プロローグ
―――2077年10月23日、世界は憎しみの炎をぶつけ合い、たった2時間の間に投下された爆弾が・・・誰が最初にそれを大地に落としたかすら分からぬまま、世界を一度終わらせた。
しかし人類は、たゆまぬ努力により爆弾がその威力を強め続けてきたように、たゆまぬ努力によって強固と化したシェルターや先人から脈々と受け継がれてきた知識の数々によって生き残り、草木が燃え尽き岩肌の焦げ付く戦後世界を生き延びてきた。
それでも、人は、過ちを繰り返す。
戦後100年を近く迎えようとした2262年に決起した、人類を超越し、旧人類に成り代わろうとする戦争の遺物たるスーパーミュータント・メタヒューマンとその主”ザ・マスター”によるカリフォルニア侵攻。
人々を守り続けたシェルターを道義に反した遊び場とし、自らは”純血種”とし戦後アメリカを生きる人々を殺し尽くすべく動き、やがて今を生きる人々に報いを受けた秘密結社”エンクレイヴ”。
そして4つのシンボルが全てのチップを賭け、戦後も絢爛に輝き続けたラスベガスと旧世界の壁・・・フーバーダムを奪い合った、第二次フーバーダム戦争。
戦争だけは、変わることはない。
だが時代が変わっても、いつもその傍らには常にその地とそこに生きる人々の命運を決めてきた、”英雄”の姿があった。
”13”の文字を冠するシェルター、Vault13を救うべく外界を初めて目にし、やがてはカリフォルニアを救った『Vaultの住人』。
救った人々にVaultを追われ、しかし彼の背を追い彼のためにVaultを捨てた人々が作り上げた小さな集落で生を受け、親と同じように最後にはエンクレイヴを滅ぼしアメリカを救った『選ばれし者』。
遠いワシントンに逃れ、またそこに生きる人々の尊厳と、生命すら奪おうとしたエンクレイヴの息の根に父親を失いながらもとどめを刺した『Vault101の住人』。
自身の顔に深い傷を残し、誇りと仕事を奪った相手を砂漠を越え追い続け、同じように自身を追うもう一人の運び屋との決着と、復讐と、そしてたった一つの旗の元、全てのチップを総取りした『運び屋』。
“大きな事が起こる時には、決まって英雄の資質を持つ者がその地を訪れる”。
戦後アメリカを
でも結局、事が起こってみないと何もわからないのだろう。もしかすると、バーで女片手にスコッチを飲んでいる彼が、つい落としたビンが英雄を狙う者の意識を逸らしたり、皮がズル剥けのグールが路銀をちょっと巻き上げる代わりに街の裏側を話した結果、英雄が人一人を助けたりできたら、彼らもそうなるのかもしれない。
そういえば、もう一つ興味深い意見が囁かれている―――
“英雄は、その地に喚ばれているのだ”と。
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乾いた砂まじりの風が肌に白いファンデーションをし、照りつける太陽が肌を焼き額から流れる汗をひとつ、ふたつと増やしていく。そんな旧アメリカ西海岸、カリフォルニア。かつてはロサンゼルスという大都市が発展していた場所の郊外に、彼らは荷車を引いていた。
「いや、
「このクッソグール!ハゲ、そのうちそのグラサン殴り割ってやら!」
ガレキの残る、ところどころまだ穴が空いているが最低限荷車を通すスペースだけを急ピッチで埋めた跡が見られるこの旧ロサンゼルス、今では鉄骨だけになった廃ビルが残っていたために”ボーンヤード”と名付けられた場所の郊外を、数人の影が動く。
キャンピングカーのキャンパー部分だけを引っこ抜き、車輪をつけただけの簡素だがキャパシティの大きなリヤカーを引いている、肩部が羽のように広がった白銀に輝く鎧――― 装甲服、”T-51bパワーアーマー”を着た青年を中心として、数名の兵士がセミオート式のライフルを携え防御陣形を整えていた。
荷車を引く、ロイズと呼ばれたパワーアーマーを着た若い青年が、隣を歩く長身の男に軽い口調で話を振られ、そのたびに悪態をつく。
装着者の膂力を強化し、数百キロの荷物を引くことを可能とするこの白銀のパワーアーマーを着用し、ヘルメットをフードのように引っ掛けうなじから垂らす、手入れのなっていないツンツンとした短髪を白日の元に晒している目付きのやや悪い青年、戦前から残る、先進技術の保護保管を目的とした組織『Brotherhood of Steel』通称B.O.Sに所属する非戦闘階級”スクライブ”ロイズ。
隣を歩きロイズにちょっかいをかけるは長身の、トレンチコートを羽織り内側にはかつてそれがロサンゼルス市警のものだったことを表す、”L.A.P.D. RIOT”のプリントがされた焦げ茶のコンバットアーマーと、それに不釣り合いなジーパンを履いた男。
赤いアイピースのついたガスマスク状のヘルメットをロイズと同じように首の後から垂らしその、放射線に晒され続けた人間の末路を示す”皮が焼けただれたような顔”を申し訳程度に隠せるサングラスを掛けた”
ボーンヤードで銃器、弾薬、食料品を積み上げ、はや一日と数時間、普段は緊張に身体を固めていたこの輸送キャラバンは新しく加わったこの二人とその周囲を覆う空気に緊張をほぐされ、彼らの一喜一憂に笑顔やヤジを飛ばしながら行軍していた。
通常、グールが部隊に混じっていると得てしていい顔をされないものだが、ティコは違う。
荷車を囲う彼らは知っている。ティコがかつて、”Vaultの住人”と共にミュータント軍を戦い、その指導者を制し彼らNCR兵の先祖を救った、その経験があることを、そして彼が不老長寿に近い存在のグールであり100年を越えて生きていることが、その信ぴょう性に拍車をかけていた。
「まあそんなツンケンすんなよ、せっかく戦争も終わって結構経つんだしよ、俺ら少しこう、肩組んで二人三脚も悪くない~ってな?」
「やめろ臭うっつーの!ただでさえ運動して呼吸多いんだからやめろ!」
NCRとB.O.S、彼らはほんの一年前まで戦争をしていた。
いつもの『技術徴収』で他の領域に踏み込んだB.O.Sと、その圧倒的人口が足りなくなるほどの領土的野心を燃やすNCR、両者の対立は必然であり、長い長い、洗練された武器と人員を保有しながらも数の上でB.O.Sが劣勢に立たされ、その多くの部分をNCRの圧倒的優勢が占めたとはいえ、お互いがつけあった傷が修復不能とも呼べる戦争が続いていたのだ。
だがほんの二年前、事情が変わってしまった。
2281年、アメリカ西部旧ラスベガス、現ニューベガスとネバダにおける第二次フーバーダム戦争で、時の英雄『運び屋』の介入と彼の主導でかねてより経済的にだけは独立していたニューベガスが完全独立を果たしたことにより、水資源と電気、加えネバダ直下モハビ・ウェイストランドが持って行かれたことにより食料生産に痛手を受けた。
運び屋が動かした戦前の遺産、大量のロボット兵がダムを奪い、大量の領土と人口を保有するNCRにとって必須とも言える電力と水が高額の金と引き換えにされた結果、NCRは経済的に大きな損失を受けたせいで、元々人員不足に陥っていたNCRはその力の全てをもってしても領土全てのコストを賄えなくなり飢えていったのだった。
加えてほんの一年と数カ月前、地下から現れたある存在が、貴重な生産人口を奪っていった。
『トンネラー』
そう呼ばれる、深い深い地面を掘り進み地表へと躍り出てきたミュータントが、NCRを襲い始めた。
日の元でこそ彼らは鈍かったが、高い繁殖力と、暗所をものにし暗闇から忍び寄る存在、その恐怖がNCRを更に蝕んでいったのだ。
そんな彼らとの攻防が続き、たった数ヶ月で飢えに飢えたNCRは、戦争中であったB.O.Sとの戦争放棄を決断し、ある同盟を結んだ。
『鋼の楔同盟』と呼称されるその同盟により、NCRの包囲で地下バンカーに立て篭もることを余儀なくされ彼ら同様飢えていたB.O.SはNCRが持ち腐れていた旧世界の先進技術を手にし、見返りに地下バンカーの核動力エンジンが生む電力をNCR領に供給し、トンネラーとも戦う。
吊り橋効果が産んだ同盟ではあるものの、夜を支配していた暗闇にライトが灯り、人々の眠りを妨げていたトンネラーを真っ赤に輝くレーザーで安々と打ち倒す超合金の装甲兵は人々の目にも輝いて映った。かつては将校による高度な戦略と、虎の子の強力兵器や破壊工作が敗北の決め手であったB.O.Sにとって、NCRと同じとはいえ数だけで押してくるトンネラーの処理は容易く、状況が好転すると共にかつての血みどろの争いが嘘のように両者の溝は浅くなっていったのだ。
―――そんな時代だったからだろうか、それともティコの軽口のせいか。少し緊張の糸が緩かったのかもしれない。
彼らの荷車に向かい、一発の砲弾が飛翔したことに気づかなかったのは。
太陽を背に落下するその緑色の―――見る人が見れば”ファットマン”や”リトルボーイ”と呼んだかもしれない。
"ミニ・ニューク"
そう呼ばれる、パワーアーマーやスーパーミュータントと同じ、緑色をしたミニチュアサイズの戦前からの遺物をただ一人目に出来たのは、ティコだけだった。
「ジーザス・・・」
サングラスが光を遮り唯一見上げられたその空。
見えたのは、脳が分泌する多量のアドレナリンが見せた、スローモーションのように飛来する緑色と、血のように赤い弾頭のみだった。
―――人は、過ちを繰り返す。
ファンタジーは次回から。
オリ主か迷ったんですが、一応主人公のティコは初代のコンパニオンさんで、初代以降のグール化設定はIFですがそれ以前は忠実にするのでタグ外しました、ダメそうなら一言お願いします。
ファンタジー世界ならティコさんもミニガンやロケットランチャーで木端微塵にされて泣く泣くロードとはならないはず、やったね!
※1
グール…戦後核爆弾が研究所を直撃したせいで撒き散らされたFEV(強制進化ウィルス)により遺伝子構造を最適化するようになった戦後世界の人間が、放射線を浴び続けたことにより放射線の強い環境に最適化するよう自身を変化させたもの。
皮膚は焼けただれ個人差はあるが
ただし、Fallout3である人物がいるように『グールだって人間』であり、見た目こそ醜悪だが人の心を持つことは変わらない。しかし差別的扱いを受けるうちに、対外的に刺々しくなってしまう者は多い。
戦前から200年以上生きる者もおり、持つ知識や経験は今を生きる人々の比にならない。