかで会おう』
プロ試験最終戦から数日後,空港まで見送りに来たあいつからそんな言葉を交わされたのは去年の12月の前半。
まだあの日から2カ月程度しか経っていないが,俺にとってはつい昨日の事のように感じる。
そう思う事こそが俺にとっては懐かしい感覚で,あいつと日が暮れるまでファイトしていた時は今みたいに時間の感覚が良い意味で可笑しくなってしまっていた。
それも俺はいつの間にか見失っていた訳だが…きっと,あの時と似たようで似ていない日々がまた始まる。
新しい制服に袖を通し,担任の教師と校長に挨拶をし俺は彼の待つ教室へと向かう。
電話は偶にしているが,どれもがヴァンガードの事でこういうプライベートなことを話はめったにしない。
だけどこれからは電話じゃなくて,直接色んな事を話せるんだと思うと…しばらく忘れていた感情,ドキドキが身体を満たす。
「今日から編入生が入る,温かく迎えてやってくれ。柴咲,入ってくれ」
津島先生に言われ,俺は色んな好奇心を視線と一緒に向けられながら教室へ入ると…ざわざわとしてこれからクラスメイトになる人達はビックリしてある1人の生徒へ目を向ける。
その生徒は彼らしくない,口をあんぐりと開けたまま俺を見て酷く愉快だった。
お前のそんな顔が見られたのなら,この事を内緒にしていて心底良かったと思いながら俺は彼等へ自己紹介をした。
「今日からこのクラスに通う事になりました,柴咲悠馬です。皆さん,どうぞ仲良くしてください」
自己紹介を終えた時,俺のライバルにして親友が耐えきれないって感じで叫んだ
「って,なんでお前がいるんだよ悠馬?!」
やっぱりビックリさせるにはサプライズが一番って事だな!
ここからが,俺のヴァンガード人生第二幕の開演の狼煙を上げるにふさわしい幕開けだ。
お疲れさまでした!
はい,そんな訳で最後の時間は本編から時間が経って,悠馬が導志の学校に転入してきました。
本当の意味で悠馬のハッピーエンドでした。
なんで悠馬がいるのかは後々明らかにします。
では,次!
香澄とのお話です。本編終了に伴ってアンケートしてますので良かったら答えてもらえると指針になって助かります。
香澄と導志,付き合った後のお話でどれがみたい?
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交際後,初デート
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2人がそれぞれリサに恋愛を相談する話
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2人の期間限定バンドのお話
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2人で海と夏祭りに行く話