時間は過ぎて,昼休み。
お昼を食べた俺達は,枳殻さんの机と俺の机をくっ付けた。
枳殻さんの席には園田がいて,カードをシャッフルしている音が静かに教室に響く。
お昼休みの喧騒も,今この教室にはなかった。
あるのは張り詰めた俺と園田の,ファイト前独特の雰囲気。緊張感とも言い換えられる。
よくよく冷静になってみると,普通にこれあいつなりの罠だわというのは理解してた。
「…5枚引いて,っと」
園田は,そう口に出しながら準備を進めている。別にそんなことしなくとも,俺は音だけでそれなりに相手がどこまで準備しているのか分かるのだがだいぶわざとらしいので放っておく事にした。
それに,俺も園田の真意がどこにあるのか確かめたかった。
俺はスマホを出して,ショートカットボタンを押していつも使っているすごろくアプリを起動した。
「生憎眼が視えないから先攻後攻はこれで決めさせてもらう」
言いながらスマホを彼に差し出す。
出た升目が大きい方が先行を取れるという単純なやり方だ。
これが奨励会でのファイトであるなら俺もじゃんけんにするが,誰も信じられない状況でじゃんけんをして嘘をつかれる可能性も考慮しなくちゃならない。
「分かった。」
ある意味,俺が園田を信用していないって事を遠回しに伝えるやり方だが園田は即答すると俺のスマホをタップした。
すごろくが止まると自動的にその升目の音声が出る仕組みで,それによって彼の升目が3と決定した。
続いて俺もタップする。
先行か後攻か,園田のデッキにもよるが戦略が変わる。
…すごろくが止まり,音声システムが知らせてくれた数字は4。
「俺が先行で」
「了解」
ざわざわと,俺達の周囲に人が集まっているのを感じながらも視られながらファイトすること自体は慣れているので全力で無視して俺はマリガンを終えて前にいる筈の園田へ向いた。
園田は俺のデッキをシャッフルし,元の場所へ戻した。
「…準備は良いか?」
彼が机に置いていたカードを取ったのを聴き,問いかけると目の前で頷く気配があった。
「ああ,約束だ。俺が勝ったら,鬼役を引き受けて欲しい。」
「…お前が勝てたらな」
「上等」
お互いのファーストヴァンガードに触れ,俺達は示し合わせたように掛け声を揃えた。
もっとも,俺の掛け声は周りよりも1つ追加されているが。
「「スタンドアップ」」
「THE!」
「「ヴァンガード!」」
ファイトには,その人間の全てが現れる。見せてもらうぞ園田,お前という人間を。
「吐酒なお辞せず 忍鬼 猩々童子」
「天憧の騎士 アドミス」
ヴァンガードファイトは,ヴァンガードが交互にアタックを繰り返し相手にダメージを6点与えたら勝ちというカードゲームとしてはそれなりにシンプルなルールだ。
けど,強くなろうとすればするほど複雑な考えをする必要がある。
そして俺の場合は眼が視えないからこそ,他者よりも複雑な思考回路をしなければならない。
例えば,相手がライドコストで何を切ったか,盤面にリアガードはなにがいるか,手札は何枚か,ドライブチェックで出たカードは何か…普通なら見ればわかる事を俺は記憶力だけで把握しなければならない。
その上自分の盤面や状況も記憶する必要がある。
それも視覚に頼らずだ。
「トランキリアでアタック!」
「ノーガード」
先行の俺はアタックが出来ないからダメージを受け,ダメージゾーンにカードが一枚追加される。
けど,園田の攻撃はまだ終わりじゃない。
「ペインキラーでアタック!」
攻撃するのはヴァンガードだけではない。リアガードと呼ばれるユニットたちも攻撃に参加する事が出来る。
もっとも,ダメージトリガーで攻撃が通らなくなる可能性も考慮して1ターン目からリアガードを出すかどうかはプレイヤーの考えに寄る事が多い。
2点目のダメージを受け…このシールは
「クリティカルトリガー。効果は猩々童子に」
これでもう一枚出ていたリアガードの攻撃は止まる。
今更だが,俺は自分のカードの識別をシールで行っている。
同じカードには同じシールを貼り,そのシールの種類によってカードが分かる仕組みだ。
ただしカードの浮き方によって山札の上が何のカードなのかもそれなりに識別出来てしまう為,滅茶苦茶薄いシールを使ってる。
閑話休題
俺は自分のターンに移行しながら,問いかけた。
「にしても,普通にやられたな」
「…?なにがだ?」
「わざわざヴァンガードに持ち込んだのは,俺を逃がさない為だろ?」
「…気がついてたか」
俺には今の園田が何を思っているのかが分からない。
けど,どうやら俺が罠にはめられたのは事実だった。
淡々とカードの処理をしながら会話する。この会話こそが,園田の行動の真意であると自覚しながら。
「ネットヴァンガードなら兎も角,現実でファイトを申し込んだのは俺がそれを受けると確信していたから。俺が断ろうとしたら煽る事くらいは考えていた筈だ。そして,ヴァンガードをするにはこうやって面を合わせる必要がある。必然としてお前は俺に言いたい事を言えるって寸法だ」
ただ”話をしたい”だけなら,多分俺は割とマジで逃げていたと思う。下手したら中学時代よりも悲惨になるのが眼に視えているのだから逃げたくなるだろそりゃ。
けど園田は,俺がそうしてしまうのが分かっていたからなのかはしらないがまんまと俺に言いたい事を言える機会を作ったんだ。
普通にやられた,ヴァンガードが好きだから…ファイトから逃げないとタカを括られていたんだ。
俺もリアガードを展開し,アタックしながら話を続ける。
「で,俺にその主役とやらをやらせたい理由はなんだ?まさか歌が上手いとかそんな理由が本音じゃあるまい」
「いやそれも本音ではあるんだが…ガード」
俺の攻撃を一部ガードし,使ったカードをドロップゾーンに送りながら彼は答えた。
「ていうか導志,お前演劇でどんな話をするのか昨日聞いてたか?」
…本音を言うと全く聞いてなかった。
覚えているのはただ鬼が主人公という一風変わった物語であること,演劇中に歌を歌う必要がある事の二択でそもそもどうやって演劇の内容が決まったのかすら覚えていなかった。
絶賛トラウマ再発中だったから自分に関係あるワードしか耳に入れてなかったんだ。
気まずくなって俺は明後日の方向にプイッと顔を反らす。なんだかクスクス笑われているが無視だ無視。
すると園田は苦笑したように笑い,言った。
「一国の国を治める忍の頭の鬼が,囚われた病気がちの友好国のお嬢様を助けるって言うシンデレラストーリーだよ」
「…おい,まさかその鬼の元になったってのは」
お嬢様の所は正直ありきたりだが,その前の忍の頭の鬼ってワードは俺にとっては身近過ぎて逆に気がつかない方が無理だった。
「そうだ,猩々童子をベースにした主人公だ」
「…だから,俺を主人公にする事を前提とした…か」
猩々童子…俺がこうしてクラスメイトの前でヴァンガードファイトをするのは初めてだ。ていうか,そもそも園田がヴァンガードをしていたこと自体が今日初耳だった。
「ああ」
「だから俺にやって欲しいってか?わざわざクラスの時間を奪って,失敗する可能性の方が高い事をやれってか?俺どころか他の奴の意見も聞かずにやることの方がよっぽど愚かだろうが!」
「それは違うよ!」
そう言った直後,園田側の方から女の声…神田さんの声が必死に否定するかのように割って入って来た。
彼女のそんな真剣な声を聴いたことがなかった俺は思わず唾を飲み込んで,園田に言おうとした言葉をキャンセルし神田さんの声がした方を向いた。
俺には今の言葉の何が違うのかさっぱり分からなかったからだ。
「そんな事…誰も思ってない!どうしてみんなの事考えてくれるのに,自分の事はクラスに入れないの?!」
「——っ」
…別に,思っていなかった訳じゃない。
俺が他者の時間を奪わせたくないから,クラスメイトに迷惑をかけたくないからってこうやって駄々をこねてる。
俺が演劇する事で誰かに迷惑をかけてしまうのは決定事項にも等しい必然で,それが分かっているからやりたくない。
やってはダメなんだ
「良いだろ別に!ただでさえ普段から人に迷惑かけないと生きられねえのに,その俺が人よりも良い思いをしていい筈ねえだろうが!!」
俺だけが我慢すれば,他の奴らは初めての文化祭を謳歌出来るのだから…それの一体何が悪い。
自分がクラスの勘定に入ってない?んなもの当然だろうが!
「導志!」
「俺のターン!!」
もう,何も聞きたくなかった。
俺がそれでもう良いって言っているのだからもう良いじゃんか。
俺は強引に声を遮り,手札から一枚をドロップしてライドデッキ最後の一枚を取る。
「志すは頂の導,天下無双の刃で我が行く道を切り拓け!ライド・The・ヴァンガード!」
ヴァンガードサークルに重ねた俺の
「粋の極致 忍鬼 猩々童子!」
「——っ」
「行くぞ」
俺はもう何百,何千と繰り返し身体に馴染んだ…でも何1つ同じな事は無いリアガード展開,攻撃の順番…研究を続けて来た俺のデッキ。
例え,俺の戦い方を見て園田が研究してきたのだとしても…俺はそれすらも超える。超えて見せる。
「猩々童子で,サーディオスにアタック!スキル発動!」
アタック時,猩々童子のスキルを発動する。リアガードを二枚ソウルに入れて,バインドゾーンから一体リアガードにコールをする。
コールするのは<アンプレセデン>,このデッキにおいてのアタッカーだ。
そのスキルにより,俺は一枚引き手札も増やす。
「猩々童子のアタックはどうする?」
「…っ,ガード!」
猩々童子のパワーが2万6000,園田が出してきたガード値は1万5000が二枚で合計パワーが4万。
トリガーが2枚出なければガードを突破する事は出来ない…が。
「…園田,お前ヴァンガード始めたのは最近だろ」
「な…ん,なんで知ってんだよ?!」
「理由なら今に分かる。…チェック・THE・ドライブ」
ドライブチェック,山札に眠るトリガーを呼び起こす事が出来るトリガーチェック。
これがヴァンガードの面白い要因の1つでもある。
トリガー1枚に付き,1万ずつパワーは上昇する。
「ゲット,フロントトリガー!」
出たトリガーはフロントトリガー,前列のユニット全てのパワーを1万上昇するトリガーでこの場面において2番目に強いトリガーだ。
「…っ,でもまだ…」
「どうかな?セカンドチェック…ゲット,ヒールトリガー!猩々童子のパワープラス1万し,ダメージ1点回復!」
「なんっ?!」
トリガーが2枚出たことにより,猩々童子のアタックは園田のヴァンガードにヒットし彼は手札を2枚無駄にした挙句ダメージを1点貰う事になる。
更に,俺のヒールトリガーによりダメージが回復し純粋に2点差を開く結果を生んだ。
4点目のダメージを受け,園田の呼吸がわずかに速くなった。
俺はネタ晴らしをするようにさっきの始めた時期を言い当てた根拠を離した。
「今の時点で俺の見えているトリガーはさっきのダメージトリガーで引いた1枚だけ。そして俺が猩々童子やイザサオウ,フォークテイル,ツクヨダチのスキルで抜いたカードは7枚。俺のライドコストで切ったのは全部ノーマルユニット,なら山札には相当数のトリガーがあるのはある程度プレイしている人なら考える」
俺がドライブチェックをした時点で山札は32枚,見えていないトリガーは14枚。俺がダブルトリガーを引ける可能性は4割程度。
フロントトリガーだったのは偶々だけど,それでもかなりの確率だった。
それに,俺の猩々童子がアタックした時点では園田はまだ2点だったし猩々童子に素のクリが乗っていた訳ではないのだから今の場面であれば8割程度のプレイヤーはノーガードを選択するだろ。
「く,くそ」
今頃彼の頭の中では自分の選択ミスを嘆いている事だろうが知った事か
「ジャクメツアークスでアタック!スキルにより,相手のバインドゾーンの1枚を山札の下に!」
「ノーガード,ダメージチェック…ノートリガー」
「アンプレセデンで,アタック!このターン中ソウルが2枚以上置かれているのならパワープラス1万,合計3万8000!」
園田のダメージは5点,残り手札は5枚。
彼のデッキの都合上,手札にあるカードはガード値が低いはず。
――これで終わりだ
「まだだ!完全,ガード!」
だが,生憎かなりしぶとかったらしい。彼は守護者と呼ばれる,どんな攻撃もガードする事が出来るカードを切りアンプレセデンの攻撃を防いだ。
手札は3枚,リアガードも猩々童子のスキルにより除去されている。
彼の盤面にはヴァンガードしかいない。
俺がやっていたせいでもあるが,まあズタボロのズタボロだ。
「ターンエンド。」
「強すぎるだろ導志…」
ターンは園田に帰ったが,彼の手札は3枚にダメージは5点,盤面にリアガードはいないっていう考え得る限り最悪な状況だ。
対して,俺の手札は8枚にダメージは2点。盤面にもインターセプト出来るユニットが一体と盤石。
このターンを守るのには十分な状況だ。
「まだやるか?」
正直,俺がヴァンガードを始めたころにこんな状況にさせられたらサレンダーしてしまいたいくらいには園田からしたら絶望的な展開だ。
別にここで彼が逃げたって,誰も文句は言わないだろう。寧ろ真っ当な奴に主役をやらせられるチャンスなのだから,俺に言わせればこれ以上やる意味はない筈だ。
けど…
「やるに決まってるだろ。まだ,勝負は終わってない!」
「そうか。」
声だけでも伝わって来る園田のまだ諦めていない闘志の証明,昨日から思っていたが園田はどうやら意外にも熱い奴だったらしい。
彼の部活自体はサッカー部だった筈だが,やっぱり運動部って熱い奴が多いんだろうかとかどうでも良い事を考えていたら…彼は言った。
「1枚,捲るまで何が起こるのか分からないのがヴァンガードだろ?」
「——っ」
彼の言葉は聞き覚えがあった。
俺がヴァンガードを始めたころに,友達となってくれたあの子がよく言っていた言葉。
なつかしさと,その結末に苦しさを感じながらも…俺の周りにまたその言葉を言ってくれる人がいるのだと分かると…笑みが抑えられなかった。
「…違いない。さあ,お前のターンだ。俺をその座に付けたいと思うのなら全力で打ち取りに来い!」
「ああ,やってやる!俺のターン!」
1枚ドローし,ライドする為のコストとしてクリティカルトリガーを捨てた。
「天と地,遍く世界を繋ぐ剣!天壌を繋ぐ剣 オールデンにライド!」
彼のヴァンガードが姿を現す。
オールデン,ヴァンガードの舞台である惑星クレイにおいてケテルサンクチュアリの騎士団,その部隊の1つの隊長を務めるエリート騎士。
天と地,2つの騎士団の融和にも貢献し世界を繋ぎ仲間と共に世界の脅威を排除する守護のユニットだ。
彼はそのライドした時のスキルと,オールデンのスキルにより手札と盤面を増やし万全とは言い難いが手札を使い切って盤面を整えた。
園田は,今までため込んでいたものを吐きだすかのように叫んだ。
「導志,お前は周りに迷惑をかけないと生きられないって言うがいつ誰が迷惑だなんて言った?!」
「はあっ?!てめえは本音と建て前を知らねえのか?!」
「知るか!俺は迷惑だなんて思ったことなんてないつってんだろ!」
「初耳だわ!」
園田のリアガードがアタックをしてくるのを,ガードしながら彼の言葉を聴くしかなかった。
俺にとって,ヴァンガードは逃げたくない事の一種。彼はそれが分かっていてファイトの場を設けて俺に言いたい事を言える状況を作って見せた。
だけど,それを俺が聞くのは全くの別問題だ。
「だったら改めて言ってやる!俺はお前にやって欲しいんだ!ライトリーズのブースト,フェロンでアタック!」
「ガード!眼が視えないつってんだろうが!」
「だから俺達が支えるって言ってんだろうが!ライトリーズのスキルにより,フェロンをソウルに入れてオールデンのパワープラス1万!スリアスのブースト,サージェスでアタック!スキルにより,山札の上を見て…ソウルに置く。入れたのはライトリーズ!」
「それが嫌だって言ってんだろ!ガード!」
左右リアガードのアタックを防ぎ,残る攻撃はスキルを含めて3回。
俺の手札は残り6枚,ダメージは2点。園田が勝つにはこのターンに決めきるしかないが,生憎それを許すような手札はしていない。
どんなに吠えても,この現状をどうにかする手段は今の園田にはない。
それでも…園田は噛みしめるように,懺悔するかのように言った。
「お前は,クラスが認めないだとか迷惑かけるだとか言うけど…今日,誰か1人でもお前がやる事を拒絶したのか?」
「それは…だから,本音と建て前は――」
「私は賛成だよ!」
さっきと同じ,本音と建て前の話をしようとしたら俺の右側から遮られた。
この声は…
「枳殻…さん?」
「私は市ヶ谷君が舞台に立つのは賛成だよ。」
「俺も賛成」
「僕も」
「わ…わたしも!」
俺がその真意を聞こうと口を開きかける前に,他のクラスメイト達すらも…なぜか俺が舞台に立つことを賛成するという言葉が次々に溢れてきていた。
え,マジでどういう事。昨日あんなに微妙な雰囲気になっていたのになんで1日経ったら皆そんなOKOKみたいな事になってるの?
「ここにはお前が主人公になる事を望んでいない奴はいない。お前の優しさに救われてきた奴だっている。眼の事があっても,夢に向かって抗っているお前を見て勇気を貰った奴もいる。…俺も,その1人だ。」
「…俺は別に,お前に何かをした覚えは」
「高校じゃない,中学でだ」
——え?
「は…?え…何の事だ?」
俺は真面目に彼が何を言っているのかが分からなかった。
俺と園田は高校で初めて会ったはずだ。中学の頃に何かをした覚えなんてない。高校に入ってからも何かをした覚えも…ましてや俺が迷惑をかけた事しか覚えてねえぞ。
園田は俺の心を読んだかのように答えを合わせて来た。
「俺が通っていた中学は…導志,お前と同じ羽音中学校で…1年生の時,俺はお前と同じ1年B組だった。」
「…へ?」
彼がなんて言ったのか,俺には一瞬分からなかった。
それくらい,俺は園田の言ったことを飲み込むのにラグがあった。
そして…心臓の鼓動がさっきとは違う意味でドクドクと動き出す。まるで気を失ってしまうかのような衝撃で,俺はようやく彼の言っている意味を咀嚼出来て…その意味を理解した。
そうしたら,頭が徐々に真っ白になっているのを感じていた。
あの時,何も出来なかった”無能”の烙印を押された俺の事を知ってる…?
は…?
そう思ったら,真っ白になった頭がふつふつと沸き上がる怒りに満たされた。
「だったら!知ってるだろ!碌に道具も作れない,どんなにやっても空回り,挙句の果てに何もさせて貰えなかった役立たずの俺を!」
あの時の無様な俺の姿を見て,今度は役者をやらせたい?
「ふざけるな!」
「ふざけてなんかない!」
「——っ」
彼の強い言葉に,俺は思わず口を噤んでしまった。
園田の一喝で,教室がしんと静まり返って…彼はゆっくりと口を開いた。
「導志は覚えていないかもしれないけど,俺は入学初日に面倒なおっさんに絡まれた事があった。」
園田が昔話をするかのようなテンションでそんな事を語りだすのを聴きながら,俺の中学初日を思い出そうとして――
「そのおっさんは近所でも特に理不尽な人で,あることないことで俺を怒って中学の入学式が遅刻してしまう所だった。」
そこまで言われて,俺は園田が言うその内容を徐々に思い出せていて…口を元を緩めずにはいられなかった。
その園田がいう理不尽なおっさんというのも,俺は知っていたからだ。
そして…その時の状況も
「『中学生は国の役に立たない役立たずだから学校ではなく働け』だっけ?」
「…ははっ,今になって思い出すととんでもない事を言ってたよな。けどさ,俺は小心者だったから抜け出せなかった。終いには手まで上げてくる始末だから,入学式を諦めた時に…お前が助けてくれたんだ」
「…俺は交番から警官を連れて来ただけだがな」
3年前,俺は通学路で園田が地域でも面倒と噂のおっさんにダル絡みされているのを聴いて近くの交番に行って誰かを助けた事があるのは覚えていた。
滅茶苦茶感謝された訳でもない,ていうか俺も遅刻ギリギリだったから感謝なんてされている暇がなかったってのが本音だ。
名前も聞かなかったし,聞く必要もないと当時は思っていたからな。
「それでも,導志があの時助けてくれなかったら…俺は今とは違う人生になってたと思う」
「んな大げさな」
「本当だって,あの入学式の時に…俺は高田とも友達になれたから」
高田…頼成,その名前を聞いた俺の表情はきっと良いものではなかったと思う。
俺にとって,トラウマの元になった言葉を言った張本人なのだから…逆に良い顔しろと言われる方が無理だ。
結局,その高田とはクラスが別れることも無くその後の演劇でも俺は役割を持てなくてトラウマが増大しただけだったからな。
「導志,俺はお前に謝りたい。俺は…お前と同じクラスだったのに,あの時…”一緒にやろう”って言えなくて…ごめん」
言葉だけの…軽いものじゃない。
言葉の中の感情が,園田が心の底から懺悔し,後悔し,時間を超えてその言葉を振り絞る為にどれほど考えたのか…俺には分からない。
けど,言い分としてはまあ最低よな。
多分,昨日までの俺ならきっと『お前の懺悔とかどうでも良い』とか普通に思っていただろう。
おまけに,自分自身が”楽”になりたいがための謝罪ならするなボケとかも思ったはずだ。
ていうか実際頭に掠めてる。
だけど…ヴァンガードを通じて,彼の性格も何となく掴めてはいた。
速攻する攻め気の良さ,受けても良い所でもこれからの事を考えてガードしてしまう気の弱さ。
それでも,可能性にかけようとする姿勢…たったの6ターンの中で園田という人間を理解も出来ていた。
俺がヴァンガードを通じて思った園田の人間性…『未来の事を考え,突き進み,仲間と一緒に歩みたい人間』だ。
だからこそ,一笑する気にもならなかった。それでも過去の事を思うのであれば,俺は本当は怒るべきなのかもしれない。
俺が色々考えて言葉を出せずにいると,彼はそのまま続けた。
「今更…本当に今更なのは分かってる。俺は…中学の時,導志を教室初めて見た時…怖かったんだ」
「そりゃ…随分なご挨拶だな」
俺は苦笑を抑えられなかった。
このまま懺悔の流れが続くのかと思ったらいきなり怖いとか言われたんだからビックリするだろそりゃ。
「あの時は…眼が視えない人間が本当にいると思っていなかったからな。”自分と違う”だけで…俺は得体のしれないもののように感じたんだ」
「そりゃ普通の反応だろ。普通の人はお前の反応の方が正しいぞ」
因みに,普通じゃなかった人は言うまでも無く香澄さんだ。
あの人,初めて会った時姉ちゃんに眼が視えない事を教えてもらうまで気がつかなかったし,教えられた後もまあ…余り変わらなかったな。
普通に会ったら挨拶はしてくるし,なんなら偶に抱きついて来ようとする事もあった。ただその時は姉ちゃんが注意するのがお決まりの流れ。
…最近は余りそう言うのないけども。
閑話休題
俺の暗闇の先で,園田が首を振るのを気配で感じた。
もっと言うのなら彼が首を振った事によって現れた空気の僅かな変動でだが,彼は絞り出すかのように続けた。
「今でも…思う。あの時,俺がお前に声をかけられていたらとか…入学式の時のお礼が出来たなら何かは違ったのかもしれないって」
「思うだけなら勝手にしろ。過ぎた後だ,結果の後だ,振り返るのは後悔の為じゃなく次につなげる為だ。今の現実が全てだ。」
「ああ,だけど,だから…俺は今度こそお前と…”ともだち”になりたいんだ」
”ともだち”…俺には縁がないもの,もれなく全員俺を腫物扱いでそんな言葉を交わせる人間はヴァンガードを始めるまではいなかった。
そして,その初めての”ともだち”も…俺を見捨ててプロになる為に俺の近くを離れて…今ではプロに最も近い超新星とも言われている。
俺がプロになりたいのも,もう一度…その子とヴァンガードをしたいから…俺が信じる,俺だけのカードファイトで勝ちたいからだ。
だけど,園田の言うともだちが俺の思っているともだちと意味が少し違うのも俺は分かっていた。
だから,俺は――
「仮初の友情なら俺には必要ない。裏切られてまた傷つく位なら,俺は1人を選ぶ。」
俺にも友達と呼べたかもしれない人間だけなら割といる。
ミュージックスクールに通っていた頃の,同じボーカルクラス所属だった生徒の数人はそう言う人間だった。
だけど…そんなのは偽りだった。
俺が精神的なショックで歌えなく無くなった時…影で俺がいなくなるのを喜んでいるのを知っていたから。
中学の時は言わずもがな,俺はそうやって裏切られて生きて来た。
今回がそうじゃないと,どうやって言い切れる。
いや,言い切れるわけがない。
「市ヶ谷君…」
枳殻さんの喘ぐような,戦慄したみたいな…一周回って悲しそうな声が耳に入ったが相手にすることなく俺は園田の方へ向く。
俺の今の相手は園田だけ,他のクラスメイトを相手にする必要はない。
——相手にしたら,俺の決意がどこかに飛んで行ってしまいそうだったから。
「お前が俺のともだちになりたいってのが百歩譲って本気だろうが,じゃあその理由はなんだ?過去の後悔か?それともそれが出来れば過去の俺が救われるとでも思っているのか?いや,どんな理由だろうがお前のその理由にはエゴがあるようにしか見えないぞ。」
最低な事を言っているのは分かってはいる…が,思っているのも本当だ。
園田がどんな理由にせよ,そこにあるのはエゴでしかない。それが分かっていないのなら,俺は今度こそ一笑して叩き潰すだけだ。
「ああエゴだよ!」
…思っていたよりも清々しく言ってきやがった。
けど,投げ出すように言う方が寧ろ好感が持ててしまうのはなんでだろうな。
ある意味感情をそのまま吐き出してるからか,こうやって感情をさらけ出すこいつを初めて聴いたんだ。
「あの時何も出来なかった俺自身を慰めたい,俺がやりたいのはそう言う事だよ!導志とのこれからを,俺も作っていく事が出来るのならあの時の俺が救われるような気がしているからだよ!」
「…まあまあ最低な理由だな。」
多分,もっと言うのなら園田は俺を”助けたい”と言いたいのかもしれないけど…その根底にあるのは自分を慰めるためのエゴだと堂々言ってきた。
俺が最初に頭を掠めたように,園田は自分の為に今回の事をやっているのだという。
もちろん理由としては,俺の事も云々あるのだろうが過去の自分を慰める為のも間違いなく本音だろう。
「分かっている,それでも…お前と”ともだち”になりたいのも…本当だから。だから…俺の為に,主人公をやってくれ」
きっと,俺の目の前では真剣な顔をした園田がいるのだろうなと思う。
役者への出演打診としては最低の中の最低の言い文句でしかない。
けれど,それが分かっていながらも口に出して図太くそんな事を言ってくるのは彼も覚悟しているからだと思いたい。
きれいごとだらけの言葉よりも…よっぽど胸に響いた。
だからこそ,俺は目の前の盤面を指さした。
「なら,俺を力づくでその
「…っ!ああ,やってやる!行くぞ,天壌を繋ぐ剣 オールデンで猩々童子にアタック!」
今の今まで忘れていたかもしれないが,今はヴァンガードファイトの途中で俺の鬼役の出演をかけたファイトだ。
俺は元より話し合いでその話を受けようとは思っていない。
彼のヴァンガードを見て,その上で叩き潰し俺は俺の考えを貫き通す。
「アタックした時,オールデンのスキル発動!リアガードのライトリーズを手札に戻し,手札から手札に戻したグレードの合計になるように2枚まで同じ楯列にコール!ライトリーズをそのままコール!更にスリアスのスキル,オールデンのスキルでリアガードが登場した時,カウンターブラストを払いスリアスの前列のユニットをスタンド!」
「こい,ノーガードだ!」
「ドライブチェック!!」
園田がこの状況から勝とうと思うのならば,最低でも与えるダメージを増やす事が出来るクリティカルトリガーを,2回のドライブチェックで2回出す必要がある。
或いは…
俺の脳裏に何か嫌な予感が頭を掠めるが,そんな俺の考えを園田は悟ることなく山札に手を伸ばし,1枚捲る。
「スパイラルキューティエンジェル,ノートリガー…セカンドチェック」
1枚目はケテルサンクチュアリの汎用カード,だが今この場面では何の役にも立たないカード。
これで例えクリティカルを引いたとしても,俺に6点を与えるのは難しい。
普通なら,ここで俺は勝ちを半ば確信しても良い。
けども,運命はどうやら荒波がお好みだったらしい。
園田は一瞬捲ったカードに息を飲むようにし,やがてテンションを凄まじく上昇させながら叫んだ
「——っ,ゲット!!オーバートリガー!!アマルティノア!」
「…ここでか」
オーバートリガー,デッキ50枚の内16枚あるトリガー,その中でもたったの1枚しか入れる事が出来ない最強のトリガー。
その効果は,パワーを好きなユニットにプラス1億し,オーバートリガーの種類によってこの先のスキルが違う。
園田が捲ったオーバートリガー,栄典の光龍神アマルティノアのスキルは,この場面においてもっとも逆転たる1枚になる。
「アマルティノアをゲームから除外し1枚ドロー,ライトリーズにパワープラス1億し,更にこのターン中リアガードもドライブチェックが可能になる!!」
通常,リアガードはドライブチェックができない。ヴァンガードだけの特権だ。
しかし何事にも例外がある。アマルティノアはトリガーチェックで出た時,リアガードにもドライブチェックの権利を与えるただただヤバいカードだ。
この状況であれば更に拍車をかける。
周囲のクラスメイト達が園田の引きにざわっと盛り上がったのを感じながら俺は次の行動をとる。
「チェック・ザ・ダメージ,ノートリガー」
取り合えず,俺はオールデンによる攻撃のダメージを受け次に滅茶苦茶なパワーに変貌したライトリーズへ意識を向ける。
「ライトリーズで,ヴァンガードにアタック!!」
ライトリーズのパワーは1億と1万3000。
俺のダメージは3点,俺の手札には主なガード値としてどんな攻撃も防ぐことが出来る完全ガードが1枚と2万シールド。
普通なら,ここは完全ガードする方がセオリーではある。
だが,ライトリーズにはドライブチェックが2回も出来るツインドライブがある。ライトリーズだけじゃない。反対の前列にいるサージェスもツインドライブだ。
仮にこのライトリーズのアタックを完全ガードで防いだとしても,ライトリーズのドライブチェックでクリティカルトリガーが出てしまった場合サージェスもクリティカルを捲られたら終わってしまう。
その場合一度のドライブチェックで二枚クリティカルを引かなければならないノーガードルートと,相手にクリティカルを引くチャンスを倍にしてしまう完全ガードルート。
殴り方もいやらしい,パワーが高い方のライトリーズから殴り完全ガードを出すか出さないかの二択を迫る。このライトリーズで出たトリガーのパワーは全てサージェスへと集められる。
かなりのトリガーがまだ彼の山札に眠っているが
なら――俺がかけるべきなのはここしかない
「ノーガード!勝負だ,園田!」
「ドライブチェック!ファーストチェック…ゲット,クリティカルトリガー!ライトリーズのクリティカル+1,サージェスのパワー+1万!」
「…っ」
あと1枚,クリティカルを引かれれば俺の負けがほぼ確定だが…今出ているクリティカルはもう既に5枚,山札は25枚はあることからも確立としては悪くない賭けの筈だ。
「セカンドチェック…アイジスメアドラゴン,ノートリガーだ」
だが,園田の手札には完全ガードが入った。
今は生き残れることを喜ぶべきか。
「チェック・ザ・ダメージ,1点目,2点目…ノートリガー」
俺のダメージは5点,攻撃はあと1度。彼は一気呵成の如く叫んだ
「これで決める!サージェスで猩々童子にアタック!!アマルティノアのスキルにより,ドライブチェックを行う!合計パワー3万3000!」
「そう簡単に勝ちをくれてやる訳にはいかねえな,完全ガード!!」
狙い通り,5点に踏みとどまることが出来た俺は完全ガードでサージェスの攻撃を防ぐことが出来た。
あとはサージェスのドライブが何かだが。
「なっ,もってるのか…ドライブチェック!ヒールトリガー!」
山札の上はヒールトリガー,ダメージが1点回復される。
正直このタイミングでのヒールはキツイどころじゃない。
だけど…
「セカンドチェック…オールデン,ノートリガーだ」
落胆の声を滲ませ,ドライブチェックで出たカードを手札に加える。
ダメージを1点回復したとはいえ,ガード値があることにこしたことはない。
まあ,俺にとっては助かったというべきなんだろうな。
ダメージゾーンにある5枚のカードに触れ,たったの1ターンで追い詰められたことに…ワクワクが止まらなかった。
デッキにあるたった1枚のカードを捲っただけか,捲らなかったかの違いで形成なんていくらでも変わることができる。
そこに初心者がとか関係なく,ただ山札に手を伸ばしたからこその結果だ。
「ターンエンド」
ターン終了を聞き,俺は更に頭を回す。
今彼の手札にあるカードは1枚を除いてドライブチェックで出たカード達。
スパイラルキューティエンジェル,完全ガード,クリティカル,ヒール,オールデン…そして正体不明の1枚。
視えている完全ガードはドロップに1枚,手札に1枚,ダメージに1枚であるとすれば1枚のみ。
最悪のパターンは,その正体不明の1枚が完全ガードだった場合だが…否,寧ろこの場合はその方が良いのか。
猩々童子のデッキの特性と完全ガードは微妙に相性が良いからな…結局,彼の最後の手札がなんであれ俺はこのターンに決めない限り勝利する事は出来ない。
相手の手札が何だろうが…このターンで決めるしかない。
「お前も追い詰められてるんじゃないか?一気にダメージが5点だもんな」
「そうだな,随分最高なタイミングでオーバートリガーを引いたものだ。」
マジでつくづくそう思う。
仮にここでオーバートリガーを引かなかった場合,園田はダメージを回復することなく,手札も増やせなかった。
次の俺のターンで9割位負けていた筈だ。
だけど,彼はたった1枚のカードを捲る事で逆に俺を追い詰めて来た。
「…オーバートリガーさえなければ,って思うか?」
オーバートリガーは,ぶっちゃけ言えばトリガーチェックで出た場合理不尽極まりないスキルを発揮する。
パワー1億プラスとか,ヴァンガード自体が何万ってパワーの次元でやってるのにその壁を容赦なく,唐突にぶち破って来るんだから理不尽じゃなければなんだというのか。
ただ,それ故にオーバートリガーを忌避する人間もいる。そう言う人は自分達のチームではオーバートリガーを抜いて遊んでいたりするらしい。
俺も地元のショップ大会とかなら普通にオーバートリガーは抜いているしな。ていうか,今も抜いてる。
だけどそれはオーバートリガーが嫌だからとかじゃなくて
「別に思いはしないな。運も実力の内だ。」
「そうか…」
嫌とかじゃなくて,純粋に俺がそれが原因で勝っても嬉しくないってだけなんだ。
こういうフリーファイトとかなら特に,勝たなければならないファイトの時は入れているしなんなら出たら普通に喜んでしまう。
そういう矛盾しているのが俺という人間だ。
「けどな,それを引いたから俺に勝てると思っているのなら…甘い!」
「——っ」
「お前の考えは分かった。だけど,だからって勝ちをくれる訳にはいかない。」
「お…俺だって負けるつもりはない。譲るつもりもない。勝つのは俺だ!」
闘争心を露にした園田の言葉,俺を主役にしたいが故にここまでやって来た俺にとっては稀有な人間。
意外にも負けず嫌いで,慎重派で,だけど大胆なことも出来る度胸を持っている。
不器用だから,こうやって真っすぐぶつかる事しか出来なくて…だからこそ,届いた言葉はあったんだ。
あーあ,1年前香澄さんに言った言葉が俺に帰って来るとは思っていなかったな。
けど,それとこれは別だ。
「なら,決着を付けようか…ファイナルターン!!」
ファイナルターン…文字通りこのターンで終わらせる意味を持つヴァンガードスラングみたいなものだ。
どの道,このターンに決める事が出来ないのであれば次のターンで俺は負ける。俺のターンがラストという意味のファイナルターンも間違いではない。
スタンドし,1枚引き手札にある端っこのカードを手に取る。
「煌めく刃に想い馳せ,いざ道を切り拓かん!ペルソナライド!!」
ヴァンガードにいる猩々童子と全く同じカードを重ねることで,特殊なライドが発生した。
それがペルソナライド,ペルソナライドをすれば1枚引けるだけじゃなくこのターン中前列にいるユニット全てのパワーを+1万出来るまさに切り札とも言えるライドだ。
「イザサオウをコール,そのスキルで山札の上から5枚見て忍含むノーマルユニット1枚手札に加える。忍竜ライドンクナイを手札に。次に忍妖フォークテイルをコール!スキルにより,山札の上から7枚見て…忍竜ツクヨダチをソウルに入れる。続いてツクヨダチのスキル,山札かリアガードからソウルに置かれた時,自身をバインドしソウルチャージ!」
そして俺はイザサオウの後ろに手札に加えたライドンクナイをコールし叫んだ
「猩々童子のスキル発動!ソウルの忍2枚バインドし,相手のリアガードサークル2か所選ぶ。サージェスとスリアスのサークルを選び,その2枚をバインド!」
俺がバインドしたカードは,グレード1の猩々童子,アンプレセデンの2枚。
「バインドゾーンにある猩々童子のスキル,中央後列にコール。さあ行くぞ,イザサオウでアタック!」
「アルパックでガード!」
最初のガードに切って来たのは,先程のドライブチェックで見えなかったアルパック…シールド値が2万になるトリガーユニットだ。
つまり,これがオーバートリガーを除外した時に引いたカード…なら,行ける!
「アンプレセデンでアタック!」
「ヒールでガード!」
「猩々童子でヴァンガードにアタック!スキル発動!リアガード2枚をソウルにいれ,バインドゾーンから一体スペリオルコール,アンプレセデン!」
ソウルに入れたリアガードはイザサオウとアンプレセデン,出したのもアンプレセデンだ。だが今度はさっきとは一味も二味も違う。
「更に,相手のヴァンガードグレード3以上の場合コールしたユニットにパワー+1万!。」
「なっ?!」
「まだ終わってないぞ!アンプレセデンはスキルで1枚ドロー,そしてこのターン中リアガードが2枚以上置かれているのでパワー更に+1万。そしてソウルに入ったイザサオウのスキル,ヴァンガードにパワー+5000し,相手のバインドゾーンの1枚を山札の下に置く。スリアス!」
通常,猩々童子の能力でバインドしたカードはターン終了時に相手の手札に変えるがこのスキルによって相手の手札へ返すことなくスリアスを除去する事が出来る。
残念ながらサージェスには触れることは出来ないが,そもそもこのターンで終わらせるから関係ない。
「まだあるぞ,リアガードが同時に2枚以上置かれた時バインドゾーンのツクヨダチのスキル!カウンターブラスト1払い自身をバインドゾーンからコールする!」
「攻撃回数が増えた?!」
「ライドンクナイのスキル,他のリアガードがバインドゾーンからコールされた時,自身をバインドする事でコールされたユニットのパワー+5000し,カウンターチャージしていないならカウンターチャージ!」
ヴァンガードの攻撃はパワー3万6000,アンプレセデンが4万3000,ツクヨダチがブースト含めて3万3000。
園田の手札にはシールド値5000のスパイラルキューティエンジェルと,シールド値1万5000のグルカント,オールデン,そして完全ガードの4枚。
全ての攻撃を防ぐことは出来ない。絶対に1度はダメージを食らわないといけない。
仮にここで完全ガードでヴァンガードを守れたとしても,俺がドライブチェックでクリティカルを引けば彼の手札ではクリティカルが乗ったリアガードの攻撃を防ぐことは出来ない。
であるならば,彼が勝機を見出すには一択しかない。
ここを防いだところでクリティカルが引かれて負けてしまうのであれば――
「ノーガード!!」
「まあ,そうするよな。お前の今の手札じゃ,ここをノーガードで通して俺がトリガーを引かず,お前がダメージトリガーを引かなければこの局面を生き残る事は出来ない」
園田はゆっくりと深呼吸をして,たった1枚のトリガーが左右するこの状況をゆっくりと受け入れたかのように息を吐き…言った。
「…来い!勝負だ導志!」
「行くぞ…チェック・ザ・ドライブ!!」
瞬間,俺の脳裏に1つの光景が浮かぶ。
どこかの島で相対する忍の鬼と,西洋の騎士のような鎧を着こんだ騎士…2人が激突し,鍔迫り合いをして――
「ファーストチェック,ノートリガー。セカンド…チェック!!」
やがて,鬼が騎士の剣を弾き飛ばして――
「ゲット,クリティカルトリガー!!クリティカルはヴァンガード,パワーはツクヨダチに。さあ,これで終幕だ。切り捨て御免!」
交錯した2人の剣士,最後に立っていたのは――
「ダメージチェック,1点目…2点目…ノートリガー」
俺のイメージする世界で,最後に立っていたのは鬼だった。
お疲れさまでした!
園田の使用デッキはこちら
https://decklog.bushiroad.com/view/1X7GC
宿命者じゃないオールデンです!導志の猩々童子を見て貰えば分かる人は分かってもらえると思いますが,環境は運命対戦が出た時位のものです。現実より環境は遡ってます。
主人公,導志の使用デッキはこちら。
https://decklog.bushiroad.com/view/4205W
こちらも運命対戦らへんの環境の猩々童子です。
作中で本人が言っていた通り,超トリガーなしのデッキです。木谷社長の所はイザサオウです。今制限喰らって1枚しか登録できなかったので。
次のお話も直ぐに出ますので,詳しい事はそちらで。では!
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