いつものように,俺には香澄さんが今どんな表情をしているのか分からない。
勘を少しでも取り戻す為にPA機器を触っていた所に近づいて来た足音,まりなさんや他のスタッフのものじゃないのは分かっていた。
言葉で言うのなら簡単だが,微妙に足音が違うからな。
どんくらい違うのかというと,1000個ギザギザがある歯車と999個のギザギザがある歯車が嚙み合った時みたいな音。
歯車が噛み合った時の音ってなにも意識しなければ全部同じにしか聴こえないが,実際には超微妙に違う。
それを聴き分けただけ…前から出来ていた事だ。
他の人達に言わせれば異常な聴覚らしいけど,俺にとっては眼が視えることの方がよっぽどすごい才能だと思う。
まあ,ない物ねだりしても仕方がないのだが。
それはそれとして
「それで,香澄さんはどうしました?もしかして音が気になる所出来たとか?」
リハは一応終わっているが,香澄さんならやっぱああしたいとかやりかねない。
だけど意外にも違うようだった。
「ううん,今日ので大丈夫。それにほら,いきなり変えたら有咲たちに申し訳ないし」
…リハの時から思っていたが,やっぱりなんか香澄さん変なんだよな。
いつもに比べて元気がないというか,元気はあるけどいつもと同じじゃないというか…あの俺の部屋に突撃してきたときの彼女に比べたら最近は何か大人しい。
今だって音を変えたら申し訳ないなんて言い訳にあがることなんて今までにはなかった。
けど,具体的にどういう所が変なのかと聞かれたら首を傾げてしまう。
ここは様子を少し見てみるか
「そうですか,それなら良いんですけど…じゃあ何かほかに用事でもありましたか?」
そう言ったら,思いのほか鋭いカウンターをされる。
「むぅ,用事ないと話しかけちゃダメなの?」
「いや今まだ仕事の時間なんですが」
「うっ」
本音を言うとその話しかけちゃダメなのってくだりは結構心臓にずしりと矢が刺さったし,前にもなんか電話越しに似たような事を言われたのを思い出した。
ただ今は仕事中だと心を鬼にする事で香澄さんが喉を詰まらせた声がする。
いやほんとは構いたいんだけど,仕事なのも事実だから機器を触る手は離れられない。
けど…抜け道というか,緩いCiRCLEだからこそ出来る方法もある。
「それで,香澄さんなにかありました?」
先ずは自分で仕事中だと言っときながら普通に会話を始める。
姉ちゃん辺りなら内心で”仕事中じゃないのかよ”と思いながらも乗ってくれます。
しかし香澄さんならノータイムで
「え,な…なんでもないよ?」
返してくれる…って続けようとしたけれど,思ったよりも香澄さんの声のトーンが沈んでいてポーカーフェイスを保ちながら内心でビックリする。
香澄さんの声がここまで沈むなんて珍しすぎて,PA機器触る手が一瞬で止まってしまう位には。
あと純粋に香澄さん嘘をつくのが下手過ぎる。
俺も人の事を言えないけど,そこまであからさまに下がれば誰だって気がつくぞってレベルだった。
このレベルとなると,香澄さんが一時期歌えなくなったあの時期位の落ち込みようだろう。
けど,俺はどうしたものかと思う。
香澄さんの事だからライブになるといつも通りか,いつも以上のパフォーマンスをしてくれるものだろうとは思う。
だけどそもそもでライブ前に落ち込みを見せる香澄さんが珍しいのと,…彼女に何かを話すべきなのかが分からない。
話すべきというのはそうなのかもしれない。ここで何かを話さなくて香澄さんが何かを抱えたまま明日のライブに臨むのはやっぱり精神衛生上よろしくない。
けど,それなら俺でも気がついた彼女の異変をポピパの人達が気がつかないなんて事は無いんだと思うんよな。
リハでの様子が変なのは彼女達だって気がついただろうし,喧嘩をしている訳でもないのだからいつもならメンバーで解決する筈なのに。
その一点が,この事に香澄さんの事へ突っ込んで良いのだろうかと悩む元凶だ。
…と,前までの俺なら思っていた事でしょう。
でも煮え切れない彼女の態度がらしくないのと,俺を元気づけ続けてくれた彼女の元気がないのなら聞いてあげたい。
彼女以外の人にならこんな考えは出てこないんだろうけど,傲慢にも俺は香澄さんなら”どうにかしてあげたい”と漠然と思った。
という訳で,彼女を見習う事にしよう。
大丈夫,こう言えば香澄さんは絶対に降参するから。
「俺には散々悩み事あれば言ってくれって言うのに自分はだんまりですか。俺はやっぱり頼りがいないですよね」
そしてこれは想像以上に,ていうかオーバースルーしてしまう位には顕著な反応を引き出した。
「そんな事ない!」
まだ俺が難聴の時でも聴こえたんじゃないかって位の大きな声の否定が俺の鼓膜を揺らした。
一瞬頭割れるんじゃないかってくらい,大きな声でビックリした。
だけどさらにビックリしたのはその後,香澄さんは俺が立っている近くまで上がってきて俺の肩に手を掴んだ。
そして聴こえて来たのは,悲しいような,なんて言ったらいいのかが分からないような…とにかく沈んだ声だった。
「そんなこと…ないよ。どーくんはすっごく頼りがいあるよ…。私達の音の要望ちゃんと全部叶えてくれて,私達には思いつかない演出だって考えてくれて…そんなどーくんが頼りがいがないなんて…ないよ。」
逆に沈み過ぎて,俺は遅まきながら俺の自己否定の言葉が彼女を傷つけたのだと悟った。
ああ,うん。
普通に俺が悪かった。最後の一言は余計だった。
俺はそっと,自分でも驚くほど自然に彼女の肩を抱きしめポンポンと背中を叩く。
「はい,それを聴けて安心しました。じゃあ話してくれますよね,頼りがいがあるのなら…頼ってください。」
けどここで自分の非を謝る事はしない。
謝った方が良いのは分かっているが,今ここでそれをしてしまうと香澄さんがそれを許して終わってしまう。
香澄さんにここから逃げる理由を与えてしまう。
だから性格悪いのは分かっているが,こうやって揚げ足みたいな形で逃げ道を防ぐ。
うん,やってること最低だわ。
「うぅ…どーくん,少し性格悪くなった」
「ヴァンガードしていると極論相手の嫌がる事をすれば勝ちなんで仕方ないですね」
善性の塊みたいな香澄さんがそう言ってしまう位には,割と卑怯な論法なのは分かっているがこうでもしないと彼女は誤魔化してしまう。
以前だって姉ちゃんから聞いたけど,歌えなくなった時の香澄さんは大丈夫と言い続けて更に喉を壊してしまう始末だったらしい。
俺があの時の彼女と色々話せたのは,既に彼女自身が限界だったからであって今の彼女は少し頑固。
けど,それくらいなら大丈夫な関係性だと信じたい。
「別に悩み事を全部話す必要ないですよ。話せない事だってあるでしょうし…でも,なにかは話してください」
「…さっき仕事中って言ってなかった?」
「ここのライブに出てくれる出演者のメンタル回復サービスってことで大丈夫でしょ」
そう,香澄さんがなにかを話したい,悩み事があると言ってしまえば俺はライブハウスのスタッフとして彼女の相談を受ける義務がある。
あ,ごめん義務は言い過ぎた。
聞いても問題ないってレベルになるだけ。
だからこの言葉を引き出せた時点で,俺は彼女の相談事を仕事として受けることが可能になったのだ。
…まあ,まりなさんならこんなことを一々しなくても,忙しい時間帯でもないから大丈夫だと言ってくれるのだろうけど。
香澄さんは納得してくれたのか,それとも本当に抱えておくことがしんどかったのか,俺の手を引いて俺達はステージに腰を掛けた。
彼女はどう話そうかと考えているようだったが,やがて考えがまとまったのか,人間的で恐らく誰もが考えた事があるであろう問いかけを繰り出してきた。
「もしも自分が誰かに凄く伝えたい事があるとするでしょ?」
「はい」
「でも言おうと思った時に言えなかったって事とかある?」
正直に言おう,めっちゃ意外に思った。
言い方悪いけどそんな考え鶴巻先輩と同じで無縁だと思っていた香澄さんが,まさかそんな対人関係の悩みを抱えているとは思っていなかった。
けど,聞くと決めた以上はちゃんと答えなければならない。
取り合えず結論ファーストで。
「いや,俺は余りないですね。」
どこからか,神様視点で見ている誰かには”そんな事ないだろ”って言われそうだけど,実はあまりない。
「伝えたい事が出来る事は確かに出来ることありますよ,姉ちゃんやお祖母ちゃんに両親…クラスの連中にも」
そして悠馬にも…凡そ俺の人生に色を塗ってくれた人達には大なり小なり伝えたい事が出来る。
…香澄さんに対する好意もその一種かもしれない。
けど俺はそれが言えなかったって事は殆どない。
その理由はちゃんと俺の中にいる。
これが,他人と触れ合うのが怖かったくせに言葉を話す事を選び続けた理由なのだから。
「眼が視えなくなった日,何にもないような毎日が地獄に変わった日。俺が一番死に近づいたあの時から…心のどこかで俺はもしかしたら今日死んでしまうかもしれないと考えてしまいます」
「そんなこと…」
ないって続けようとしたのは分かるけれど,途中で俺の言うようになんでもない日常から眼を失った俺が前にいるから言葉を詰まらせる。
俺はあの日から潜在的に今日死ぬことを前提に生きている。
自分が,一番身近な大切な人達の命が刈り取られようとしたからこそ…俺はそういう生き方をするようになってしまった。
まあ人間だれしもいつか死ぬって言われたらその通りなのだが,俺のそれは多分常人より敏感だ。
なまじ眼が視えないから,一寸先があの世かもしれないと考えてしまうことだってある。
「でも,だからこそ俺は伝えたい事は伝えたい。俺が生きている内に,聞いて欲しい人に聞いて欲しい。その言葉が誰かの何かになって欲しいから」
言うならば強迫観念に近い。
もしかしたら次の瞬間死んでいるかもしれないから伝えることは伝えておこう精神だ。
…因みにだけど,じゃあなんでお前香澄さんに告白しないんだよチキンかてめーはとか言われそうだが,それは少し違う。
俺は確かに香澄さんの事を好きだが,それを伝えたいとは思っていない。
燈火さん辺りに前言ったが,俺は好きな人を含めた大切な人が幸せなら極論良い。
その考えは変わっていないからな。
「ただ…」
ただだ,これは俺の特殊な経験が故の発想であってそれを他人に押し付ける気はない。
伝えたい事を全部伝えたいといって,嫌いの相手に貴方の事は嫌いですとか地獄絵図にしかならないだろう。
俺の場合は嫌いになるというよりも,”どうでもいい”と思ってしまうのが先だからそんな事滅多にないがそれは普段の香澄さんだって同じだ。
釈迦に説法かもしれないけど,香澄さんに言いたいのは次の言葉だ。
だって香澄さんは言いたい事をずっと言ってきたはずだ。
その彼女がそんな悩みを抱えること自体が珍しいが,だからこういう必要があった。
「その伝えたい事が俺には分かんないですが,きっとその伝えたい事で誰かとの関係が変わってしまうのが怖いのなら言わなくても良いでしょう。」
ここまで言っておいてなんだが,彼女が伝えたい事とその相手は誰なんだろうなとふと気になった。
ポピパのメンバーだろうか…?
いやそれなら悩む必要ないよな?
家族の誰かだろうか,でもそれも悩む必要あまり感じない。
そもそも伝えたい事が分からない限りは考察は無理だなと諦めた。
だから言葉を紡ぎ続ける。
「でも,何かを変えたいのなら言うべきです。それで変わるのが良い事であれ悪い事であれ,変えたいと願うのに伝えない事の方が愚かでしょう」
「変えたいなら…」
香澄さんは基本的に論理より感情で動くタイプだ。
だから無意識に伝える事をし続けてきたはずだ。
そうやって周りを,自分を変え続けて来た。
けど,そんな彼女が論理の方を先に考えてしまう位珍しい事態。
別に俺の言葉が正解だとか自惚れている訳ではないけど,彼女がこれまで無意識にしていた事を俺は言葉に直してあげた。
「俺は言いたい事を言う香澄さんの方が色々”らしい”と思いますよ。やってみないと分からないっていつも言っているのは香澄さんでしょ」
そうだ,今の香澄さんはらしくない。
「さっきは変えたくないのなら言わなくても良いなんて偉ぶりましたけど,どうしたいのか,その答えをもう香澄さんは持ってるはずです」
「え…?」
「言わない,言うの選択の是非を聞いた時点で香澄さんはそれを言いたいんでしょ?」
そうすると,香澄さんは小さく息を吸った。
その瞬間に彼女が何を思ったのか,俺には分からない。
だけどこれだけは思う。
そもそも本当にそれが言いたくない言葉ならば香澄さんは悩む事すらしないだろう。
言い方悪いけど香澄さんには”やるかやらないか”みたいな考えは基本的にない。取り合えずやってみるがディフォルトだ。
であるならば,やらないと決めたことはそもそも考えないのが彼女だ。
逆説的に俺へその悩み事を出した時点で,彼女の気持ちは”伝えたい”に偏っている。
だから答えを持っている,今回は彼女にしてみれば珍しく誰かに背中を押してもらいたかったってだけなんだから。
数秒…あるいは数分かもしれないけど,俺と彼女の間に流れる時間はゆっくりと流れた。
聞こえるのはCiRCLEの店内BGM,オーナーが自作したというものらしいが真実は知らない。
ただどこかの喫茶店のようなレトロな音は,今の状態によく似合っていた。…喫茶店で流せよと思ったのは内緒。
「うん…そう…だよね」
そこで天を見上げ,今日の晩ご飯はなにかなーと想像し始めた時,色々考えていたであろう香澄さんのどこか吹っ切れた声が聴こえ思考を中断する。
彼女の方へ向くと,彼女の声色は俺のよく知る香澄さんの物へ戻っていた。
香澄さんは何度も確認するように多分頷き,深呼吸をする。
それはきっと気持ちの変化の為,こうなったのならもう香澄さんは大丈夫だろ。
「ど,どーくん」
1人内心で上手く話せてよかったーと頷いていたら,何故か決心したみたいな彼女の声が鼓膜に響いた。
それだけならまだ良かったんだが,なぜかまた彼女の手が俺の手の甲に触れて来た。
小さいけどすべすべした女の子らしい手,まるでガラスでも触るかのようにそっと触れられて俺は困惑する。
…ん?なにゆえに?
俺の疑問顔全開だとは思うけど,それよりも彼女の方が早かった。
噛みしめるように,熱を帯びている様に…なんかいけない感覚すらも覚える程の声色で
「あ,あのね…私,どーくんの事が――!」
しかし,香澄さんがその言葉の続きを言う事は無かった。
当たり前だがここはステージで,俺がPAの勘を取り戻す為にここにいるのを彼女は知っている。
だから何かしらの用事でここに来ることは当たり前だがある。
ほら,こうやって扉を開く音を響かせながら
「導志君,ごめん来年のシフトなんだけど――」
もしかしなくてもまりなさんだった。
まりなさんは俺達の状況を見て何かを言おうとしたのに黙ってしまう。
そしてそれは香澄さんも同じ事。
固まる香澄さん,困惑するまりなさん,どうすればいいんだこれと悩むオレ!ごめん,雰囲気が地獄過ぎてネタに走りたかった。
「あ…あ…ま,まりなさん…」
眼が視えないから香澄さんがどんな顔をしているのかが分からないが,どうやら乱入者によって言うのが憚れるくらいの話をしようとしていた事だけは分かる。
…?なんで俺にそんな話を?
別に今更香澄さんと俺との間で,他人がいて困るような会話なんてあまりない気がするけど。
俺の疑問はそのままに,けど固まってしまった場は何とか動かしたくて一旦手の甲に触れられている彼女の手をそっとどけて立ち上がる。
その時,聞き間違いかもしれないけれど
「あ…」
そんなどこか残念そうな彼女の声がやけに耳に残った。
「来年のシフトですか――」
その残念そうな声が,どうしてか俺自身も今の間だけはやめてほしかったと思ってしまうほどに,どこか悲壮感が漂っていた。
☆
どーくんに励まされて,私はいつも通りにしたらいいって言って貰えて凄く勇気が出て有言実行って思って私は彼に告白しようと思った。
どーくんの言う通り…私はきっと心のどこかで好きって伝えようと思ってた。
関係が変わるかもしれないと怖かったのも本当だったけれど,どーくんが気持ちの伝え方を思い出させてくれたら…私は止まれなかった。
どんな言葉で彼に伝えようかなって考えたら,身体が勝手に彼を欲しがるように手を重ねて…結局言いたい事を言うしかないと思ったら口が開いた。
どくどくっって心臓の音が聴こえてしまう位に熱くなって,それでも彼とこれからもずっと一緒にいたくて言おうとしたのは凄くシンプルな言葉。
「あ,あのね…私,どーくんの事が――!」
好き!…そう続けようとした言葉はまりなさんが入って来ちゃったことで言えなくなっちゃった…言える雰囲気じゃなくなっちゃった。
私に残ったのは凄く恥ずかしいって感情と,最後まで言えなかった事の残念さ。
彼に乗せた手がそっと離れていくのが名残惜しく感じる。
本当はまだずっと繋いでいたいのに,彼は行ってしまう。
「来年のシフトですか――」
だけど,彼が立ち上がってまりなさんと色々話し始めているのを見ても…不思議と,彼に相談する前にあった彼との変わるかもしれない関係の不安は…私の中にはもう無かった。
今はまりなさんが来ちゃったから,流石に言うのは恥ずかしいけれど…きっと,次は大丈夫。
そんないつもあった自信が私の中に戻って来た。
「うん,その日出てくれるの凄く助かる。あ,えっとそれでなんだけど…香澄ちゃん,なんだかごめんね?」
気がついたらどーくんとまりなさんのお話は終わっていて,まりなさんがすっごく申し訳なさそうに謝って来られて私は急いで首を横に振る。
「いえ,私もお仕事中のどーくんと話しちゃってごめんなさい。」
だってもとはと言えばお仕事中のどーくんに声をかけたのが悪いんだもん,まりなさんは何も悪くないから彼女が申し訳なさそうにするのは私もごめんなさいって思っちゃう。
まりなさんが笑って許してくれる隣で,どーくんが首を傾げて(可愛い)聞いて来た。
「それは別に良いんですけど…さっき何言いかけたんですか?」
聞いて来たのはさっきの続きの言葉。
分かってたけれど,どーくんは有咲と違って凄く鈍感だと思う。
私これでも結構彼にアタックしてるのに…一緒に寝た事だってあるのに気がついてくれない。
けど大丈夫,私はもう迷わないって決めたから…伝えるべきなのは今じゃないって事は分かっているから。
「ううん,今は大丈夫。…どーくん」
「はい?」
だけど違う事を今伝えたい,今の私の気持ちを伝える前よりも先に彼に感じて欲しいことがあるから。
だから私はいつも友達にそう言うみたいに今日もこの言葉を言うの。
「明日のライブ,最高なものにするからね!」
私はきっと,明日のライブの事を楽しみにしている笑顔を…彼に見せられている気がする。
彼に明日のライブをちゃんと聞き届けて貰う。
私が今すべきなのはきっと,彼がPAをしてくれる明日のライブを最高なものにすることだから。
どーくんは少しビックリしたように眼を少し大きくしたけど,次の瞬間には安心した笑みを浮かべて――
「はい,楽しみにしていますね」
そんな彼の表情に,私はまた心臓をドクンって震わせた
お疲れさまでした!
てなわけで,2人のお話です。
2人でもっと一緒にいたいと,突発性難聴が終わった後には既に思っていた香澄ですが,もしも導志にフラれたらCiRCLEのスタッフとしても友達の弟しても凄まじく微妙な立ち位置になってしまう事を気にしてしまった香澄の不安のお話でした。
導志のカウンセリング教室でした!
では!
香澄と導志,付き合った後のお話でどれがみたい?
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交際後,初デート
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2人がそれぞれリサに恋愛を相談する話
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2人の期間限定バンドのお話
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2人で海と夏祭りに行く話